第59話:要塞の「フォント変更」。~「明朝体にしただけで、世界の歴史が重厚になりすぎた件」~
アンチコメントを物理的な炎で焼き尽くし、要塞内の静寂を取り戻したカナタ。彼は自作の動画を見返しながら、ふとした違和感に指を止めた。
「……なぁテツ。この画面に表示されてる『システム・メッセージ』、なんか軽くないか? 丸っこいゴシック体のせいで、せっかくの神聖な空中要塞の威厳が台無しだよ。もっとこう、歴史の重みを感じさせるようなデザインにできないのか?」
『カナタさん、それは世界の【基本フォント】設定ですよ。文字は情報を伝えるための器であって、そこに重みを持たせすぎると……あ、ちょっと、フォント・フォルダを全選択しないで!』
「いいだろ、見た目は大事だ。……よし、世界全域の標準フォントを、この『超・極太漆黒明朝』に変更だ。……あと、文字の角の鋭さを最大値に設定して、――適用!」
カナタがエンターキーを叩いた瞬間。
世界中の「文字」という概念が、物理的な変化を伴って書き換えられた。
看板、書籍、スマートフォンの画面、そして人々の頭上に浮かぶステータス・ウィンドウ。それらすべてが、鋭利で重厚、かつ威圧感の塊のような明朝体へと変貌したのだ。
「……な、何だこの重圧は!? 私のステータス画面が、まるで石碑のような重みを持って押しつぶしてくるぞ!」
「陛下ぁぁ! 役所の書類の文字が鋭すぎて、触れるだけで指が切れます! 役人が全員血まみれです!!」
地上では、文字の「角」が物理的な鋭利さを持ち、さらにそのフォントが持つ「重厚感」のせいで、本一冊の重量が数トンに跳ね上がるという珍現象が発生していた。
「……あら。素晴らしいですわ、カナタ様。……このフォントに変わってから、わたくしの吐く言葉一つ一つが、まるで神の宣告のような重みを持って響きますわ。……これなら、下賤な民たちを黙らせるのも容易いですわね」
ルナが口を開くたび、空中に「漆黒の明朝体」で彼女の言葉が物理的に具現化し、その重みで大気が震える。
「……この文字、好き。……角が、尖っていて……不純物を、刺し殺すのに、最高。……主様、見て……。……私が、この『文字のナイフ』で……要塞の隅々まで、さらに鋭く、磨き上げて、あげます……ッ!」
セレスティアが、空中に浮かぶ自分の名前(ステータス文字)を掴み、それを短剣のように振るって空間を切り裂く。
「……あはは! ライバーさん、見てよ! コメント欄の文字がトゲトゲしてて、もはや弾幕(物理)になってるよ!」
ノアがゲラゲラと笑う中、カナタは文字通り「重たくなった世界」をモニターで眺めていた。
人々は一言喋るごとに、口から飛び出す重厚な明朝体の衝撃波に耐えなければならず、世界は期せずして「無駄口を叩けない、厳格で重苦しい歴史劇」のような空間へと強制アップデートされた。
「……よし、これで動画の『映え』もバッチリだな。……テツ、ついでに句読点(。、)を『爆発エフェクト』に変えておけ。文末にパンチが欲しいだろ?」
『……カナタさん。地上の住人たちが、喋り終わるたびに自分の顔の前で爆発が起きる絶望を味わうことになりますよ……』
カナタの「美意識」による編集は、ついに言語という文明の根幹すらも、美しく、そして残酷な凶器へと変えてしまった。
【次回予告】
第60話:『要塞の「自動翻訳機能」。~「俺の適当な独り言が、全宇宙で『神の啓示』として受信された件」~』
「言葉が通じないと面倒だな」
カナタが世界の【自動翻訳レイヤー】を全開放!
すると、カナタの「腹減ったな」という呟きが、全人類の脳内で「大いなる飢餓に備えよ」という終末の予言に変換されてしまい……!?
【作者よりお願い】
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