第45話:建国記念日の大掃除。~「皇帝の初仕事が、世界地図の『トリミング』ってマジ?」~
勝手に建国された「マゼラン・カナタ帝国」。その皇帝(本人はただの引きこもりクリエイター)であるカナタの元には、連日、地上から「統治に関するお願い」という名の大量のエラーレポートが届いていた。
「……なぁテツ。この『国境線が入り組んでいて紛争が絶えません』とか、『山脈のせいで物流のパケットロスが激しいです』とかいう苦情、どうにかならないか? 地上を見下ろすと、確かに配置がバラバラで美しくないんだよな」
カナタは、モニターに映し出された地上の3Dマップを眺めながら、編集ソフトのペンタブを回した。彼にとって、地上はすでに「一つの巨大なプロジェクトファイル」でしかない。
『カナタさん、地上の王たちは「陛下、どうか賢明な裁きを」と祈ってますけど、彼らの想像する「裁き」は外交的な話し合いですよ。……あ、ちょっと、何をしてるんですか!?』
「いや、国境線がギザギザなのが一番のバグだろ。……よし、全レイヤーを選択して、まずは『キャンバスのサイズ変更』だ。……ついでに、この余計な凹凸を【トリミング】して、全体を『黄金比』で整えてやる」
カナタがモニター上で「トリミングツール」を起動し、大陸全体を四角い枠で囲い込んだ。
そして、余分な半島や、歪な形をした山脈を「枠外」へとドラッグし――『決定』ボタンを叩いた。
――ズズズズズズッ!!
その瞬間、世界中で未曾有の地殻変動が発生した。
入り組んでいた海岸線は、定規で引いたような直線へと「整形」され、険しかった山脈は「邪魔な背景オブジェクト」として一瞬で平地へと平滑化された。
「……あ、すっきりした。これで物流もスムーズだろ」
『カナタさん!! 山脈が消えたせいで気候システムがクラッシュしてますよ! 砂漠だった場所にいきなり熱帯雨林のテクスチャが貼り付けられて、地上の王たちが「神の気まぐれが過ぎる!」って泡を吹いて倒れてます!!』
テツが絶叫する中、要塞のバルコニーでは、ルナ、セレスティア、リリアーヌの三人が、真っ直ぐになった地平線を眺めてうっとりとしていた。
「……素晴らしいですわ、カナタ様。世界の形すら、貴方の『美意識』に染まっていく。……これこそ、真の帝都にふさわしい整然とした美しさですわね」
「……はい。……山が、なくなって……掃除が、しやすくなりました。……次は、あのみっともない色の『砂漠』を、主様の好きな『エメラルドグリーン』に塗り替えておきますね……ッ!」
セレスティアが巨大な「バケツツール(魔法)」を手に、地上へと飛び出そうとする。
もはや地上の生態系や歴史など、彼女たちにとっては「主様の部屋を飾るインテリアの色合わせ」程度の価値しかない。
その時、要塞の転移門から、地上の元王族たちの代表が、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして駆け込んできた。
「へ、陛下ぁぁぁ! お止めください! 我が国の伝統ある入り江が、ただの『直線』になってしまいました! 漁師たちが『どこまでが海でどこからが陸かわからない(境界線のアンチエイリアスが効きすぎている)』とパニックになっております!!」
「……え、だってその方が効率いいだろ? 船も真っ直ぐ進めるし。……あ、もしかして『角』が鋭すぎて危ないか? じゃあ【角を丸める】設定にしてやるよ」
「そういう問題ではございません!!」
カナタの「善意の編集」は、地上の住人たちにとって、予測不能なバグと神の奇跡が交互に降ってくる絶望的なアトラクションだった。
皇帝の初仕事。それは、世界地図を美しくデザインし直すという、人類史上もっとも「クリエイティブで身勝手な」地形破壊だった。
「……テツ、次はあの四角い海を『グラデーション』にしてみようぜ。夜になると発光する設定にしてさ」
『……カナタさん。地上の魚たちが、光害で眠れなくなる未来が見えますよ……』
【次回予告】
第46話:『全自動・天候エディット。~「毎日が日曜日(晴れ)だと、野菜が全部干物になる件」~』
「天気が悪いとテンションが下がる」という理由で、カナタが世界の天候を『快晴・彩度+50%』で固定!
雨が降らない世界で、人々は「恵みの雨」を求めて要塞にお供え物を捧げるが……。
「雨が欲しい? じゃあ『水滴のエフェクト』を適当に降らせてやるよ」
カナタが降らせたのは、一粒で家を貫通する「高密度の水データ」だった!?
【作者よりお願い】
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
3,000文字級のボリュームで、カナタの地形魔改造による世界規模の困惑を描きました。
もし「地形まで弄り出すカナタの無自覚さがヤバい!」「地上の人々の苦労が目に浮かぶw」と思っていただけましたら、
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