第42話:ゴミ捨て場から拾われた勇者。~「今日からお前は、この庭の自動芝刈り機だ」~
空中要塞のゴミ排出ポートから、文字通り「ポイ捨て」された勇者カイル。
かつては大陸最強、伝説の聖剣を手に数多の魔王軍を屠ってきた彼だったが、今のステータスはカナタの『初期化』により、HP10、攻撃力5、守備力3……文字通り「スライムにも負ける村人」へと成り下がっていた。
「……くっ、私は……私は、世界を救う勇者のはず……。それが、なぜこんな……名もなき草むらに……」
折れた聖剣(今はただの錆びた鉄くず)を杖代わりに、カイルが要塞の外縁部にある「空中庭園」で震えていた時。
頭上から、陽光を背負った美しくも冷酷な声が降り注いだ。
「あら、こんなところに『使い古しのオブジェクト』が落ちていますわ。……カナタ様が仰っていた『粗大ゴミ』とは、貴方のことでしたのね?」
リリアーヌ王女だった。
彼女は豪華なドレスの裾を揺らしながら、這いつくばるカイルを見下ろした。その瞳には、かつての戦友(カイルは勝手にそう思っていた)への慈悲など微塵もなく、ただ「新しいおもちゃを見つけた」という好奇心だけが輝いている。
「リリアーヌ様……! 助けてください、私はあの男に……!」
「助ける? 勘違いしないでくださいな。わたくしが興味があるのは、カナタ様に『初期化』された貴方が、どれだけの耐久テストに耐えられるか……それだけですわ」
リリアーヌが指をパチンと鳴らす。
すると、彼女の影からカナタのスキルによって『改造』された、自律型の魔法鎖が伸び、カイルの首と両手足を拘束した。
「な、何を……!?」
「今日から貴方は、この美しい庭園を整える『自動芝刈り機』兼『わたくしの足置き台』ですわ。勇者としての輝きは失われましたが、わたくしのペットとしての第二の人生を誇りに思いなさいな」
「……ふふ。リリアーヌ様、いい考えです。……そのゴミ、まだ『生命維持レイヤー』が繋がっていますから……死なない程度に、徹底的に使い倒せますよ」
背後から現れたのは、親指サイズの月の女王セレナを「肩車」させたルナだった。
セレナは自分よりさらに惨めな境遇になった勇者を見て、小さな声で「……同情するぞ、地上の勇者よ。ここの女たちは、全員が人の形をした『バグ』なのだ……」と震えながら呟いた。
「さあ、まずは庭の雑草を一本ずつ『手で』抜く作業から始めましょうか。もし一本でも根を残したら……カナタ様に頼んで、貴方の『痛覚設定』を300%に引き上げてもらいますからね?」
「……っ! ひ、ひぃぃぃ……!!」
カイルの絶叫が、美しく整えられた庭園に響き渡る。
一方で、リビングのソファで「新しいエフェクト」の微調整をしていたカナタは、モニター越しにその様子を眺めて、のんびりと呟いた。
「……お、リリアーヌのやつ、外の掃除も手伝ってくれてるのか。……あいつ、意外と面倒見がいいんだな」
『……カナタさん。あれ、どう見ても「教育」っていう名の拷問ですよ。……まあ、要塞の美観が保たれるなら、リソースの節約にはなりますけどね』
テツが呆れたようにログを流す。
カナタの「うっかり」が生んだカオスな日常。
伝説の勇者は今、かつての聖女と王女に見守られながら、涙を流して庭の芝を毟り続ける「動くインテリア」へと変貌していた。
【次回予告】
第43話:『勇者の逆襲(物理)。~「この芝刈り鎌、伝説の武器より切れるんですけど!?」~』
屈辱の労働を強いられるカイルだったが、リリアーヌから渡された「ただの鎌」が、実はカナタが『消しゴムツール』の端材で作った、因果を断ち切る究極の刃だった!?
意図せず世界最強の武器を手に入れたレベル1勇者。
「これなら、あの男を殺せる……!」
だが、その背後に「不純物を磨きに来た」セレスティアが立ち塞がり……。
【作者よりお願い】
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