第9節:Crossing Soul
完結……しませんでした (_××)_ドゲザマン!
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オレの拳をもろに受け、ペティアが仰け反る。
「よくも美琴を!」
「調子乗んなぁ!」
もう一発殴ろうとしたが、先に蹴りを喰らって吹っ飛ばされた。
「クッソが!」
すると、オレを蹴った脚も、動かなくなったらしい。
「ンだよ、このウゼえの?!」
ペティアの鎧の一部が剥がれた。
だが、人の姿に戻らず、蛇のようなグネグネした光のまま、周囲を飛び回る。
すると、光に照らされるように、ペティアに絡みつく、黒い影が姿を現した。
「悪霊?!」
そうにしか見ないが、違った。
その悪霊には、顔があった。
オレには、とても懐かしい顔が────
「母さん?!」「おばさん?!」
なぜ、《クロスロード》が創られる前に死んだ母さんが……?!
(じゃぁ、今までのもみんな……?)
ペティアからオレを守ってくれた謎の力も、母さんだったのか。
「マザコンかよクソが! キモいんだよ! 死ねしねしねクソ!」
ペティアが怒鳴り、光の蛇が母さんの影に食らいついた。
ゥオオオ──悪霊の呻き声が上がる。
「やめろ!」
オレはとっさに弓を構えた。
すると、母さんが頷いたのが、ハッキリと見えた。
(撃て……っていうこと?!)
できない……
だが、迷っている間にも、母さんは徐々に喰われてゆく。
「ペティア、今ならまだ間に合う。《ソウルギア》を解除して、降参しろ!」
「穣!」
「黙って!」
美琴の言いたいことは分かる。
けれど、オレにはどうしても撃てない。
「ハァ?! バカか! バカだな! ゴミに頭下げるくらいなら死んだほうがマシだろ! ホラ撃てよ! 撃ってみろよマザコン!」
嫌だ。せっかくまた会えたのに……
なんとか、母さんを避けてペティアだけ……そんな半端な攻撃で、奴が倒せるのか?
そもそも倒すってことは、殺すってことになる──人殺しだ。
でも、奴の暴虐を止めるチャンスは今しかない。
《クロスロード》はゲームじゃない。
けれど平和な世界だった。
なんで、こんなことに……
美琴、助けて……母さん、クリスさん、エヴァさん……!
「穣。美琴ちゃんを守りなさい」
突然聞こえた声に、オレはハッとなった。
もう忘れかけていた、母さんの声。
忘れかけていた、オレの気持ち。
幻聴だったとしても、オレは背中を押されるように、決意を固めた。
「美琴、力を貸して……《ペネトレイトアロー》」
「うん……」
《ソウルギア》を通して、美琴のつらい気持ちも決意も伝わってくる。
きっと美琴にも、今の声が聞こえたのだ。
限界まで引き絞った弦を、オレは解き放った。
光の矢が、ペティアの鎧を破って胸に刺さった。
「母さん!」
そして、背後にいた母さんも、その矢に貫かれて、消え去った。
最後に見えたその顔は、笑っていた。
「あ……マジ、かよ……クソが!」
だが、ペティアは倒れなかった。
胸から、口から、血を流しながら、オレたちに向かってくる。
その首を、先端に剣の付いた鞭が、刎ね飛ばした。
「クリスさん!」
いつの間にか回復していたクリスが、横からトドメを刺したのだ。
「《ソウルオーバー》は自己回復もできる。殺すなら、暇を与えちゃいけない」
鎧のままのエヴァが言い放った。
「……はい」
オレは地面に膝を突き、泣きながら、弱々しく返事をするしかできなかった。
お読みくださりありがとうございます。
前書きで申したとおり、完結に至りませんでした。
1話だけ、後日談、入ります。