第61話 逃亡×作戦
「ユウヤ様、こちらです」
森を抜けると海岸にリュードとリアが待っていた。海には小舟が浮かんでいる。
「もしかして、これで海に出るつもりか?」
「大丈夫よ。ちゃんと作戦は考えてあるわ!」
俺が小舟を指さして聞くと、リアが胸を張りながら答えた。
「それならいいんだが。作戦内容を聞いてもいいか?」
「私が説明いたします。現在島には捜索隊が出ています。なので、夜のうちに沖に出て捜索隊の目を掻い潜ります」
リュードが前に出ると作戦内容を説明し始めた。
「早朝出港予定の定期船に乗船していただくのですが、乗船者へのチェックは厳しいと思われます。なので、定期船が出港したところで、ティナ様の空間転移で定期船に乗船していただき、イエンを目指します」
「ちょっといいか?」
「はい。何でしょうか?」
俺は疑問に思ったことがあり、リュードの説明を止めた。
「今、空間転移でイエンまで行けばいいんじゃないか?」
「それは出来ません。空間転移は連続して使用できないのです。ティナ様は先程使われたので、次の使用まで数時間はかかるかと思われます」
「それならリュードの空間転移じゃダメなのか?」
「それも出来かねます。私は迷宮の魔素を使用しなければ、空間転移のゲートを開けないのです」
リュードはそう言うと、申し訳なさそうに頭を下げる。
「それなら、ティナがゲートを開けるようになってから、イエンか他の街に転移するのはどうだ? わざわざ定期船でイエンに向かう必要はないだろ?」
「申し訳ございませんが、そちらも出来かねます……長距離の空間転移は魔力回路や身体への負担が大きいのです。現に一度、リア様がカタクの方へ転移した際、一時的な記憶障害とスキルの欠損が発生しております」
──俺の事をご主人様と呼んだり、ステータスの文字化けはそれが原因だったのか……
「わかった。そういう事なら今の作戦がベストだと俺も思う。イエンに着いてからはどうするつもりだ?」
話を止めた俺は作戦に賛成し、説明の続きを促す。
「ありがとうございます。イエンに到着後はこちらに着替えていただき、乗船客に紛れて船を降りてイエンを出ていただきます」
リュードは服を取り出しながら説明した。男物が1着と女物が2着だ。
「どうして女物が2着あるんだ? もしかして……」
「わたしも一緒に行くよ?」
俺がリアに視線を移すと、リアが手を挙げながら言う。
「リュードそれでいいのか?」
「ティナ様の意思ですので」
俺の質問にリュードはニコリと笑顔を作りながら答える。
「はぁ……わかった。3人でイエンに行こう」
「「うんッ!」」
俺の言葉にリアとティナが揃って頷く。
俺たちは船に乗り込み沖へ出ると、島を回り込み定期船が見える所まで向かい、日が昇り始めるのを待った。
次第に空が白み始め、定期船の出港を告げる銅鑼の音が鳴り響き、定期船が動き始める。
「ティナちゃん、お願い」
「ん。──空間転移」
ティナが手のひらを突き出すと白い光の玉が現れ、俺たちは光に包まれる。
視界が鮮明になると……そこは、定期船の心臓部である魔石が装着された動力室だった。
「それじゃ、着替えるか」
俺はインベントリに収納していたリュードが用意した服を取り出し、リアとティナに手渡す。
「ユウヤ、こっち見たら刺すよ?」
「ん。ユーヤは向こうで着替えて」
「誰も見ねぇよ……」
俺はぶつくさ言いながら、巨大な魔導具の端っこへと向かった。服を着替え終えた俺たちは、イエンに到着するのを待つことにした。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「やっと着いたわ……やっぱり人間には地面が必要よね」
リアは乗客に紛れ船を降りると、地面を踏みしめいる。
この2日間、リアはまた船酔いで寝込んでいた。
「あまり騒ぐなよ。このまま、街の外に出るぞ」
「ん」
「ちょっと、2人とも!? 置いてかないでよ!」
俺とティナはリアを置いて街の門へと向かうと、リアがあとを追いかけて来た。
造船所には整備を済ませたらしい、魔導二輪があったが今はテオさんに会うわけにはいかない。
俺たちはフードを深く被り、街の外を目指した。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「おい、止まれ」
街を歩いていると、後ろから声をかけられフードで顔を隠しながら振り返る。
「レン! もうこっちに来てたのか。早かったな」
そこにはレンとグレイの姿があった。
「ああ、ユウヤが来るのを待ってたんだ」
レンが近づきながら言う。右手は流れるように腰に着けた剣の柄へと伸びる。
「ユーヤッ!」
ティナが叫ぶと同時にレンが剣を抜き、刀身が俺の腹部を目掛けて横一線に振られる。
「くッ……久々に会ってそれかよ……」
俺は咄嗟に取り出した血刃で黒い剣を受け止めた。周りの人達が騒ぎ始める。
──ここは目立ちすぎるな……
「リア、ティナ走るぞ! レン着いてこい!」
俺は黒い剣を弾き返すと、街の外へと走った。レンとグレイがあとを追いかけてくる。
「ここなら大丈夫か……レン、どうしていきなり斬りかかってきた?」
街から離れた場所まで来た俺は、後を追ってきたレンに問いかける。
「異端者が……まだ俺の友人面か? 俺は王命を受けここに来た。異端者であるお前を撃つために!」
レンが黒い剣を俺に突きつけ叫んだ。俺は剣を鑑定する。
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【魔瘴の剣】
剣と契約を交わした者は、魔瘴の王笏を持つ者の騎士となり、命令に従う。
契約には証として、剣に嵌めた魔石に一滴の血を刻む。
<製作者> : ジェイド
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「また、魔瘴の武器か……」
俺は鑑定のウィンドウを睨みつけて呟いた。
「ユウヤ、戦うの?」
「いや……レンは操られているだけだ。どうにかして解放する方法を探すしかない」
「そんな……」
「ユウヤッ! 覚悟しろ!」
俺とリアが話しているとレンが魔瘴の剣を振りかぶり襲ってきた。
「くそッ……」
俺は血刃を構え、レンの剣戟を捌く。
レンは武術大会で戦った時よりも腕を上げており、一撃が急所を狙ってきていた。
「レン様助太刀します!」
「あなたの相手は私よ!」
「わたしも戦う」
レンの加勢に入ろうとするグレイの前にリアとティナが立ち塞がる。
「先に言っておくけど……この戦い、僕は不本意だから……」
レンは槍を構えるとリアたちと向き合う。
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