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第85話:要塞の「ダークテーマ(再)」。~「眩しすぎて世界が見えないので、全員に『サングラス(物理)』を配布してみた件」~

全人類を「滑らかな丸刈り」にアップデートした結果、地上は数億の頭部から反射する光で、衛星写真すら真っ白に発光するほどの「光輝く世界」と化していた。

「……なぁテツ。自分で設定しておいてなんだが、外が眩しすぎてモニターが見えねえよ。要塞の中まで反射光が入り込んできて、目がチカチカするんだ」

『カナタさん、だから言ったじゃないですか! 今の地上は、全員が「鏡」を頭に乗せて歩いているようなものですよ。……このままじゃ人類の網膜が焼き切れるのも時間の問題です。……あ、ちょっと、空の色を「黒」に塗りつぶさないでくださいよ!』

「いや、空を暗くしても反射は止まらない。……だったら、受け手側の設定をいじればいい。……よし、全人類の視覚レイヤーに、透過率80%の【遮光フィルタ】を強制適用だ。……名付けて『ハードボイルド・モード』、――適用!」

 カナタが指を鳴らした瞬間。

 世界中の人々の視界に、物理的な実体を伴わない「漆黒のサングラス」が装着された。

 すると、どうだろうか。

 眩しさが消えただけでなく、世界の色調がコントラストの効いた「映画のようなセピア色」に変化したのだ。さらに、カナタが遊び心で追加した「ジャズ風のBGM」が地上のスピーカーや脳内に流れ始めた。

「……ふぅ、落ち着いた。……お、なんか地上の連中、急に動きが渋くなってないか?」

『……カナタさん。フィルタの影響で、人々が自分を「ハードボイルド映画の主人公」だと誤認し始めました。……見てください、あの原始人。マンモスの肉を食べる仕草が、まるで高級バーで葉巻を嗜むマフィアのボスみたいになってますよ』

「……あら。……この色調、素敵ですわ、カナタ様。……世界が影に沈んだことで、貴方のその『磨き上げられた頭部』の輝きが、よりいっそう芸術的に際立っていますもの」

 ルナが黒いドレスを纏い、影の中から静かにカナタに寄り添う。彼女の執着もまた、ダークな色調の中でより深みを増していた。

「……主様、その、黒い、レンズ……。……隠された、瞳の、奥を……私が、透視するように、磨き抜いて、あげますね……ッ! ……サングラスの、縁に、付いた、わずかな、指紋も……一分子、逃さず、漂白して……あげます……ッ!」

 セレスティアが、影に潜みながら「特殊遮光用・研磨布」を手に、カナタの視界そのものを磨き始める。彼女にとって、暗い世界は「不純物」を特定し、排除するのに最適な狩場だった。

「あはは! ライバーさん、見てよ! リスナーたちが『急にハードボイルド編始まったw』『原始人のウホが渋すぎて草』って、投げ銭でシガー(煙草)のアイコンが飛び交ってるよ! 同接数がまたバグって、銀河系記録を更新しちゃったね!」

 ノアがゲラゲラと笑いながら、地上の会話すべてに「渋い字幕」を勝手に生成して表示させ始める。

 

 カナタの「眩しさ対策」は、人類から明るさを奪い、世界を一つの巨大な「終わりなきハードボイルド映画」へと変貌させてしまった。

「……よし、テツ。……次は、雨の演出を追加して、さらに雰囲気を盛り上げてやるか。……もちろん、その雨は『高級なバーボン』の香りがするように編集してな」

『……カナタさん。それ、地上中が酔っ払って、攻略どころじゃなくなりますよ……』

【次回予告】

第86話:『要塞の「パーティ・ナイト」。~「雨をバーボンの香りに変えたら、魔物たちが陽気に踊り出して攻略が中止になった件」~』

「……おい、ドラゴンがステップ踏んでるんだけど」

世界中が酒の香りに包まれた結果、ダンジョンの緊張感がゼロに!?

獲物を狙うはずの原始人と魔物が、肩を組んで歌い明かすカオスな夜が幕を開け――。

「主様、酔った、貴方も……。……隙だらけで、可愛いから……今のうちに、私が、中身まで、磨き直して、あげますね……ッ!」

【作者よりお願い】

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

第85話、眩しすぎる世界をサングラスとジャズで強引に解決(?)する、渋すぎる暴走回をお届けしました。

もし「原始人がハードボイルドになる光景が面白すぎるw」「セレスティアの影からの執着が安定の怖さw」と思っていただけましたら、

ページ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価いただけると、執筆の大きな励みになります!

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