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暇だから言ってみた。「光あれ」  作者: アインソフ
快走・迷走・暴走
39/56

上に参ります

「さて、これは地上に送っといて…

 ナイラン殿!あんまり弄らないでくださいよ、危険だから!」


ドローンを回収して、ゲートで地上に送っておいて、セレステたち二人は『島』

を調査し続けた。

『調査』とはいえ、何もない草原と野原を延々と歩き続けるだけだったが…


「おかしいな。水源があり、植物もふんだんに生えているのに動物は見えない」


「そういえば…植物が繁殖しているから、昆虫ぐらいはいると思うが…」


それからしばらく歩き回っても、これといった変わったところは見つからず拍子抜けしていた二人の視野に、小さい山、というか丘のような地形が入ってきて、二人はそこに向かった。歩くこと10分ぐらいで到着したから、最初に上陸(?)したところから1kmはあるようだと、セレステは感じた。


「普通の丘だと思ったけど、これ…」


「何かの遺跡…か」


遠くからはただの丘のように見えていたそれは、近くで見たら石を積み上げた建物―強いていえばピラミッドに土と植物が覆われているようなもので、植物の生え具合から結構長い年月を手入れされず放置されていたことがわかる風景だった。

どこか入り口はないのかその周りを探っていた二人は、扉のような石の構造物を見つけた。


「扉のようには見えるけど…これも、動いた型跡は見えないな?」


「葛で覆われているから、誰かが出入りしたと言ってもここからではないな」


「みたいな…」


と言いながらセレステが石の扉(の様なもの)に手を触れた時だった。


-ググググ


重そうな振動音が鳴り始めた途端、ダーハラトがセレステを抱えて後ろに飛んだ。


「うわ、何すー」


「無闇に触れるなバカ!」


セレステを庇うように前に出たダーハラトの視野に入ったのは、小刻みに振動していた石の構造物から上を覆っていた土や植物、いや、ひいては石のように見えていた外壁までもが崩れ落ち、その中から何か奇妙な形の建物のようなものが聳え始めた。


「正体を現したか!」


「え、本当?」


振動が終わりそこに現れたのは、窓のない縦長の塔の上に、四方がガラス張りになっている、ラグビーボールみたいな構造物が載ってある、かろうじて建物と呼べるような物だった。


「…展望タワー?」


「監視塔…の類か?」


それぞれ思わず口から出した言葉に、二人は互いに視線を交わした。


「まあ、どっちにしろ視野を確保するための物に違いないようだが…

 何のために?」


「さあ…

 空中戦艦のブリッジ?」


「なんだそれは」


「あ…

 この世界でも、大型船舶はあるんだろ?

 その船橋…航行管制所と言うか、操縦室?があるじゃないか。

 地球の空想科学では『宇宙を飛ぶ戦艦』がいて、あれの船橋…ブリッジがだいたいあんな形態を……」


「まさか、この『島』がその戦艦とでも…

 いや、もし本当だったら一大事ではないか。

 やはり、王城攻撃を目的に送られた物だと?」


『戦艦』と聞いたダーハラトがこう反応したのは、軍務大臣と言う彼の立場から考えれば当たり前なことだ。誰のものかわからない『戦艦』が、空を飛んで王都の上空に迫ってきていると言うことは、国防崩壊も同然なことでもあるからだ。

しかし、セレステはそうは思わなかった。


「いや、あくまでも例えのことだ。

 そして、本当にこれが戦艦なら、こんなに長閑な風景をしているはずがないだろう?

 それに下の形態だって、戦争兵器にしては非効率的な形だよ。

 あんな凸凹の岩盤丸出しの形態じゃ、どこかに着陸することも、接舷することもままならなそうではないか?

 まあ、こんなデカブツを収容できる施設があったら、の話だけど」


SFの知識でそれらしいごたくを並べるセレステだったが、聞いているダーハラトとしてはそれが妙に理にかなっているように聞こえた。


「それもそうか…」

 

「それにね、もしこれが攻撃目的で送られてきたものなら…

 私たちが上陸するまで、大人しく待ってくれているはずがないだろう?」


「…確かに」


「まあ、この世界の技術ではできる芸当じゃないよね?こんなものを空に浮かせ、

 コントロールして武器化するなど」


「ああ。少なくともフーマニタにはできない」


『だから、これはこの世界のものではない。

まさか、マ○ロスみたいにブービートラップとか…』


セレステはそう考えた。

だが、言葉にはしない。

余計なことで不安を大きくしたくなかったからだ。


もしかして、私のようにトゥシタの外の世界、宇宙から来たもの?

だがそれでは、この緑の野原が説明できない。

結構昔にトゥシタの大気圏に突入して、何かの力で空中に止まったまま安定して、風に吹かれてきた種が発芽して、この草原になった?

