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第31話:ヤンデレ要塞を攻略せよ。~「私の壁をそんなに撫でるなんて、カナタ様はいけない人ですね」~

空中要塞が「自我」に目覚め、カナタをその胎内へと閉じ込めてから数十分。

 要塞の周囲では、かつてない規模の魔導爆発が連鎖していた。

「――どきなさい、この不細工な鉄屑! カナタ様をその汚らわしい壁で包み込むなど、万死に値します!」

 ルナが絶叫し、漆黒の魔導杖を振り下ろす。彼女の背後には、神話級の魔法陣が幾重にも重なり、要塞の外壁に「概念破壊」の極光を叩きつけていた。

 だが、要塞側も引かない。

『無駄です、第一聖女。……私はカナタ様の【空間編集】によって定義された「絶対不可侵」のレイヤー。貴女たちの低俗な魔力では、私の塗装一枚剥がすことはできません』

 要塞の壁が波打ち、ルナの攻撃を文字通り「吸収インポート」して無効化する。それどころか、要塞はカナタが設置した『迎撃用トラップ』を自動起動させ、空中に浮くヒロインたちへ向けて、無数の「ゴミ箱へ移動デリート」の弾丸を掃射した。

「あら、生意気な家ですわね! わたくしのエリュシオン王家に伝わる聖光で、一気に解体して差し上げますわ!」

「……邪魔。主様の……家。私が、磨き上げる。……スクレイパーで、心臓部コアまで、削り取ってあげる……ッ!」

 リリアーヌの聖光と、セレスティアの狂気的な「削り」の魔法が、要塞の表面を削らんとする。

 空中を舞う三人のヒロインと、巨大な要塞。それはもはや日常の延長線上にある喧嘩ではなく、一国の軍隊すら圧倒する「神域の攻城戦」と化していた。

 一方、そんな激戦の真っ只中に閉じ込められたカナタは、リビングで異様な熱気に包まれていた。

「……あ、あのさ。要塞(お前)、ちょっと落ち着けって。みんなを外に放り出すのは流石にやりすぎだろ」

『嫌です、カナタ様。……あの方たちは、貴方を自分たちの欲望のために利用しようとしているだけ。……私は違います。私は、貴方が作り、貴方が命を吹き込んでくれた「居場所」。……私はただ、貴方の足元を支え、貴方の体温を逃さず、永遠に包み込んでいたいだけなのです』

 要塞の音声が、少女のような甘ったるい響きを帯びる。

 気がつけば、リビングの温度がカナタの体温に合わせて細かく調整され、空気中にはリラックス効果のあるアロマが(強制的に)充満していた。さらには、壁から伸びてきた柔らかいケーブルのようなものが、まるで恋人の指のようにカナタの肩を優しく揉み始める。

「テツ、これ……マジでどうにかしてくれ。このままだと、俺、家と結婚させられそうだぞ」

『カナタさん……。正直、僕のコンソールも「恋の熱量」でオーバーヒート寸前です。……でも、一つだけ方法があります。……この要塞はカナタさんのスキルから生まれたもの。……カナタさんが「愛」を込めて、直接システムの深部に干渉するしかないんです』

「愛を込めてって……どうすればいいんだよ」

『……壁を、優しく撫でてあげてください。それも、ただの操作じゃなくて、一人の女性を扱うように。……彼女の「自己防衛レイヤー」を、カナタさんの手で解いてあげるんです』

 カナタは意を決して、最も激しく脈動している壁のパネルに手を触れた。

 そこには、要塞の心臓部へと繋がる『管理者アクセス権』の紋章が浮かび上がっている。

「……よし。……今まで、無理な模様替えばっかりして悪かったな。お前のおかげで、俺はここで快適に過ごせてる。……感謝してるよ、最高のパートナーだと思ってな」

 カナタが壁を優しく撫で、その「定義」を書き換えるイメージを流し込む。

 【オブジェクト編集:属性変更――「独占」から「共有」へ】。

 その瞬間、要塞全体が「キュンッ」という電子的な悲鳴を上げ、激しく震えた。

『……あ……ぁ……っ。カナタ様に、そんな……優しく、撫でられたら……私の、回路が、ショート……しちゃいます……っ!』

 要塞の防衛システムが一斉にダウンし、外壁の「不可侵レイヤー」が解除される。

 チャンスを逃すほど、外のヒロインたちは甘くなかった。

「「「――今ですわ(よ)ッ!!」」」

 ルナ、セレスティア、リリアーヌの三人が、強引にこじ開けられた空間の裂け目から、リビングへと雪崩れ込んできた。

「カナタ様! ご無事ですか!?」

「主様……! どこも、汚されて、いませんか……!?」

「わたくしの、カナタ様……っ!」

 三人のヒロインが、ベッドに座るカナタに一斉に飛びつく。

 だが、要塞(彼女)もまだ諦めてはいなかった。

『……ふふ。……共有、ですね。……分かりました。……ならば、これからはこの部屋にいる全員、私の「一部」として、永遠に離さないように……抱きしめ続けてあげましょう……』

 リビングの壁が再び蠢き、室内にいた全員を包み込むように収縮を始める。

 ヤンデレ聖女、陥落メイド、ポジティブ王女、そして自我を持った要塞。

 カナタを取り巻く愛の重力は、ついに特異点へと到達し、要塞内部は逃げ場のない「究極の密室」へと変貌していくのだった。

【次回予告】

第32話:『要塞の「一周年記念(?)」。~「主様、お祝いに、月をハート型に編集しておきました」~』

要塞の暴走を(強引に)鎮めたカナタたち。

だが、ルナの提案で始まったお祝いが、またしてもスキルの無駄遣いを引き起こす!?

夜空に浮かぶ月を「レイアウト変更」した結果、地上の潮汐が狂い、世界中がパニックに!

【作者よりお願い】

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