第50話:要塞の「バックアップ作成」。~「あれ、俺のコピーが勝手に二人に増えてるんだけど」~
空中要塞の主、カナタは深刻なリソース不足に直面していた。
地上を魔改造し、時間を加速させ、天候をいじり倒した結果、処理すべきタスクが指数関数的に増大していたのだ。
「……なぁテツ。俺、もう一本の手じゃ足りないよ。動画のカット割りをしてる間に、地上の『地形崩壊エラー』の修正もしなきゃいけないし、ルナたちのティータイムの相手もしなきゃいけない。……もう一人、俺がいれば解決すると思わないか?」
カナタの視線は、システムコンソールの右クリックメニューにある【コピー(Ctrl+C)】と【貼り付け(Ctrl+V)】に釘付けになっていた。
『カナタさん! 待ってください、それは生物としての倫理レイヤーを完全に無視した操作です! 「魂のデータ」を複製するなんて、どんな致命的なバグが起きるか……!』
「大丈夫だって。バックアップを取るだけの感覚だよ。……よし、自分自身を選択して、――【一括複製】実行!」
ピコン、という軽快な決定音。
次の瞬間、リビングのソファの隣に、カナタと全く同じ姿、同じ服装、同じ眠そうな目をした「カナタ(コピー)」が出現した。
「……あ、どうも。俺です」
「……おう、俺。じゃあ、俺は動画の編集やるから、俺は地上の修正とヒロインたちの相手、頼むわ」
「了解。効率的だな、俺」
二人のカナタが淡々と業務分担を始めた。カナタにとっては、これは単なる「マルチタスクの最適化」に過ぎなかった。
だが、その様子を扉の隙間から見ていた三人の影にとっては、それは「世界の終わり」であり、「至上の幸福」の始まりだった。
「……信じられませんわ。……カナタ様が、増えました。……ということは、私が愛でるべき主様が、物理的に200%になったということですわね……?」
ルナの瞳が、これまでにないほど深い紅に染まり、ドロドロとした魔力が足元から溢れ出す。
「わたくしも同意見ですわ、ルナ様。……これまでは三人で一人のカナタ様を奪い合ってきましたが……二人に増えたのであれば、わたくしたちの『配分』も変わるというもの。……あぁ、どちらのカナタ様を、わたくしの専用フォルダに閉じ込めましょうかしら……!」
「……争い、無用。……二人、いるなら……一人は、観賞用。……もう一人は、解体して……中身まで、磨く用。……主様、逃がさない……ッ!」
セレスティアが、巨大な「トリミング用バサミ(物理)」をジャキリと鳴らし、影の中から二人のカナタへと肉薄する。
「え、ちょ、待て。ルナ? セレスティア? なんでそんなに殺気立って……ぎゃああぁぁっ!?」
コピーのカナタが、瞬く間にセレスティアによって「ホールド設定(物理拘束)」され、地下のクリーニングルーム(拷問部屋)へと引きずられていった。
一方で、本物のカナタも、ルナとリリアーヌによって左右から腕を固められ、逃げ場を完全に塞がれる。
「カナタ様。……コピーなどという不完全なデータは、セレスティアに任せておけばいいのです。……さあ、本物の貴方は、私と一緒に『非表示レイヤー(秘密の部屋)』で、永遠にバックアップを取り続けましょう……?」
「待ちなさいなルナ様! そのカナタ様の『右半分』はわたくしの所有権として登録済みですわよ!」
「……テツ! 助けてくれ! 効率化のために増やしたのに、逆に作業が進まないどころか、俺の身が物理的にデリートされそうなんだよ!!」
『……カナタさん。だから言ったじゃないですか。ヤンデレにとって「愛する人が増える」というのは、喜びが倍増するんじゃなくて、「独占欲の対象が分散してバグる」ってことなんですよ! いま、要塞の愛のパラメータが測定不能を起こして、爆発寸前です!!』
カナタの「安易なコピペ」は、要塞内に地獄のような「主様争奪戦」を引き起こした。
地下からはコピー・カナタの「磨かないで! 消さないで!」という悲鳴が響き、リビングでは本物のカナタがヒロインたちの過剰すぎる愛(物理)によって、文字通り「引き裂かれそう」になっていた。
「……あぁ、主様。……大丈夫です。……もし、壊れても……また『貼り付け』すれば、いいだけですから……うふふ……ッ!」
カナタの意識が、ヤンデレたちの狂気の中で遠のいていく。
効率を求めた果てに待っていたのは、自分自身のデータが無限に愛(破壊)され続ける、終わりのないループ・エラーだった。
【次回予告】
第51話:『要塞の「ゴミ箱」が溢れ出した件。~「昨日捨てたはずの魔王が、腐ったデータになって戻ってきた」~』
コピー騒動で要塞が混乱する中、これまでデリートしてきた「敵の残骸」が、ゴミ箱の中で融合して巨大な『バグ・モンスター』へと進化!
「主様、大変です! 捨てたはずの連中が、恨みのキャッシュデータになって襲ってきます!」
カナタは、半分溶けかかったコピー・カナタと協力(?)して、過去の清算に挑むことに!?
【作者よりお願い】
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
記念すべき第50話、いかがでしたでしょうか?「自分を増やす」というクリエイターの夢が、ヤンデレの手によって悪夢に変わる展開をフルパワーで描きました。
もし「二人のカナタを巡る修羅場が最高!」「セレスティアの『磨く用』が怖すぎるw」と思っていただけましたら、
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