第22話:滅ぼされた帝国の生き残り聖女。~「復讐しに来たら、別のヤンデレ聖女(ルナ)に調教されました」~
【次回予告】
第23話:『聖女の再教育。~「バッテリー兼メイドとして、一生カナタ様を支えなさい」~』
ルナによる徹底的な「メイド教育」が始まる!
誇り高き帝国の聖女が、フリフリの衣装を着せられて掃除に明け暮れることに……。
さらに、カナタのスキルが「概念」にまで干渉し始める!?
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「お部屋の模様替え」という、あまりにも些細で、あまりにも個人的な理由によって、地上最強を誇ったゼノス帝国が地図から消滅してから数時間が経過した。
空中要塞の周囲には、未だに巻き上がった土埃と、消失した空間の後に生じた真空を埋めるための暴風が吹き荒れている。
だが、その嵐の中を、一筋の清浄な光が切り裂いて進んでいた。
「……許さない。お父様も、騎士団の皆も、私たちの誇り高き帝都も……。あんな、ふざけた男の気まぐれで消されていいはずがないわ……!」
光の中にいたのは、帝国の第二皇女にして、大陸屈指の回復魔法の使い手である聖女セレスティアだった。
彼女は帝都消滅の瞬間、偶然にも国境の視察に出ていたため難を逃れた、唯一の王族である。
彼女の背中には、折れそうなほど細い体に不釣り合いな、神話級の聖剣が握られていた。
「必ず……。この手で、あの悪魔を討つ!」
セレスティアは決死の覚悟で、空中要塞の外壁へと降り立った。
本来ならルナの張った神話級結界に阻まれるはずだったが、復讐心によって限界を超えた彼女の魔力が、一時的に結界の網目を潜り抜けるという奇跡を起こしたのだ。
だが、その奇跡が、彼女にとって最大の不運だった。
「……あら? 珍しい。お掃除しきれなかったゴミが、自ら袋の中に飛び込んでくるなんて」
要塞の広大なエントランスホール。そこには、セレスティアが「悪魔」と呼ぶ男……ではなく、一人の少女が立っていた。
銀髪を揺らし、一切の感情を排した瞳でセレスティアを見下ろすのは、第一聖女ルナ。
「貴女ね……! この要塞の主の仲間は! どきなさい、私はその男に用があるの!」
セレスティアが聖剣を構え、神聖な魔力を爆発させる。
対するルナは、杖を構えることすらしない。ただ、不快そうに眉をひそめただけだ。
「カナタ様は今、模様替えで疲れてお休みになられています。……声を荒げないでいただけますか? 静寂こそが、今の彼に必要な贈り物なのです」
「何を言っているの!? 貴女たちは何万人という人を殺したのよ!?」
「殺した? ……心外ですね。カナタ様はただ、画面上の『不要なレイヤー』を整理されただけです。貴女たちの存在が、カナタ様の描く理想のレイアウトに干渉していた。……それが、消滅の理由。それ以上でも、以下でもありません」
ルナの言葉に、セレスティアの全身に戦慄が走った。
目の前の少女には、善悪の概念がない。ただ「カナタ」という男の利便性と幸福だけが、彼女の正義のすべてなのだ。
「狂っているわ……。貴女も、その男も! 聖剣よ、邪悪を討て!」
セレスティアが踏み込み、音速を超える一撃を放つ。
しかし、その刃がルナの喉元に届く寸前、空間が「バグ」を起こしたように歪んだ。
「【空間編集:レイヤーロック】。……カナタ様のいない場所での暴力は、私の許可なしには成立しません」
ルナが指先で空中に円を描くと、セレスティアの聖剣はまるで「透明な壁」に遮られたようにピタリと止まった。それどころか、彼女の足元から無数の魔法の鎖が這い出し、その肢体を無慈悲に拘束していく。
「あ、が……っ!? な、何これ……魔力が、吸い取られる……!?」
「カナタ様を狙う不届き者には、死すら生ぬるい。……ちょうど、要塞の雑用係が足りないと思っていたところです。貴女のその『聖女の魔力』、この要塞の全自動掃除機のバッテリーとして再利用してあげましょう」
ルナは、絶望に顔を歪めるセレスティアの顎を、冷たい指先で掬い上げた。
「大丈夫です。カナタ様は、貴女のようなゴミには興味を持ちませんから。……貴女が、自分が道具であると理解するまで、私がじっくりと『教育』して差し上げます」
その光景は、もはや聖女同士の戦いなどではなかった。
絶対的な捕食者が、迷い込んだ獲物を解体していくような、一方的な蹂躙。
要塞の主であるカナタが、リビングでテツと「次は何を配信しようか」と呑気に話し合っている裏で、帝国の生き残り聖女は、ヤンデレ聖女ルナによる終わりなき地獄のルーチンワークへと組み込まれていくのだった。




