ムーンライトステーション
これは僕の独断と偏見でSEKAI NO OWARIさんの楽曲である『ムーンライトステーション』を小説化したものです。二次創作要素、そして僕の偏った意見が込められているのでそういうのが苦手な方はここで閉じることを推奨します。
もしそれでも大丈夫という方がいらっしゃいましたら、ぜひ楽しんでください。
それでは、月の光が照らす不思議な世界へ行ってらっしゃい!
トーキョームーンライトステーション。
それは唐突に僕らの前に姿を現した。夜空を駆け巡り、幻想的な景色に溶け込むようその星空に、列車がやってきた。
「月」が君を迎えにきたんだ。いやでもその事実が解ってしまった。混乱と焦りが混ざり合う僕に彼女は言ったんだ。
ーーー「さようなら」ーーー
僕はあの時なんて言いたかったんだろう。咄嗟に言葉は出てこなかったあの時、今なら伝えれる気がする。
言わなくちゃ、伝えなくちゃ。
『この銀河列車が発車する前に…』
◇
今日も暑い日だった。時刻は二十一時を回った頃だろうか。頭の芯から熱を感じるほどに暑い日中と対照的に少し涼しさを感じられるこの時間帯が僕は好きだった。
辺りに人の影はない。点々と明かりを灯す民家を横目に僕はいつもの散歩コースを歩く。
「んーーー!最高」
僕のそんな声は静かな夜空に姿を消す。散歩はいい。この静かな街が僕だけのもののように感じられる。
だから僕は決まって夜に散歩をする。今日だってそうだ。ふと散歩に行きたくなると、天を仰ぐように外に出る。
夜の外だと言うのに辺りを障害なく見渡せることから月明かりの強大さをひしひしと実感する。
「こうやって夜に出歩けるのも一人暮らしの特権だよな〜」
そう。僕は去年から上京してきた社会人一年目。以前まで実家にいた時は理由もなく外を出歩くことは許されなかった。
現在は東京に住んではいるものの、皆が想像するような都会ではないのでこうやって、こうやって出歩く人も少ない。
大通りではないので車通りも少ない。もちろん、彼女もいないので誰かに心配されると言うこともない。
まさに僕だけの時間だ。
親はお金持ちなので今でも多少の仕送りが送られてくる。僕は要らないと日々伝えているのだが過保護な親には伝わらない。だから僕はありがたくそれを頂いている。
もちろん自分の生活が困らないほどには自分でも稼げているので僕は比較的裕福だった。まぁ一人暮らしの説得は大変だったけどね。もう社会人だというのに…。
それから少し歩いていると一筋の明かりを目にした。目を凝らすとそれは自動販売機だった。
自販機の横には公園ある。今日はそこで少し休もうと思い僕はそちらに足を運んだ。
カラン…。と、自販機から落ちる缶の音は周囲の静かさと時間の流れをより際立てた。
受け取り口に手を入れ、ベンチにでも行こうと思っていた僕にある問題が生じた。
「あて!」
「……え?」
そんな素っ頓狂な声が足ものから聞こえてきた。………いや、は?
恐る恐る足元に目を向けるとそこに女性の人間がいた。
心の底から意味がわからなかった。いやでもホームレスなどと考えれば普通、、のことなのか?
「ちょちょ、びっくりしたなぁ〜」
さも普通に言葉を発するので身が硬直する。寝ていたのだろうか?気だるそうに身を起こした。
「下に人がいる可能性考えてた?」
「ぇ、あぁ」
「そんなに怖がらないでよ〜」
ぱっぱっと身体の土を払うようにして少女は立ち上がった。自販機の光に照らされ顔がはっきりと見えるようになってきた。
見た目はまだ若い。もしかしたら僕より年下なのかもしれない。とすれば家出だろうか。
「あぁーあぁー、家出とかではないからね。そこら辺は安心してよ」
「ぇ?心読まれた?」
そんなことを言うと少女は「あはは」と笑った。
なんで今笑っているのか、なぜこんな所にいたのか。その全てが今でも疑問だけれどそんなことを吹き飛ばすほどにその笑顔は美しかった。
「んー?どうしたの」
あまりの衝撃に硬直していた僕はそんな言葉をかけられていた。
「あ、悪い。夜は危ないから早く帰るんだぞ」
これ以上の関わりはまずいと直感で感じた僕はそういい足早にその場所を離れようとする。しかしそんな僕を呼び止める声が一つ響き渡った。
「待って!ちょっと話さない?まだ夜は長いよ」
「えぇ、、」
「そんな嫌!?露骨〜」
顔に出てしまっただろうか。でも誰でも嫌だろう。変なことに巻き込まれる可能性は高いし、少女の得体も知らない。
でもそんな悲しそうに呼び寄せられてしまえば、無視をすることもできなかった。
◇
「へぇ〜貴方は一人暮らしをしているのね」
「あぁ、一年前に上京してきた」
「なるほどー」
どうに興味のなさそうな返事だ。
現在僕たちは自販機が付属している公園のベンチに二人で腰を掛けていた。
二人で缶ジュースに口をつける。無論その缶は僕が奢った。どうにも状況が状況なだけに僕がお財布を出す他なかった。まぁ、その程度の出費なら痛くはないので気にすることもない。
そんなことより今はこの状況をどうにかすることが先決だ。少女は家出などではないと言ったいたけれど実際それ以外の可能性を考えられない。
さすればどうにか家に帰らせることを考えるべきだ。
「どうしちゃったのさ、そんな考え込んで」
「誰のせいだと思ってるんだ」
「え、だれだれ?」
はぁ〜と重いため息を吐く。心の底から誰のせいなのか解っていないようだ。もちろん原因は少女自身なわけだが、。
「とりあえず時間も時間だろ?君学校は?」
「学校行くような歳じゃないよ」
「えぇ〜?何歳?」
「それは聞いちゃダメなんだよ?知らないの」
一丁前に女性みたいなことを言う少女に呆れて言葉が出てこなかった。
月明かりと目の慣れによって彼女の顔はもうはっきりと見えた。マジマジと見ることはできなかったけれど、やっぱり綺麗な顔だった。
それこそこの辺りじゃ見ない。有名人だと言われても違和感はないが、まぁさっきの姿を見るとそれはないように思える。
そんなことを考える僕に少女は言葉を吐いた。
「ここで君と出逢えてよかったと思ってる。君は?」
突然そんなことを問われ、しばし回答に悩んでしまう。出逢えてよかったと思えるほど関係が深くなったわけでも深くするつもりもない。
それに缶ジュースの出費や一人の時間が無くなったと考えれば僕にはデメリットの方が大きいかもしれない。
と、いうのに内心その少女と同じ想いであった。
「ん〜まぁ悪くないよ」
言葉と共に少女に目線をやる。少女はこちらを向くわけでもなく、ただただ天を仰いでいた。
僕も真似をするように上を向いた。空一面の星が美しく感じた。空を見上げるのなんていつぶりだろうか?忘れていた感覚を取り戻す。
ひゅーーと風が吹き僕は目を閉じた。
「夏なのに寒いね」
「夜だからね」
僕と違って少女は今でも空を見上げている。時刻は二十二時に差し掛かろうとしている頃だろうか。点々とついていた民家の灯りは少しずつ少なくなってゆく。
いつもなら帰る時間だが、今日はまだ居てもいいのではないかと思ってしまった。そういう不思議な居心地の良さがあった。
「私、かぐや。気兼ねなくかぐや姫って呼んでよ」
「なにが気兼ねなくだ。でもまぁ承知しとくよ」
「えへへ、君はやっぱし優しいよ」
「そうかい」
少女はかぐやと名乗った。ありふれているわけではないけれど聞き馴染みもある。そんな可愛らしい名前だ。
なんでそんなことを今伝えてきたのか定かではないが、一応覚えておこうと思った。もし、これからもこの散歩のコースで逢えたら仲良くなれる気もした。
「さっ、時間も潰せたしそろそろ帰ろうぜ」
「え?あぁうん」
僕がその時間に亀裂を走らせた。いくら家出少女と言えど親も心配するだろう。それに見た目は完全に学生。補導対象でもあるだろう。
ここは大人として厳しいと思われても帰らせるのが正しいことだと思った。幸い少女も否定してこなかったので無事ことは終わりそうだ。
「君、家の場所は?」
夜も遅い。ここらは比較的治安がいいとは言えどこれほどの美少女、一人で帰らせるのは不安が残る。だから僕はそう言ったのだが…。
「ん?さっきも言ったでしょ。私に家はない。さぁ帰りましょ?」
………は?
家がないと言ったり帰ろうと言ったり、いつまでも意味不明な少女だ。果たして彼女はどこに帰ろうというのか。その答えはもっとも僕が恐れているものだった。
「貴方の家に置いてくれるんでしょ?さぁ行きましょ」
「いや、は?よ、夜道は気をつけるんだぞそれじゃサヨナラ」
予想外の言葉に僕は逃げるように背を向けた。いやだって無理でしょ。社会的にも!
