スノーマジックファンタジー
これは僕個人がSEKAI NO OWARIさんの曲であるスノーマジックファンタジーを聴いて「この曲にはこんな物語がある。」と勝手な偏見から生まれた小説です。
二次創作要素となりますし他の方と違った解釈、またセカオワの皆さんの想いとは違うものが含まれているかもしれません。その場合は本当に申し訳ありません。また苦手な方はここで読むのを辞めるのを推奨します。
僕自身楽曲を小説にしていますが、セカオワが大好きな気持ちは持っています。不手際な点がありましたらすぐ削除しますので、連絡お願いいたします。
またこの小説を読む際はスノーマジックファンタジーをぜひ聴いてからお楽しみください!聴いたことがない人はまず聴きに行ってください!
ここまで読んでも大丈夫という方はぜひ楽しんでください!
それでは、不思議な雪の世界へ行ってらっしゃい!!
「なんでこんなこともできないの?」
「あなたが産まれたことが間違えだった。あなたなんて、」
「学習能力があまりにもなさすぎる。お前みたいなやつは見たことがない」
「お前の変わりなんていくらでもいる。弁えろ」
「お前は、ダメだ。いつまでも感情に浸るな。夢を見るな。そんなんだからダメなんだ」
耳に残るそんな言葉。暑い夏も、寒い冬も、四六時中そんなことを言われてきた。
僕はもう悟っている。誰にも愛されてこなかった僕は、きっとこの先も誰にも愛されない。そもそも愛するってなんだ?そんな簡単なことすら解らない。アニメや漫画の恋愛なら少し見たことがある。ただその全てに僕はトキメキとやらを感じたことがなかった。
もし、もしもの話だが、何にも縛られない妖精のような人がいれば、、そんな妄想と願望が混じり合った複雑な感情だけが僕の心を彷徨った。
ただそれは叶わない幻想だと、僕は知っている。その上そんなオカルト話信じるわけもないのだ。だから僕は全てを諦めかけていた。そう、君に出逢うまでは。
だからこそ、不思議だった。全面的に恋愛や友情、さらには自分自身すらそんなに信じていなかった僕は今、目の前の女性に恋をしてしまった。
「もしかして、君は雪の妖精……?」
僕は生まれた時から愛情を全く受けて来なかった。それもそのはず、両親は離婚し僕を引き取った母はそのストレスのあまり父似だった僕を毛嫌った。かと言って、父の方について行きたかったか?と聞かれたらそうでもない。無論離婚には父の影響も反映されている。当然ではあるが、そんな両親に育てられた僕もまた常識が欠けていた。
僕は今、母と一緒におばあちゃん家で暮らしているのだが、無論おばあちゃんも俺に優しくしてくれたり愛情を注いでくれるなんて事はない。
聞いてくれよ!前なんて僕のご飯だけ庭に生えてた草だぞ?おばあちゃん曰く雑草ではないらしいがとても美味しいと言えるものではなかった。え?もちろん食べたさ。それ以外食べるものがあるわけでもないからな。
学校には通わせてもらっている。そんな僕は今高校三年生。案外そろそろ一人暮らしを始めてもいいのでは?と思い始めて早三年。でもなぜか母は、大学まではダメだ。の一点張り。変なところで親のようなことを主張する母に思わずため息が漏れる。
学校が楽しいか?と聞かれてもそれは違う。全力で首を振り否定するだろう。もちろん部活には入らせてもらえないし、まともな学習スペースがあるわけでもない。塾なんてもってのほかだ。クラスメイトも僕を気味悪がり仲良くしようとしない。と、言うか俗にいうイジメにあっている。
アニメのようなヒーローはいないし、頼れる大人もいない。存外教師っていうのはクソだ。最弱でも優しい先生がいれば何かと結果は違ったのかもしれないがな。まぁそんなことは置いておいて、このイジメも教師も自分の立場や自分の信じたいものを信じ抜いている結果だろう。人は簡単に悪にも正義にもなれる。それを日々痛感する毎日だった。
でも辛いだとか辞めたいだとか。そう言った感情は一切ない。なぜならばそれが普通だからだ。そう、普通。僕にとってはあまりに当然で日常だから。でも、そりゃそうだろ。産まれたその瞬間からそうだった。初めて聞いた言葉なんてそりゃ当たり前に覚えてないけど、物心がついてから愛情を感じたことはたったの一度として無かった。だから悲しくなることなんてなかった。最初から愛されるその世界線を知らないから。その喜びを、知らないから。
ーーそう。僕はこれまでの人生を誰にも愛されることもなく一人で生きてきたーー
そんな僕は幸せなのだろうか?
