第15話:『結界を破る不審者。~「ルナさんの結界、お菓子を食べながら通り抜けちゃいました」~』
その日は、異様な静寂から始まった。
ルナが俺の部屋に張り巡らせた、物理・魔法・概念のすべてを遮断するはずの『神話級結界』。
その内側に、**「パリッ、ボリボリ」**という、緊張感の欠片もない音が響いたのだ。
「……あ、これ美味しい。カナタさん、このポテチどこのですか?」
ソファに座り、俺の食べかけのポテトチップスを勝手に頬張っているのは、ぶかぶかのパーカーを着た見知らぬ少女だった。
「なっ……!? 誰だお前! なんでここに入れたんだ!?」
ジークが慌てて剣を抜こうとするが、少女は眠たげな目で彼を一瞥する。
「あ、世界1位(笑)の人だ。動かない方がいいですよ。あなたの足元、すでに『透過』設定にしてありますから」
直後、ジークの足が床を突き抜け、下半身が畳に埋まった。
「……は!? 抜けない! なんだこのスキル!?」
「――死にたいのですか、泥棒猫」
部屋の温度が氷点下まで下がった。
奥から現れたルナの背後には、巨大な魔法陣が幾重にも展開されている。彼女の瞳は、これまでにないほど冷酷な殺意を宿していた。
「私の結界を無断で通り抜け、カナタ様の隣に座る……。その万死に値する罪、魂ごと消し飛ばして償わせます」
「怖い怖い。……でもルナさん、あなたのスキルは『干渉』でしょ? 私の【存在透過】には、どんな攻撃も当たらないよ」
少女が指を鳴らすと、ルナが放った極大魔法が彼女の体をすり抜け、背後の壁(というかテツが作った機械)を直撃した。
「やめてください! 僕の演算器が!」とテツが悲鳴を上げる。
「待て、ルナ!」
俺は二人の間に割って入った。
「君、名前は? 目的は何だ」
「……あ、自己紹介忘れてた。私はネム。世界中のあらゆる場所に『許可なくお邪魔する』のが仕事の……まあ、潜入のプロ、かな」
ネムと名乗った少女は、俺の【空間編集】に興味を持ってやってきたという。
彼女の「あらゆる干渉を透過する」能力があれば、俺が画面越しに『編集』できないような特殊な聖域や、物理的に孤立した場所の映像も手に入る。
こうして、嫉妬に狂うルナと、畳に埋まったジーク、泣いているテツ。
そして新たに加わった「最強のスカウト」ネム。
俺の自宅ギルドは、さらに混沌とした、けれど最強の組織へと脱皮し始めていた。
【次回予告】
第16話:『最強の目と最強の指(編集)。~封印された神の遺物を、部屋にいながら略奪します~』
ネムが持ち込んだ「絶対に開かないはずの扉」の情報。
カナタの【空間編集】とネムの【存在透過】が合わさった時、世界の歴史が書き換わる!
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