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第8話 初依頼×エレメンタル

 

「えっ……?」


 ギルドの扉を開けた俺は、目の前の光景に驚いた。

 100人近い冒険者が、我先にと依頼ボードに詰めかけていた。

 目当ての依頼書を取れた人は、受付に向かっているので受付カウンターにも人集りが出来ている。


「バーゲンセールのおばちゃん並だな……」


 あそこに入る勇気がない俺は、とりあえず買取カウンターに向かった。

 カウンターにはガタイのいい男が暇そうに大あくびをしていた。


「買取お願い出来る?」

「おう。昨日の兄ちゃんじゃないか。昨日売り忘れたもんでもあんのか?」

「そんなとこ。ちょっと、これを頼みたくて」


 俺はホーンラビットの毛皮を4枚、カウンターに置いた。

 手持ちの毛皮は6枚あるが、解体に石ナイフを使っていたためかなり状態が悪い。その上、毛をむしって火種に使っているため出すのをやめた。


「ホーンラビットか、綺麗に解体されてるな……サービスして銀貨5枚ってとこだな」

「じゃあそれで」

「まいどあり!」


 男から銀貨を受け取った俺は、依頼ボードの方に向かった。

 ものの数分で人だかりはなくなり、目当ての依頼が手に入らなかった冒険者達はボードの前で凄く落胆していた。


「全然残ってないな……俺に出来そうなのがあればいいんだけど」


 ボードの前まで来た俺は、丸裸にされた依頼ボードを見て呟いた。

 残っている依頼は──

『街の清掃作業』1区画のドブさらいをして銀貨5枚。

『薬草集め』指定の薬草を集めて、1本銅貨1枚。

 どれも危険は無さそうだが、割に合わなそうな仕事だ。これならホーンラビットを倒して素材を売った方が食料も手に入るし稼げる。


 ──きっと、こういう依頼を受けたくないから、みんな必死なんだろうな……ん?


 諦めてホーンラビットを倒しに行こうかと思ったが、ボードの端にもう1つ依頼があることに気づいた。

 他の依頼書よりも少し古びているようにも見えるが、どうやら討伐依頼のようだ。


 -----------


『エレメンタルの討伐』【常時依頼】

 エレメンタルの外殻を集めて欲しい。属性は問わない。

【ランク】問わない

【報酬】外殻1つに対して銀貨5枚


 -----------


「エレメンタル……って、あの調味料のやつか!」

 ──詳しいことは受付で聞いてみるか。


 俺は依頼書を持って、受付へ向かった。


「おはよう」


 受付にはすっかり冒険者がいなくなっていた。

 昨日対応してくれたエルさんは見当たらなかったので、1番近い窓口にいた小柄な受付嬢に声をかけた。


「おはようございます。本日はどう言ったご要件でしょうか?」

「この依頼について教えて欲しいんだけど」


 俺は依頼書を手渡した。


「こちらの依頼はですね──」


 受付嬢の説明によると、エレメンタルと言う魔物は物理耐性があり、剣等では倒すのに時間がかかるらしい。その上、3〜5体の群れで行動するので、1体を倒しているうちに他のエレメンタルに襲われてしまう可能性があるそうだ。