そんなくだらないことを考えているうちにどうやら寝てしまっていたらしい。
今日は八月二十一日。そう、夏休みが終わり学校が始まる日だった。
朝は毎日三時半に自分で目覚める。そりゃそうだ、スマホなんて愚か、目覚まし時計ですら僕は持っていない。前に一度だけ母のスマホで勝手に目覚ましをかけたが、その後のことなんて思い出したくもなかった。
そんなこんなで朝起きることには慣れてしまい、なんの苦痛もない。それどころか起きなかった時の方が苦痛だ。
そんなくだらないことを思いつつ、僕は支度に取り掛かる。学校の準備は昨日中に終わらせていたのであとは今朝することだけだ。
布団から跳ね上がり、それを整え、畳み、定位置に戻す。母とおばあちゃんを起こさぬように静かに動き、庭の水やりと洗濯物、そして食器洗いを終わらせて自分の朝食の準備をする。その際キッチンを使うと叱られるので、一旦外に出る。まぁ朝食と言ってもパンの耳と水な訳でキッチンを使うほどでもないので安心だ。今は朝の四時頃。僕はこの時間帯が好きだ。朝だというのにちょっぴり薄暗く、人通りが少ない。自然音だけが耳に届き、さも自分だけの時間なのでは?と勘違いしてしまうこの時間は、まだ街が動き出す前のようで、この時間に公園のベンチでパンの耳を食べるのが日課になっていた。余談だが、パン本体は母とおばあちゃんが食する。
「耳もらえてるだけ、マシになったよな〜」
静かな朝に僕は一人そんな言葉を溢すのだった。
それからどのぐらいの時間が経過しただろうか?辺りの明るさは太陽の見える面積と比例するように明るくなっていき、チラホラ車や人の声なんかも聞こえるようになってきた。長年の経験から行くと五時から五時半の間だろうか?そう考えるともう一時間も外にいるんだな〜と感情に浸る。とっ、そんなことをしている場合ではない。そろそろ帰り、まだまだ溜まっている家事をしなければならない。家を出ていく時間は大体六時半。これから帰ればちょうどいいぐらいだろう。と、残りの耳を口に含み早足で帰路に着くのだった。
家の前までつき、裏口から家に入る。なぜ正面玄関から入らないのかというと、答えは単純明快。音が大きいからだ。
もし母が寝ていたのなら、その後起きることがめんどくさいったらありゃしない。おばあちゃんも同じだ。と、そんなことを考えつつ、僕は裏口のドアノブをひねった。そして、そこでその光景を見て、僕は絶句した。
「何してたの?早く支度終わらせてくれない?」
「は、はい。しょうしょ、」
「その汚い声を聞かせないで。黙ってやって」
「…」
そこで僕が目にしたのは、すでに起きておめかしをする母の姿だった。
僕は家事の準備に取り掛かると同時に、時計を確認する。時刻は六時を回る少し前、普段ならどちらとも寝ている時間だ。ならなぜ、こんな時間から母は起きていたんだ?と、僕はそんなことを思うのだった。
それはそうと時間は過ぎ去り、僕の登校時間。
大きく投げかけた「行ってきますー」の言葉には当然なにも帰ってこない。まぁまぁ当然だな。
この時間帯になると、先ほど出てきた時とは違い歩く人も車に乗る人も多くいる。
そこで僕は庭の花壇に水をあげているご近所さんを見つけた。僕は朝となんら変わりなく「おはようございます」と声をかけたのだが、
「…はい」と、帰ってきた言葉はただそれだけであった。これは普通なのかどうなのか。実の親からも同じ対応なので慣れてしまっている自分がいる。よし!と切り替えて学校に向かうのだった。
学校でも開口一番は「おはよう!」と大きな声を出した。まぁまぁそろそろみんなも分かっていると思うが、帰ってくる返事は。
「………」
ない!
それどころか僕の机はいつもの場所よりかなり後ろに設定されていた。うん。意味わからん。
「ちっ。また変なのいるぞ」
「ははは〜懲りないね」
ん?
あぁ、あいつらは僕の机をこうした張本人だ。でも、別に恨んでいるわけではない。あれでも僕に関わってくれているわけだし、存外悪いやつではないのかもしれない。
「ねぇねぇ、なんでまだ生きてるの?」
「え?なんでって言われるとなぁ〜?」
「喋んなよ。きったねぇ声」
僕にはみんなこういう。
声を出すな。耳障りだ。汚い。
ここまで言われるとやはり自分のせいなのではないかと思っている。なんとか、ならないかな〜。と一人そんなことを思うのだった。
そんな悩みも知らず、時は止まることを知らない。
世の中ではそれを残酷だというのかもしれないが、僕はその世の中すら知らない。
いつまでも、どこまでもこの生活は続いてゆく。
逃げ出せばいいじゃないか。と思う人もいるかもしれない。……でも、そんな簡単に日々から抜け出すことはできない。
普通の価値観の違いはこうやって生まれるのだと思い知らされる毎日だ。一日一日と時間が過ぎるごとにそんな疑問は増え続けるのだった。
気温ももう冷えてきたそんな季節。いつも通り早朝に起きる僕は、そんな朝早くに母と出くわした。
あまりの驚きに僕は「あっ、」とそんな素っ頓狂な声を出した。
まずい、こんな声を出してしまえば、罵倒だけでは終わらない。次には拳が飛んでくる。
そう予想していた。なのにその日は違った。
「早いのね。いつもこんな時間だったのかしら?」
「ん、えぇ?そ、そうだよ。母さんも早いね」
普通に会話を吹っかけてきた母に驚いてしまった。しかし、驚くべきだったのはその後の言葉だった。
「そうね。今日から新しいお父さんがくるの」
「へ!?」
それは僕にとって転機だと思った。これからは新しい生活が始まると思い心を踊らせた。しかし、そんな妄想は、所詮理想だった。
「じゃ、今日の家事やったら出て行ってちょうだい。あなたはこれからさらに邪魔になるの」
「え、、、」
「何を呆けているの?さらに迷惑かける気?」
「い、やぁ、ご」
声が出なかった。ここまでのことを言われるのは初めてだった。その上僕はこれからどうやって生きていけばいい?
人間に必要な三大要素は、「衣食住」というだろう。しかし、ここから出されてしまったらそれを確保できなくなってしまう。
頼れるご近所さんやお友達はいないし、信頼できる人間もいない。毎朝のパンの耳も手に入らない。汚くとも着れる服は今まであった。………それがこの一瞬で全てなくなる。
実際のところ、母と離れることよりそっちの方が辛い。当たり前が突如にして壊れる。こんな恐怖他にあるのだろうか???
