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暇だから言ってみた。「光あれ」  作者: アインソフ
快走・迷走・暴走
41/54

足枷

「-だそうだ」


フェリデリア王宮、大臣会議。

早朝から王都の上空に現れ、非常事態を起こしていたあの空飛ぶ島-浮遊大地が、何もせず滞空しているだけで、しばらくしてどこかに移動し始めたという報告を聞いて、一安心しながらもその行方を追うように命令を出そうとしていた大臣たちは、その報告の後を追うように戻ってきた王と軍務大臣から事の顛末を伝え聞いて、呆れ果ててもうどうなってもいいや状態になっていた。


「破天荒だとは思っておったがのう…」


「あんな物を、得体のしれない誰かに『贈ってもらった』?

 それが、説明になると思うのですかな、あの方は?」


「気持ちは察するが、余にいっても困るぞ、内務大臣?」


「いいえ、決して陛下に不満をいっているわけでは」


「わかっている。

 しかしな…大した御仁だと思わないか?王父卿は」


「大変の間違いなのでは?」


宰相のツッコミに、他の大臣たちが頷いて同意する気持ちを示しているのを見た王が、苦笑した。

彼らがそう考えるのはも無理ではない。いや、むしろ当たり前かもしれない。

異世界からいきなり舞い降りて(?)は、不思議な力を振り回して、利益でそれぞれの大臣たちを落とすと思ったら、確執のあった軍務大臣とはなにがあったか、『友達』と呼び合う仲になったあげく、あのような『自分でも知らない』相手からの、自然法則に真正面から喧嘩を売るような物を贈られる…


「…普通に考えたら、結構怪しい人物だな?」


「今更気づかれましたか?」


そう答える宰相は、目の前にいるのが王でなければ『アホぬかせ』と言い出そうな顔をしているが、王はそんなことは別に気にしていなかった。


「宰相、そういう割にはそなたも王父卿のことをあまり警戒してはいないようだが」


「あれに、おっと、失敬。王父卿に、よからぬ企みがあるとは思えませぬな。

 悪ガキのように悪戯はできても、少なくとも陛下が王としてあらせられるこの国に、あだなすことはしないと、そう思います。

 そう思うのは、わし一人じゃありますまいな」


宰相のその言葉を聞いて、もうセレステに心酔している法務と財務はうん、うんと頷いていて、内務は宰相のいうことに賛成するのが不服の様ではあるだけで同意しているようで、商工と外務も彼から自分たちの業務に役に立ちそうなところを見出しているからこちらから敵対する気はない、という雰囲気だった。


そして、最後まで彼のことを警戒していた軍務大臣はというと…


「ダーちゃん、か…」


「…陛下、それはあいつの戯言ですから何卒…」


「いや、二人の仲がいいのは大いに結構だと思うが?

 そのうち、そなたも彼の力に頼ることがあると思う」


「それはそうですが…」


「もうよい、本論に戻ろう。

 あの『浮遊大地』のことは、どう対処するべきか、だ。

 まず内務大臣、王都中の民心の安定と慰撫は、計画しているか?」


「は、現在布告と触れ回りの支度を進めております。

 お触れの内容に関しましては…」


「あるがままを言うがいい。

 あんなもの、隠せるはずもなかろう。

 余計な疑いを買う必要はない」


「承知いたしました」


「それに外務、そなたもだ。

 外国にまで知らせる必要はないと思うが、すでに大使たちが認知しているだろう?」


「はっ。あれはなんだ、王都は大丈夫なのかなど、矢継ぎ早に質問が入ってきております。

 会議が終わったら、大使たちを集めて公表する予定にございます。

 …事実はどうであれ、あれが我が国の物と聞いた時の大使の連中の顔が、目に浮かびますな。クック」


「…あ、ああ。

 ほどほどに、な?」


いかにも悪人面の外務大臣が何をするか気にならないわけでもないが、結果的に仕事はちゃんとこなせてくれる彼のことを、王は信じることにした。


「そして、だ。

 さっき外務大臣も言ったが、あれを『我が国の国土』と宣言するには、問題はないか?」


「は、確か、王国法第3条、『王命の届く限りの大地とそれに付属する島々』となっておりますゆえ、あれが『大地』で、陛下の臣民であるレギス・セレステの所有物なら、王国法と、それを認める近隣諸国の法によって、我が国の領土と宣言してなんの問題もございません」


