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第27話:要塞の「入居希望者」が、ついに玄関を突破した件。~「今日からここで、同居させていただきますわ!」~

バグの怪物との死闘……という名の、凄惨な「大掃除」が終わった直後のことだった。

 空中要塞のメインエントランス。カナタが以前、何気なく「利便性のために」と作り直した、地上と要塞を繋ぐ『空間の裂け目(自動ドア)』が、予期せぬ熱量を発して激しく明滅し始めた。

「……ん? テツ、またバグか? それとも、セレスティアが掃除し残したゴミか?」

 リビングのソファで、戦い(掃除)の疲れも見せずにのんびりとお茶を飲んでいたカナタが、不審そうにモニターを覗き込む。

『いえ、カナタさん! 違います、これは……外部からの「強制接続」です! それも、解析不能なほどの膨大な魔力が、一点に集中して……あ、来るぞ!』

 テツが叫ぶと同時に、空間の裂け目が黄金の光を撒き散らしながら爆発的に広がった。

 そこから、一人の少女が、まるで宝石箱から飛び出したような華やかさを纏って姿を現した。

「やっと見つけましたわ! お父様の反対を押し切り、国宝の転移石を三つも壊して、ようやく辿り着きましたわよ、カナタ様!」

 現れたのは、隣国『エリュシオン王国』の第一王女、リリアーヌだった。

 かつてカナタが配信のテスト中に、偶然「デリート」されそうになっていたドラゴンから「ついで」に助けてしまった、世間知らずの、けれど行動力だけは神話級の王女である。

「……リリアーヌ? なんでお前がここに……というか、どうやって登ってきたんだ?」

「愛の力ですわ! それと、カナタ様が以前わたくしにくださった、この『要塞の座標が記されたサイン(実はただのテスト用メモ帳)』のおかげですわ!」

 彼女は誇らしげに、ボロボロになったメモ用紙を掲げた。

 だが、その再会の喜び(一方的なものだが)を、絶対零度の殺気が断ち切った。

「――カナタ様。この、光害のような騒がしい不法侵入者は、どの『隔離レイヤー』に封印すればよろしいでしょうか?」

 ルナが、いつの間にかリリアーヌの背後に立っていた。

 その瞳は、深淵よりも深く、どす黒い嫉妬の炎が静かに、けれど確実に燃え上がっている。彼女の放つ圧迫感に、リリアーヌが持ち込んだ黄金の光が、みるみるうちに霧散していく。

「あら、貴女……。以前の配信で見かけましたわ。確か、カナタ様の『世話焼きな置物メイド』でしたわね?」

「……『置物』、ですか。いいえ、私はカナタ様の唯一のレイヤーであり、彼の世界のルールそのものです。……そして、彼の世界に『不要なノイズ』が入り込むことは、私が許しません」

 ルナが杖を地面に突くと、エントランスの床から無数の黒い魔法陣が、リリアーヌを包囲するように展開される。

 だが、リリアーヌも引かなかった。彼女は王族特有の強力な加護を盾に、ルナの殺意を真っ向から受け止めた。

「あら、怖いですわね。でもわたくし、今日からここでカナタ様と同居すると決めてきましたの。お父様には『カナタ様の子供を授かるまで帰りません』と書き置きをしてきましたわ!」

「……子供、授かる……?」

 その言葉が、要塞内の空気を凍りつかせた。

 セレスティアが、ボロボロのメイド服を握りしめ、ガタガタと震えながら崩れ落ちる。

「主様の……こ、子供……? そんな、汚らわしい……主様の、純粋な、データを……そんな外部の、女が……っ!」

 セレスティアの瞳からも、知性が消え、ドロドロとした独占欲が漏れ出し始める。

 ルナの背後からは、もはや魔力という形すら保てなくなった「概念的な殺意」が、黒い霧となって溢れ出していた。

「……分かりました。リリアーヌ王女。貴女のその『覚悟』、私の手で……一から、丁寧に、粉砕デリートして差し上げましょう。セレスティア、貴女も手を貸しなさい。この不純物を、まずは『原子レベルの掃除』から始めますよ」

「は、はい……ルナ様。……磨き、ます。この女を、影も、形も、なくなるまで……ッ!」

 二人のヤンデレ聖女が、共通の敵(?)を前に、一時的な共闘体制を組む。

 リリアーヌは「望むところですわ!」と聖光を放ち、要塞のリビングは、今や一国の王女を「徹底洗浄」しようとする地獄の宴会場へと変貌しようとしていた。

「……なあテツ。あいつら、仲良く掃除する気になったのか?」

『……カナタさん。それは「仲良く」じゃなくて「共同処刑」って言うんですよ。……というか、今の発言で要塞の結界強度が三倍に跳ね上がりました。……逃げ場、ないですよこれ』

 カナタの「うっかり」が生み出した新たな火種は、空中要塞という密室の中で、かつてないほどの修羅場を巻き起こしていく。

【次回予告】

第28話:『王女様の「花嫁修行」。~「ルナ様、この雑巾がけは、わたくしの肌を美しくするためのエステですの?」~』

ルナとセレスティアによる、殺意満載の「新人教育」!

だが、リリアーヌ王女の異常なポジティブ思考が、二人のヤンデレをさらに逆撫でする!?

さらに、カナタが「お詫び」に作った新しい料理が、さらなる争奪戦を引き起こし……。

【作者よりお願い】

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