「第一章、孤独、、、」
家事を終わらせ、家を出た僕。夏と時間は同じか、それより遅いぐらいなのに、辺は真っ暗だった。
冬の寒さをいつもより強く感じる。そして知ったんだ。これが独りだと…。僕はそんなことを考えながらそんなことを呟いていた。え?「第一章」ってやつは実際僕が口に出したものだよ?
情緒が不安定なのか、そんな思考だけが巡っていた。
「あぁ〜これからどうしよう…」
誰もいない住宅街にそんな言葉を漏らすのだった。
歩いて、歩いて歩いて。僕はいつぞやか、どこかもわからない山に来ていた。いかにもスキーが好きな少女が喜びそうな山。僕もスキーしたいな。
うんうんわかるぞ〜。なんでだって思うその気持ち。でも仕方がない。これが、現実だ。
空を見上げれば星が降り注いでいるようなそんな雪山。ここで一人な僕はあることを悟っていた。
「うぅぅ、さむむ。耐えきれませんなこりゃ」
雪降る山で、僕はついに膝をついてしまった。
「あぁ〜死ぬのかな〜?流石に死ぬよな〜」
極寒の中、誰もいないこんなところで、意識を落としかけているのだ。生き残る術がない。
僕の人生って楽しかったのかな?充実してたのかな?ここに誰もいないことと同じで、これまでも誰にも愛されなかった。独りで生きてきた僕。君ならどう思うだろう?………最後にそんな疑問を残し、僕は目を閉じるのだった。
「……ぃ」
「……ぃ」
ん?
「ぉ……ぃ」
なんだぁ?静かに死を悟っていた僕は微かな音に目を開ける。
「ちょっとちょっと、人の敷地内で自殺?やめてよもー」
「あ、、、」
空いた口が塞がらないとはこのことだと今この瞬間に実感した。
だってそれはそうだろう。ここは雪山。それも住宅街が近いとかそんなものではない。なのに、、。
「あれ?無視?待ってもう死んじゃった??」
だと言うのに、目の前の少女はさも当然かのように、僕に話しかけてきていた。
「そんなはずないんだけどなぁ〜?」
その上おかしいのはそれだけではない。この少女は薄着だ。確かに僕も薄着だけど、そのレベルを超えている。なんだ?ここは夏か?とまで思ってしまう。
もしかして、君は…。と、一つの仮説がうかぶはぁ。
「えい!」
そんなことを考え、唖然としている僕に少女は雪玉を投げつけてきた。
「へぶし、うぇ?」
「なんだ生きてるんじゃん。ってことはさっきまでのはやっぱ、無視?」
「いや違う違う。悪かった。ちょっと気が動転していて、」
「そっか、まぁいいや」
いいやって、軽い女の子だなあ〜とそんなことを思ったのも束の間、僕はその疑問に気がついた。
「てかなんでこんなところにいるの?」
「へ?」
「へ?じゃなくて、、、って絶対おかしいよね!?」
「何もないよ〜さっきも言った通り敷地内だって、逆になんでいるの?」
「あぁ、おかしくないか。僕は…」
って、いやいやいや。絶対におかしい。この状況おかしくないのは目の前の少女だけ。てか敷地内?何を言っているのだろうかまるで理解が追いつかない。
「おやおや、お悩みだねぇ。教えてしんぜよう!ここはスノーランド。一年中雪の降る山だよ。私はねここに住んでるんだ」
「そーなんだ」
頭の中には?しか浮かばなかった。
そもそも信じろっていうのが無理な話なのだ。スノーランド?一年中雪が降る?ならどうやってここに住むんだ。そもそも地球の構造上一年中雪が降ることがあり得るのか?
思考を巡らせれば巡らせるだけ、謎が生まれてくる。元はと言えば僕がここにいる理由もよくわからなかった。
「まぁーたダンマリ?考え事のしすぎは早死にの原因になっちゃうよ」
「、、ま、待ってくれ。どうしてもわからないことがあるんだ。ただそれだけ質問させてくれ」
「んーいいよ」
そうして僕はその疑問を口にした。その僕の人生を正反対にひっくり返す事実の確認のために。
「もしかして、君は人間じゃない?」
大前提だが、僕はそう言った類の話を信じているわけではない。だから、だからこその確認。
だというのに、彼女はとんでもないことを口にした。
「そーだよ。雪山にこんな薄着貴方か私しかいないよね〜。おっとつまり貴方も妖精だったりする?」
「いや、全然しないけど。てか…へ?」
僕はこの人生オカルトの類を全く信じていなかった。そう目の前で輝く君を見るまでは……。
「第二章、初めて」
「うん」
「なにいきなり?びっくりしたぁ〜」
「気にしないでくれ癖みたいなものさ」
「人間は変な癖を持ってるんだね。新発見!」
目の前ではははと笑う少女について少しわかったことがあった。
一つ、少女は人間じゃないと言うこと。
二つ、少女は雪の妖精だということ。
三つ、少女は僕に好意を持ってくれていること。まぁ、興味かもしれない。
そして、四つ目。少女は夏を見たことがないということだった。
自分としては三つ目がかなり信じがたい。これまでの経験談的にあり得る話ではないのだ。
「あーぁー夏見てみたいな〜」
「本当に見たことないの?てか季節的にはあるんじゃない?」
「なーいよ。燃えるような気温の中でみんなが外に出て笑顔で遊ぶ。"夢"だね〜」
なぜ夏にそこまでの熱を持っているのだろう。見たことがないというのが事実であっても、見に行くことは容易いはずだ。そこまでする理由は一体どこにあるのか。
そこで僕は一つの提案をしてみることにした。
「じゃあさ、夏見に行ってみる?海とかどうよ」
「能天気だね。魅力的だけど遠慮させてもらうよ」
今バカにされたか?と、そんなことはどうでもいい。僕自身でもこんな提案滅多にないと思った。すぐに食いついてくるものだと勝手に思っていたのだが、存外そういうわけではないらしい。
