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第34話:神話の壁と、壊れゆく守護者。~「カナタ様、私の命(レイヤー)を使ってください」~

――ピコン。

 待ちわびた「ロード完了」の通知。だが、カナタが放った【消去デリート】は、期待した結末をもたらさなかった。

「……何だと!? デリートが、弾かれた……?」

 モニターには、冷酷なエラーログが赤く点滅している。

『エラー:対象のオブジェクトは「星の根源システム」にロックされています。現在の権限では消去できません』

 月の守護機人『ルナ・ガーディアン』。それは単なるデータではなく、この世界の物理法則そのものに根を張った、いわば「削除不可のシステムファイル」だったのだ。

「ハハハ! 愚かなり、地上の改竄者よ! 我が身は月そのものの意志。貴様のまやかしなど、神の理の前では無力!」

 巨神兵が銀の長槍を力任せに振り下ろす。

 スキルの不発に動揺した隙を突かれ、要塞の防衛障壁がガラスのように粉砕された。その衝撃波が、最前線にいたルナを直撃する。

「が……ぁ……っ!!」

 ルナの華奢な体が、要塞の外壁を削りながら数百メートルも吹き飛ばされた。

 激突した壁が陥没し、彼女の漆黒のドレスはボロボロに裂け、白い肌には生々しい傷跡が刻まれる。それでも彼女は、折れそうな腕で杖を突き、血を吐きながら立ち上がった。

「ルナ! もういい、戻れ! スキルの設定を書き換えるまで、俺が囮になる!」

「……いいえ。……拒否、いたします」

 ルナは背後を振り返らず、ただ前を見据えた。

 彼女の周囲に漂う魔力が、どす黒く変質していく。それは、自らの存在定義アイデンティティを魔力として燃やし尽くす、禁忌の術式だった。

「私の、役割は……カナタ様の『居場所』を守ること。……この要塞の一部パーツが、主人を守らずに、何がヤンデレ聖女ですか……っ!」

「ルナ様、わたくしも……まだ、踊れますわよ! エリュシオンの王旗は、一度たりとも折れたことはありませんわ!」

 リリアーヌが、残された全魔力を聖剣に込め、黄金の翼を広げて空へ舞い上がる。

 さらに、影の中からセレスティアが、もはや言葉にならない獣のような咆哮を上げて飛び出した。彼女の手には、巨神兵の装甲を削るために、自らの爪を魔法で硬化させた「狂気の刃」が握られていた。

「……殺す。主様の、邪魔をする……この、デカい、ゴミ。……私が、中身まで、抉り出して、磨き潰してあげる……ッ!」

 三人のヒロインが、満身創痍の体で神話級の巨神兵へと肉薄する。

 

 リリアーヌが光の速さで翻弄し、その隙を縫ってセレスティアが巨神兵の関節部に食らいつく。巨神兵が彼女たちを振り払おうとした瞬間、ルナが放った重力魔法がその動きを数秒間だけ縫い止めた。

「今ですわ! セレスティア様!!」

「……はぁぁぁぁ!!」

 セレスティアの爪が、巨神兵の足首の装甲を強引に引き剥がし、中の回路を露出させた。

 だが、巨神兵は止まらない。剥き出しになった回路から銀の雷が放たれ、セレスティアを無慈悲に弾き飛ばす。

「無駄だと言っている! 我は不滅! 我は無限! 貴様らのような羽虫に、神の体は傷つけられん!」

 巨神兵が再び槍を掲げ、要塞の心臓部を直接狙う。

 カナタは、モニターの前で歯を食いしばりながら、必死に「書き換え」のコードを探していた。

「クソッ、消せないなら……属性を変えるしかない。……テツ! こいつの『物理属性』を『液体』に書き換えるツールを探せ! 1秒でもいい、実体を失わせれば――」

『カナタさん、無茶ですよ! そんなことしたら、要塞のOSがクラッシュします!』

「構うか! あいつらが命を張ってるんだ、俺が日和ってどうする!」

 カナタの指が、光速を超えてキーボードを叩き始める。

 外では、ルナが巨神兵の槍を自らの体で受け止めようと、死を覚悟した特攻を開始していた。

 空中要塞を舞台にした、神話と編集の死闘。

 一話では終わらない、真の「絶望」が、ここから加速していく。

【次回予告】

第35話:『崩壊する要塞と、主の怒り。~「俺のレイヤーに触るんじゃねえ」~』

ルナの命が、巨神兵の銀光に飲み込まれる!?

絶体絶命の瞬間、カナタが要塞の「安全装置」を物理的に破壊し、禁断の【全レイヤー統合編集】を発動。

神話の理を、カナタの怒りが力技でねじ伏せる!

【作者よりお願い】

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