第51話:要塞の「ゴミ箱」が溢れ出した件。~「昨日捨てたはずの魔王が、腐ったデータになって戻ってきた」~
「コピー・カナタ」を巡るヒロインたちの狂乱が、物理的な「部屋の破壊」という形でようやく沈静化した翌日。要塞のシステムから、これまで聞いたこともないような不気味な警告音が鳴り響いた。
『警告:ストレージの容量が限界を超えました。ゴミ箱内の「未処理データ」が腐敗(バグ化)し、物理レイヤーへの浸食を開始しました』
「……なんだよ、テツ。ゴミ箱なんて、いっぱいになったら勝手に消える設定にしてたんじゃないのか?」
カナタがモニターを開くと、そこには真っ黒なヘドロのようなノイズが、ゴミ箱のアイコンから溢れ出している映像が映っていた。
『カナタさん! 貴方がこれまで「うっかり」デリートしてきた連中――月の巨神兵、地上の魔王、帝国の騎士団、さらには「削除したはずのバグデータ」が、ゴミ箱の中で融合して一つの巨大な怨念になっちゃったんですよ!』
ドォォォォォン!!
要塞の地下にある「データ廃棄区画」の隔壁が吹き飛び、そこから現れたのは、かつてカナタが消しゴムツールで消したはずの敵たちのパーツが、デタラメに継ぎ接ぎされた異形の大群だった。
それは「消されたこと」すら認識できないまま、ただカナタへの恨みだけで動く、この世界のソースコードの「バグ」そのもの。
「……あぁ、主様。……せっかく廊下を、磨き上げたのに。……また、不純物が、溢れて……。……今度は、中身まで、徹底的に、漂白して、あげます……ッ!」
セレスティアが、半分溶けかかって意識を失っている「コピー・カナタ」を小脇に抱えたまま、影の中から飛び出した。彼女にとって、主様の要塞を汚すバグは、存在自体が万死に値する。
「わたくしも加勢しますわ! カナタ様のゴミ箱を掃除するのも、皇帝の妃としての務めですもの!」
リリアーヌが聖光を放ち、ノイズの塊を焼き払う。だが、相手は一度「消された」データ。通常の攻撃では完全に消滅せず、すぐにノイズとなって再構成されてしまう。
「テツ! あのバグどもの中心にある『インデックス・ファイル』を見つけろ! そこを直接書き換えないと、何度でも湧いてくるぞ!」
『無茶言わないでください! 今、コピー・カナタの維持にリソースを割かれてて、検索エンジンが重いんです! カナタさん、貴方が直接「修正」を当てるしかありません!』
「……ちっ、俺が行くしかないか。……おい、コピー! 寝てんじゃねえ、お前の処理能力も貸せ!」
カナタは、セレスティアに抱えられていた「もう一人の自分」の首根っこを掴み、システムの中枢へとダイブした。
本物のカナタが『選択』し、コピーのカナタが『処理』する。
二人のカナタが同時にキーボード(概念)を叩くことで、要塞始まって以来の「超高速・一括クリーンアップ」が開始された。
「【全選択】……【重複項目の削除】……! 過去の遺恨なんて、今さら持ち出してくんじゃねえよ!」
カナタの指先から放たれた強力な「クリーンアップ・プログラム」が、バグの巨神兵を、魔王の残滓を、一つずつ確実に「完全消去」の光で包み込んでいく。
しかし、ゴミ箱の最深部には、まだカナタ自身も気づいていない「最大の消し忘れ」が眠っていた――。
【次回予告】
第52話:『初期設定の「俺」。~「一番最初にデリートしたはずの、人間らしい心が襲ってくる」~』
バグの猛攻を退けたカナタの前に現れたのは、要塞を手に入れる前の「ただの一般人だった頃のカナタ」の残像。
「こんな世界、間違ってる」
正論を吐く過去の自分に対し、今のカナタとヤンデレヒロインたちは……。
「……主様に、迷いは、不要。……今の主様を否定するなら、過去の主様ごと、私が『磨き直して』あげます……ッ!」
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