少女の声は、少し震えていた。
「それにね!案外知らない方がロマンチックなこともあると思うの!私は夏を知らない。でもそんなものこの世界にはたくさんあるでしょ?」
「まぁ、たし、、かに、ね…」
迷いがあるわけではないのだろうか。その声には芯が刺さっていた。
初めてすぎる感覚だった。
実際に会って、少女と目を見つめ合い正面で会話をしている。そして、相互に意見をしっかり交わし、僕の声がしっかり届いている。なおかつ、少女の強い意思も感じ取れた。かつて、こんな経験をしたことがあっただろうか。その答えはもうすでに自分ではわかっていた。
「あ、そうだ。君は妖精だから、やっぱり年齢は200歳とかなのかい?」
「夏、いいなぁ〜」
なんかナチュラルに無視された。
まぁ、慣れはあるが故かそんなこと気にもしなかった。流れのように僕は次の話題を探す。
「でも、冬も結構良くない?僕は好きだな」
「ずぅーーっと冬なんだよ?それを経験したことないからね〜。貴方もきっとこの山に住めばわかるよ」
ごもっともすぎる意見に僕は口を閉ざしてしまった。
まずいな。ここで何かを言わないとまた会話が途切れてしまう。せっかくの出逢いだ。大切にしたい。
「たーしかに?そう言われちゃうとな」
と、一言発し、思考を巡らせているその直後のことだった。
その場に響き渡った声は、僕のものではなかった。
「そんな考えることある?言いたいこと言う。それができるのが人間でしょ?」
相変わらず、少女はニヤニヤと笑っていた。ただ少し、目元の緩みが温かみがました声だった。
自分の言いたいことを言える。僕はその言葉にハッとしたんだ。これまで僕はそれをできていなかったのではないだろうか。これまで、僕が考えてきたことは、果たして誰のためなのだろう。頭の中にさらに?が巡った。
「また考え込んじゃって〜まぁいいけどさ」
こんな小さな少女が何を考えているのか、そんなことすらも今の僕にはわからなかった。でも一つ、その瞬間に何かが確実に変わった。それだけは、確かだった。
「あっ!そうだそうだ。こんなところもなんだし、私の家くる?」
「んぇ?家あるの?」
「全く私をなんだと思ってるんだい?」
「あ、ごめん」
「はぁ〜。どうせ行く場所もないんでしょ?私も暇だからほらほら」
そう先導する少女の背中を僕はついていくことにするのだった。
「わぁ〜、、」
「なによそのなんとも言えない反応」
「え?いやいゃ、え?これが家?」
「失礼なやつだな。悪いのか?入れてやらないぞ」
いや違う。その真逆だ。
こんな家みたことがなかった。本当に、開いた方が塞がらなかった。多分これをまた全員が僕と同じ反応になると思う。そのレベルで、すごい家だった。
「いやさぁ〜?まぁ確かに小さいけど、案外住めば都と言いますか?」
「まぁ、確かに大きくはないけども…」
「はは、キッパリ言うかねそれ」
大きくないと聞いて頭に?を浮かべた人も多いことだろう。あんなに驚いていたのに、実は小さすぎてなんて言われたら誰も笑えないからな。
だからこそ、その事実は人を驚かすことができると思う。なぜなら、、
「あぁ、雪でできてるのが珍しいのか。そゆことー」
「ネタバレするなよ〜…」
「誰かに見せるわけでもないんだからいいやんいいやん。それにね、案外中は普通だったりするんだよ」
少女は無邪気にそう言う。
まったく、いつ誰に見られてるのかわからないのだから少しは警戒心を持ってほしいものだ。とはは。と、僕はため息を溢すのだった。
「ねぇーねぇー??」
「ん?なに?」
家でゴロゴロくつろがせてもらっていると、少女が僕に声をかけてきた。といっても、これまで会話が全くなかったわけではないので驚くようなことはなかった。
「いやさ、なんでそんなところできっちり立ってるの?」
「なんで?んーー考えたこともなかったな。こうしていないといけない環境だったから?」
「えっへー?なにそれ変なの」
人にはあんなにいうくせに、自分の発言には全く責任を持たない妖精だ。全くおかしな出逢いをしてしまったようだったことを今改めて理解した。
「出逢い、かぁ〜」
そんなことを考えていたからか、僕は知らぬ間に言葉を溢してしまっていた。
「なにきゅうに?相変わらず変な人だね」
「君にだけは言われたくないな〜切実に」
「残念私は人じゃないんだなぁ〜」
そう言って少女はまた笑う。
なんでか、僕にはその空間がとても心地のいいものだった。本当になんでかは、わからなかった。
「きっと貴方は私を好きになっちゃったんだね」
「ぶっふぉッッ」
なぁーにを言い出すんだこの小娘は。唐突すぎるそんな言葉に僕はお茶を吹き出した。
「ちょっと汚ーい。てか雪溶けちゃうよ。家壊れるーーいや壊されるーー」
「ぶるわぁ!」
なぜか僕が雪玉を投げられるのだった。
投げられる。思い返せばたくさんのことがあったな。
その雪玉が僕に着弾すると同時に、その景色が脳裏に浮かんだ。そう、僕がここに来るまでの数年が。まるで走馬灯のように。
ー数年前ー
「おい取れよ」
「へい、パース」
「あはは〜ぱーすぱーす」
僕は自分のリュックをボールに投げ合いっこをされていたにも関わらず、その遊びに付き合っている。
まぁ別にここで怒ったり、不必要に関与しすぎることは逆効果だということも知っているから当然と言えば当然の行動だ。
「んだよお前、キッショく悪い顔しやがって、オラ!」
「ぎゃはは、俺やるーオラァ」
