第63話:要塞の「フォグ(霧)」設定。~「遠くを隠して処理を軽くしたら、地上の人間が全員行方不明になった件」~
世界をドット絵に変え、処理速度を向上させたカナタ。しかし、さらに「サクサク動かしたい」というクリエイター特有の業は止まらなかった。
「……なぁテツ。ドット絵にしても、まだ描画オブジェクトが多すぎる気がするんだよな。要塞から見えない位置にあるデータの演算、丸ごとカットできないか?」
『カナタさん、それはゲーム制作で言うところの「カリング(描画省略)」ですね。……でも、現実でそれをやると、見えていない場所が「存在しない」ことになっちゃいますよ。……あ、ちょっと、その【フォグの開始距離】を「0」にしないでください!』
「いいだろ、要塞の中さえ見えれば生活に支障はない。……よし、半径10メートル外に、濃度100%の【描画制限フォグ(霧)】を設置。……未描画エリアの演算を完全に停止だ。――適用!」
カナタがエンターキーを叩いた瞬間。
空中要塞の窓の外は、一瞬にして「真っ白な虚無」に包まれた。
要塞から数メートル先には、もはや空も、雲も、そして大地すらも存在しない。ただ、カナタが設定した白い霧が、無限の壁となって要塞を隔離したのだ。
「……おお、信じられないくらい軽くなった。マウスカーソルがヌルヌル動くぞ」
『カナタさん!! 軽いのはいいですけど、地上との通信が物理的に遮断されましたよ! 描画を止めたせいで、地上の人々は貴方の視界から外れた瞬間、時間が止まった「静止オブジェクト」になっちゃいました!!』
地上では、人々が突如として現れた「白い壁」に阻まれ、数メートル先も見えない恐怖に狂い始めていた。さらにカナタの視線が外れた地域では、文字通り「存在の演算」が止まり、人々はポーズを固めたまま彫像のように静止してしまった。
だが、この「世界に自分たちしかいない」状況を、最も待ち望んでいた者たちがいた。
「……ふふ。……ついに、この時が来ましたのね。……この白い霧は、カナタ様がわたくしたちのために用意してくださった『箱庭のカーテン』。……もう、下賤な民たちの叫び声も、醜い景色も、何も聞こえませんわ……」
ルナが霧を背景に、うっとりとカナタに擦り寄る。彼女の愛は、この完全な密室でさらなる進化を遂げようとしていた。
「……霧、最高。……外から、汚れが、入ってこない。……主様と、私、それから……邪魔な女たち、だけ。……この、閉ざされた、世界で……主様の、奥深くまで、磨き直して……私だけの、バックアップを、作るの……ッ!」
セレスティアが、霧の中に包丁を走らせ、要塞の境界線を「物理的に」縫い合わせようとする。彼女にとって、このフォグ設定は主を永遠に独占するための聖域だった。
「……あはは! ライバーさん、視聴者が『ついに公式がセカイ系に突入した』って大興奮だよ! 要塞の中限定のライブ配信、同接がまた跳ね上がってる!」
ノアが霧の中にバグのエフェクトで偽りの星空を描き、要塞をさらに幻想的な監獄へと作り変えていく。
カナタの「利便性」を求めた編集は、ついに世界を「要塞という名のプロジェクトファイル」一つに絞り込み、全人類の運命を一時停止させてしまった。
「……まぁ、作業が終わるまではこのままでいいか。……静かで最高だしな」
『……カナタさん。貴方が作業を終えて霧を晴らしたとき、地上にどれだけの「データ破損」が起きてるか、考えたくもありませんよ……』
【次回予告】
第64話:『要塞の「スリープモード」。~「俺が寝ている間、世界を一時停止したら、朝が来なくなった件」~』
「作業も一段落したし、一眠りするか」
カナタが世界の【スリープ設定】を「即時実行」に変更!
要塞の主が眠りについた瞬間、全宇宙の物理演算が完全にストップし、世界は「永遠の瞬間」に閉じ込められて……!?
「……主様、おやすみなさい。……眠っている、主様の、まつ毛の先まで……私が、一晩中、磨き続けて、あげますから……ッ!」
【作者よりお願い】
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