第66話 解放× 宰相ルピート
「くッ……」
「さっきまでの威勢はどうしたッ!」
ガルドの猛攻にリアは避けることしかできず、ただひたすらに体力を奪われていた。
──あの機動力、どうなってるの……それに、爆発音は一体……
「しつこいわ! ──二段階解放!」
周囲の魔素をナイトメアが喰らい、刀身が脈打ち喰らった魔素がリアへと流れ込み、リアの体に黒い筋が浮き出る。
「なっ……」
迫り来るガルドの一撃を二段階目を解放したナイトメアが弾き、ガラ空きの懐にリアが斬り掛かる。
「フンッ!」
弾いたはずの大斧が爆発音を響かせながら、真下に振り下ろされた。
間一髪、転がるように回避したリアは起き上がり、ガルドから距離を取る。
振り下ろされた大斧は地面を抉り、辺に破片を飛び散らす。
「あの体勢からどうやって」
「おもしれぇ、だったら……これならどうだッ!」
戦いを楽しむようにニタリと笑みを浮かべたガルドは、足を踏ん張ると爆発音を響かせ距離を詰める。
大斧は突進の勢いをそのままに、ナイトメアを構えるリアに真っ直ぐに振り下ろされた。
「速くなった所で無駄よ」
リアは鋭い金属音を響かせ大斧を弾き返す。懐に入り込もうとした時、爆発音が聞こえた。
「うそ……」
音の方に目をやると、上に弾き返したはずの大斧が、横振りに迫っていた。
咄嗟にナイトメアでガードしたリアだったが、重い一撃に体ごと外壁まで吹き飛ばされた。
「かはっ」
外壁に背中をぶつけ肺の空気を全て吐き出し、その場に踞る。
「エストレアの魔剣も所詮こんなものか。今終わらせてやる」
ガルドが大斧を構えると、足元で爆発音を鳴り響かせ距離を詰める。その勢いのままに、リアの垂れた首を目掛けて大斧が振り下ろされた。
「なっ……止めた、だと」
大斧はナイトメアで防がれ押し留まる。
「ナイトメアの本当の力、見せてあげるわ……」
リアがガルドを睨みつけると、周囲の魔素がナイトメアへと集まり始める。
「──三段階解放!」
圧縮された魔素が、地形を変えるほどの爆発を起こす。爆発から逃れたガルドは地面に斧をめり込ませ、風圧に耐えている。
「なんだ……何が起こってる」
砂煙が消えると、そこには抉れた地面に佇むリアの姿があった。
「エストレアの悪魔……」
ガルドはリアの姿を見て呟くように言った。リアの体には黒い魔素に形成された悪魔のような角と尾が現れている。
『みつけた』
リアの赤い瞳がガルドを捉えると、頬に手を当て恍惚な笑みを浮かべると、舌なめずりをした。
「ひっ……」
自分との力量の違いを感じたガルドは、大斧を手から滑り落とすと尻もちをついて後ずさった。
リアの背中に魔素の翼が広がる。
その場を一蹴りすると、滑空しガルドの目の前まで近づいた。
『どうしたの? もう諦めちゃった?』
リアはクスクスと小馬鹿にするように笑う。
「……くらえッ!」
地面に落とした大斧に手を伸ばしていたガルドは、リアの死角から大斧を振るった。
『ざーんねーん。こんな低層の魔装で私に傷をつけられるワケないじゃない』
大斧はリアに届くことなく、体を纏う魔素に止められていた。
『もうおしまい?』
「……」
『ねぇッ!』
「ぐぁ!」
リアは優しく問いかけるが、無言のガルドにイラついたのか、笑みを崩し腹部を踏みつける。
『はぁ……つまらないわ』
リアは手に持ったナイトメアの切っ先をガルドに突きつけた。
「や、やめ……」
『ばいばい──』
切っ先がガルドの首元で止まる。
「わ、私の体で……好き勝手、しないで」
『まだ抗うの? はぁ……いいわ。けど、その前に』
リアは言葉を止めると、ナイトメアを鞘に戻し足元のガルドを外壁まで蹴飛ばした。
リアの体を覆う魔素が四散すると、体から力が抜けその場に座り込んだ。
「今のは……それよりも、今はユウヤのところに行かないと」
顔を上げたリアは、王城の扉へと走った。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「来たか」
上階に到達した俺は、後ろから声をかけられ振り返る。
「レン……いや、フジワラ王って呼んだ方がいいか?」
そこには、玉座に深く腰かけるレンの姿があった。
「取り逃したネズミから話は聞いておるか……如何にも、私がフジワラ王だ」
「レンの体を返してもらうぞ」
「それは出来んな……貴様も私のコマに加えてやろう」
フジワラ王は玉座から立ち上がると、帯剣している魔剣リベルレイドを鞘から抜いた。
靴音を部屋に響かせながら階段を降りると、俺に向かって剣を構える。
「レンの持っていた魔剣か……」
俺も片手剣に姿を変えた血刃を構える。
「わたしも戦うよ」
ティナが俺の隣に立つと意気込んだ。
「貴女のお相手は、この老いぼれが引き受けましょうぞ」
フジワラ王の後を着いていた、背広を着こなした細い目の年寄りが答えると、ゆっくりとフジワラ王の隣に立った。
「ティナ、気を抜くなよ」
「ん」
ティナが短い返事をすると、静寂が辺りを包みこむ。
4人の視線が交差し、互いに隙を伺う。
「いくよッ!」
「なるほど、ゴーレムですか」
ティナが地面に手を着くと、巨大なロックゴーレムを作り出した。
「よそ見とは余裕だな!」
視線を戻すと、フジワラ王が地面を蹴り俺との距離を詰め、剣を振り上げていた。
「くっ……」
俺は剣を受け止め、流すように弾き返した。
「一瞬で丸焦げにしてやるわ!」
フジワラ王は手に取りだした魔石をリベルレイドに喰わせた。
リベルレイドの刀身がバチバチと音を立てスパークし始める。
「くらえッ! ──雷龍の咆哮!」
リベルレイドの切っ先に魔素が集まり、俺めがけてブレスが一直線に放たれた。
俺は取りだしたグランロストでブレスを受け止めるが、足の踏ん張りがきかず壁まで吹き飛ばされた。
「ユーヤ!」
「人の心配をしている暇はありませんぞ?」
吹き飛ばされたユウヤの元へ駆け寄ろうとするティナの前にルピートが割り入った。
「邪魔っ!」
岩の巨兵の巨大な拳がルピートへと迫る。
「なんの! ──ロックウォール!」
ルピートは地面に手を着くと、巨大な岩壁を作り出しゴーレムの拳を止めた。
「次はこちらの番ですな。まず、邪魔なゴーレムには消えていただきたい」
ルピートがゴーレムに触れると、ゴーレムの体が砂となって消えた。
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