「えぇー待ってよ〜流れ的に行けるやん今のは」
「やめて着いて来ないで。改めてのハニートラップですか?」
「そんなことしないよ。貴方には恩もあるもん」
「家に帰ってくれるのが一番の恩返しなんだよ。さぁ帰った帰った」
「じゃあ私はここで餓死してやるー」
「ちょ馬鹿大声を出すな」
これではまるで社会人が学生をいじめてい現場だ。側から見たら悪いのは間違いなく僕。こんな所で泣き出されでもしたらそれこそ本末転倒だ。
家出少女。きっと色々あるのだろう。自宅に帰ったとしてそれが彼女の幸せかどうかは解らない。
僕が、、僕がまともなら…。そんないけない思考に頭を蝕まれる。でも、目の前の少女は悲しそうに笑っていた。
さっき初めて会ったのに、彼女にそんな顔して欲しくなかった。
頭を駆け巡る思考に一貫性はない。ただ僕は無意識のうちに言葉を発してしまっていた。それこそ頭では最も遠ざけて考えていたものを。
「一日…」
「えっ?」
「一日だけだぞ。一日だけならうちに来てもいい。まぁなんもないアパートだけどな」
「え、えぇ!?」
「だから大声出すなって。君には君なりの事情があるんだろ?じゃあもう仕方ないじゃないか」
「本当にいいの?自分で言うのもおかしいけど私おかしいよ?不審者だよ?」
「もういいさ、どのみち僕がおかしかったってことだ。どうする着いてくるか。それとも来ないか?」
「うん!いくー!」
はぁ〜と大きめのため息を溢した。しかしさっきよりどこか澄んでいた。
一般常識を守って接していれば犯罪にはならないだろう。まぁ少女…いや、かぐやの笑顔を見ればそんなこと気にしなくても良さそうだが。そんなことを考える僕はきっと大馬鹿者なのだろうな。
全ての事象への解決を諦め、僕は空を見上げた。さっきからずっと見ていた空だと言うのに感じ方がまるで違った。
見上げた空はどこまでも深く大きい。神秘のような世界だ。今日の月はいつもより大きく真ん丸い月だった。
「ふふ。どうしたの?」
「どうもしてないよ。さぁ帰るよ」
すぐ横でかぐやが微笑んだ。彼女は真夏の月夜にここ東京の街に降りて来た。そんなかぐやとの不思議な暮らしが今、始まる。
◇
翌朝、僕は会社に向かうためいつもの時間に起きる。
「アテテ、」
昨晩、かぐやという少女が家に来た。無論女性と同じベットを共有するわけにもいかないのでどちらか一方は床で寝る必要があった。
どちらが床で寝るか。そんなの答えは決まっていた。かぐやは「私で」なんて言っていたけれど、冷静にそんなことがあっていいはずがない。故に僕が床で寝たのだが、想像以上に身体がバキバキだった。
運良く一人暮らしとは言え、かけ毛布は予備が備えられてあったので助かったが、布団が生憎一枚もなかったので地べたというわけだ。
そんなことを考えながらも身体を伸ばし時計に手を伸ばす。僕は朝に強い方なので大体こうやって目覚ましが鳴る前に目が覚める。今日もいつも通り鳴る前に止めようとしたのだが…。
「なーーにーー!!」
「ぇっ、何事何事?どしたの」
「いやこっちのセリフだ。なんでもう十一時なんだよ」
時計が指していたは十一の文字。もちろん会社は遅刻も遅刻。僕は慌てて準備をする。
「あっ、ご飯できてるよ?」
「すまん食べてる時間ないわ。てか目覚まし止めたのお前か?」
「あ、いやぁ?知らないな」
確信した。絶対に犯人だ。まぁ他に考えられないから分かってはいたのだが、今怒ってる時間も気力もない。
せっかくこの一年真面目にコツコツ積み上げて来た信頼や印象がこの寝坊だけで崩れることを僕は知っていた。だから僕は急ぐことしかできなかった。
「家のものは勝手に使っていい。帰る時間になれば勝手に帰っていい。とりあえず僕は行ってくるぞ」
かぐやを会社に連れて行くわけにもいかないし留守番ができないような歳でもないので僕はそれだけを言い残し急いで家を出た。
会社までは二駅。不幸中の幸いというべきか電車の時間はジャストだったので急ぎで向かうことができた。
車内で上司にメールを入れる。内容を誤魔化そうとも思ったが性に合わないので正直に言うことにした。
寝坊したこと、そして遅刻を謝罪した後かぐやのことも書こうかと思ったが辞めておいた。一応おかしな状況だと言うことは自分自身でも理解しているからだ。
メールに返信はないままのスマホをカバンにしまい、駅に到着すると急いでオフィスを目指した。
「はぁはぁ、遅れました。すみません」
「すみませんじゃなくてごめんなさいな?君が遅刻なんて珍しいじゃないか」
「はい。メールでも送らせてもらった通り寝坊してしまいました。すみません」
「はは。すみませんじゃなくてごめんなさい。まぁ次から気をつけてくれ」
「ありがとうございます」
どうやらそこまで怒っているわけではないようだ。ただ逆に上司の優しさが心にくる。はぁ〜と落ち込んでしまう。そんな僕に横から声をかけてくる人がいた。
「遅刻、珍しいね」
「あ、先輩。はい、ちょっと寝過ぎたみたいで」
「まぁそういう日もあるよね。私もそうだよ」
「あはは、そう言ってもらえると嬉しいです」
声をかけて来たのは女性の先輩。先輩は右も左も分からない新卒の僕に一から十まで教えてくれた優しい人だ。こういう時にもこうやって声をかけてくれるので少し心が軽くなる。
考えれば僕は先輩にすごく心を開いているのだろう。
「なんか〜変わった?」
「え?どゆことすか」
唐突に先輩がそんなことを言って来た。変わったことは特にないはずだが、先輩はなにを思っての発言だろう。
「んーん。気のせいかな。寝坊気をつけてね」
「あ、はい。すみません」
「ごめんなさい。また部長に言われちゃうよ?」
「はーい」
優しい先輩らしく優しい気遣いだったのだろう。とはいえみんなに優しくされたからには僕も今まで以上に頑張らないと。そんなことを考え僕は今日の職務を終えるのだった。
◇
「それじゃ明日は寝坊しないようにね」
「もちろんです。今日はありがとうございました」
仕事を終え部長と先輩に挨拶をし僕はオフィスから出た。時刻は十八時半。いつもより三十分長く働いたが、それに付き合ってくれる先輩たちは本当に優しい。
それに僕の会社は周囲と比べてもホワイト企業と言えるもので残業はほぼほぼすることはない。まぁ今日みたいな異例があるんだけどな。
そんなことを考えているとグ〜とお腹が音を鳴らした。もちろん僕から出た音で、少し恥ずかしさを感じる。誰にも聞かれてないといいな〜。
「ふふ。お腹減ったの?」
残念。僕の願いは叶うことなく先輩に聞かれてしまったようだ。その事実がより僕を辱めた。
「せんぱ〜い」
「どう?このあと時間あるなら一緒にご飯行きましょ」
「え、いいんですか?」
「もちろんよ。じゃあどこに行こうかしら」
「先輩のおすすめで!」
そんなこんなで僕は先輩とご飯に行くこととなった。先輩と後輩でご飯なんてアニメみたいで憧れていたので内心ワクワクしていた。
ただよくよく考えてみるとデートのような気もしてそれを意識したらいつものように会話ができなかった。
「どうしたの?顔真っ赤よ」
「ま、真夏ですからね。僕暑さに弱いんですよ」
「そーなの。だから寝坊しちゃったのかな」
「もーいいじゃないですかー」
恥ずかしがってることを悟られないいい言い訳が出来たがそうやってからかわれてしまい顔の赤さは色素を増したことだろう。
まぁでも、もうそんなこと気にする方がおかしな話だ。僕はそう自分自身に言い聞かせただただ先輩とのご飯を楽しんだ。
先輩が連れていってくれたのは少し古びたお好み焼き屋さん。雰囲気もあるし店長さんも優しそうな人だった。先輩は常連さんのようで手慣れた注文をしていた。
それからのご飯も美味しいものばかりだった。それこそ、一人でもまた来たいと思うほどに。
会計は男である自分が払おうと思ったのに先輩に払われてしまった。「次は奢ってもらおうかな〜」なんて言われたからその機会があればぜひと思った。
そんな楽しい時間はすぐに終わり僕たちはそれぞれの駅で別れた。僕の方が降りる駅が早いので結果的に見送られる形だった。
本当に何から何まで先輩は先輩だ。僕もいつかああなることはできるのだろうか?駅から自宅までの道でそんなことを考えるのだった。
「ただいま〜」
そうして僕は自宅に辿り着いた。一人暮らしなのでもちろんその言葉への返答はない。ただいつもその流れでその言葉を呟く。しかし今日は違った。返答する言葉が耳に飛び込んできた。
「あっおかえり〜遅かったね。もしかしてブラック?」
「ん?え?」
「えぇ?なに驚いてるの?」
帰ってくるとまだその少女、かぐやが僕の家に居座っていた。それも何故かエプロンを巻いている。
「もっと早く帰ってくると思って作ったからちょっと冷めちゃったよ〜」
「ん?どういうことだ?」
「ごーはーんーだよ。私だってそれぐらい作れるし」
