第60話 異端者×追跡者
視界が徐々に鮮明になっていく。
「ユウヤさんッ!」
真っ先に視界に飛び込んできたのは、ライリーだった。走ってきた勢いで俺に飛びついてきた。
泣きじゃくったのか、目は赤くなり頬に涙の跡が残っている。
「無事に帰ってきてくれてよかったッス!」
俺たちは、ノースフルギルドの巨大な祭壇に転移していた。
「お前が冒険者ユウヤか……」
ライリーの後ろから出てきたのはプレートアーマーに身を包んだ、王宮騎士団の隊長だった。
隊長が前に出ると、騎士たちが俺を取り囲む。
「俺に何か用か?」
「冒険者ユウヤ。お前に『異端者認定』が下った。速やかに投降し我々と共に王都に来てもらおうか」
「ユウヤに異端者認定!? そんなわけない、何かの間違いよ!」
俺と隊長の間にリアが割って入る。
周りの冒険者たちが、異端者認定の言葉にざわつき集まり始めた。
「お前はエストレア家の息女……いや、犯罪者の娘と言った方が正しいか」
「なっ……貴様」
隊長の侮辱にリアが腰のナイトメアに手をかける。
冒険者たちが、エストレアの家名を聞き更にざわついた。
「リア、抑えろ。ここで戦えば俺たちのほうが分が悪くなるだけだ」
──なぜ、俺が異端者認定を受けたのかは分からないが、周りの冒険者たちの反応からして捕まればタダでは済まないだろうな……それに、ここで王宮騎士団に手を出せば更に罪に問われるかもしれない。
「俺だけが行けばいいんだよな?」
「ユウヤ……?」
「ほぅ、物分りがいいな。異端認定されたのはお前だけだ」
「わかった」
俺は騎士団の方へ歩き始める。
「そんな……」
リアは口を手で覆って考えをめぐらせるが、どうすることも出来ず立ち尽くした。
「こっちだ! 着いてこい!」
俺は騎士団に手枷をはめられると、ギルドの方へ連れていかれた。
「ユウヤさん連れていかれたッスよ!? どうして助けないんスか!」
動かないティナとリアにライリーが叫ぶ。
「「静かにして」」
「……はいッス」
振り向いた2人の威圧にライリーは小さく返事をした。
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「情報を手に入れたッス!」
ティナの家にライリーが駆け込んできた。
テーブルにはリア、ティナ、リュードの3人が座っている。
「ユウヤさんはギルドの牢屋に入れられてるッス。それと、出発は明日の定期船らしいッス」
「明日……それまでにユウヤを助け出さないといけないのね」
「そうですね。イエンに着けば警備の数が増えるはずです。今が1番手薄ですから、ここを逃せば難しくなるかと……」
リアとリュードが真剣な表情で話し合う。
「ユーヤなら大丈夫だよ。1人でみんな倒して出てきちゃうよ。きっと」
「ティナ様……それは皆が理解しているのですが……」
「けが人を出さないためにも、ユウヤが無理矢理逃亡する前に助け出すってさっき話したじゃない……」
ティナの言葉に2人が呆れたように言った。
こうして、ユウヤ奪還作戦が練られ夜は次第に更けていった。
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「おい、お前エストレアらしいな」
「チッ……」
「お前今、舌打ちしたろ?」
「……」
「無視してんじゃねぇよ!」
冒険者の男がリアの肩を突き飛ばす。ギルドに来ていた冒険者たちが集まり騒ぎ始めた。
「貴様……今手を出したな? 死ぬ覚悟は出来ているだろうな?」
リアはナイトメアに手をかけると、刀身を少しだけチラつかせた。
「お前たち何をしてる! お前はエストレアの……親も親なら娘も娘という事か」
ギルト職員と騎士が数名駆け寄ってくると、リアの顔をみて罵った。
「あなた達の隊長が家名をばらすから……」
リアの目が怒りでピクピクと痙攣する。リアはナイトメアを抜かずに騎士を睨みつける。
「や、やるつもりか!? 応援を呼べ!」
対峙した騎士は他の騎士に応援を呼ばせた。待機していた騎士がプレートアーマーを鳴らしながら集まり始めた。
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牢屋の外が騒がしくなり始めた。見張りも呼び出され牢屋の前はほとんど人気がない。
「ユーヤ」
「ん? ティナ!?」
「しー……これ、ユーヤの代わり」
突如、牢屋に現れたティナは、手に持ったボロボロの巨大人形を手渡してきた。
「これが俺のかわり?」
「大丈夫。ユーヤ、ボロボロだから誰も気づかないよ」
「ははは……」
俺は乾いた笑いを浮かべると、自分が座っていた場所に人形を置いた。
「ティナはどこから入って来たんだ?」
「これだよ」
ティナが手を突き出すと、白い光の玉が現れた。
「ティナも転移魔法が使えるのか」
「ん。こっちに帰ってきたら使えるようになってた?」
俺が驚くと、ティナは首を傾げながら聞いてきた。
「ティナは相変わらずだな……それで、これで転移すればいいのか?」
「ん。早くした方がいいよ。今リアが引き付けてくれてるから」
俺たちは光の玉に触れると光に包まれ、その場から消えた。ボロボロの巨大人形を残して……
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光が消え、視界が戻り始めると、そこは薄汚い部屋だった。部屋のあちこちに地図が貼られ、隅に大量の紙が丸められている。
「あまりジロジロみないで欲しいッス」
俺が部屋を眺めていると、後ろから声をかけられた。振り返ると、そこには少し顔を赤らめたライリーの姿があった。
「ライリー! ここはもしかしてお前の部屋か?」
「そうッス」
「ホントにすごい数の地図だな……これ全部迷宮の地図なのか?」
「そうッス。5年間書き溜めたッス」
「良かったな。その頑張りが報われるぞ」
俺はライリーの小さな肩に手を置いて言った。
「そう言えば迷宮でも同じようなこと言ってたッスけど……どういうことッスか?」
「実はな、迷宮の変動はランダムじゃないんだ。繰り返してるんだよ」
「それは本当ッスか!?」
「ああ、情報の入手ルートは教えられないが……これは確かな情報だ」
管理者であるリュードに裏を取っているので間違いない。なんでも200通りはあるそうだ。
「ユーヤ、話しは終わった?」
俺とライリーが話していると、ティナが首を傾げながら聞いてきた。
「そういや、脱走中だったな……」
「裏口から出れば、島の反対側の海に出れるッス」
「ありがとなッ!」
俺たちはライリーに別れを告げて外へ出て森へと入っていった。
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「異端者ユウヤが逃亡しました!」
「何だと!? 見張りは何をしていたんだ!」
「それが……冒険者同士のいざこざに止めに入った隙に居なくなったそうで……牢屋にはこれが」
騎士は隊長にユウヤ人形を手渡した。
「あんの、異端者め……! 草の根を分けてでも探し出せ! まだ島のどこかにいるはずだ!」
隊長は人形を引きちぎると、額に青筋を立てながら叫んだ。
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「レン様、報告が入りました。ユウヤさんが逃亡したそうです」
「そうか、やはり騎士団程度じゃユウヤは抑えられないか……」
「どうしますか?」
「どうもしないさ、ユウヤは必ずここに来るからな……」
レンはイエンの港から海を見ながら呟いた。
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