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プロローグ
一六一二年 四月一三日、船島(巌流島)にて、歴史的一戦が行われた。
当時巷で、最強無敵と謳われた二人の剣士が居た。
稀有な二刀流使いにして、天下無双の肩書を欲しいままにした天才、生涯無敗の男。
『宮本武蔵』
三尺余りの大太刀を振い、秘剣燕返しで数々の猛者を討ち取ったもう一人の天才、自らが生み出した流名、巌流の名で呼ばれた男。
『佐々木小次郎』
言わずと知れた剣豪二人の決闘は、宮本武蔵が佐々木小次郎を討ち取り、幕を閉じたのであった。
人々は、その戦いを巌流島の決戦と呼び、歴史に刻まれる事となった。
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「小次郎、敗れたり」
敗れた?
何の話しだ。
誰が、敗れた?
まさか俺が、か?
有り得ん、誰に敗れた...
そうだ、確か船島で決闘をして。
それから、
それから、どうなった...
身体が沈んで行く。
深く深く、心地良い様な、心地悪い様なそんな不思議な感覚。
やがて全ての感覚が無くなり、そこで意識は、途絶えた。