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僕と彼女

作者: SOR

僕は彼女を怒らない。


部屋がどんなに汚かろうと、リバウンドしてまた太ろうとも、

禁煙に失敗しても、誰かをキズつけたとしても、

僕は彼女を怒らない。


彼女が恐いから?

違う。

彼女に嫌われたくないから?

それも違う。


彼女が誰よりも自分に厳しく自分を罰し、

自分を愛せないことを知っているからだ。


顔はかわいいほうだろう。

化粧が少し濃い。

年上によく見られがちと、よくスネていた。

明るく、いつも笑顔で、友達も多い。


そんな彼女に出会ったのは2年前の冬。

彼女が21の時だ。


彼氏と別れることになったのだと、

彼女は笑っていた。

目が赤く腫れていた。

僕は何も言わなかった。

言おうともしていなかったかもしれない。


彼女は慣れない手つきで、タバコに火をつけ、

「マズい…」と一言だけ言って泣いていた。

それからの3ヶ月間、彼女は、耳が痛くなるぐらいに音楽を聞き、

タバコを吸い、毎晩友達を誘って飲み歩いていた。

僕は相変わらず、何も言わなかった。


しばらくして、彼女は近所でバイトを始めた。

整形手術をしたいのだと言う。

やっぱり、僕は何も言わなかった。


夏に、彼女は貯まったお金で手術を受けた。

彼女は気に入っていたが、あまり変わっていないように思えた。


少し時が経って、彼女は見るからに痩せていた。

添加物を、いっさい体に入れたくないのだという。

僕は、また何も言わなかった。


あれから1年が過ぎて、彼女は別れた彼氏と会った。

何があったかは聞かなかった。


その年初めての雪が降って、

彼女は初めて僕に答えを求めてきた。

自分は生きている意味があるのかと。

僕は答えなかった。

変な質問してゴメン、と彼女は笑った。


次の日も、その次の日も彼女は笑顔でいた。

無理をしているようには見えなかったが、

どこかさびしそうだった。


僕は、ずっとわかっていた。

彼女が生き苦しがっていることを。

何も手に入れられず、もがいていることを。

100か0かの世界に住み、ダメな自分を受け入れられずにいる彼女の弱さを、

僕はずっとわかっていた。

彼女自身もきっと気付いているのだろう。

彼女の求めているものはこの世にないのだと。

太ること、痩せること、肌がアレること、髪が傷むこと、部屋が散らかること、

誰かをキズつけてしまうこと、生きていたら避けては通れない。

もっともっと過酷な状況で苦しんでいる人が、ゴマンといるだろう。

彼女は漠然と、自分の生きている小さな世界で苦しんでいた。


僕は彼女の恋人ではない。きっと友達でもない。


それでも僕は彼女を待つだろう。ずっとずっと。

彼女が自分で自身を抱き締められる、その日まで。

最後まで読んで下さって

ありがとうございました!


人それぞれ、価値観が違い

悩みも違って、生きている。

そんな思いで書きました。


どんな感想でもいただけると

嬉しいです(^^)

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― 新着の感想 ―
[一言] 詩ですね、良かったです。 淡々と僕の気持ちが書かれていて、彼女への想いが見られました。 ただ、最初の方で「自分に厳しく自分を罰し、自分を愛せない」とありますが、自分と言う言葉が同じ箇所に並び…
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