Episode1 「危険地帯」
〈全てを飲み込む水族館〉そこに展示されるは哀れな者たち。
迷い込むもの、彷徨う魂、あらゆる概念。
そこに飲み込まれたそれらは二度として元の居場所へは帰れないという。
「ここが〈全てを飲み込む水族館〉?」
薄暗いトンネルを突き進む、時々ぴちょんと天井から雫が滴り落ちる。
少しの洞窟の終わり、こぼれる光が辺りを照らす。
絶景だった…。
トンネル型の水槽。
通路がありその周りをアクリル樹脂で覆ってある水族館にたまにある歩きながら見れる水槽だ。
進む道をみごとなまでに円筒状に空気が満ちている。
海の向こうから光が照らされているが、その光は折れ曲がり揺らめく模様となって通路の床へと映し出され、海の中には小魚たちがゆらゆらと群を成して踊っている。
しかしながら1つ、不可解な事がある。
なんと、この空間と海とを隔てるものが何もないのだ。
触れればそのまま海へ触れることができてしまう。
「これガラスがない?」
彼女がそう言いながら海へ触れようとした。
すかさず私が手を掴み制止する。
次の瞬間、彼女が触れようとした辺りをサメが横切った。
ひゃあ!と可愛らしくなく彼女に対して1つ告げた。
「まだ死なないでよ」
「もう!死にません!というか、死にたくありません!」
少しほおを膨らませたリスは一丁前に私の言葉を否定した。
「ならよかった」
その言葉に彼女は「何を当たり前のことを?」みたいな顔をしてくる。
続いて今度は不安そうな顔をする。
「ねぇ、すい…、″まだ″ってなに?ちゃんと…?!」
そっと何かを、言おうとした彼女の唇に人差し指を置き、
「ごめんね」
そう告げた。
彼女は察しがいい、絶望とも捉えられるその顔の瞳に雫が溜まり出し、漏れ落ちる。
それは…″涙″、なのだろう。
「」
私が口を動かそうとしたそんな時、視界の隅に巨影が映る。
猪のようにただまっすぐこの通路へと、いや、″私達″めがけて突進してくる。
私は彼女の手を引き、走り出す。
彼女は戸惑った顔をし、
「ど…どうし…きゃあ!!!」
大きな影が水の無いこの通路を右から左へと横切った。
水しぶきが大きく舞う、どうやら水しぶきが飛んでくることはあっても水が流れ込むことはないらしい。
けれど、ここではゆっくりしんみりとした話はできそうにない。
なぜなら、さっきの影以外にも無数の影がこの通路めがけて集まってきているからだ。
「走るよ」
私の言葉に小さく頷く彼女の手を引き、走り出す。
次々とこの通路を影が横切る、そのたびにバシャン!と水しぶきを巻き上げ、私達はその間をすり抜ける、あともう少しでこの通路が終わる。 。 。
そう思った矢先、1つの影がすでに真横まで来ていた…。
一瞬の見つめあいそして…、
ドン!と強い衝撃が加わる、その衝撃に私は″前″へと突き飛び転がる。
私に抱きつく何かがいた。
どうやら私は″巨影″ではなくほかの″何か″によって突き飛ばされたらしい。
抱きついているのはおそらくそれだろう。
それは、彼女だ。
彼女は、私を助けるために、抱きつくようにして私を突き飛ばしたのだろう。
「ありがとう。大丈夫?」
「う…うん、大丈夫、そ…それよりも…」
ゆっくりと彼女が起き上がる、どうやら彼女に外傷はないらしい。
「すいは、怪我…してない?」
「うん、してないよ」
「良かったぁぁぁ!」
彼女の体がドロドロの粘土のように溶けたみたいに膝から崩れ落ちる。
ふと、先ほどの通路を見る。
さっきの巨影のいくつかは通路を横切きれず、通路に転がっている。
″サメ″だ。
それも人を食うタイプのサメ。
どうやらひとまずは危険地帯を抜けたらしい。
ここ■私の■■■。
けれど、■■■■■■■事がある。
せめてそれが■■できるまでは、″■■″■■■■。