そういい机に目線を動かすとそこには数々の食べ物が並べられていた。見た目はまぁ家庭的なもので普通のご飯だった。しかし驚きはそこではない。僕は思ったままの疑問を口にした。
「こんな食材どこにあった?僕はそんな買い貯めないぞ?」
「そーだよ。わざわざ買いに行って作ったんだから感謝してほしいね」
「そんな、」
「遠慮するなってお金は君のだから」
かぐやは胸を張り微笑んだ。しかし僕はそんな顔に言ってはいけない言葉を並べてしまっていた。
「頼んでないだろ?」
「え、頼まれてないけど、疲れて帰って来てるわけだし」
「でも僕はいつも弁当でなんとかしてた。今日の分も置いておいたはずだが」
「身体に悪いよ。それだと君が身体を崩しちゃう」
「は、はぁ、ただこれからは変なことしないでくれ。今日ご飯食べて来たんだ」
僕がそう言うとかぐやは分かりやすく落ち込むのが分かった。
「そっか。ごめんなさい。置いてもらってるのに勝手なことして。朝の慌てよう見て分かったよ、目覚まし止めたらやばかったよね」
「あ、あぁ。まぁいい。そんなことよりいつ帰るんだ?」
口から出た言葉というものは一度出てしまうと簡単に止められない。それを実感するのはもう少し後の話だ。
「僕は昨日一日だけと言ったはずだ」
「でも、私…」
「仕方がないから今日も家にいていい。ただ変なプライドで家に帰らないとかは辞めろ。それがお前のためだ」
「……わかった」
「そうか」
そうして沈黙が流れた。今日の天気は曇っているからかいつもより暗かった。次の灯りで火照る昨日のかぐやの姿は今、感じられなかった。
それからというもの静寂の中でかぐやが黙々と自分で作った料理に手をつけていた。そんな姿を横で見せられたら僕だってただただ無視はできない。
何かを言うわけでもなく僕もその料理に手を伸ばした。
「………」
味は普通。今日のお好み焼きや母の料理と比べると目劣りしてしまう。それでもどこか暖かい料理だった。
「すまんな。言いすぎた」
「んーん。私こそ勝手だったから」
なにか大切なことを忘れていた。その忘れ物に気づくのはずっとずっと後の話だ。
ただ幸いにもかぐやは切り替えるのが早い性格だった。僕が謝り食事を終えると昨日と同じように絡んできた。
本当に不思議なやつだ。
「じゃあ明日は何時に起きるの?」
「いつも通りに六時半だ」
「早いね〜よしじゃあ朝ごはん用意していい?」
「えぇー?要らないって言ってるだろ?お弁当が」
「全部捨てちゃったよ。あんな身体に悪いもの」
なんだ?コンビニ弁当に親でも殺されたのだろうか。それほどに執着する理由も解らない。ただ捨てられたとなると作ってくれると言う言葉に甘えるしかなさそうだ。
「じゃあよろしく」
「もっちろーん」
任せてと言う具合にグーポーズをこちらに向けた。
まったく騒がしいやつだ。そんなかぐやとの生活はどうしてか楽しいと思っていた。
「そうだこの際だから言っちゃうけど本当に私は帰る場所がないんだよ」
「あーはいはい。分かったからもう寝るぞ」
「むー。お風呂に入れーー」
そんな言葉を最後に僕はお風呂に入ることとなった。いつもは溜めない湯船が張られていたことに少し笑みがこぼれたのはここだけの内緒だ。
◇
あれからしばし時間が過ぎ、僕らの部屋はもう真っ暗だった。しっかり目覚ましをセットしたのを確認し寝る支度を整えた。そんな静かな部屋でそっと、会話が開始される。
「君って優しいよね」
「なんだいきなり」
「いや、今日もベット私だし。ご飯の時も結局食べてくれたでしょ」
「勿体なかったからな。僕のお金だし」
「そういうものかな〜」
僕は優しくしようとしてる気はしない。それこそさっきかぐやには酷いことを言った。それほどの人間なんだ僕は。
それでも彼女は優しいよと言葉をついて黙った。
それから数分後、聞こえて来たのは静かな寝息だった。
「まったく、本当に何者なんだか」
僕は答えのない問を最後に目を閉じるのだった。
◇
朝、いつもは自然と目が覚めるのだが今日は慣れない日差しが目に当たり目を覚ました。
目覚ましの音は聞こえない。はっ、と思い急いで時計に手を伸ばした。時刻は六時二十五分。起床五分前だ。
ほっと息を吐く僕の顔を少女が覗き込んだ。もちろんかぐやだ。
「おろ?もう起きちゃった?」
「あぁ朝は強い方なんだ。かぐやは何時から?」
「!?。かぐやはね〜ちょっと前からかな」
とすればカーテンを開けたのもかぐやだろう。朝一に浴びる光が太陽光なのはどこかでいいと聞いた。ならまぁいいかと思い僕も布団から身体を出した。
んーー。と身体を伸ばし頭を活性化させる。そこで気づいたのは香ばしい匂いだった。
「ん?なんかいい匂いだな」
「おっ、さすがだね。ご飯できてるよ」
「おー言ってたやつか」
「そそ。サッ食べてー」
「あぁ、先に歯ブラシしてくるよ」
「おけーい!」
朝から至れり尽くせりだ。時間にも余裕がある。家庭的な食事を楽しむとしよう。
「今日も夜あれぐらいなの?」
「んにゃ、仕事を終えてすぐに帰ればもう少し早いぞ」
「おっ、じゃあご飯用意しとくね」
「わかった」
食事中にそんな会話が繰り広げられた。この時は疑問に思わなかったが今日の夜も確実にいるということだろう。ならかぐやはいつ家に帰るんだ?もしかして…。
いや、やめよう。どんなに考えても答えは出ない。ならもう少し様子をみてもいいだろう。少なくとも朝に聞くような内容ではないように感じる。
「じゃあ行ってくるぞ。昨日もあったけど時が来たらちゃんと帰れよ」
僕に気を遣われて帰れなかったなんて言われたら溜まったもんじゃない。だからこそ少し厳し目にそう言ったのだが、「おけーい」といつも通りの様子で言われたので期待は薄いだろう。
「んじゃ行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
久しぶりの相槌はどこか気持ちが良かった。
◇
「今日は遅刻じゃないんだな」
「そんな毎日毎日寝坊もしませんよ」
部長と軽く会話をし、僕は指定の席に着く。隣にはいつも通り先輩が座っていた。
「おはようございまーす」
「おはよう。なんだか元気ね」
「そうですか?いつも通りなんですけどね」
「なんか、変わったように感じるな。彼女でもできた?」
「僕に彼女?できるわけないじゃないですか」
僕と関わりのある女性なんて先輩ぐらいしかいない。というのに恋愛もクソもないだろう。当然彼女も居ないしなんならいたこともない。
「そう。今日も夜ご飯行かない?」
「えっ、いきた…」
言葉が詰まってしまった。なんでだろう。考えても答えは出ない。でもそのご飯に行かないほうがいいと感じた。
しかしそんな意味のわからない感情で断るわけにもいかない。僕は奢ってもらったという恩を返さなければいけない。だから改めて口を開いた。
「ぜひお願いします。今日は僕が払います」
「ふふ。気にしなくていいと言ってるのに」
そんなこんなで午後先輩とご飯に行くこととなった。
それからというもの時間はいつもより早く過ぎ去り、気づけば定時になっていた。
「さっ行きましょ」
「はい!」
僕らは部長に挨拶をし二人でオフィスを出た。今日向かったのは焼き鳥の美味しい居酒屋だ。社会人っぽくてワクワクする。
居酒屋ということもあったのだろう。昨日よりも長くその場所に居座っていた。時間は過ぎ会計の時、僕が払おうとしたら先輩は割り勘を提案した。
嫌だと断ったけれど強行突破。その日も半分奢ってもらう結果となった。
それからいつも通り駅で別れ僕は自宅に向かう。少しお酒も入っていたからか足がふらふらだった。
そんな中視界に入ったのは一筋の光。それは公園に付属する自販機の淡い光だった。
僕は何かを思い出したかのように足の回転を早くし自宅を目指した。
がちゃんと急いで開けた扉の音は一人暮らしを始めて以来の大きさだったと思う。
入ると一番弱い明かりで部屋が照らされていた。今日も曇りで月明かりはない。それどころかカーテンが閉められているので外からの灯りは全て遮断されていた。
机の上にはラップのかかった食事が。どうやら昨日よりも種類豊富だった。それと共に置かれていたのは一枚の紙。そして文字が綴られていた。
[今日も残業お疲れ様です。昨日もお腹いっぱいななか食べてくれてありがとう。今日もそうだったら全然残してね。明日の朝ごはんも用意するよ。あと少し待ってようと思ったけどかぐやちゃんの瞼が重すぎるので今日は寝ることにします!それじゃおやすみ。あ、あとあとどうせ譲ってくれるからベット使わせてもらうね。ありがとう]
紙にはそう書かれていた。手書きで綺麗な字だった。並べられているご飯は男なら誰でも好きな物ばかりだ。
特にハンバーグには中にチーズが入っていた。昨日からは考えられないほど美味しくなっていた。かぐやが僕のためにここまでしてくれたのだ。