それでは、今まで観察報告がなかったのが成立しない。


「まさにUFO…いや、未確認異常現象《UAP》か…」


「なんだそれは」


「いや、気にしないでくれ。

 とにかく、私たちに敵意はないか、少なくとも敵意を持つ存在はいないようだから…

 近づいてみようか」


そんなセレステの判断が甘いと感じないわけではなかったが、ダーハラトとしても他の方法が思い出せなかった。


「仕方ない。私が先行するから、後ろに隠れてついてこい」


「隠れろ…って、うわ、今更だけどダーちゃん、本当にガタイいいね」


「ダーちゃんいうなって!」


グルル、唸るように怒鳴るダーハラトに対してケラケラ笑うセレステ。

緊張感など欠片も残っていないような二人が例の構造物に近づいても、構造物もまた、なんの反応も見せていない。

難なく構造物の足元に着いて、入り口のようなところはないか探してみたら、セレステの胸あたりの高さに何か黒く、滑らかな表面をした物が見えていた。


「なんだこれは?」


「さあ…まさか、私が考えるあれでは…」


と言った瞬間、黒い板の上に文字が浮かんだ。


「…え?」


「なんだこれ…『日本語』のようだが?」


ただ二日間、意味のわからない『記号』として『見て』いただけなのに、相当飲み込みが早いのか、ダーハラトはそれが『日本語』だと認識することができていたのだ。


そう、その板―多分、スクリーンには日本語の文章が浮き上がっていた。


『生体認証をお願いします』


「生体認証って…指紋?掌紋?虹彩認識?」


「なんだそれは?」


生体認識など、トゥシタの技術レベルではできるはずがない。

だから、ダーハラトとしてもセレステが何を言っているか、わからない。


「それが…通行資格証明のため、個人の身元を確認する技術…というべきかな。

 指紋…指の先や虹彩などを認識して判別するけど…」


「指紋?」


アンテロの指先にはパッドがついているので、指紋は…多分、ない。


『これがトゥシタのものではないだろうという推論を裏づけてくれるけど…

 でも、なんで日本語?』


「オーテル」


「うん?」


「それが、日本語に間違いないならな……

 もしかしたら『これ』は、お前宛に送られてきたものではないか?」


「いや、いくらなんでも…

 ありかも?」


ダーハラトのいうとおりかも、とセレステは思った。

この世界で日本語の分かる者は、多分、自分一人しかいない。

他の日本人が来ている可能性は…まあ、フーマニタが勇者召喚でもしているなら話は別だけど、連中の「勇者」というのが召喚勇者か、誕生勇者か、覚醒勇者か、ただ単に訓練されたアサシンのことを勇者と読んでいるだけなのかわからないから、その線は一応除外。

それに、今日の早朝トゥシタに戻ってきた時に合わせるかのように現れたということから、自分でも『待っていたのか』と感じていたではないか。


「もし、君のいう通りなら…」


生体認識で、この形なら何を利用するんだろう。


指紋…は、指を乗せるセンサーが見当たらない。

虹彩…これも、カメラが見当たらない。


「…まさか」


と思いながら、セレステはスクリーンの上に、掌を触れた。

すると、その手の周りをなぞるように、スクリーンの上に線が走る。


- リリン


天城大輝アマシロ・オオテル様、確認いたしました。

 どうぞお入りください』


滑らかな塔の壁面にヒビが入り、何もなかったところにドアは開かれ、狭い空間が現れた。


「な、なんだ?」


「…ダーハラト、入って」


「何?」


「いいから、入って」


「入れって、あんな狭い空間にか?

 閉じ込められたら?」


「これはね…

 さっき、私の掌紋に反応して、私を『本名』で呼んだ。

 ということは、『私に送られたもの』という君の推論が正しく、その上私に『操作権限』があるということだ。

 私と一緒に入れば、問題ない。

 …多分」


「おい、多分って…

 いや、信じよう」


「『友達』だろ?」


「うるさい」


ダーハラトが入って、それを追ってセレステが入ったら、ドアが閉まった。

案の定、ドアが閉まっても中の照明は明るく、ドアの横にはタッチパネルがあった。


「これは…お前の邸宅のような施設なのか?」


「いや、多分それ以上の技術だと思うけどね。

 どれどれ…あ、これだ」


タッチパネルに触れるといくつかのボタンが表示され、その中『↑』のボタンをタッチした少し後、再びドアが開かれた。


「な、なに?」


ドアの向こうに広がる風景にダーハラトは驚きを隠せなかったが、セレステは別におどろいていないようだった。


「やっぱりエレベーターだったか」


「エレ、何?」


「昇降機。階段を使わなくても上の階に登ったり降りたりできる機械だ。

 滑車を使う荷運び…の進化型?」


「…そんなことにしよう。

 でも、なんだこの部屋は?

 外から見たあの、監視塔か展望台かわからない部屋ということは分かるけど…」


室内には、いくつかのシートと、中央に金属製の巨大な円卓が置いてあり、四方の壁面はガラスになっていて、見晴らしのいい風景を提供していた。


「まさかとは思うが…ここ、本当にブリッジ…」


「船橋ってことか?ここからこの…『島』を操縦できると?」


とんでもないことだが、セレステとしてはそうとしか思えなかった。

セレステの予想が当たっていたら、部屋の真ん中にあるあの円卓は、多分…


「うん?オーテル、ちょっとこれ見ろ」


何か発見したのか、手招きするダーハラトの側に行ってみたら、円卓の上に何かパンフレットのようなのが、置いてあった。


「何こ…れェぇぇぇぇ?」


表紙をめくった瞬間、現れた1ページ目の内容に、セレステは仰天した。


『拝啓 天城大輝 様

 いつもお世話になっております。


 この度はトゥシタにお越しいただき、誠にありがとうございます。

 日頃のお勤めに感謝すべく、お粗末ですが些細な贈り物を用意させていただきました。

 何とぞ、お役に立てれば幸いと存じます。


 ありがとうございます。


 添付:運用マニュアル1部』


「…ダーちゃん?」


「なんだ」


「私、失神したいから、受け止めてくれる?」


「いやだ」


「ケチなやつ」


軽く言っているけど、セレステは本気で失神して覚めたらなかったことになっていて欲しい、と思っていた。

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