第60話:要塞の「自動翻訳機能」。~「俺の適当な独り言が、全宇宙で『神の啓示』として受信された件」~
フォントを重厚な明朝体に変えたことで、世界中が文字の「角」と「重み」に悲鳴を上げていた頃。カナタは要塞のコントロールパネルを見ながら、新たな「効率化」を思いついていた。
「……なぁテツ。最近、地上から届くメッセージの言語が多すぎて、いちいち翻訳にかけるのが面倒なんだよ。……いっそのこと、世界の【言語レイヤー】を一つに統合して、俺の言葉が全人類にダイレクトに伝わるようにできないか?」
『カナタさん、それは「バベルの塔」の逆をやるようなもんですよ。……言語には文化やニュアンスが詰まっています。機械的に統合すれば、意味が勝手に『最適化(変換)』されて……あ、ちょっと、グローバル・トランスレートを【常時ON】にしないで!』
「いいだろ、伝われば。……よし、出力先を『全人類の聴覚レイヤー』に設定。……翻訳エンジンは、一番『威厳』が出る設定にして、――適用!」
カナタがエンターキーを叩いた瞬間。
空中要塞を中心に、目に見えない「意志の波動」が世界中に放射された。
その時、カナタはちょうど、お腹が空いていた。
「……ああ、腹減ったな。……今日の昼飯、何にしようか」
カナタがボソリと零した、ただの独独り言。
それが自動翻訳エンジンを通り、地上の全人類の脳内には――
『――【神託:大いなる飢餓の刻が来た。万物は、その存在を捧げる糧を選別せよ】――』
という、地の底から響くような重厚な「神の声」として強制的に受信された。
「……ひ、陛下が……カナタ皇帝陛下が『飢え』ておられる! 世界を喰らい尽くすおつもりだ!」
「急げ! 各国の最高級食材を、いや、もっと尊き『魂の供物』を要塞に捧げろ! さもなくば世界が飲み込まれるぞ!!」
地上では、王たちがパニックになり、国中の宝物庫を開けて「お供え物」の準備を始める。
一方で、要塞内のキッチンでは、セレスティアがカナタの言葉を「正しく」受け取っていた。
「……主様。……お腹が、空いたのですね。……不純物(地上の食材)なんて、食べさせません。……私の、魔力と、愛を、限界まで、煮詰めた……私の分身のような、スープを、召し上がれ……ッ!」
セレスティアが、暗黒のオーラを纏った鍋をかき混ぜる。彼女の翻訳設定は、カナタによって「ヤンデレ専用パス」が通っているため、より深い執着へと変換されているのだ。
「あら、セレスティア。わたくしも、カナタ様の『飢え』を癒すお手伝いをいたしますわ。……わたくしの血を一杯分加えた、聖なるワインはいかがかしら?」
「……主様の、お腹を、満たすのは、私。……王女様は、デザートの、皿洗いにでも、なってて……ッ!」
要塞内で熾烈な「献立争い」が勃発しているとは露知らず、カナタはモニターに映る地上の大混乱を見て首を傾げた。
「……おいテツ。地上の連中、なんでみんな必死な顔でこっちに貢物を運んできてるんだ? 俺、まだメニューすら決めてないぞ」
『……カナタさん。貴方の「独り言」が、翻訳エンジンのせいで「終末の予言」に変換されてるんですよ。……ほら、今の「メニュー決めてない」っていう言葉も、地上では「生贄の数が足りない」って伝わってますよ』
「……えぇ? 言葉の壁って、なくなった方がややこしくなるのかよ!?」
カナタの「利便性」を求めた編集は、全人類を「神の言葉」を深読みし続ける狂信者の群れへと変えてしまった。
【次回予告】
第61話:『要塞の「ダークモード」実装。~「画面を見やすくしただけで、世界が永劫の闇に包まれた件」~』
「最近、画面が眩しくて目が疲れるんだよな」
カナタが要塞と世界の【テーマ設定】を、ライトモードから「漆黒のダークモード」へ変更!
すると、空から太陽の光が消え、夜が明けない「常闇の世界」が到来!?
「主様、暗闇……最高です。……これで、誰にも、邪魔されずに……主様を、後ろから、磨き放題……ッ!」
【作者よりお願い】
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