捨ててもいいと書いてあったがそんなことできなかった。理由は僕のお金が勿体ないからだろうか?不思議とそんな気はしなかった。
それから流れるようにお風呂場に向かう。今日もお湯が張られていた。
それもあったかいやつだ。臭いもしない。きっとかぐやが丁寧に掃除をしてくれたのだろう。僕なんかにそこまでする所以はなんだ。
僕には解らなかった。
お風呂から上がり電気を消す。今思えば寝る時に真っ暗派のかぐやが明かりをつけてくれていたのも僕のことを思ってのことだろう。
ベットで寝息を立てるかぐやに僕は静かに近づき膝をつく。
そこで気づいたのだが枕の下に何か紙のようなものが見えた。
僕はなるべくかぐやに触れないよう、そして起こさないようにその紙を引き抜いた。
紙はチラシのようだった。普段僕の家にはチラシや新聞は来ないのでかぐやがどこからか自身の意思で持ってきたのだろう。
そんな価値があるのかと僕が内容に目をやった。どうやら花火大会の知らせのようだった。場所は横浜。ここからだと少し遠く感じるが電車を使えばいけない距離でもない。
日時は明後日の二十時からとのことだ。金曜日だった。平日なのでもちろん仕事はあるが帰ってきてから急げば間に合う時間帯かもしれない。
「はぁ〜、」
僕は静かなその部屋で一人、ため息をこぼすのだった。
◇
チラリリリ。朝の目覚ましが鳴り響く。少し前に起きていたので特に困ることなくその音を消して立ち上がった。
「はっ、今何時?」
後から慌ててかぐやが目を覚ました。朝だというのに元気なやつだ。
「あ、あれ?もう起きてたの」
「目覚ましの時間設定は僕がしてるんでな」
「まってね、今からご飯を…」
布団を押し上げ立ちあがろうとするかぐやに僕はこんな言葉をかける。
「今日はいいよ。僕が作る」
「え?でも…」
「お前が来る前はちゃんと一人暮らししてたんだ。それぐらいできる」
事実僕は一人暮らしを始めて最初の数週間はしっかりと自炊をしていた。節約などもしていたのである食材で料理をするということにも慣れていた。
そして現在はすでに料理に手をかけていた。よってかぐやの手を借りる必要はないと判断した。
「そんないいよ」
「いいから黙ってろ。ほらもうできる」
「む〜」
そうして僕たちは朝ごはんを食べた。不思議とかぐやと食べるご飯は以前より美味しかったと思う。
今日は木曜日。普通に僕にも仕事があるのでご飯を食べ終えると僕は家を出る支度をした。と言ってもほぼ支度は終えているのであとはもう出るだけだ。
「んじゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「あぁ、」
この会話にまだ少し違和感を残しつつ僕は仕事に向かった。時間に余裕があるので急ぐ必要はない。しかし今日は少し急足で職場に向かった。
電車もいつもより早い時間帯のを選び、駅から職場も早歩きだ。朝とはいえ真夏なので少し朝をかいた。
オフィスに着くと涼しい風が吹く。冷房がよく効いていた。そんな中で僕は自販機の前に立った。
「あれ?早いね」
「あ、先輩。飲み物何がいいですか?」
「おっ、奢ってくれるのかな?じゃあ甘えてこれで」
自販機の前であったのは先輩。どうやら今日は僕の方が早く出社したようだ。しかし時間的に電車は同じだろうか。
とそんなことを考えつつも先輩にブラックのコーヒーを渡す。昨日一昨日と奢ってもらってるのでこんなものだけれど僕が奢った。
「君はいつまでもそのままでいてね」
「ん?今なんて?」
「なんでもなーい。コーヒーのお礼しないとね」
「いいですよそんなん」
たわいもない会話をしつつ僕らは二人でオフィスに足を踏み入れた。ほんの少し早くしただけというのに僕ら以外誰もきていなかった。
まぁそれはそうと僕は僕の仕事に取り掛かろう。そう思い僕は早速デスクに座った。かちゃかちゃとキーボードの音が響く。
「熱心ね?何かあるの?」
いつもと少し様子の違う僕に気づいたのか先輩がそんなことを尋ねる。ただまぁそんな深いことはない。ただただ少しやり遂げなければならないことが増えただけだ。
だから僕はそんなことないですよ。と答えた。すると「そっか〜」と簡単に先輩は引いた。
◇
「んじゃ、失礼します」
今日はいつもより多く仕事をし、いつもよりほんの少しだけ遅い時間の電車で帰宅した。先輩は用事があるそうで定時にしっかりと帰ったので久々に一人での帰宅だ。
電車はいつもより人が多かった。時間帯の関係もあるだろう。最寄りの駅に着くと僕はこれまた急足で自宅を目指した。
途中にある公園の自販機を超え、点々とする民家の明かりを横目に僕はアパートを目指す。
やっと玄関先に着くと僕は一つ呼吸を置いて、落ち着いてからガチャリと扉を開けた。
「ん、あれ?早いねおかえり」
「ただいま」
僕が家に入るとかぐやがポツンも座っていた。しかし何かを思い出したかのようにキッチンに向かった。その左手に持つ紙を僕にバレないようにしていたつもりだろうけど僕はしっかりそれを目視していた。
「じゃあご飯作るから待ってて」
「頼む」
今日僕が早く帰ってきたのは予想外だったのだろう。昨日一昨日は先輩とご飯に行っていたが故だいぶ遅く帰宅した。
かぐやはそんな僕しか知らないからそれが普通だと感じていたのだろう。だからリラックスをしていたということか。
「なぁかぐや」
「どしたの?」
「なんでそんな僕に色々してくれるんだ?」
「んー。考えたこともないな。恩返しみたいな感覚じゃない?」
恩返し…か。僕は特に何かをしたわけでもない。親が親なら今すぐにでもかぐやを返したいと思っている。
いわばこの生活に僕は違和感を感じていた。社会的にも人間としてもこんなことがあっていいはずがない。
もしかぐやの親が捜索依頼を出しているのなら犯罪者は僕だ。僕は決して優しくない。だから最近冷たいのだろう。
「なぁかぐや。帰らないか?家に」
「………ぇ?」
カラン……。
僕の言葉にかぐやの持っていたボールが地面に落ちた。それほどに衝撃的だったのだろう。
家出少女。僕の中での印象は今でも変わらない。確かに初めて会った時から数日しか経っていないというのに仲良くなったし世話もしてくれた。
しかしその事実を肯定することはできなかった。自分に害が降りかかるのであれば僕はかぐやを家に帰したい。それが本音だった。
「ご、ごめんなさい。私、、まだ」
「今日は泊まっていい。ただ今日までだ。明日十七時にここから二つ先の駅に来てくれ」
「…なん…」
かぐやは言葉を詰まらせた。普段いつも笑顔だったのに今日はそんな気はしなかった。でもそれを確認することはできない。
僕もかぐやの顔に目を向けてやらなかったから。
それからというもの僕たちの間に会話はなかった。
ご飯を持ってきてくれたかぐやといただきますだけを言い、食事中も無言を貫いた。
どちらかも喋る気になれなかったのだ。
今日はそのまま就寝した。風呂は入ったけれどお湯は張られていなかった。
◇
チラリリリ。朝目覚める。鼻を刺したのは心地のいい香りだった。
「あ、朝ごはんできてるよ。最期だから気合い入れちゃった」
「ん。悪いな」
「いやぁ〜昨日買い物行けてないから余物だけど」
「にしてはいつもちゃんとした料理だがな」
「あはは〜そうかな」
会話は続くがどこかいつもと違う。きっと昨日のことがかぐやの頭に引っかかっているのだろう。いや、かぐやだけじゃない。きっと僕の頭にもモヤがかかっているのだろう。
だからといって意見を変えるつもりはない。それが僕たち二人にとって一番平和なことだから。僕はそう信じこの雰囲気に打ち勝とうとするのだった。
「んじゃ、行ってくる。約束覚えてるよな?」
「うん。今日ここを出ていく。じゃあ気をつけてね」
「違う違う。約束自体に間違いはないけどもう一個あったろ?」
「んーーっと、」
そんな言葉を溢しながら手を顎に当てて考える素振りをするかぐや。こういった姿は本当に美しい。その美貌は折り紙つきだ。
すると、あっと声を漏らした。何かを思い出したのだろう。
「えっと夜の五時に二駅先に行く、だったかな?」
「その通りだ。運賃は僕の棚に置いておいた。切符の買い方はわかるな?」
「んまぁ、なんとかするよ」
「時間間違えるなよ」
「うん。じゃあ今までありがとね」
僕はその言葉に返事をすることなく家から出た。
ガチャリとドアがしっかりと閉まったことを確認し、僕はカバンからあるチラシを取り出した。
デカデカと書かれた花火大会の文字。人の多いところは気乗りしないがまぁしょうがない。今日ばっかりは楽しもうとしよう。
僕は昨日と同じように早足で会社に向かうのだった。
◇
気がつけば定時まで一時間と三十分を切った頃になるこの時間。隣に座っていた先輩が僕に声をかけてきた。
「昨日今日と頑張ってるね。今日も残業していくの?」
「あ、いえ今日はしない予定です」