またこうなってしまうのか。
家でも学校でも地域でも。僕はあらゆる人間に嫌われてきた。あらゆる人間に裏切られてきた。
僕はこんなにみんなのことが好きだというのに、その思いはどこへ行っても片思いのままだった。
ー現在ー
だから最近は最初から期待なんてしていない。
親の迷惑をかけないために、僕は部屋の隅っこで静かに立っている。それがいつの間にか、一番楽な体制になった。そんな経験が造り上げたのが今の僕という人間だ。
「ねぇ、なんで雪玉投げられて笑ってるの?」
「まぁ、いろいろとね。笑い話さ」
「ふーん。変なの」
いたっていつも通り。特別なこともおかしなことも何もない。それが僕の人生だ。
そう、その瞬間までは。
「はい。そんな雪の中にずっといないでよ。家ぐらいいつでも建て直せるんだから」
そんなことを言いながら少女は僕に、こんな状態の醜い僕に、手を差し伸べた。
これはおかしすぎる。理論的に起こり得ないことだ。
だから困惑した。動揺した。そして、そして、感極まった。
「えぇぇぇ、なんで泣いてるのさ。えっと、ご、ごめんね?ごめんなさい。ごめんだから泣き止んで〜」
「泣いてる?僕が?」
「気づいてないの?おかしいよそんな涙垂らして、ほら拭いて?」
「あ、ありがとう、」
「さらに泣いたー!?テッシュ冷たかったかな」
そんなこんなで僕は泣いてしまったらしい。不思議なこともあるものだと思ったが、そんなこと今更すぎることだ。まっすぐ前を見れば、その少女がいるのだから。
「落ち着いた?」
それからしばしの静寂の後、少女は僕に声をかけてきた。とても優しい声音で。
「うん。なんとか。ありがと」
なんでか、少しここちなさを残してしまった。
そもそも僕はなんで泣いていたのだろう。そう疑問に思ったけど、本当はわかっている気がしてならなかった。
「なんか、食べる?と言っても豪華なものはないけど」
「んー豪華なものはなしか。となると何がある?」
「失礼さは変わってないね。お肉とスープぐらいかな?お肉といっても羊だけどね」
「はっ?」
「へっ?」
この妖精今、豪華なものはないって言っていたよな?そのはずなのになんだ?さっきのメニューたちは。
「そんなに羊肉は気に食わない?でもないんだよねここら辺。だから我慢してくれない?」
「我慢だなんてそんなことないよ。むしろいいの??」
「いいよいいよ!じゃあちょっと待っててね〜」
台風のように少女は準備に取り掛かってくれた。
どこか幸せを感じているようなそんな顔をしていた。その理由もまた、僕にはわからなかった。
でも、もしかしたら……この少女と一緒にいるとわかる日が来るかもしれないな。それも近いうちに。その部屋に残された僕は一人、そんなことを感じるのだった。
それから数分。すこし手足の動きが疎くなっているのを感じる頃、少女はさっきとは打って変わった表情で僕のところへと戻ってきた。
「スッッーーー!ご飯、やっぱり辞めない?」
「ガァァァーン。ぅ、どうしたの?」
唐突のそんな方向に驚きつつ、僕はそんな言葉をかけていた。
実際、僕はご飯抜きなど離れているが故、ショックはあるが受け入れることはできる。
「あのね、、料理ミスしちゃった……」
そう言いつつ、少女はその物を僕の前に差し出した。
「ほう…」
「やっぱ辞めよ。こんなね。お腹壊しちゃったら大変だし、、」
「じゃ、いただきます」
僕は少女の言葉をフルで無視し、その食べ物に食いついた。
そして一口食べて、全てを察した。
「おいひぃーーーー!!!なんだよこれ!」
「えぇーー!?」
先に伝えておこう。今から僕が言うことは全てが本音だ。そう、事実なのだ。
「これはびっくり!なんだこれが失敗?冗談も休み休み頼むよ」
「焦げてるよ?硬いでしょ?臭みもうまく消せなかったし…」
「匂いなんて味の一種じゃん。噛めば噛むほど美味しい!これうまいぞほんとに」
テンションの高まりを止めることができなかった僕はそのままの勢いで、スープにも手をつけた。
「あっ、それは、、」
「う、ぐぅ、、」
「あぁぁ、そっちは本当にダメだぁ〜今すぐ吐き出して〜」
そんなあたふたする少女に僕は告げる。
「美味しすぎるだろ。こんなん吐き出すやつとかいるのか!?」
「えぇ〜ほんとー、?」
「ほんとほんと。僕が嘘つける人間だと思う?」
「それはぁ〜、、、思わないかも」
「でしょ?そういうことなんだよ!おかわり!!」
「えへへ、待ってて」
それから僕は五回ほどおかわりをしたのだった。
それからまた少し時間が空いた。
僕は食べ終わっているが、目の前の少女はまだ食べているが故、一つの机に固まっていた。
「ふふふーえへへ」
「どうしたの?ずっとニコニコしてるやん」
僕は思ったことをその通りに聞いてみた。
「ん?そんなニコニコしてた?おかしいな」
「めっちゃしてたよ?とても楽しそうに」
どうやら自覚はしていないらしい。
ただ、そんな顔を見ていると僕としても嬉しく、そして楽しくなってくる。本当に、謎な少女だ。
「でもそうだなぁ〜」
と、一拍を置き少女は言葉を続けた。
「何気にこんな楽しいご飯って初めてだったりするんだ〜」
「?どゆこと?」
「案外そのままだけどな、こうやって一つのテーブル囲んでご飯食べることとかないからさ。楽しい!嬉しい!」
どうやら、少女はこの雪山で多くの一人の時間を過ごしてきたらしい。そもそも、こんな雪山に人が来ること自体ないのだろう。
僕も、そうなのかもしれない。ただの食事がこんなに楽しかったことは今までの生涯一度もなかった。
