第64話 魔鏡×王の陰謀
「レン様。本当にユウヤさんに来ていただかなくてよろしかったのですか?」
「ああ。王様とは俺が決着をつけたいんだ……お、いたいた。すみませーん」
グレイの問いかけに真剣な面持ちで答えたレンは、イエンでフールの行商人を見つけ近づいた。
「おじさん、フールを2頭。速いやつで頼む」
「あいよ、2頭だね」
「グレイ、飛ばすぞ!」
「はい!」
レンとグレイはフールに跨り、王都へと向かった。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「あ、テオさん!」
宿で身体を休ませた俺たちは、造船所に来ていた。
俺はテオさんを見つけて声をかけながら近づく。
「あれ、ユウヤさんではないですか。いつお戻りに? それにその子は……」
ティナを連れて現れた俺に、テオさんは首を傾げている。
「まぁ、色々あったんだ。それと、これが約束の魔石だ」
俺はインベントリから飛竜の魔石を取り出し、テオさんに手渡した。
「これは、本当に手に入れたのですね……迷宮でこれほどの魔石が手に入ったと聞いたことはありません……まさか、最高攻略階層を更新されたのですか?」
「いや、迷宮は攻略してきたんだ」
「こ、攻略ッ!? しかし、そのような連絡はまだ来ていませんが……」
「向こうで色々あってな……それより、これで魔導二輪は完成か?」
「はいッ! すぐに準備しますね!」
魔石を受け取ったテオさんは、造船所の奥へ走っていった。
「まだ異端者認定の話は知らされていないみたいね」
「そうだな。その方が好都合だが、いつ知らせが来るかわからない。魔導二輪を受け取ったらすぐにイエンを出よう」
「むーお腹すいた……」
ティナの残念そうな返事に空を見上げると、太陽が少し傾いた位置にあった。
──昼過ぎか、そう言えば今日は何も食べてなかったな……
「仕方ないな……俺はここで待ってるから、適当に食材を買って来てくれ」
「わかったわ!」
「ん!」
2人は嬉しそうに返事をして、俺が取りだした皮袋を握りしめ走っていった。
「ったく……まぁ、食料はかなり減ってたし丁度いいか」
俺は適当な所に座り、魔導二輪と食料を待つことにした。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「フジワラ王、レン様が帰ってまいりました」
「うむ。謁見の間へ通せ」
「はっ!」
日は変わり翌朝、王都の空は薄灰色の雲に覆われていた。
「面を上げよ」
「はっ」
謁見の間にルピートの声が響き、短く返事をしたレンが頭を上げた。
視線の先には兵士の姿はなく、玉座に座るフジワラ王、その隣には宰相であるルピートが立っている。
「レンよ……どうしてここへ帰ってきた。私がお前にしたことはわかっているだろ?」
王がゆっくりと口を開いた。
「はい。王の口からワケを聞くために帰ってまいりました……俺は今でも信じられないんです。どうして王がユウヤを殺そうとするのか、俺にそんなことをさせようとしたのか……どうしてなんです!」
レンは涙を浮かべながら、フジワラ王に答えを求める。
「どうしてか、か……それは邪魔だからだ。私の思い通りにならないイレギュラーはな!」
フジワラ王は不敵な笑みを浮かべると、王笏を手に持ち立ち上がった。
「俺とやるつもりか!?」
レンは玉座から距離を取り拳を構える。
「もう既に決着は着いておる」
「なっ……」
フジワラ王が王笏を床に打ち鳴らす。王笏の甲高い音が部屋に響き渡ると、レンは力なく両手を下ろした。
目からは生気は無くなり、一点を見つめている。
「魔瘴の剣と契約した時点で私の勝ちは決しておると言うのに……ルピート、鏡を」
「はっ! 準備をしてまいります」
ルピートは奥の部屋へと消えると、精巧な額装に嵌められた巨大な両面鏡を持ち現れた。
フジワラ王とレンの間に鏡を置くと、2人の体が青く光始める。
フジワラ王の体は小さな光の粒に変わると、額装の魔石へと吸い込まれ、レンの体へと光が集まっていく。
光が消えると、レンはその場に倒れてしまった。
「レン様!」
部屋を覗いていたグレイは、扉を勢いよく開けレンの元へ駆け寄った。
「グレイ……見ておったのか」
ルピートは腰の剣を抜き、グレイに近づく。
「待て」
その時、レンが口を開き体を起こした。
「レン様! お身体は何ともありませんか!?」
グレイは泣きそうな顔でレンに話しかける。が、レンは気味悪く頬を釣り上げると高笑いを始めた。
「私の新たな体。若く、強く、可能性を秘めた体だ!」
レンは自分の体をベタベタと触りながら叫ぶ。ルピートはその場に膝をつき頭を下げた。
「……レン、様?」
その姿をみていたグレイは訳が分からず、1歩後ずさる。
「ん? あぁ、丁度いい。お前、私と勝負しろ」
グレイを見たレンはルピートから剣を受け取り、構えた。
「そんな……一体なにが、レン様は……」
「レンは既に居らん! この体は私の物になったのだからな! 構えろ!」
レンの体を乗っ取ったフジワラ王は、力強く踏み込むと、剣を逆袈裟に振り上げた。
放心状態のグレイは抵抗もなく、体を斬られ鮮血を散らしながらその場に膝を着く。
「はぁ……この体を試すいい機会だと思ったが、呆気ないな」
フジワラ王は剣を鞘に収めると、グレイに背を向け玉座へと向かう。
その時、無風の部屋に風が吹いた。振り返ると膝を着いていたグレイが風を纏い浮いていた。
「お? まだやるか?」
フジワラ王が剣を抜こうとすると、グレイは風の勢いを利用し、硝子を割って外へと逃げた。
「追いますか?」
「放っておけ。あの傷だ、何も出来ん」
フジワラ王は玉座に深く腰かけると、呆れたように頬杖を着きながら言った。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「ユウヤさん……助けて、レン様を助けてください……」
「ああ、もちろんだ」
王城から飛び降り、王都の裏路地で這いずるグレイの前に白い光が輝くと、そこから声がした。
視線を上げるとユウヤが現れ、グレイの手を掴んだ。
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