「おー!ほんと?じゃあまたご飯行かない?私も定時に終わるからさ」
「わーぜひ行きたいです!奢ってばっかで悪いですし」
「気にしなくていいって言ってるでしょ?じゃあ今日は」
先輩の満面の笑みを浮かべていた。きっと今日行くご飯屋さんなどに目星をつけているのだろう。だから少し言いにくかった。それでも僕は口を開いた。
「でもすみません。今日は遠慮させてもらいます」
「ぇ?」
僕は先輩にそう告げると同時にパソコンの電源を落とした。そして部長の方に身体を向けさらに言葉を紡ぐ。
「部長、前々から言ってた通り今日は上がらせてもらいます」
「ん、気をつけろよ〜お疲れであった」
部長の言葉を聞き終え、ありがとうございます。と言葉を伝え僕は帰宅の準備を整えてあったカバンに手を伸ばした。
すると慌てて先輩が話しかけてきた。
「もう帰っちゃうの?体調悪いの?」
「いえ、少し用事が。ご飯、また行きましょうね」
「えぇ〜定時までもうあと一時間ちょっとだよ?」
「すみません。今日はその一時間が惜しくて…」
なんとか言いくるめられただろうか?僕には僕のしなければいけないことがある。それに目を向けないと後悔する気がしてならなかった。
「ごめんなさいだよ、、じゃあご飯また今度ね。奢って貰うから」
「もちろんです。それでは失礼します」
今日のノルマの仕事は終わらせた。前日から取り掛かり、朝早くからやればブラックというわけでない僕の会社のノルマは案外早く終わるものだ。
先輩や部長などの誰かに迷惑をかけるわけでもなく僕は駅を目指した。ふと気になり腕時計に目を向ける。時間は十六時五十分。おおよそ予定通りだ。
このまま駅に着けば僕の到着と同時ぐらいに電車が来るだろう。そこからどう横浜まで行くかを僕は少し考えるのだった。
ん?あぁ、これからどこに行くか?そんなのもうみんなならわかってるだろう。最期の思い出ぐらい残しておかないとな。
カバンの中でシワクチャになったチラシはちらりと視界に入った。
◇
「遅い……」
少し焦りを含みつつ腕時計に目を落とし時刻を確認する。長い針が五を通り過ぎた辺りのところだった。まぁ電車から降り、なんやかんやをしていたら少し遅れることはあると思い、また少し待ってみる。
それでも彼女の姿は見えなかった。
「まだ、まだ時間はある」
もしかしたらあと一個遅い電車なのかもしれない。落ち着いて待ってみよう。僕は焦る自分になんとか言い聞かせて次の電車をベンチで待った。
それでも彼女は来なかった。
怖気付いて家から出なかった…?そんな可能性が僕の頭をよぎった。しかし不思議とそれを全否定した。
朝家を出る前、料理をしつつも淋しそうな顔を浮かべ、平然を装っていた少女の顔は嘘ではない。と思う。思いたい。それはほぼ願望だったのかもしれない。
そんな願望を僕がなぜ願っているのか。それは全くもって理解できない感情だ。それでも僕は一人の少女を、、かぐやを信じてあげたかった。
スマホを取り出し電車の時間を調べる。十七時でヒットするのは二つの電車だった。
それが全てを物語る。僕の家の最寄りから会社とは逆方向の電車に乗り、二駅を進んだ。その予測しか考えられない。
さすればかぐやはもう二十分近く一人で知らない街並みを彷徨ってるはずだ。もし、もしも本当に家が無くて、本当に帰れないのだとしたらかぐやは今、どうしてるのだろうか。
家から持ってきた一枚のパンフレットは今僕のカバンの中にある。これが手掛かりなのであればかぐやは本当に今何もできない。
「はぁはぁはぁ…」
僕はようやくそこで走っていることに気がついた。何が僕をそうさせたのか解らない。解らないふりをしている。本当は解っているのに…。
プシューと電車の扉が開く音がした。もしかしたらその中にかぐやの姿がなんて思ったけれど希望は希望で終わりを告げた。
多くの人間が降りる波に逆らい僕は電車に乗った。
一駅、二駅と見知った駅を通り過ぎる。三駅目、名前はよく知っていたけれどあまりくることはなかった。四駅目、ここは先輩の話でよく聞いた名前だ。来ることは本当に少ない。そんな駅で僕は電車を降りた。
定期の値段にプラスして運賃を支払い改札を出る。いつもの駅よりも人が多かった。住宅街なのだろう。その人の種類は様々だった。
僕は駅の時計を見つけ、時刻を確認する。十七時四十分。流れるように周囲を見渡すが見知った顔はない。
かぐやはこの駅に来た目的を知らない。故にどこかに行ってしまったのかもしれない。ここから横浜までざっと見積もっても一時間三十分は必須だ。電車通りが多いわけでもないのでさらにシビアな時間設定になるだろう。
駅の中に彼女はいない。それを把握し、僕は走り出した。行く宛も探す手掛かりもないただ真っ白なレールの上をがむしゃらに走った。
走って走って走って、、自分の息切れにも気づかないほどに走って、僕は少女を探した。
あれで終わりなんて嫌だ。もっと優しく言ってやればよかった。花火大会を優先してやればよかった。最後まで無愛想に彼女を遠ざけた。しっかりと彼女に伝え無いと、、、。
「あぁ、伝える…僕は何を…」
気づけば溢れていたのは涙。頬を辿り、大粒の雫が地面に落下する。こんな姿誰かに見られたら不審者扱いだ。僕はなんとかそれをぬぐい、近くの自販機で飲み物を買った。
カラン、と音が響きそこに手を入れる。
手が何かに当たった。暖かく、少し柔らかい。買った缶のジュースでは無い何かだった。
「泣いてるの?大丈夫?」
「か、ぐや?」
「え、うん。そうだけど」
かぐやの手が優しく僕の手を包み込んでいた。それはそれは暖かい手だった。久しぶりに感じたそれは僕の頬をさらに濡らした。
「どこ行ってたんだよ……なんで」
「君の指示じゃなかった?」
「ばっか、、逆なんだよ…」
「あ、それはごめん。ん?」
「??」
「じゃあ君はわざわざ私をこっちの間違った駅まで迎えに来てくれたの?」
「それは、かぐやが間違えるから…」
「ふふ。ありがとう。やっぱり君は君だよ」
「何訳のわからないことを…」
しっかり喋れているのか自分自身でも解らなかった。ただ一つ解ったこともある。それはきっと知っていたことなのだろうけど君が教えてくれたことだ。
僕は何かを忘れている。それを思い出すのはもう少し後の話になりそうだ。
◇
「ところでなんでわざわざ迎えに?君は私を家に帰らせたかったんじゃ無いの?」
「あぁ、そうだな。でも、やらなきゃいけないこともある……って急ぐぞ」
「え、あちょ。缶ジュースはぁー??」
僕はかぐやの手を取り急ぎで駅に向かう。彼女を追いかけた理由。それは花火大会を一緒に見ることだった。
きっとかぐやは僕のことを考え、優先しているからこそ提案できなかったのだろう。いつも夜遅くに帰ってくることに今日は少し強く罪悪感を覚えた。
「電車、、行っちゃったね」
「あぁぁ、なんでだ」
「ねね、なんでそんな急いでるのさ」
「なんでってな〜」
確かにかぐやに花火大会のことを伝えてなかった。しかし今そんなことを言ってられるほど悠長な時間はない。
そもそも今電車に乗って間に合うのかと言われたら不透明だ。そんな博打をするのも馬鹿馬鹿しい。財布の中には余分に現金が入っている。ケチるのも今じゃない。
「タクシー拾うぞ」
「タクシー?ねぇどこに行こうとしてるのよ。家なら二駅でしょ?なら歩きでも」
「いいから、ほら行くぞ」
僕が走り出すと後ろの少女も走り出す。なんとも言えないその距離感がもどかしかった。
駅を出ると多くの車があった。だというのにタクシーが見当たらない。こんな日に限ってなんで。
僕が必死に探していると少し離れた場所からかぐやの声が聞こえた。
「タクシー!あったよ」
手を広げ僕を呼ぶ姿のかぐやの元へ急足で向かう。
タクシーに二人で乗り込むとすぐに僕は目的地を告げた。
「横浜。ここの花火大会まで」
◇
なんとかタクシーに乗り込むことに成功した僕たち。運転手さんもおしゃべりな性格ではないのだろう。ただ沈黙が車内を支配した。
僕はというとそわそわと腕時計を気にしていた。現在はすでに十八時を回っている。現在地から来るまで花火大会までは電車で一時間と三十分だった。車だとどうなのだろう。
そんな焦りが僕の余裕を無くした。
そんな中で静寂を打ち破ったのは一人の少女だった。
「花火大会。もしかしてチラシ見た?」
「あぁ、僕が遅くに帰ってきた時、かぐやが大切そうに持っていたものをな」
「そうだったんだ…ありがとう」
「ん?今なんか言った?」
「んーん。何も。でも、約束は約束なんでしょ」
その瞬間、声のトーンが一段階下がる。かぐやが言っている約束。それはきっと家に帰れというものだ。
僕はその約束を取り下げるつもりは毛頭ない。だからこその最期の思い出作り。それが今から行く祭りだった。なのにこんな問題ばっかで、馬鹿みたいだな。
「悪いな。僕のためにそれは必要条件なんだ」
「うん…」