考えたこともないが、これは楽しいと言えるものだった。
「ん、にしし。そうかもね」
それは知らぬ間に僕の口から溢れた本音だったと思う。そう感じなければ、ここまでの道が否定される気がしてならなかった。
だから、僕は最後に告げたんだ。
「ありがとう。」
と。
僕たちはお互いに食事を終え、一時の休息の時間となっていた。特にやることもなく、ただただ暇な時間を過ごしている。
無論、本当に床でゴロゴロしている。
そんな静寂はその瞬間に、打ち砕かれた。
「ねぇ、貴方はなんでこんなところまで来たの?」
純粋な少女の質問。大した隠すこともないと思った僕はその事実を語ることにした。
「普通に親に追い出されて歩いてたらここに来てた」
「おーそれはずいぶん普通じゃないよ」
ん?そういうものなのだろうか?
これまでの人生ずっとそうだったからか、なんの疑問も浮かばない。
「で、ここまで歩いてきたって。どんな人生?」
「歩くことにも一人にも慣れてたから。君の方がすごい人生歩んでそうだけど?」
「んーまぁまぁ、独りか〜大変だったんだね」
「そーでもないけど?僕は好きな人ばっかだったしね!」
きっと、今の僕の顔は無邪気と言えるものだろう。こんな顔も数時間後には意味合いが変わってくるということに、少女を除いて誰も気づいていなかった。
「きっと、私たちは似ているんだね。ここまでの人生も何もかも」
「そうか?僕は料理作れないぞ」
「ふふ、そういうことじゃないよ」
なぜだろう。さっきまでと変わらない会話だというのに、なぜ少女はこんなにも寂しそうな顔と声をしているのだろう。その答えはどんなに考えても出てこなかった。
「貴方はさ、私に出逢えて良かった?」
「そんなの、、」
あれ、なんだったかな。言葉に詰まってしまった。
「きっと、その答えはまた今度になるんだろうね」
「あ、えぇ」
「はい!切り替えよ」
少女は手をパンっと叩いていつもの笑顔に戻った。
それと関係しているわけではないのだが、僕の感覚はどこに行ってしまったのかな?
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
「なになになに。どしたの」
いきなり叫び出した少女に僕はそういう。
「なんか貴方私を扱うの上手いよね。まだ出逢って半日過ぎたかどうかぐらいなのに」
「そーなのかな?まぁ一緒にいて楽しいし」
「カァァァ、よく恥ずかしげもなく…」
あれ?今僕は変なことでも言ってしまっただろうか。
なぜ、少女は顔が赤くなっているのだろう。
「どうした?熱でもあるの?大丈夫?」
「全く、、熱じゃないよ」
「ほんとぉ〜?ほらこっちおいで」
「くぅぅぅ、」
「あ、熱い。熱あるよ」
触って確かめた少女のおでこは確実に常人より熱かった。
「そりゃ私は妖精だからね。人より熱も高いさ」
「雪の妖精なのに?」
「そう言われちゃうと困るな〜」
また、笑う。
きっとこれがみんなの言う普通。だというのに僕にとっては幸せそのものだった。
それと同時に、自分の状況も少しずつ理解できるようになってきた…。
「今日は、寝ちゃだめだよ」
「あぁ、わかった」
少女からのそんなお誘い。その意味だけは不思議と僕にもわかってしまった。
それから僕たちはたわいもない会話をし続けた。
ご飯を食べてからどのぐらい時間が過ぎただろう。僕たちは時間を忘れ、雑談に花を咲かせていた。
そんな中で僕はしばしの睡魔と闘っていた。
「あぁ〜楽しいね。たのし、、かったね」
「なんだよそれ、まだ終わってないのに」
夜ということもあるのだろうか?今まで慣れていたはずの睡眠欲に抗うことが難しくなっていたのを悟られたのか、少女はこんなことを言ってきた。
「だってなんだか、眠そうなんだもん」
「いやや、そんなことないさ」
「んー?本当は?」
「……ちょっとは、」
「そーだよね」
その声にさっきまでの元気は無くなっていた。
「じゃあ、最期に私の話を聞いて欲しいな」
「あぁ、いくらでも…」
返答が単調になってしまう。呂律が回っていないのか、言葉に詰まる。
でもきっと、それはそういうこと。
「ありがとう。今私、幸せだよ」
そうニコっと満面の笑みを浮かべ、少女は語り出した。
雪より冷え切った、その過去を。
ー数百年前ー
私は他とは違う。
いきなり何を言い出すのかと言われるかもしれないが、これは紛れもない事実であると思っている。
私は妖精。親と言える存在を見たこともないし、これといった家族もいない。
スノーランドと言うこの山だって、私が付けた名だ。どこにあってどういう形をしたいるのか。それすらもわからない謎に包まれた山。
ただ一つわかることは、ここには夏がない。ということだけだった。
夏という存在は、ある町の人間に聞いた。
案外この山の麓には住宅地が広がっていて、そこに行けば人間に会うことはできる。
これは私が二度と人間に関わることを止めようと思った時のお話だ。
「こんにちは!」
私は至って普通にそこにいた人間に話しかけていた。
見た目に大した変わりはないし、襲いたかったわけでもない私は、何もおかしなことはないと思っていた。でも、それは多大なる勘違いであった。
「うわぁ!びっくりした」
「なになに?」
話しかけた二人はそんな大袈裟な反応をし、尻もちをついてしまった。
「ぁぁ、ごめんね、大丈夫?」
そういい、手を差し伸べる私。
「あ、あ、ぁ、悪魔だーーー」
「逃げよう早く!」
そんな私の手を叩き、少年たちはその場を後にした。
私、、おかしなことでもしたのかしら?
