第49話:世界最強のダンスバトル。~「ステップの風圧で山が消えるんだけど」~
空中要塞の「再生速度200%」設定。それは、要塞内部の1時間が地上の数日に相当するという、あまりにも残酷なタイムラグを生み出していた。
数時間(地上時間で数ヶ月)、爆音トランスBGMを浴び、時間の歪みの中でステップを踏み続けた人類は、もはやかつての脆弱な生命体ではなかった。
「……なぁテツ。さっきから下から突き上げてくる、この凄まじい振動は何だ? まるで要塞が、下から巨大なハンマーで叩かれてるみたいなんだけど」
カナタがモニターの『高度維持レイヤー』を確認すると、そこには異常なまでの「外部圧力」のアラートが赤く点滅していた。
『カナタさん! 窓の外を見てください! 地上の連中、あまりの速度で踊りすぎた結果、ステップを踏むたびに「ソニックブーム」を発生させて、その風圧で空を飛んでこっちに向かってきてますよ!!』
「は……? 踊って空を飛ぶ? 何言ってるんだよ」
カナタが窓の外を見下ろすと、そこには目を疑う光景が広がっていた。
ムキムキにビルドアップされた各国の王や騎士たちが、一糸乱れぬ超高速のステップを刻み、その足元から放たれる衝撃波で山を削り、雲を散らし、弾丸のような速度で空中要塞へと迫っていたのだ。
「陛下ぁぁぁ! この……この狂ったリズムを……止めて……止めてくれぇぇぇ(音速のダンス)!!」
先頭を走るのは、かつて「粗大ゴミ」として捨てられたはずの勇者カイル。彼もまた、地上の過酷な「ダンス環境」でレベル1から驚異的なレベルアップを果たし、今や一歩踏み出すだけで地形を書き換える「音速の舞踏家」へと進化していた。
「……喧しいですね。カナタ様の高潔な作業場に、そんな汗臭い振動を持ち込むなど……不潔の極みですわ」
バルコニーに躍り出たルナが、冷徹な瞳で迫り来る超人類たちを見下ろした。
彼女にとって、地上の苦悩など「再生エラー」以下の価値しかない。
「……掃除、邪魔。……あいつら、動きが、早すぎて……モップが、追いつかない。……主様、許可を。……あの羽虫ども、まとめて『フリーズ』させて、叩き落とします……ッ!」
セレスティアが、魔力を帯びた「巨大な蝿叩き(物理破壊用)」を構え、影から飛び出す。
「……よし、テツ。あいつら早すぎて狙いづらいだろ? 地上の【重力設定】を月面並みの1/6に下げてやれ。フワフワさせて、機動力を奪うんだ」
『了解です、カナタさん! ――重力レイヤー、パラメータ変更!』
カナタがエンターキーを叩いた瞬間、地上の重力が消失した。
音速で踊っていた超人類たちは、踏み込んだ瞬間に自らの衝撃波で宇宙まで吹っ飛ばされそうになり、慣性制御を失って空中でバラバラに浮き上がった。
「な、なんだ!? 体が浮く! ステップが……ステップが空を切るぅぅっ!?」
「今ですわ! 害虫駆除、開始いたしますわよ!」
リリアーヌが放つ聖光の網が、宙に浮いた「ダンス超人」たちを絡め取り、そこへセレスティアの巨大な蝿叩きが唸りを上げて叩きつけられる。
ドォォォォォン!!
神話級の威力を秘めた「掃除道具」の一撃が、勇者カイルを含む地上軍を、地平線の彼方までまとめてホームランのように叩き出した。
「……ふぅ。これで静かになるな。……なぁテツ、そろそろBGM、飽きてきたから『環境音:小鳥のさえずり』に変えておいてくれ」
『……カナタさん。その「さえずり」も、貴方の設定だと、鼓膜が破れるレベルの超高音質になりそうで怖いんですけど……』
カナタの「利便性重視」の編集は、地上の英雄たちをただの「飛び跳ねる不純物」として処理し、世界の理をさらに無慈悲な形で塗り替えていった。
【次回予告】
第50話:『要塞の「バックアップ作成」。~「あれ、俺のコピーが勝手に二人に増えてるんだけど」~』
「自分がもう一人いれば、作業が倍速で進むのに」
そんな軽い気持ちでカナタが実行した【データの複製(コピー&ペースト)】。
だが、生まれた「コピー・カナタ」に、ヤンデレヒロインたちが一斉に群がり……。
「主様が二人……? ということは、私が独占できる主様が二人……うふふ……ッ!」
本物そっちのけで、コピーを巡る凄惨な「分割(解体)作業」が始まる!
【作者よりお願い】
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
3,000文字級のボリュームで、音速ダンス軍団を「物理的に叩き落とす」カオスな戦闘を描きました。
もし「踊って攻めてくる勇者に同情するw」「ヒロインたちの蝿叩きが容赦なさすぎて最高!」と思っていただけましたら、
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