第58話 氷の龍×管理者
「開けるぞ?」
「うん」
扉を押すと音を立ててゆっくりと開いた。奥に続く空間は、今までのボス部屋を遥かに凌ぐ広さだった。
中央に浮かぶ魔石も一際大きく見える。
俺たちは顔を見合せ頷くと、中に踏み入り部屋の中央へと向かった。
扉が閉まると魔石を包み込むように魔素が渦巻き始める。その大きさは氷王の倍はある。
魔素が集まり現れたのは、全身に煌めく宝石のような氷を纏うドラゴン。氷帝龍が赤い目を鋭く光らせた。
「初めから全力で行くぞ!」
「うんッ!」
「──炎纏!」
「二段階解放!」
片手剣の血刃に炎が纏い、全身に炎が渦巻く。
ナイトメアが脈打つと、中央に赤い筋が色濃く走った。
俺たちは地面を強く蹴り、氷帝龍の足元へと距離を詰める。
『グルゥガァアアア!!!』
足に一撃を入れようとした時、氷帝龍が耳をつんざくような咆哮を上げた。周囲に塵のように細かい氷が発生した。
「リア引けッ!」
「え?」
俺はリアの手を取り氷帝龍から距離を取った。すると、舞散っていた氷塵が地面に落ちると、一瞬でその場を凍りつかせた。
「簡単には近づけさせないってことか……」
「それなら私がナイトメアで魔素を吸収するわ!」
リアがナイトメアを前に構え、氷帝龍に突っ込んだ。氷塵は青く輝くと、ナイトメアに吸い込まれ消えた。
「ユウヤ、今よ!」
「ああ、わかってる! ──血刃<紅蓮炎昇>!」
血刃に纏う炎が真っ赤に燃え上がり、巨大な炎の剣となり氷帝龍の腹部を斬りあげた。炎は氷帝龍の身体を斬り裂きながら天へと昇る。
『ガルゥア……グルゥガァアアアア!』
一瞬、体勢を崩し倒れそうになった氷帝龍は意識を取り戻し足を踏ん張った。腹部から流れ出る鮮血が凍りつき止血された。
「さすがに一撃じゃ無理か……次は頭を狙ってやる!」
俺は地面を蹴り氷帝龍の眼前まで飛び上がると、血刃を構えた。
「──紅蓮……」
氷帝龍がこちらを向いて口を大きく開けると、魔素が集まり強い光を放ち始めた。
「ユウヤッ!」
リアが俺の名前を叫んだその瞬間、爆発的な光に俺は包まれた。
龍の咆哮は一直線に伸びると細くなり消えていく。そこにはユウヤの姿は無かった。
「……ウソ、嘘でしょ? ユウヤ!?」
リアが涙を浮かべ叫ぶと、その場に崩れ落ちた。
氷帝龍が標的を変え、リアの眼前にまで迫る。顔を上げるリアの表情は絶望に満ちていた。
「おい……勝った気になってんじゃねぇよ……」
「……ユウヤッ!?」
リアが声のする方を振り返ると、そこには全身ボロボロになったユウヤが立っていた。
ユウヤの体からは黒い魔素が溢れ出し、手に持つグランロストは短剣から片手剣へと姿を変えている。
『グルゥア……』
リアの横を通り過ぎ前に立つと、威圧された氷帝龍が少し後ずさった。
「ユウヤ……?」
「リア、少し離れててくれないか」
「う、うん」
いつもの雰囲気とは違うユウヤに戸惑いながらも声をかけると、返ってきた優しい口調にリアは頷き、扉の方へと走った。
「続きをやろうか──炎纏!」
俺は氷帝龍を睨みつけながら言うと全身に赤黒い炎が渦巻く。
「行くぞッ!」
『グルゥアァァァァァアア!』
氷帝龍が呼応するように咆哮を上げた。
俺は地面を蹴り氷帝龍の眼前まで飛び上がると、顔面を蹴飛ばした。
『ガルゥア……』
氷帝龍の膝が折れ、地面にしゃがむことで頭が下を向いた。俺は地面に着地すると、氷帝龍の足元まで距離を詰める。
「血刃<紅蓮炎昇>!」
息付く暇も与えず、力なく垂れる首を赤黒い炎を纏う血刃が襲う。
その時、氷帝龍が口を大きく開けこちらを向いた。口には魔素が集まり、龍の咆哮が放たれる。
「無駄だ。グランロストは全てを喰らう……」
俺は龍の咆哮をグランロストで斬ると跡形もなく消え去った。
「血刃<紅蓮炎昇>!」
氷帝龍は抵抗することも出来ず首を両断された。首を無くした氷帝龍は轟音を上げながら地面に横たわると動かなくなった。
「凄い……ドラゴンを1人で倒しちゃった……」
戦いの決着を見届けたリアはユウヤの元へ駆け寄る。ユウヤの身体から黒い魔素が消えていくと、その場に崩れ落ちた。
「ユウヤッ!?」
ユウヤに駆け寄り叫ぶが返事がない。
「リア、どいて」
後ろから声をかけられたリアが振り向くと、そこにはティナとリュードの姿があった。
「ティナちゃん!? どうして……え?」
理解が追いつかないリアを退かすと、ティナがユウヤに腕輪を近づける。ユウヤから魔素が出てくると腕輪に吸い込まれていく。
「リア様、説明は後ほどさせていただきます。ユウヤ様は必ずお助けします。ご安心ください」
ユウヤの元へリュードも加わり治療を始めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「ん……」
「ユーヤ! みんな、ユウヤが起きたよ!」
俺が目を覚ますと、ティナが顔を覗かせた。
「ティナ? それにリュードまで……ここは迷宮だよな?」
俺は身体を起こし辺りを見渡すと近くで氷帝龍が横たわっているので、迷宮で間違いない。
「私から説明をさせていただきます」
俺が状況を把握しようと辺りを見渡していると、リュードが口を開いた。
「まず初めに、迷宮攻略おめでとうございます」
「ここで迷宮は終わりだったか。ってリュードはどうしてそれを知ってるんだ?」
「それは私が迷宮の管理者だからです」
「「管理者……?」」
俺とリアはつぶやくように聞き返した。
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