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第8節:Over Confuion

畳めるんでしょうかこの話(今さら何を言うとる)

   8


 ひたすら祈りながら電車を待った。


(間に合え……間に合え、間に合え間に合え!)


 かつて美琴の街に悪霊が現れたときの恐怖が甦る。

 自分ではどうしようもない無力感。

 なぜ今日は大学を休まなかったのだろうという後悔。


『大丈夫。クリスさんたち、まだ戦ってる。自警団の仲間にも知らせた』


 美琴が状況を知らせてくれる。上手く姿を隠しているのだろう。

 メッセージが届くたびにオレは安堵し、次はあるだろうかと不安になる。


 そして、その不安は、なかば的中した。

 電車を降りたと同時に、戦況が傾いた。


『やばいよ! クリスさんが押されきた! あいつどれだけ攻撃されてもぜんぜん倒れない!』


 駅から家までは、走るしかない。

 脇目も振らず、着信も無視して、力の限り駆け抜けた。

 脚がよろける。胸が痛い。苦しい……苦しい。

 こんなことなら、普段から運動していればよかった。いつもこと(・・)が起こってから後悔する。


 それでも、どうにか部屋に辿りつき、ベッドに倒れ込みながらVRヘッドギアを起動する。


「美琴!」


 いつもの部屋のなかで叫ぶ。

 返事はない。


 アパートの外へ飛び出すと、車が何台も衝突しているような、もの凄い音が遠くから聞こえてきた。 

 クリスとペティアの戦闘音に違いない。


「美琴! いまどこ?!」


 こっちで使っている端末で通話を開く。


「三番通りの靴屋! お願い急いで!」

「クリスさんの仲間は?!」

「まだ来てない! もうだめ! 私なんとかヒールしにいく!!」

「待って──美琴! くっそぉ!」


 通話が切られ、オレはまたも走った。

 《クロスロード》に、リアルで言うスタミナの概念はない。脚力さえあれば、全速力で、いくらでも走れる。


 それでも、間に合わなかった。


「ふーん、ようやくヒーロー登場?」


 見慣れた風景。二人でよく入るレストランの店先。


みのる……ごめん」


 美琴は、ペティアに掴まっていた。

 そしてテラスのテーブルに横たわる、血まみれのクリス…………


「お願い、穣! クリスさんを助けて、まだ生きてる!」


 美琴の言葉で、オレはクリスに走った。

 鎧はボロボロで、手にした剣も根元から折れてる。

 これでは、エヴァのほうも危うい。


「逃げて……貴方だけでも」

「そんなこと、できるわけないでしょ……!」


 だからといって、オレにはどうしようもない。


「どうすんの? 全部見捨てて逃げる? いいよ?」


 ペティアがオレを嘲笑あざわらう。


「穣……ごめん、私はいいから、逃げて」

「ああはいはい、御馳走様ッ」


 ペティアが美琴の腕をひねった。


「痛いッ! ああもう、いい加減にしろよ! 承認欲求こじらせ野郎!」


 すると、美琴は怖じ気づくどころか、逆にペティアを罵倒した。

 キレたのか。あんな美琴は初めてだ。


「あんたのこと調べたよ! Vドルしてたけど、人気出た途端にヒッドい炎上起こして、消えたでしょ! こっちで別人になったつもりだろうけど、クズは顔変えてもクズっての、よく分かるわ──あッ!」

「黙れザコブスが!」


 美琴が地面に叩きつけられた。

 ペティアが殴ったのだ。


「わあぁぁぁ──!」


 その瞬間、オレは無我夢中でペティアに突進していた。

 叶うとか殺されるとか、まるで考えなかった。


「クソがぁ! お前から死ね!」


 オレに向かって、剣が振りかざされる。

 だが、その腕が止まった。


「また?! 何なんだよッ?!」


 ペティアにも、オレたちにも、ワケが分からない。


「美琴!」「穣!」


 だがそのスキを突いた美琴が《ソウルギア》となってオレを覆う。


 そのまま、オレはペティアの顔面に拳を叩き込んだ。

お読みくださりありがとうございます。


敵を前にしての会話部分がかなり駆け足で終わってしまいましたが、あまり喋りすぎても冗長なので……次回にうまく拾いながら纏めたいと思います。

(※1/3 まとめられませんでした)

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