第68話 姫×恩賜
「レンッ!」
レンに駆け寄ると、意識を失い力なく倒れていた。
「レンは助かったんだよな?」
「ん。レンの魔力が元に戻ってるよ」
「そうか……」
俺はその場に座ると、天を仰いだ。
空を覆っていた薄暗い雲はいつの間にか無くなり、穴の空いた天井からは光が差し込んでいた。
「早くここから逃げましょ──」
リアが口を開いた時、玉座の間の扉が開かれ武装した兵士がなだれ込み、俺たちを取り囲む。
兵士の中からドレスを着飾った女性が出てくると、俺を真っ直ぐ見据える。
目鼻立ちのキリッとした美しい顔立ちに、青く透明感のある髪が天井から差し込む光に照らされている。
「貴方がユウヤですね」
「……そうだ。俺たちを捕まえる気か?」
俺はゆっくりと立ち上がると、短剣に手をかけ取り囲む兵士たちを睨みつける。
「そうですね……王都並びに王城への不法侵入、兵士への暴行行為、延いては王の暗殺まで……シグニンズ王国への反逆行為は数しれません」
リアとティナも兵士を警戒するように構える。
「みんな、そんなに警戒しなくて大丈夫だよ」
俺たちが睨みを利かせていると、女性の後ろからグレイが現れた。
「グレイ!? 大丈夫ってどう言うことだ?」
「うん。姫様をお連れしたのは僕なんだ」
「お姫様!?」
俺たちの視線が女性へと集まると、姫と言われた女性はニコリと笑顔を見せた。
「事情はグレイより聞いております。グレイが先ほど申したように、わたくしはこの国の姫、フジワラ・リラ・クローネと申します」
クローネはドレスの裾を持ち綺麗なお辞儀をして見せる。
「話の前に治療が優先ですわね。あなた達!」
「はっ!」
クローネが手を鳴らすと兵士の中から医療箱を持った数人が俺たちに駆け寄り、手際よく手当を始めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「俺たちは罪に問われないのか?」
治療を終えた俺たちはクローネに連れられ応接室へと来ていた。応接室はカタクギルドよりも広く、巨大なテーブルを何脚もの椅子が取り囲んでいる。
「無礼者! 姫様にその口の聞き方は何だ!」
クローネの隣に立っていた兵士の怒鳴り声が応接室に響き渡る。
「構いません。あなたは黙っていなさい」
「ぐッ……」
クローネが制止すると、兵士は苦虫を噛み潰したような顔をして押し黙り、俺を鋭く睨みつけた。
「あなた方を罪には問いません。本来、父を止めねばならない立場にあったのは、わたくしですから……」
俯き辛そうな表情を見せるクローネ。
「姫様……あの方は人の話を聞くような、お人ではございませんでしたから、仕方ありますまい」
声のする方を見た俺たちは席から飛ぶように立ち上がると、武器を手に取り構える。
「ルピートッ! 生きていたのか!」
扉の前には治療を受けたのか、全身を包帯で巻かれたルピートが立っていた。
「おやめください! じいやも操られていたのです」
クローネがルピートの前に立ち、俺たちを制止する。
「魔瘴の王笏か……」
「はい。持ち主である王が討たれ、束縛から解放されたようです」
「信じてもいいのか?」
「ん。戦ってた時と魔力の流れが変わってる」
俺が疑っていると、ティナが俺たちにだけ聞こえるように言った。
「けど、よく生きてたね」
「自分の魔力ですからな……まぁ無傷と言うわけにはいきませんでしたが」
ティナの言葉にルピートは苦笑いを浮かべながら答える。
「それはそうと、俺たちはお咎めなしでいいんだな?」
「もちろんでございます。本来であればユウヤ様方には恩賜を用意するところなのですが……」
ルピートは言葉を詰まらせクローネの方を見た。
「姫とは言え、わたくしには恩賜を用意する権限はございません……」
「それに、この事は内密にして頂きたい。王の暴走ともなれば国が傾きかねませんからな」
「必ずお礼はさせて頂きますので、何卒お願いします!」
クローネは席を立つと、俺たちに頭を下げて懇願した。
「ああ、別に構わない。俺たちはレンを助けに来ただけだからな」
「そうですよね……ここまでのことをして頂いて虫が良すぎますよね……エッ!?」
「褒美は要らないが……強いて言うなら俺の異端者認定を解いてくれると助かるんだが」
「それでしたらすぐにでも! じいや」
「はい。直ぐに取り下げの手続きを行います」
「今日は城内でお寛ぎください。じいや、案内をお願いね」
「はい。おまかせを」
俺たちはルピートの後を着いて廊下へと出た。
「そう言えば、どうして魔鏡のことを知ってたんだ?」
王城の客室へ向かう道中、俺はリアに聞いた。
「あの魔境を作った人を知ってたの」
「そんなことを言ってたな」
「その作った人って言うのは、ジェイド様なんだけどね。作っている時、王様からの依頼だって言ってたから、フジワラ王とも知り合いだったのかしら」
──ジェイドか……あんな魔導具を作れるなら、魔瘴武器の製作者のジェイドと同一人物の可能性が高くなったな……
「リア様とティナ様は、こちらのお部屋をお使いください」
ルピートは扉の前で立ち止まると、扉を開きながら2人に言った。
「ありがと」
「ユーヤまたね」
「おう、明日の朝には王都を出るからな」
「ユウヤ様は隣の部屋になります。こちらへ……」
俺はルピートに連れられ客室へと向かった。
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