後になってわかったことだけど、どうやらここら周辺は『夏』というものがないらしい。
なにも、ここには悪魔が住んでいて、一年を通し冬にし続けているのだとか。どうにもここら辺に住んでいる人たちはその悪魔に襲われないように毎日祈っているのだとか。
そんな話を盗み聞きした私の頭には一つの仮説が浮かんでいた。
『その悪魔は、私だ。』というものだった。
自分では妖精と思っていた自分の正体は、どうにもそういうわけではないらしい。そんな、美しい物ではなかったのだ。みんなから嫌悪される、そんな邪魔者だった。
どうやら、私は死ぬに死なないらしい。私が死にさえすれば、この世界にも夏が舞い戻ってくるかもしれない。そう考えていたのだが、どうやら死ぬことさえ許されなかった。
なんども夢に見た夏という存在。でも、私がその夏のある国に行けば、その国さえも冬にしてしまうかもしれない。どこへ行っても私は邪魔者だ。
人間たちも私の存在を知ってからは私の駆除に動いた。
そこで殺してくれれば楽だったかもしれないが、そういうわけにもいかない。
死ぬという得体の知れない恐怖は今でもある上、人間は私を捉えて実態を研究しようとした。つまり、殺さずに苦しめられるのだ。私には人間を討伐するだけの力はない。故に、逃げ続けることしかできなかった。
人の前に出れば、すぐに警報が鳴り響き、石やら家具やらが飛んでくる。その現状は、私の味方なんて誰一人いないのではないのかと思ってしまうほどだった。
そんな日々にも変化が訪れたんだ。
私が雪山を散策している時のこと、運悪く武装した人間に出くわしてしまった。
まずい殺される。直感と本能でそう理解した私はこちら側から奇襲を仕掛けた。
「うわぁぁぁぁぁぁ」
勢いよく飛びかかった先には少女がいた。でもこの際誰でもいいと思った。これまでの自分への仕打ちを全部やり返してやりたかった。
なのに、その手は動かなかった。
「どうしたの?震えてるよ、」
「、、なんで、…」
なんで、私にそんな言葉をかけるの?少女の方が怖いはずなのに、なんでそんな優しい声音をしているの?
そんな疑問は私の口からは出なかった。
少女は力が弱く、簡単に制圧できたが周りにいる大人はそういうわけではないだろう。武装もしている。少女に牙を向くことができなかった私はその場から逃げ出そうとした。
銃口はしっかりとこちらを捉えている。あれが当たれば私とて死ぬことはなくとも軽傷では済まない。だから一目散に走り出そうとした。その言葉が響き渡るまで。
「待って!お父さん撃たないで!!」
それはさっきまで抑え込まれていた少女の叫び声だった。
「お父さん私は何もされてないよ!大丈夫だから」
「そんなことできるか、こいつを捉えることは俺たちの未来だ」
「そんなのおかしいよ。だって、こんなにも震えてたんだよ」
私の震えを全身で体験したからこその言葉だろう。
「わかった…」
お父さんと呼ばれる男もそれ以上追求することはしてこなかった。でも私にはわからなかった。
「なんで、?なんで私を助けるの?」
助けてもらっているのにも関わらず、私の口はそんなことを溢していた。
自分でもわかっている、ここで逃げれば生きながらえると。だというのに一度開いた口は止まることを知らず、次々と言葉を紡ぐ。
「おかしいよ。私はあなたを殺そうとしたんだよ?人間に害しかもたらさないんだよ?わかってる?」
恩人に向ける言葉ではなかったかも知れない。でも、仕方がなかった。
「そんなの、お姉ちゃんが、悲しそうだったからだよ」
少女はケロッとそんなことを言った。
「お姉ちゃんは、そんな悪い人なの?私はそう見えなかったんだもん」
「黙りなさい」
それは男の言葉。それでも、少女は話し続けた。
「黙らないよ。みんななんで理由もなく傷つけるの?」
「秩序ってものがあるんだよ。仕方のないことなんだ」
「そんなのじゃ納得できない。私はこのお姉ちゃんを助けたいよ」
助けたい。その言葉が私の心をさらに抉った。
言葉は雪に溶けるように、静まり返るのに、心の中で少女の言葉だけが反響した。とても、不思議な感覚だった。
「子供じゃわからないんだ。人は何か標的を作らないと、生きていけないんだ。何か敵がいないと、さらに敵を作り出すんだ」
「……そんなの、、」
「もういいよ。」
私はそこで初めて言葉を溢した。
ただ紛れもない本音だった。
「ありがとう。お姉ちゃん幸せだよ。だから長生きしてね」
私はこれまでで一番速く走りその場を逃げ出した。今思ってもきっとこれが一番最適解だったと思っている。
この一件で、ここまで心優しい人間がいるということを知れたと同時に、私は人と関わることを放棄した……。
ー現在ー
それからというもの、月日は流れて私の存在を知るものも少なくなった。