 魔法を使えない冒険者にしてみれば、出会いたくない魔物という訳だ。

 ただ、魔法が使えても属性により耐性があるため、使える魔法に耐性のあるエレメンタルに出会うと逃げるしかなくなる。

 ちなみに属性の相性は【火←水←土←風←火】となっているそうだ。


 そんな依頼を、普通の冒険者が受けるはずもなく依頼ボードに取り残されていたと言うわけだ。


「エレメンタルは水をかければ溶けるんじゃないのか?」

「溶けるわけないじゃないですか……当たり前のことですが、生きてる魔物は魔素で強化されています。エレメンタルを水で溶かせるのは死んで魔素を失った後です」


 昨晩、エレメンタルを粉末状にした調味料を水で溶いたのを思い出して質問してみたが、受付嬢は呆れた口調で答えた。


「それと、こちらの依頼は常時依頼となっておりますので、達成素材をお持ちいただければ達成となります。わざわざ受注する必要はありませんよ?」

「常時依頼?」

「はい。常に依頼を出している物になります。そのため受注期間や失敗時のペナルティなどはありません」

「なるほど。それじゃエレメンタルはどこに行けばいるんだ?」

「この近辺だと、西の洞窟ですね。洞窟は西門から出ていただいて道なりに──」


 受付の人は地図を取り出し、丁寧に教えてくれた。

 地図で見た限り、それほど遠くは無さそうだ。


「ちなみに、魔法の使い方が載ってる本とかってない?」

「魔法書のことですか? あるにはありますが、魔法が使えない人は読んだところで使える様にはなりませんよ?」

「ちょっと見せてくれないかな?」

「いいですけど……」


 受付嬢は苦い表情で席を立ち、奥の部屋に入っていくと1分と経たずに分厚い本を手に戻ってきた。


「こちらになります。一応、重要書類なので貸出はしておりません。読むだけならそちらのテーブルをお使いください」

「あぁ、ありがとう。ちょっと読ませてもらうよ」


 受付嬢から魔法書を受け取った俺は、近くの椅子に腰かけた。


「貸出は出来ないのか……仕方ない、あれを使うか」


 俺はインベントリからスマホを取り出して、魔法書の各ページの写真を撮っていく。

 スマホで撮影しておけば、インベントリ内では時間が止まるため、充電が減る心配もなく必要な時にだけ取り出して確認ができる。


「これでよしっ!」


 全てのページを撮り終えた俺は、受付に向かった。


「ありがとう。これ返すよ」

「え? あぁ、読んでもわからなかったでしょ?」

「うん。そうだな」


 俺は受付嬢に適当な返事をして、西の洞窟に向かった。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「ヒナちゃん、ご苦労さま」


 ユウヤが去った後、小柄な受付嬢にエルが声をかけた。


「あ、先輩。お疲れ様です。今朝も相変わらずの忙しさでしたね」

「ほんと、何人いても人手不足よね。そういえばユウヤさんはまだ来てないのかしら?」


 エルはギルドのホールをキョロキョロと見回しながら聞いた。


「ユウヤさん……ですか?」

「朝礼で話したでしょ? 珍しい黒い髪に黒い瞳の少年が来るからって」

「あっ! ついさっき来て、色々質問して出ていっちゃいました……すみません!」


 ヒナと呼ばれた少女は、勢いよく頭を下げた。


「まったく、あなたは……来たら私に繋ぐように言っておいたでしょ。それで、何か依頼を受けて行ったの?」

「依頼は受けていないんですが……西の洞窟に向かわれたと思います……」

「西の洞窟!? どうしてよりによって西の洞窟なの!?」

「この依頼書を持ってこられたので、通常対応してしまいました。すみません!」


 ヒナは涙目になりながら、また勢いよく頭を下げる。


「私はマスターに報告して来るから、あなたはそのまま受付業務をお願いね!」

「はい!」


 エルは血相を変えてマスター室へと走っていった。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「おっ! あれが西の洞窟か」


 西門を出た俺は、道沿いに1時間程歩いた所で洞窟を見つけた。

 道中でホーンラビットを何体か見かけたが、依頼を優先するためにスルーした。

 ちなみに、街を出る時はギルドプレートを見せるだけで通ることが出来た。


 洞窟に入る前に中の様子を見てみたが、広い空間がかなり奥まで続いているようだ。洞窟内には明かりはなく、暗闇が続いていた。


「あんまり奥まで行かない方がよさそうだな……」


 俺は腰の短剣に手をかけ、ゆっくりと洞窟に足を踏み入れた。


「ん? なんだ……?」


 入ってすぐに、洞窟の奥で何かが浮いているのが見えた。

 洞窟の中は真っ暗だが、それは奥でぼんやりと発光している。

 辺りを警戒しながら、姿が明確に見えるところまでゆっくりと近づく。


「あれがエレメンタルか……」


 そこには、綺麗にカットされたクリスタルが浮かんでいた。エレメンタルの内部で魔石が発光し幻想的に輝いている。

 赤、青、緑、茶の4色に光るエレメンタルが、規則正しく上下に動きながら浮遊している。


 ──まだ、こっちに気づいていないみたいだな。今のうちに鑑定しておくか……


 ----------


【エレメンタル<火>】Lv.8/ランクD<exp32>


【スキル】火魔法Lv.2


【補足】表面は硬い外殻で覆われており衝撃に強い。

 初級魔法ファイアボールで攻撃してくる。

 弱点属性は水。


 -----------


【エレメンタル<水>】Lv.8/ランクD<exp32>


【スキル】水魔法Lv.2


【補足】表面は硬い外殻で覆われており衝撃に強い。

 初級魔法アクアボールで攻撃してくる

 弱点属性は土。


 -----------


【エレメンタル<風>】Lv.8/ランクD<exp32>


【スキル】風魔法Lv.2


【補足】表面は硬い外殻で覆われており衝撃に強い。

 初級魔法エアショットで攻撃してくる

 弱点属性は火。


 ----------


【エレメンタル<土>】Lv.8/ランクD<exp32>


【スキル】土魔法Lv.2


【補足】表面は硬い外殻で覆われており衝撃に強い。

 初級魔法サンドショットで攻撃してくる

 弱点属性は風。


 -----------


 ──俺が狙う色は緑……つまり風属性のエレメンタルだ。

 俺は風のエレメンタルに向けて手のひらを突き出す。


「──ファイアボール!」


 そう叫ぶと、手のひらに拳大の火の玉が出現した。

 火の玉は風のエレメンタルに向かって一直線に飛んで行くと、洞窟に轟音を響かせて弾け飛んだ。

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