第9話:『世界1位を「一時停止」で分からせる。~神速のジークが、一歩も動けず敗北を認めました~』
決闘当日。
俺の「自宅ダンジョン」の入り口には、世界中のメディアと、そして実体を持った『神速のジーク』が立っていた。
配信の同接数は、ついに大台の100万人を超えている。
「準備はいいかい、新人。……君の【空間編集】が発動する前に、俺の剣が君の喉を捉えるよ」
ジークが構える。次の瞬間、彼の姿がブレた。
常人の目には、彼が「消えた」ようにしか見えなかっただろう。
だが、俺の視界には、極限まで引き伸ばされた『時間』のシークバーが見えていた。
「――【タイム編集:一時停止】」
指を鳴らす。
途端、世界から色が消え、すべてが静止した。
俺の鼻先数センチのところで、ジークが剣を振り抜くポーズのまま固まっている。
「悪いな。俺の世界では、お前は一歩も動けないんだ」
俺はゆっくりと歩き、ジークの手から剣を抜き取る。ついでに彼の髪型を少しだけ変な方向に「コピペ」して歪ませてから、一時停止を解除した。
「……なっ!? 剣が……ない!?」
ジークが驚愕に目を見開く。
世界1位の男が、何が起きたか理解できず、マヌケな格好で立ち尽くしていた。
『うおおおおお! ジークが完封された!?』
『今の何!? 魔法の予備動作すらなかったぞ!』
コメント欄が爆発する中、ジークはその場に膝をついた。
「……俺の負けだ。君は、速さなんて概念を超越している……」




