第20話:世界中からのスカウト。~「俺の家に来たい? じゃあ入居審査(デスゲーム)を始めようか」~
空中に浮かぶ鋼鉄の要塞。その周囲には、およそ高度数千メートルには存在するはずのない「緑」が広がっている。
俺は【空間編集】の機能を使い、世界各地の絶景ポイントを『範囲選択』しては、この要塞の外周レイヤーとして次々に『貼り付け(ペースト)』していったのだ。
結果として、要塞のベランダを一歩出れば、そこには地平線まで続く広大な芝生と、どこからか切り取ってきた清流、さらにはS級魔獣が駆け回るための深い森までが、パッチワークのように空中に固定されている。
「物理法則? そんなものは後で『編集』して消せばいい」
俺はリビングのソファに深く沈み込み、窓の外で雲海を背景に昼寝をするケルベロスを眺めながら呟いた。
だが、この世のものとは思えない光景が広がっているのは、要塞の内部だけではない。
窓の外を見下ろせば、各国の軍用ヘリや、金銀財宝を積み込んだ巨大な輸送船が、目に見えない結界の境界線ギリギリまで押し寄せ、蟻の群れのようにひしめき合っていた。
「……すごい数だな。ジーク、外の連中の様子はどうなってる?」
俺の問いに、要塞の唯一の入り口(空間の裂け目)で門番をしていたジークが、震える声で通信を入れてくる。
『兄貴、とんでもないことになってますよ! 「国賓として迎えたい」と叫ぶ大統領やら、「娘を嫁に差し出すから入居させろ」と喚く大富豪やら……。世界中の権力者が、兄貴の【空間編集】がもたらす「絶対安全な土地」を求めて殺到しています!』
ジークの背後からは、拡声器で必死に勧誘の言葉を叫ぶ外交官たちの声が、風に乗って微かに漏れ聞こえてくる。
だが、そんな喧騒を嘲笑うように、リビングに冷たくて甘い声が響いた。
「ふふ、騒がしいですね。カナタ様の安眠を妨げる羽虫たちが、これほどまでに集まるとは……」
ルナが俺の背後に忍び寄り、その華奢な腕を首に回してきた。
彼女の瞳は、昨日よりもさらに深い、底なしの執着を湛えている。二人きりの新居を汚す不純物どもへの殺意が、隠しきれずに溢れ出していた。
「ルナ、彼らも必死なんだ。……まあ、俺も赤の他人を入れるつもりはないけどな」
「ええ、分かっています。ですから、私が『入居審査』を行っておきました。カナタ様の手を汚す必要はありません。……あ、もう始まっていますよ?」
ルナが指を鳴らすと、テツのホログラムモニターに要塞の外縁部が映し出された。
そこには、俺の許可なく『空間の継ぎ目』を突破しようとした武装集団が、先ほど庭に配置したケルベロスと対峙……いや、一方的に弄ばれている惨状が映っていた。
「ひ、ひいぃっ!? 攻撃が……攻撃がすべて背後の海に『コピペ』されて自分たちに跳ね返ってくるぞ!?」
「助けてくれ! 空間が……歪んで……ぐあああぁぁ!!」
画面越しに聞こえる悲鳴。
ルナは、俺のスキルを要塞の防衛システムとして自動化し、侵入者を文字通り「ゴミ箱へ移動」させていた。
「カナタ様、これが私の考える『審査』です。……私の愛の重さに耐えられない脆弱な魂は、この要塞の土になる資格すらありませんから」
ルナの微笑みは、世界で最も美しく、そして最も残酷だった。
俺の「自宅ギルド」は、もはや誰も立ち入ることのできない、不可侵の神域へと変貌を遂げようとしていた。
【次回予告】
第21話:『要塞の隠し機能を解放。~「部屋のレイアウトを変えるついでに、敵国の首都を消しちゃいました」~』
ルナの暴走が止まらない!?
要塞の模様替えをしていたはずが、なぜか世界地図まで書き換わってしまう……。
「うっかり」では済まない、次元の違う無双が炸裂します!
【作者よりお願い】
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