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第21話:要塞の隠し機能を解放。~「部屋のレイアウトを変えるついでに、敵国の首都を消しちゃいました」~

空中要塞へと進化した俺の自宅だが、一つだけ切実な問題に直面していた。

 急ごしらえで世界各地の空間をパッチワークのように繋ぎ合わせたせいで、内装のレイアウトが生活動線を完全に無視した支離滅裂なものになっていたのだ。

「……リビングの扉を開けたら、いきなりケルベロスの寝床(深淵の森)っていうのは、いくらなんでも設計ミスだろ」

 俺はテツが徹夜で組み上げた、脳波リンク型の次世代編集ゴーグルを装着した。

 視界には、要塞全体を俯瞰する半透明の3Dモデルが展開される。それはもはや、一個人の住居の図面などではない。一つの「国」、あるいは「世界」を編集するための、神の設計図そのものだった。

「カナタ様、模様替えですか? でしたら、私の寝室はカナタ様の部屋の『内側』に配置してください。物理的な壁なんて、今の私たちには不要でしょう?」

 ルナが背後から俺の首筋に鼻先を寄せ、熱を帯びた吐息を漏らす。

 彼女の瞳には、この巨大な閉鎖空間で俺を独占できることへの狂気的な歓喜が渦巻いていた。

「……いや、普通に使いやすくするだけだ。テツ、要塞の『背景レイヤー』を一時的に透過してくれ。位置関係を確認しながら動かしたい」

『了解です、カナタさん! 座標軸を全開放します。……ただし、今のあなたの出力だと、編集の「選択範囲」が要塞の外側の空間まで干渉しちゃう可能性があるんで、慎重に操作してくださいね!』

 テツの忠告を軽く聞き流し、俺は空間のシークバーを操作した。

 脳内イメージは、動画編集ソフトで重たいレイヤーをドラッグ&ドロップする、あの慣れ親しんだ感覚だ。

「よし、まずこの『森のレイヤー』を左へ1000メートルほどスライドして……。空いたスペースに、さっき拾ってきた『聖なる泉』をペーストする。不透明度は100%でいいな」

 その瞬間、要塞全体が激しく震動した。

 だが、震えていたのは俺の家だけではなかった。

 ――同時刻。要塞の遥か下方、地上最強の軍事大国『ゼノス帝国』。

 そこでは、突如として空に現れた空中要塞を「国家に対する宣戦布告」と見なし、数千の魔導騎士団と最新鋭の浮遊艦隊が集結していた。

「愚かな個人め。空に浮いた程度で神にでもなったつもりか!」

 帝国将軍ゼオは、黄金の甲冑に身を包み、傲慢な笑みを浮かべていた。

 彼らの背後には、数百年の無敗を誇る帝都『グランゼノス』がそびえ立ち、全方位魔導砲が空中要塞をロックオンしている。

「全艦隊、最大出力! あの不遜な浮遊物を、塵一つ残さず消し去――」

 将軍が剣を振り上げた、その刹那。

 彼らの頭上の空が、まるで「紙」のように真っ二つに裂け、巨大な手によって横にスライドさせられた。

「……は? 空が、動いている……?」

 将軍が呆然と見上げる中、俺が要塞のレイアウトを変えるために指定した「空間の選択範囲」が、地上にまで容赦なく干渉していた。

 

 俺が「邪魔な障害物」だと思って『カット』した座標には、偶然にも帝国の難攻不落と呼ばれた要塞都市が存在していた。

 俺が「ここに泉を置こう」と『ペースト』した座標には、帝国の首都が位置していた。

 結果は、あまりにも一方的だった。

 

 帝国の誇る最強の騎士団は、俺が「いらない背景」としてゴミ箱へスワイプした瞬間に、存在そのものが世界から抹消された。

 断末魔すら上げる暇もなく、数万の生命が「デリート」されたのだ。

 さらに、豪華絢爛な帝都のど真ん中に、突如として「神話級の巨大な泉」が空から降ってきた。物理法則を無視した数億トンの質量が、一瞬にして帝国800年の歴史を飲み込んでいく。

「……あ、今の操作、ちょっと手応え(クリック感)があったな。テツ、今の何だ?」

『カナタさん! 大変です! 今、模様替えのついでに、帝国の主力軍隊を「デリート」しましたよね!? 配信のコメント欄がバグり散らかしてますよ!!』

「……え? 嘘だろ。ただ家具を動かしただけだぞ?」

 俺がモニターを確認すると、そこには阿鼻叫喚の帝国跡地が映し出されていた。

『【速報】ゼノス帝国、お部屋の模様替えに巻き込まれ滅亡』

『今の見たか!? 魔法じゃねえ、空そのものを掴んで横にズラしやがった!』

『将軍のドヤ顔がスワイプ一つで消えたんだがwwwww』

『これが神の視点エディットかよ……』

 世界中のライバーや視聴者が、帝国の消滅を見て悲鳴と歓喜を上げている。

 かつて世界最強を誇った軍勢は、俺の「日常の些細な作業」の犠牲となり、戦うことすら許されずに歴史からログアウトさせられたのだ。

「ふふ、さすがはカナタ様。邪魔なお掃除を済まされたのですね。これで、私たちの夜を邪魔する者はいなくなりました」

 ルナは、消え去った数万の命など最初から存在しなかったかのように、幸せそうに俺の腕に頬を寄せた。

 

「……まあ、部屋が広くなったのはいいことか」

 俺は画面を閉じ、新しく配置された泉のせせらぎに耳を傾けた。

 俺の意図しない「うっかり無双」は、ついに一国家の存亡すら、マウス操作一つで決定する領域へと到達してしまった。

【次回予告】

第22話:『滅ぼされた帝国の生き残り聖女。~「復讐しに来たら、別のヤンデレ聖女ルナに調教されました」~』

帝国唯一の生存者である「第二聖女」が要塞に乗り込んでくる!

だが、そこで待っていたのは、格の違いすぎる本物の狂気ルナによる地獄の教育だった……。

【作者よりお願い】

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