それからまた沈黙だ。僕にはどうにもそれが重たすぎた。
◇
キュー。タクシーがブレーキを踏んだ。信号かとも思ったがどうやらそうではないらしい。最後の会話から四十分ほど過ぎただろうか。目的地にもまだ着いていないようだ。
「お客さん、すみませんね。渋滞みたいです」
「渋滞?ここから花火大会までどれぐらいですか」
「んー。普段通りなら三十分と言ったところでですけどこの調子だと少し、、」
三十分か。当初の予定よりだいぶ遊ぶ時間が減ってしまいそうだが、花火に間に合うのならまだマシだ。
現在が十八時五十分。遅くても十九時五十分には着けるのか。花火大会に付属した屋台などはもう行けないかもしれない。かぐやになんて言おうか。僕が悩んでる時だった。
「この渋滞、花火大会のせいなんじゃないかな」
「ん?どういうことだ?」
「わからないけどさ、大きな花火大会だからこうやって向かう人が多くて渋滞が起きてるとか。この渋滞がそうじゃなくても近くに行けば必ず進みは遅くなるよ」
かぐやの考察なのだろう。確かにそれは理に適ってる。
「私もそう思います。このままだと二十時には間に合わないかと、、」
「間に合わない?それじゃあ…」
僕が感情に任せて何かを言おうとしている時、横からかぐやが僕の手に触れた。
「ダメだよ。それは」
「かぐや…」
僕が言うことを読み取ったようにかぐやは僕を止めた。僕も冷静になればダメだと思う。しかし、今は冷静になれなかった。
「運転手さん。僕たちここで降ります。大丈夫ですか?」
「え、あぁはい。一万と二千五百円です」
「はい。お釣り結構です。さぁかぐやいくよ」
「う、うん」
きっと今の僕に冷静さや常識は無かったのだろう。タクシーが使えないとわかると僕は自分の足で花火大会に向かった。
「ねーもう間に合わないって。もういいって」
そんなこと僕でも解っていた。解った上で先導していた。ムキになっていたのだろう。
「もういいって。こんなのなんの意味も…」
「だったらなんだよ。かぐやが僕の家に来たのには意味があったのか。理由があったのか」
「それは、ないけど」
目を凝らせば遠くにオレンジに光る海が見える。楽しそうな祭囃子も聞こえてきそうだ。あと少し、もう少しで花火大会の観覧場所に辿り着けそうだった。
確かに今更行ってちゃんとした場所で観れるか。それはわかり切った答えではあったが、やらない理由もなかった。
「あと十分…」
時間通りに花火が始まれば十分後に花火が打ち上がる。人通りの少ないこの場所からでも見えるかもしれないが、どうせならもっとしっかり……。
「はっきりと見える場所…?」
「え?どうしたの?」
「かぐや。花火見れるぞ。この裏なら」
「花火?でもまだ距離が」
「うるさい。行くぞ」
僕は柄にもなくかぐやの手を取って走った。手を繋いでいるからか、さっきよりも距離が近い。まぁ今はそんなこと関係ないよね。目的地は定まってる。
光の少ない住宅街に月明かりが道を作る。僕はそれに導かれるように道を辿った。
「ほら急げ、始まっちゃうぞ」
「間に合うの?花火見れるの?」
「あぁ、観れる。さぁ早く」
手を握る手にさらに力が入る。そして僕はその場所に辿り着いた。
「って、立ち入り禁止じゃないか」
立っている看板は[花火大会より関係者以外立ち入り禁止]の文字。目指していたのはある河川敷。ここからだったら花火を裏から見れる。そういう計画だ。
「何してんの?行くよ」
「いやいやいやいや、何を平然な顔してロープ超えてるのさ」
「えぇ、こんなところで真面目出すなよ」
「出すよそりゃ。そんなことしてまで、」
「かぐや。いいこと教えてやろう」
「なに?」
「犯罪はバレなきゃ犯罪じゃないんだよ」
「それダメなやつーー」
ぶいーーと大きな声を出す姿は可愛らしい。まぁでも今はそんなことも言ってる場合じゃないな。僕はそれに、と言葉を足した。
「今僕は楽しいんだ。予定もうまくいかないし思い通りにならないけど、僕は今かぐやと笑えてる」
「もう」
「楽しいこと最優先。かぐやを見ててそう思ったよ」
その言葉と共に僕は手を伸ばした。できる限りの笑顔を浮かべて。
「仕方ないなっ!」
するとかぐやは僕の手を握り返しロープを超えた。それからしばらくしたのち、バーン。と大きな音が聞こえた。
花火だ。
立ち入り禁止の場所で眺めた花火はいつも通りだ。だというのにいつもより美しく見えた。ふと横に目をやると花火の光に照らされるかぐやの笑顔があった。
それから数分。多種多様花火を数分間に渡り見終えた。そして最後のクライマックスでは思わず声が出てしまうほど大きな花火が見れた。
立ち入り禁止の所以なのか、花火はいつもより大きく見えたけれどちょっと危ないような気もした。まぁ生きてるからいいけど。
「かぐや。どうだった?」
ふと感じた疑問をそのまま口にする。
「最高だったよ。ありがとう!!でも、終わって欲しくなかったな〜」
あはは。と乾いた笑みを溢すかぐや。頬を伝う水滴に気づくのはもう少しあとだった。
「そうだな。花火綺麗だったもんね」
「うん。それと、それと、、」
辺りはすっかり暗くなっていた。それこそ、月の明かり以外に僕らを照らすものはない。終始バレなかったこの場所にいつまでも居座り続けるわけにも行かないので僕が立とうとしたその時だった。
ギュッと僕のズボンの裾が何かに引っかかった。いや、引っ張られた。
ギュッとしっかり握っているのはかぐやの手。かぐやの手の震えをズボンを辿って僕に伝わった。
「楽しかったよ。ありがとう。ありがとう」
「どうしたんだ」
そこで僕はようやく気づいた。かぐやは酷く泣いていた。頬につく水滴が反射して光る。
「確かに綺麗だったけど、泣くほどか?」
「うん。泣くよそりゃ」
多分かぐやは今笑顔なんだろう。笑顔なのに泣いている。もしかしたら花火だけが理由じゃないのかもしれない。
「本当にありがとう」
ありがとう。か、なんでそんな言葉を僕に伝えたのだろう。なんで泣いているのにありがとうなのだろう。悲しくて笑っているのか。はたまた嬉しくて泣いているのか。僕にはわからない。
「なんで、震えてるんだ」
「なんでかなぁ〜こんな幸せなのに…」
かぐやは一息を置きなんとか言葉を絞り出した。それは僕が最も予想していない言葉だった。
「“私には帰る場所がないの”」
「………」
そんな言葉を言うかぐやはさっきよりもはるかに大きな水滴を目尻から溢した。かぐやは泣いていた。
◇
僕は何をしているのだろう。この少女の素性、家系、人生。何もかもわからないのに僕は少女と帰路を共にしていた。
数分前、かぐやが帰る場所がないと言った時、僕は手を差し伸べていた。かぐやは涙を拭いながらもその手を掴み返す。僕たちの関係は進展した。
横には涙を流している少女はもういない。ただ笑みを浮かべるかぐやがそこにいた。
「よかったの?私なんかを家にまた呼んで」
「んまぁ、いいんじゃね?犯罪はごめんだけどな」
「立ち入り禁止に入ってたのに〜?」
「楽しかったろ?」
「とっても!」
帰り道、あえて電車は使わないことにした僕たちは夜道をそんな雑談をしながら歩いていた。かぐやはいつになく笑顔だ。
元より顔がいいかぐやがこんな最高な笑顔をしているのはだ。本当に直視できない。笑顔が最高の化粧だと初めてそんなことを実感した。
「そうだ、結局私はまだ家にいていいんだよね」
「んまぁ、家出じゃないんだろ?」
「何度も言ってるけどそうだね〜。時が来たら帰る場所ができるんだけど…」
「帰る場所…」
不思議と足取りが重くなった。
「うん。帰る場所がないっていうのも帰れないのとほぼ同じだからね」
「よくわからないな」
「ふふ。ミステリアスな女はモテるんだよ」
「そうかいそうかい」
かぐやはどの女の子だ。ミステリアスとか変なことを考えなくてもモテそうだ。それこそ今彼氏がいないことが不思議だ。
そもそも彼女は今何歳なんだろう。冷静になると僕はかぐやのことを何も知らないんだと実感する。
「かぐやって今何歳なの?」
「君らしいや。ん〜君たち基準なら大体二十一歳ってところだね」
「それじゃあ僕と同いじゃないか。何年生まれだ?」
「んー千九百〜んー」
「なんで曖昧なんだよ…」
女性というのは謎だ。二十数歳なんてサバを読む必要もないのに。まぁでも隠しているのなら深掘りするのも野暮というものだ。僕はそれ以上追求することはなかった。
「むーなんか嘘ついてるみたいだけど本当だからな?」
「解ってるって、信じてるよ」
「おー!ならなかったよ」
でもこの事実はどこか嬉しかった。なんでなんだろうな。最近こんなことが多い気がする。
「歳も近いし、仲良くなってきたしそろそろいいかな?」
「ん?なんだいきなり」
かぐやはそうやって立ち止まり僕の顔を覗き込んできた。こんなことをされたのは初めてで少し動揺してしまう。
僕何かやっちゃいました?
