僕の友達2
あるところに、雑貨屋を営んでいるAさんという人がいました。
商品の扱いも接客も丁寧で、人当たりもよいAさんは近所でも評判でした。
しかし、それを快く思わない人たちがAさんの店で騒ぎを起こし、自分たちにとって都合がいい内容でウワサを流したことで、Aさんは孤立してしまいました。
直向きに頑張ったAさんでしたが、努力の甲斐なく、都会へと出戻ることになりました。
「その後、Aさんの行方を知る人はいない」
じんわりと汗がにじむ暑さを吹き飛ばすため、学友二人と怖い話をしていた僕の話が終わると「方向性が違う!」という指摘が相次いだ。
「本当に怖いのは、数の暴力だよ」
「そうだけど、そうだけども!」
「いかにも怪談、みたいなのが欲しいんだよ」
「そういう話は寄ってくるからしたくない」
二人の言いたいことは理解できなくもないが、絞られたくない僕は丁重に断った。
「それなら、こんな話は、いかがでしょうか」
納得していない二人を見かねてか。彼は語り始めた。
「とある夢破れた若者の話 ――」
品を感じさせる語り口調と有無を言わせぬ声色に、背筋が凍る。
話の内容は、実家へ出戻ったばかりの若者が家族の誰にも迎え入れられず、話の内容も理解できずにいたところへ事故のニュースが流れる。というモノだった。
思わず身構えたけど、何かで聞いたことがある話に不謹慎だけど、ホッとしてしまう。
「まぁ、意味が分かると怖い話も一種の怪談だよね」
「急に何言ってんだ?」
「次の講義もあるし、この辺で僕はドロンするよ」
表現に古臭さを感じる。という学友の指摘は笑って流し「続きは三人でやってね」と言って、サークル棟を後にした。