法務大臣の説明を聞いた王の口元に、満足そうな笑みが浮かび、ちょい悪の表情に変わった。


「それでだ。

 余はあれを、王父卿に『下賜』しようと思う」


すでに『誰かがセレステに贈った物』なのに何の話…と思われそうな発言だが、この場にいる大臣たちはすぐその意味を理解した。


「それは…ご名案ですな」


「そういえば、王父卿の領地が、まだでしたね」


「屋敷の管理だけでいっぱいだと泣き声をだしていたけどな、あれは嘘だ。

 面倒くさいから、責任を取ることは減らしたいだけだろうけど…

 国土の中に、『自分の土地』を持つことになったからには逃がしはしないぞ」


「陛下…悪人面になっておりますぞ?」


「いやいや、宰相ほどでは」


「ほっほっほ」


なんか楽しそうな(?)二人を見ながら、外務大臣が言い出した。


「その件に関しまして、私からも申し上げたいことが」


「なにか?」


「空に浮いていて、レギス・セレステの意思によってどこへでも移動できる島なら…

 れっきとした、我が国の『国境線』とみてもよろしいのではありませんか」


「空との国境線?」


「それもありますが…『国境線付近に移動する』こともできるでしょう」


「ないとは限れないな」


「ゆえに、王父卿にはマルクの位を授けることもできるのでは、と存じます」


フェリデリアの貴族の位の中、最高位はレギスである。

これは王家の血族、もしくはそれに準ずる地位を持つ貴族に与えられる位で、その中、王の直系にはさらに『バシ』という修飾語が付く。今セレステが持っているのがこの『レギス・バシ』であり、この会議に出席している宰相と内務大臣もレギスの位を持っている。

その下に来るのが大領主の『コミス』で、内務と軍務以外の4大臣と大臣に相当する地位の魔術師長がこの位を持っている。

軍務大臣であるダーハラトだけが『マルク』を持っているが、これは格としてはコミスと同格だが、『国境領地の領主』として、有事時に軍隊を動員できる資格を持っている領主のことである。ダーハラトの場合、中央貴族ではあるが、国の軍務を総括する職位であるゆえ、マルクの位を持っているのだ。