「姫って呼んでいいよ」
「呼ぶかばーか」
思ったよりもしょうもないことだった。そういえば初めて会った時もそんなことを言っていた気がする。そこまでして呼ばれたいものかね。姫だなんて距離のありそうなあだ名。
「バカとは失礼だな。でも君ならいいかそれでも」
「自己完結しないでくれ、かぐやはかぐやだろ」
「うん。それでいい!」
かぐやの笑みに釣られて僕も甲が上がる。こんな生活もありだな。心の底から思うのだった。
この瞬間が僕とかぐやの不思議な暮らしは本当の意味で始まった。
◇
オフィスの窓から強い日光が差し込む。暑さにやられた外回りの人たちがゾロゾロと帰ってきた。手にはアイスを持った人もいる。一応ここ会社なんだけどな。
オフィス内の冷房もいつもより低めの設定だ。どうやら今年の夏は過去最高の平均気温を記録しているらしい。
あの横浜の花火大会を思い返せばつい昨日かのように思い出せる。そんな今日はあれから二度目の夏だ。
「先輩これお願いします」
「はいはい。わぁ〜さすが仕事できるね」
いつも通り作った資料を一度先輩に確認してもらう。今回のは自信作というわけでもないけど上手くできな方なのでこうやって褒められると自信が身につく。
帰ったらまた報告したいな。なんて柄にもないことを考えてしまっていた。
「うん。オッケー。これなら大丈夫だと思うよ」
「本当ですか!ありがとうございます」
「本当本当。優秀なのを部下に持てて幸せだよ」
「いやいや、僕も先輩みたいに頼り甲斐のある人いてありがたいです」
「おっ、口が上手くなったな」
先輩とそんな話をしていると、一年前と同じような誘いが舞い込んできた。
「そうだ、久しぶりにご飯どうかな?今日の夜とかさ」
「今日の夜、ですか」
正直行ってもいいと思っている。しかしそれを口に出そうとすると何かが僕の頭に引っかかる。それを考えるうちに理由は明白だ。いや、考えてすらないかもしれない。
僕の頭には常に家なし少女のお姫様が居るのだから。
「ごめんなさい。お断りさせてください」
「………そっか。やっぱし君は変わったね」
呆然と空を仰ぐ先輩。なんで僕なんかでそこまでの表情ができるのか甚だ疑問が残る。
しかし、僕は僕の気持ちを優先するべきだ。なんてことを思った。
僕の家に居座るお姫様。僕と彼女の関係はとても異質と言えるだろう。
付き合っているわけではないし結婚なんてもってのほかだ。お互いがお互いのことをあまりにも知らないし知ろうともしない。しかし信頼関係はあった。そんな少女の名前はかぐや。自称かぐや姫だ。
あれから僕は敷布団を一枚購入し、本格的にかぐやとの同棲が始まった。家事全般はかぐやがやってくれる。そこは本当にありがたかった。
床で寝るのも慣れていたせいか身体のコリももうない。僕はそんな生活に無意識のうちに幸せを感じていた。
◇
「本当、いろんなところに出かけたね」
「どしたの急に」
家に帰り、家具屋の出迎えを受けてから僕は机の前に腰を下ろす。すると、流れるようにかぐながご飯を前に出してくれた。
タイミングが完璧だ。「いただきます」と互いに声を揃えて食事を始める。一年前と比べてその味は驚くほど上達していた。もともと不味くはなかったのだから本当にすごいことだ。
食事を初めて少ししてから僕が吐いたそんな言葉にかぐやが突っかかってきた。
「んー花火大会が僕たちの分岐点だったと思ってな」
「横浜の?懐かしいね」
「あれって今日でちょうど一年なんだ。そう考えるとこの一年かぐやといろんなことしたなって」
「確かにね。君会社の食事会断って私のところ来るんだもん。私のこと好きすぎない?」
「そーなのかもな」
「………」
「なんだよ」
かぐやが真顔で僕の方をじーっと見つめてきた。少し頬が紅い気もする。もしかして熱か?
「いや、ね?」
「ね?じゃなんもわからないって」
「はぁ、もういいよ」
「良くない良くない。なんだってんだ?」
そんなふうに僕が聞くとかぐやはうまく話を逸らしてしまった。
「さぁ?そんなことより今年の夏は電車で海でも行こうよ」
「うーみー?それになんで電車なんだ」
一年前、花火大会が終わった後僕は車の運転免許を取り車を買った。中古で安いやつだったけど僕が乗る分にはまぁ害はなかった。
それから数ヶ月後、親が新しい車をくれた。どうやら免許をとったなら言えということだったらしい。僕には勿体無いぐらいのいい車だ。
故に、電車である必要はない。海に行くなら車の方が幾分か便利だし。
「まぁ確かに、車の方が便利だしこの一年車でいろんなところに連れて行ってくれたけどさ」
「うん」
「一年前の花火大会は電車で行ったりタクシー乗ったり、私の中じゃあれもいい思い出だよ」
「いい思い出か。真逆に乗ったのもか?」
「むー。それを言うかね」
かぐやとの雑談は楽しい。それこそいつまでも続いてほしい程に。
ただそんなことを口に出して終えば負けなような気がするから僕は心にしまっておく。いつか打ち明けられる日が来るのかもしれない。
僕はスマホを取り出しカレンダーのアプリを開く。空いてる日に海。という端的な文字を添え僕はその日を待ちどうしく思うのだった。
同時にニュースアプリから通知が届く。
[今年の夏の満月。今年の夏は〜…]。と、満月についての記事だった。そう言えばかぐやと初めて会った日もただただ月が大きかった気がする。
海に行く前日が満月のようだった。そうすれば翌日も明るさは残っているかもしれない。さすればきっと海がより一層楽しいだろう。
僕は少しうきうきしてしまうのだった。
◇
数日後、僕らは少し遠出をしていた。やってきたのは上野。まぁ有名なところだ。
かぐやと僕はなんと同い年という事実が一年前に発覚しているので僕たちは程よい居酒屋を探し街を歩いていた。
「どこも閉まってるね」
「というかいっぱいいっぱいって感じ」
その街は仕事を終えたであろうサラリーマンやまだ若い大学生などで溢れていた。それが理由かお店はどこもいっぱい。僕たちが入れるような場所はなかった。
そんな時横でかぐやが声を上げた。
「あっ!私ああゆうところ行ってみたかったんだよね。なんかの雑誌で見てさ。人間図鑑みたいな」
「なんだよそれ。聞いたことないぞ」
人間図鑑という興味深そうな本は少し置いといてかぐやの指の先に目を向ける。
そこにあったのは一台の出店だった。どこか屋台のように見える。
アニメとかだとおでんと共にお酒を飲むのに使われていそうなレトロな雰囲気を醸し出す。少し僕も行ってみたかったのでそれを了承しそちらに歩を歩ませた。
「いらっしゃい」
「おっちゃんまだやってるー?」
かぐやが開口一番にそんなことを言うので少し驚いた。そんなありきたりな言葉どこで覚えてきたんだ全く。
「おー嬢ちゃんやってるよ。座れ座れ」
店主さんも人がよくそんな対応だった。
この一年を通し、かぐやと酒の席を共にしたことはないが果たして強いのだろうか。僕自身はそんなことがない。
まぁ人並みといったところだろうか。先輩と飲みに行った時もかなり自制したとはいえほぼ呑まなかった。
そうこうしている間に僕たちは乾杯を交わした。
かぐやは次から次へとお酒を注文する。僕はまだ一本目というのに彼女は一体どれほど呑むのだろか…。
余談だが、この屋台にはおでんはなく、代わりに焼き鳥がメニューに綴られていた。
◇
「あぁ〜もうやっていられまへんな」
「なんでそんな意味不明な口調なんだよ」
「けっ、おっちゃんもう一杯!」
「いいのか?あんちゃん止めなきゃまだまだいくぞ」
「た、たしかに。なぁかぐやもうやめといた方がいいんじゃないか?」
「うるっせぇぇぇ月を見てもう…あっ、」
その瞬間かぐやは涙を流した。涙の真相。それを知った時僕は激しく後悔をした。ただそれままだ先の話。
今はただその時間に浸る。
「てかなんで泣いたんだよ」
「あーこれ泣き上戸だね〜あんちゃんこの先大変だぜ?」
「泣き上戸?かぐやがこの先お酒呑んだら毎回こうなるんすか」
「可能性が高いってだけだ。はっはっはっ。可愛い顔してるんだから許してやれ!」
確かに涙すらもかぐやにとっては味方だ。月に輝いている。
確か一年前の花火大会もこうして泣いていたような気がする。あの時より反射する光の量が少ないような気がするがどうしてだろう。
かぐやが見上げる月を見る。数日後には綺麗な満月になりそうな少しかけた月だった。
あの時と同じならこのあとかぐやはきっとあのセリフを言うのだろう。真っ赤な顔がだいぶ酔っ払っているのを表す。そんな中でかぐやはこう言った。
「帰りたくないよぉ」
「…えっ」
かぐやから出た言葉は大幅に予想と外れていた。
帰りたくない。そんな言葉を聞いたのはこの一年でも初めてだ。それこそこれまでといえば“帰る場所がない”という聞き馴染みのある言葉。初めて会った日も花火大会の日もそう言っていた。
なのになんで今日は“帰りたくない”なのだろう。ふと空を見上げる。次の明かりがいつもより明るく見えた。
◇
それから少し時間を過ごし、僕らはその屋台を後にした。
酔っているからか大きな声で「あざしたー」と叫ぶかぐやの声は上野の街に響き渡った。
少し落ち着いてから僕たちは電車に乗って家を目指した。ほぼ終点の現在の時刻では電車の中のスカスカが故僕たちは二人揃って先に腰を下ろしていた。
かぐやはどうやら寝ているようだ。しかし僕は寝る気にならなかった。頭に残るかぐやの言葉。気にするようなことではないのかもしれないがどうにもそんな風には考えられなかった。
それこそ”帰りたくないよ”と言う言葉にはそれ相応の意味があるはずだ。この一年かぐやのいろんな姿を見た。いいところ悪いところ本当にいろんなことがあった。
てっきりそんな生活は永遠に続くんじゃないかと思った。仕事がから帰ってくれば家庭的なご飯が並べられている。お風呂も暖かい。朝はなにもせずとも支度が終えられている。そんな生活を当たり前に感じてしまっていた。
当たり前にしてしまっていた。それは今もそう思ってる。果たしてそのままでいいのだろうか。
明日の朝も夜もきっと続く日常を日常として感じていいのだろうか。僕は何かをかぐやに…。
そんなことを考えていると僕らの家からの最寄駅のアナウンスが入った。同時に思考は中断され、肩に寄りかかっているかぐやを起こす。
少しはアルコールが抜けたようでさっきよりマシな様子だった。
家に帰った僕はかぐやに先にお風呂に入らせ、その間に寝る支度を終える。そして僕もかぐやと入れ替わる。かぐやには先に寝ておくように頼んだ。
お風呂の中で見たニュースの記事。どうやら明日は満月のようだ。
◇
「ねぇ、もう寝た?」
お風呂から上がり床に寝っ転がる僕の耳にそんな言葉が聞こえてきた。部屋には僕とかぐや以外の人間はいない。すなわち声の主はかぐやだった。
「まだ起きてるぞ。どうした?」
「私さ、酔っ払って変なこと言ってなかった?」
ぎくりとした。
「あぁとくには」
「そっか、なら…よかった」
どうしたのだろう。どこかあどけなさを感じる。
いつもならもう少し元気だ。眠いのだろうか?
