第2節:Cross Road
普段はライトノベル系の書き方を用いないのですが、今回はなるたけ読みやすくしてみているつもりです。
慣れないことをやって、逆に読みにくかったら申し訳ありません。
2
五年前、人類は死の恐怖を克服した。
〝意識〟の正体が解明され、電子界に移乗させる技術と、移乗先としての〝世界〟が作られた。
それが《クロスロード》──生者と死者が交わる、仮想空間。
仮想といっても、そこに暮らしている人のほとんどは、こっちの世界で死んだ人の魂だ。現実ではない世界で、彼らは確かに存在している。
だから、《クロスロード》への移乗は〝転生〟とも呼ばれている。
ただし、転生するには本来の脳の活動レベルがゼロでなければならない。つまり死者か、その間際にある状態だ。
技術が確立されるや、その高額な費用にもかかわらず、転生を願う人はあとを絶たなかった。
《クロスロード》の大半は現実と同じ雰囲気だが、ところどころではゲーム世界のように幻想的なエリアもある。
それこそ中世風ファンタジーとか、時代劇風、サイバーパンクっぽいエリアに住むことも出来る。
けれど、美琴は現代日本式の街を選んだ。
「生きてる間に穣とやりたいこと、いっぱいあったからね」
それが理由らしい。
オレと美琴は同い年で幼馴染み。保育園から高校までずっと一緒だった。
親父同士が親友で、オレの母親が早くに亡くなったのもあって、オレはよく悠來家に預けられた。
美琴とは兄妹みたいに育ったけれど、オレはいつからか、あいつのことが好きになっていた。
けれど言えなかった。一緒にいるのが当たり前で、その当たり前が壊れるのが怖かった。
言えないうちに、十六歳のあの日、美琴は車に撥ねられて死んだ。
葬儀のあと、失意と後悔でボロボロになったオレに、美琴の両親は、あるものをくれた。
脳波と直接繋がる、《クロスロード》専用のVRシステム。
それを使えば、生者はユーザーとして、死者の世界にログインできる。
美琴の両親は、娘を転生させていたのだ。
「たいへんかもしれないけど、あの子と一緒にいてやってくれるか?」
こうして、オレは現世から《クロスロード》に入る者、《ロードクロッサー》になった。
ログインして最初にやることは決まっていた。
「美琴。ずっと昔から、お前が好きだった! 言えなくて、ごめん」
「遅いッ! ……ッて、これ私にもブーメランなんだけどね……」
生きてるうちに……とは、今でも悔やんでいる。
けれど、一度失ってしまったからこそ、もう二度と離したくないと、オレは今でも強く想う。
そう……美琴だけは、なんとしてでも…………
半年前。オレたちが恋人になって二年半後。《クロスロード》に異変が起こった。
《悪霊》と呼ばれるモンスターが発生し、死者を襲って、食べはじめたのだ。
だが、それに呼応するかのように《悪霊》に対抗する術も発見された。
《ソウルギア》──理由はわからないが、死者が自分と深い関係にある《ロードクロッサー》の武器や鎧に変身することができるのだ。
その力を使って、オレと美琴はこの半年間、悪霊たちを倒し続けてきた。
けれど、悪霊がなぜ現れるのか、どうやったら湧くのを止められるのか。オレたちには何も分からなかった。
そして、恐るべき敵は、悪霊だけじゃなかった…………
お読みくださいありがとうございます。
今後も1000文字前後でスピーディな更新を心がけて参ります。