いま外務大臣は、セレステにその『マルク』を位を授けることを進言している。


「王父卿に、軍務の才能があるとは、とても思えんが…」


「いいえ、そこまで重荷を担がせる気はありません。

 ただ、あの浮遊大地に偶然にも、『兵力が乗り合わせて』おり、『戦闘区域まで移動する』ことが、あるかもしれないという、単なる『仮定』の話にすぎません。

 いかがでしょう、マルク・メンゲン?」


いきなり呼ばれたダーハラトは、少々不機嫌な顔をしていた。


「確かに、軍事運用面では魅力的な話だ。

 しかし、彼の意思も問わずに、こちらの都合で勝手に進めていい話とは思えませんな」


「もちろん、レギス・セレステの意向も、確認しなければならないでしょう。

 でも、これは王父卿のためでもあります。

 現在、レギス・バシの位をお持ちではありますが…あれは、あくまでも名誉だけの位でしょう。領地もなければ、貴族を名乗る根拠も、陛下の家族宣言だけ。

 大変も申し上げにくい話ではありますが、それでは権威が足りません。

 得体も知れない異界人ごときが、と思う貴族もいるでしょう」


苦い沈黙が会議室に流れる。

実際にあんな態度を見せたら、それは王権への挑戦と取られるから、あんな気持ちを露にすることはまずないだろう。

だが、心の中でああいう風に考えて、彼のこと蔑んでいる者が、いないとは限れない。


「だからこそ、レギス・セレステにも実権のある職位が必要だ、と言っているのです。

 陛下の気まぐれで位を得た、お飾り貴族様ではなく、ですね」


「それは…」


こちらの都合で親友を利用する気がして、気が進めなかったダーハラトとしても、否めない正論だった。


「確かに…

 余の権威に挑戦する者など、許すものか…

 と言いたいところだが、現実というやつはな。

 外務大臣の話は、よく聞いた。

 他の意見は?」


「商工大臣として、申し上げます。

 これから行わんとする専売事業のためにも、レギス・セレステに確固たる実権がある方が役に立つかと、存じます。

 もちろん、既にレギス・バシというこの上ない名誉と権威を持ってはいますが、利権の話となると自制心を失う輩も出てくるはず…

 ゆえに、あの島の存在と、王国にとってのその貢献性を公にし、レギス・セレステがどのような力を持つお方なのか、とくと知らしめる必要があると存じます」


商工大臣の発言に、財務大臣も相槌を打った。


「その通りでございます。

 財務大臣である私としても、レギス・セレステに力を持たせてあげるのは、必然かと。

 あの方と、その専売事業が国庫にもたらしてくれる巨万の富は、必ず守り抜かねばなりません。不届き者共の邪魔など、許せるものではございません」


6大臣の中、3人が、図らずともグルになっているような状況。

軍務大臣のダーハラトとしてはセレステのことを考えて躊躇ってはいるが、兵力運用の自由度が上がるという面では喉から手が出そうな話ではある。


残る法務と内務はというと…


「王国法に、複数の位を持つことを禁じる条項はありません。

 私も賛成します」


「それだけ?」


「それ以上に何か理由が必要ですか?」


内務大臣の質問に、きっぱり言い切る法務大臣。

セレステ信奉者1号として、彼の利益(?)になることなら反対する気はないようだった。


「やれやれ、これでは、6大臣の中4人がグルになっているような状況ではないか。

 いや、軍務大臣もまんざらではないようだし…

 陛下、私としても悪い話ではないと存じます」


「ほう、内務もか?」


「はい。

 外務大臣も申し上げましたが、レギス・セレステには名誉以外にも、実権を与える必要があります。

 そのためにはまず、基盤となる領地が要りますが、これが…

 隣接した領地との軋轢とか、悩みの種になりかねません。

 そんなところにどことも隣接しない領地が飛んできてくれて、それが国境線にもなりうる全天候型となると…うってつけの話でしょう」

 

「ほほお…

 では、6大臣全員が同意したと思ってよいな?」


「ははっ」


「宰相はどうだ?」


「あの悪ガキ…コホン、破天荒には荷が重すぎるのでは…とは思いますが、逆に思うといい足枷になってくれるのでは、と思いますじゃ。

 小臣も、反対はしませんぞ」


宰相の返答を聞いた王の顔に、笑いが広がる。


「皆の意見は、よく聞いた。

 7人の意見がここまで一致したことも、稀であるな。

 よい!皆の進言を受け取り、あれをレギス・セレステの封土として下賜し、彼にマルクの位を授けよう。

 内務と法務は、直ちに準備にかかるがいい。

 レギス・セレステが気づいたら逃げ出そうとするから、既定事実にしておくのだ!」


「ははっ!」


              ***


「ハクション!」


島のブリッジにいたセレステが、いきなりくしゃみをした。


「マイロード、お体でも召されましたか?」


「うん?いや、風邪ではなさそうだよ。

 …誰か、私の悪口でもしているのかな?」


「それでそれで!

 その『次元』の話をもっと詳しく!」


新しい知識の前に、うきうきしているナイランだった。


昨日ほどではありませんが今日もまた、更新が遅くなってしまいました。


読んでくださっている読者の皆様に、お詫び申し上げます。


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