「ねぇ、今日一緒に寝ない?」
「一緒?どうしたんだ急に」
「どうしたんだろ。そう思っちゃったんだよね」
「つまり、」
「うん。ベットに来て」
一年間共に過ごしてきたがこんなことも今までは無かった。それこそベットを譲るとかは散々言われたがその全てを断った。が、一緒にという選択を取ったのは初めてで少し驚いた。
「なにバカなこと言ってるんだ。まだ酔い覚めてないんじゃないか?」
「そうかも。でも、だめ?」
「うぐ、」
そっとそちらに視線を向けるとベットにちょこんと座りこちらに視線を送るかぐやの姿があった。
そんな風にお願いされて終えば断るのも罪悪感が生じる。僕は自分に一年間共に過ごしたんだ。兄妹のようなものだろうと言い聞かせ、なんとか言葉をついた。
「あ、し、仕方ないな。じゃあ早く寝ろよ」
「うん!ありがとう」
そこで見せた笑顔はきっと今までで一番美しかった。
◇
翌日、僕はいつも通りに目覚めた。本日も休みであるので朝はいつも通りかぐやとゆっくり過ごす。はずだった。
いつとならゆったりと過ごしている時間帯、かぐやはなにやら準備を始めた。いつもに増してオシャレをしているし、どこかに出かけるようだ。
「ねぇ、君も一緒に出かけない?」
そんな問いかけをされ、理由もわからぬまま僕たちは外に出た。なにがあるのかわからないが、今日の部屋は異様に綺麗だ。
「かぐや、どこに行くんだ?」
「ちょっとね、まぁ夜にはわかるよ」
向かってる方向的に最寄りの駅だろう。最近電車でどこかに行くということが増えた。それもこれもかぐやと出逢ってからだ。
本当に、なんというか。幸せだ。
それから僕はしばしの時間電車に揺られ続けた。
会社の最寄りを声、横浜を超え、さらにどんどん進んだ。それこそ運賃を考えるのも恐ろしかった。
「安心して、今日は私が払うから」
「なんで心読めるんだよ」
払う。と言われたがそんなことをされるつもりは一切ない。なんならかぐやの資金面はほぼ僕が握っている。
この程度、と思えるのもかぐやのおかげだろう。
そんなことを思っている最中、かぐやが声を上げた。
気づけば周りに人は居なくなっていたのだが、静かな声だった。
「私は弱いよ。最後まで君を…」
「ん?どうしたんだよ急に」
様子のおかしさには鈍感な僕でも気づく。それになんでか泣きそうだ。
ここで僕は気づいた。こんな駅、知らない。
アナウンスで繰り返される駅の名前[稲荷図市]。思い返せば他にもおかしなところがたくさんあった。
[二手観音寺][大端港駅][天空橋][トワイライト・シティ]
その全てに見覚えがなかった。それに異様なまでに静かな車内に目を向ける。誰もいない。
僕は怖くなった。辺りの明るさもどんどん無くなっていく。見える明かりはまん丸な満月だけだった。
「かぐや、これどこに向かってるんだ?僕たちはどこに」
「[月光駅前]っていう駅だよ。ごめんね付き合わせて…」
「ごめんって、何の用があるんだそこに。そこはどこだ?」
「それは、、東京。東京の…」
「東京?そんな駅聞いたことないぞ。なぁ?からかってるのか?」
「からかってなんかない。でも私は、私は」
そこで気づいた。かぐやは酷く震えている。涙こそ流していないが昨日の屋台と同じだ。
そこでまたあの言葉を思い出す。“帰りたくないよ”なにも考えたくなかった。しかし、それが、その駅に近づくにつれ、その事実に気づいていく。
「電車、どうにか止まらないのか。なぁかぐや」
「止まらないよ。それが、ルールだもの」
そんな時アナウンスが流れる。
[次は、月光駅前、月光駅前でございます。お降りの際は…〜]
それは僕たちの終わりを告げる合図だと、すぐに気づいた。
「さぁ、降りるよ」
「降りるよって、なんでだよ。なんで震えてるんだ。なんで我慢してるんだ」
僕の必死の問いかけに答えはない。プシューと開いた扉から二人で降りる。意味がわからないがかぐやが降りたのだから後を追うしかなかった。
「ごめんね。本当に勝手で、楽しかったよ。ありがとう」
「なにを…」
そんな時、聞き慣れない音が鼓膜を叩いた。
◇
それはまるで祭囃子のようでどこからともなく聞こえてきた。琴だろうか?笛のような音も聞こえる。僕は不気味で怖かった。
ただきっとそれは音に対してじゃない。このあと起こる悲劇についてだ。
音がだんだんと大きくなるとさっきまでなかった場所に線路が繋がれていた。その線路は月明かりでひどく照らされてる。
いや、線路だけでなかった。気づけばその場所に小さな駅が構築されている。
まるで意味がわからない。こんなこと、科学的にあり得るのだろうか。聞いたことがない。
月の光に照らすその駅[月光駅]。英語表記で。
「ムーンライトステーション…」
その字を読んだ時、身体が軽くなったのを感じた。いや、違う。動けなくなったのだ。
実際に足は地から離れ、力を入れられない。一方かぐやはというと普通に歩いている。歩いてムーンライトステーションに向かう。
僕はそれを止めることができなかった。歩く後ろ姿を見ていると、いろんなことが走馬灯のように頭を駆け巡った。
ご飯を作ってくれたこと、喧嘩したこと、泣かせたこと、仕事を優先したこと、お風呂を張ってくれていたこと、楽しかったこと、悲しかったこと、嬉しかったこと、楽しかったこと、楽しかったこと、たのしかった、、こと。
僕は家を貸しいつかそれを当たり前に感じていた。僕はずっとかぐやに嘘をついていたのかもしれない。
僕は叫ぶ。
「かぐやーーー!!」
振り返ってくれないかぐやに僕は叫ぶ。
「勝手なことするなよ。まだちゃんとお礼してもらってないだろ。家を貸していたのにその恩を…わすれ、、」
あぁ、涙が止まらない。刹那、線路を照らす一筋の光が見えた。僕は直感で理解した。電車だ。
きっと僕たちのような普通の人間が乗るようなものじゃない。かぐやのような特別な人間以外が乗る、列車だ。
「あぁ、かぐや、、」
声が出ているのか出ていないのかもわからない。でも、これは僕が伝えないといけないことだった。
家を貸したから?仲良くしたから?そんなことなにも関係ない。
ご飯を作ってくれたこと、世話をしてくれたこと、そんなことに対してじゃない。僕は僕は、。
君に伝えないといけないんだ。今までずっと忘れていたことを。
僕が君に言えなかったこと。『ありがとう』を忘れていたんだ。あの列車が発車する前に…。そして、君が月に帰ってしまう前に…。
『 ぽっぽー 』
「かぐやー!!いろいろあったけど、この一年僕は幸せだった。楽しかったんだ。きっと一人暮らしを始めて少し寂しさも感じてたんだ。それを紛らわすために外に出てた。でもそれを一瞬で無くしてくれた。本当は花火大会、僕が行きたかったんだ。それをかぐやを理由にした。でも、本当に楽しかったんだ。だから、だから……」
「……」
「ありがとう!!!!!!」
「っ!」
その瞬間列車が動き出した。この世のものとは思えない。それは空を飛んだんだ。
列車の中では見知った少女がこちらを見ていた。少女もまた泣いていた。僕と同じように穏やかな顔で泣いていた。
そこで僕は意識を、落とした。
◇
翌朝、目覚めると僕は自室のベッドにいた。朝嗅いでいた匂いはもうしない。あの全てが夢だったのではないだろうか。
買ったはずの床用敷布団や二人用の食器は全てなくなっていた。本当に全て幻だったのかもしれない。
気怠い身体を起こし、朝の支度を行う。なんでだろう。手際がいつもより悪かった。
そんなことをしている間にも、夢の内容は薄れていった。どんな夢を見ていたっけな。思い出せない。
そんな不信感に襲われながらも僕は洗面台の前に立つ。僕は泣いていた。
声を上げるわけでもなく、ただ涙を溢していた。なんでだろう。なんでだ。
気づけば僕はそこに跪いていた。すると棚から何かが落ちた。カラン。と重みを含んだ音だった。それに続き一枚の紙がひらひらと落下した。
僕はそれに手を伸ばした。紙には端的に[初日のお礼だよ]と書かれていて、落ちたのは缶のジュースだった。僕はそれを胸に抱き、更に泣いた。理由もなくただただ泣いた。
意味不明な状況に笑ってしまう。でも涙が止まることはなかったんだ。
遠くで汽笛の音が聞こえた。
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トーキョームーンライトステーション。星空に、列車がやってくる。『月』が君を迎えにきたんだ。この、銀河列車が発車する前に…。
完
どうでしたか?僕の中では少し満足のいく小説には届かなかったかな。と思ってます。やはり原曲にある世界観を引き出すのが出来ていないように感じますね。
特に最後の方。物語の終わりをうまく書けないのはいつも通りなんですけど今回はいつもに増して変ですね。なんとかしたいものです。
まぁ、終わったものは仕方ありません。最初に言うべきでしたが、原曲「ムーンライトステーション」は本当にいい曲なのでぜひ、聞きに行ってください。
さすがはSEKAI NO OWARIです。ハズレがありません。皆さんの物語もぜひ教えてください。
それでは現実の世界へお帰りなさい




