第55話:不法侵入の「バグっ娘」。~「お前のテクスチャ、解像度が低すぎて目障りなんだけど」~
空中要塞のリビングに突如として発生した、空間の亀裂。そこから這い出してきたのは、まるで古いビデオテープのノイズを纏ったような、輪郭のぼやけた少女だった。
「――見ぃつけた。……バズり方を知ってる最強のライバーさん。……君の世界、とっても『美味しそうなバグ』で溢れてるね?」
少女が指を鳴らすと、要塞の豪華な壁紙が、一瞬で「未設定」を意味する白黒の市松模様へと書き換えられていく。異次元からの侵入者――自らを『世界のバグを喰らう者』と称する彼女の出現に、リビングの空気は一瞬で沸騰した。
「……不愉快ですわ。カナタ様がせっかく模様替えをされたばかりの部屋を、そんな下品なノイズで汚すなんて。……今すぐ、貴女の存在ごと『歴史のゴミ箱』にシュートして差し上げます」
ルナが漆黒の魔導杖を突き出し、絶対零度の魔力を収束させる。
「……掃除、対象。……その、モザイクみたいな、顔。……見てると、酔う。……私が、一枚ずつ、皮を剥いで……中身を、ピカピカの、単色に、してあげる……ッ!」
セレスティアが、空間を切り裂く「巨大スクイジー(物理)」を構え、少女の首筋に音もなく肉薄した。
「あはは! 無駄だよ、私は『未確定データ』。この世界の物理法則じゃ、私に触れることすら――」
「……うーん。テツ、これ何? 画面のドットが粗すぎて、見てるだけで目がチカチカするんだけど」
修羅場の中心で、カナタが心底嫌そうに目を細めた。
覚醒し、世界の解像度を自在に操れるようになった今の彼にとって、目の前の少女は「強敵」ではなく、単なる「作画崩壊した低品質なデータ」にしか見えなかった。
『カナタさん、彼女は隣接する次元の「未完成なプロジェクト」から漏れ出したバグですね。存在自体がノイズなので、今の要塞のアンチウイルス機能じゃ弾ききれないみたいです』
「……めんどくさいな。おい、バグっ娘。お前、自分が無敵だと思って調子乗ってるみたいだけど、俺の環境(PC)じゃ、お前はただの『修正が必要な素材』なんだよ」
カナタが虚空で指をピンチアウト(拡大)した。
「【プロパティ編集:高精細パッチ適用】。……あと、その不自然なノイズに【スマートシャープ】を最大値で。……ついでに、見栄えが悪いから【4Kアップスケーリング】を実行だ」
「え、ちょ、何!? 私の体が……勝手に『書き込まれて』……あ、あぁぁぁっ!?」
少女の悲鳴とともに、彼女の全身を覆っていた「バグの霧」が、凄まじい演算処理によって剥ぎ取られていく。
ノイズが消え、解像度が極限まで引き上げられた結果、そこに現れたのは――。
輝くような銀髪と、星を散りばめたような瞳を持つ、驚くほど整った容姿の美少女だった。
「……は? なんだ、ただの美少女じゃねえか。しかも、なんか無駄にエフェクト(キラキラ)がかかってて、逆に目立ってるぞ」
「……な、ななな……何をしたの!? 私の『神秘のベール(バグ)』が剥がされて、ただの『高画質な女の子』になっちゃったじゃない! これじゃ隠密行動ができないよぉ!」
顔を真っ赤にして地団駄を踏む美少女。どうやら、バグを纏って強キャラ感を演出していただけで、中身はただの寂しがり屋な異次元人だったらしい。
「……あら。隠すものがなくなったのであれば、次は『躾』の時間ですわね。カナタ様の要塞に不法侵入した罪……その綺麗な肌に、一生消えない『カナタ様の所有印(透かし)』を刻んで差し上げましょうか?」
ルナが、獲物を見つけた猛獣のような笑みを浮かべて歩み寄る。
「……磨き、甲斐が、ある。……その、高画質な、肌。……一箇所ずつ、丁寧に、洗剤で、磨いて……主様の、コレクション、にして……あげる……ッ!」
「ひ、ひぃぃぃっ!? 助けてライバーさん! この人たちの目が本気で怖いんだけど!!」
新しく「修正」されたヒロインを加え、空中要塞のヤンデレ密度は、ついに次元の壁を突破するほどに高まっていく。
【次回予告】
第56話:『バグっ娘の「チャンネル登録」。~「私の能力、主様の動画の『演出』に便利じゃありませんか?」~』
命からがらルナたちの爪を逃れた少女・ノア。
生き残るために彼女が提案したのは、自身のバグ能力を使った「特殊エフェクト係」としての就職!?
「主様、こいつ……動画の『モザイク処理』を自動でやってくれるので、編集が楽になりますよ」
新たな「便利ツール(ヒロイン)」の加入に、再び要塞内の女たちの序列が激変する!
【作者よりお願い】
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