今ある私の家も人間の侵入禁止区域になっているらしい。おかげで人と会うことはゼロと言えるまでになった。
なんでも、初めての女性町長が設立したらしい。今でも感謝している。
でも、だからこそ驚いた。
「貴方みたいな人がいきなり現れたから」
「そこで、、僕か」
「貴方の雰囲気が、もう一度人と関わろうって思わせてくれた。ありがとう」
「いや、僕は何もしてないさ。おかげさまで僕も助かってる」
「だから、私は今の今まで独りで生きてきた」
少女の話で、さっき言っていた意味が理解できた。
「そういうことだったんだな」
僕は微かに動き方を忘れていた腕を動かし、少女を抱き寄せていた。
「ぇ?」
「もう、大丈夫だぞ。今は独りじゃない」
ここでは僕も悟っていた。
きっと僕も人を愛したことがなかったのだろう。両親もおばあちゃんも友達も先生も。その全員に僕は興味がなかったのだろう。
愛されてこなかったのは事実だが、自分が他人を愛するということも知らなかった。そう、君に出逢うその時までは。
「僕は初めてあんなに優しくされたんだ。初めて救われたんだ。君のおかげで、今楽しかった」
少女は胸の中で泣いていた。微かに聞こえる泣き声で、必死に我慢していることもわかった。
だから、僕は言葉を止めない。
「あのご飯も美味しかった。この家も感動した。その全てに君が関わってくれたから」
そうして、その真実を言葉にした。
「僕は君が好きだ」
「……んで」
「ん?」
少女は静かに言葉を溢す。
「命は、いずれ終わるものよ」
そんな悟ったような口調の裏側まで、理解ができてしまう。きっと少女も気づいているのだろう。
「貴方と私は終わりが来るの」
「………」
「なのに、、なのになんで出逢ってしまったの?」
そんな切実な問いかけ。涙でぐしゃぐしゃのその顔は本当に寂しそうだった。
「こんなに楽しかった。ご飯も美味しく感じた。人の温もりを久しぶりに感じた」
「それは、」
「貴方は、幸せを私のところに持ってきてくれたわ」
「や、ぁ」
「でも、同時に悲しみも運んできたの。こんな皮肉なことある?」
そこで自分の現状の悪化に気がついた。
そして、おおよそ理由もわかっている。常人より冷えを感じるその少女がこんなにも近くにいるんだ。普通の人なら寒さに耐えることで精一杯と言えるだろう。でも、僕はその事実をそっと胸の内に秘めるのだった。
それから少しの静寂が流れた。
僕たちの長いハグは自然と解けていて、今は何をしているというわけではない。ただ着実と進む静かな時の流れを感じている。それだけだった。
「あ、、、」
やがて僕はその場に倒れ込んでしまった。
「あは、あはは、なんだか眠くなってきちゃった…」
言葉がうまく出なかった。空気がうまく喉を通らないのを感じる。
きっと、君と一緒いるという事はこういうことだったんだろう。
「ねぇ、こんな終わり、あんまりだよ」
「は、はは。そうかな?」
「そうだよぉ、、こんな幸せがない終わりなんて、こんのばっ」
僕はその言葉を遮るように、被せるように言った。
「さっきも言ったよね。僕は君が好きだ」
「ん、、」
「君は紛れもなく妖精だ」
「…」
「もう自分のことさ、理解してる」
言葉がうまく出ないからか、まとまりが無い。でも、それは僕の思っていることなのでなんとか言葉を紡ぐ。
「でもいいんだ、君に出逢えて初めて誰かを愛せたんだ」
最後、なんとか笑みを浮かべる。その事実を伝えるために。
さぁ、全て終わらせよう。
最期に大きく息を吸い、それを告げた。
「これが僕のハッピーエンドだ!」
スノーマジックファンタジー。雪の魔法にかけられて。僕は君に恋した。もしかして君は雪の精?雪の妖精との、、、、ファンタジー。
完。
さぁさぁ、いかがでしたでしょうか?
いい感じにまとめられたのではないかと感じてます!
でもやはり原曲の良さをフルで表すことはできませんでした、、。自分の解釈や勝手な妄想がここまで物語を作ってきましたが、まだまだ変えるべきところも多くあると思います。もっと昇進したいですね。
特に終わるにつれ会話や文字書きが雑になってきちゃったかな?
さぁ、そんなことは置いておいて、ここまで読んでくれて本当にありがとうございます!
残された雪の精は一体どうしたのか。ハッピーエンドの感じ方の違いははやり大きなものです。そもそも、雪の妖精なんていたのかな??
自分たちなりの解釈や妄想もしてみてください!それも小説やファンタジーものの醍醐味です!
また、原曲は本当に素晴らしいので是非是非聴きに行ってください!行かないと後悔します!本当です!
では、改めて読んでいただきありがとうございました。現実の世界へ、おかえりなさい!!