第57話 静寂×肉塊
炎を纏う剣が首を刎ねると、飛竜は鮮血を飛び散らせながら地面に倒れた。
「何とかなったな……」
俺は飛竜をインベントリに収納しながら呟くように言った。
「あーもぅ私は動けないわ……」
リアはその場に座り込むと空を仰いだ。その時、何かが落ちるような音がした。
リアが音の方に視線を向けると、ユウヤが地面に倒れ込んでいた。
「ユウヤッ!?」
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「ん……」
目を覚ますと、氷に囲まれた薄暗い空間で毛布に包まれていた。俺が体を起こすと、リアが泣きそうな目でこちらを見ていた。
「良かった……目が覚めたのね」
「あぁ、ここはどこだ?」
「飛竜と戦った場所の近くよ。氷壁に横穴が空いてたのよ……」
どうやら、魔力切れで倒れた俺を運んでくれたらしい。
外は暗くなり、少し風が出始めていた。
「そうか……ありがとな。それにしても寒いな……すぐに火を起こして飯にしよう」
「そうしてくれると助かるわ……」
俺は木々をインベントリから取り出し、焚き火を起こした。薄暗い空間が明るく照らされ、リアの顔が視界に入る。
「リア、顔が赤いぞ。大丈夫か?」
「ちょっと寒いだけよ……少し暖を取れば良くなるわ……」
リアは虚ろな瞳でこちらを見ながら言った。
俺は近づき、リアの額に手をつける。
「熱があるな……食欲はあるか?」
「あまり……」
「そうか。とりあえず横になった方がいい」
俺は魔物の毛皮を取り出して、地面に敷くとリアを寝かせた。
「精のつくものか……」
荒い息遣いをするリアの横で、俺はインベントリを開き残っている材料の確認を始めた。
「肉はこれしかないが……食えるよな?」
外に出た俺はインベントリから飛竜を取りだし、グランロストを突き刺すと、解体をし始めた。
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「リア、起きれるか?」
「ん……何だかいい匂いがするわね」
「お粥を作ったんだが、食べれそうか?」
俺は寝込んでいたリアの体を起こしながら聞いた。
「せっかくだからいただくわ……」
リアは辛そうな表情で答えた。顔は寝る前よりも赤く、動くのも辛そうだ。
俺はお粥を器によそい、スプーンに1口分乗せて冷まし、リアの口元へと運んだ。
「ユウヤ……私は子供じゃないのよ。自分で食べられるわ」
「いいから病人は世話されとけ。ほら口開けろ」
「……あー」
小さく開いた口にお粥流し込む。
「……おいしいわ。それに暖かい」
「そうか。ほら次だ」
「うん」
俺はリアの口にお粥を流し込んで食べさせた。
「ごちそうさま。とても美味しかったわ」
「俺が作ってんだ。当たり前だろ?」
「ふふふ、そうね」
俺が茶化すように言うと、リアが笑顔を見せた。身体が暖まり少し顔に元気が出てきたようだ。弱ってはいるが、お粥も全て食べきっている。
「今日はこのまま休んで、明日元気になってたら出発しよう」
「私のせいで、ごめんなさい……」
「いいから、今は休め」
「うん……」
俺はリアを寝かせて穴の入口へ見張りに向かった。
外は風が吹き荒れ、風切り音が鳴り響いていた。
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「よし、熱も下がってるな。体は辛いところはないか?」
「問題ないわ。しっかり寝て疲れも取れたわ」
太陽が昇り、辺りの氷壁に朝日が反射し始めたころ、目を覚ました俺たちは、出発の準備をしていた。
「それじゃ100階層目指して進むか」
「向かうのは賛成だけど、このままじゃ食料がきびしいのよね? 100階層で迷宮が終わればいいのだけれど……」
「ああ、その事なら解決したんだ」
俺はそう言うと、インベントリから解体して残った飛竜の頭を取り出した。
「え……飛竜って食べれるの! ?」
「昨日も食っただろ。それにこいつは貴重なタンパク源だ」
「昨日って……もしかしてお粥に入ってたお肉のこと!?」
リアは目を見開いて声を荒らげた。
「ああ、美味かったろ?」
「美味しかったけど……教えて欲しかったわ……」
「ははは、悪い悪い」
肩を落としながら言うリアに笑いながら軽く謝った。
「そう言えば、飛竜も古の魔物なのか?」
「古のって言うより、飛竜に関して言えば伝説上の魔物ね……」
「伝説か、どんな言い伝えがあるんだ?」
「一頭で街を殲滅するとかかしらね……今の魔物で言えばAランク上位、下手すればSランク級の魔物よ。まぁ、ユウヤが1人で倒しちゃったんだけどね……」
リアは半ば呆れたような口振りで言った。
「それじゃ、これでテオさんとの約束の魔石は手に入ったな」
俺はインベントリに表示された飛竜の魔石を確認しながら言った。
「それで、どっちに進むの?」
「ちょっと見てくる」
俺は風を纏い氷壁より高く飛び上がると、迷宮を見渡した。空には自由に飛び回る飛竜がちらほらと見える。
「あそこか……」
遠くに魔素が流れ込む場所を見つけた俺は地面に着地した。
「こっちだ」
「ユウヤ、そっちは壁──」
俺は氷壁にファイアボールを押し当て人が通れる穴を開けた。
「ん? なんか言ったか?」
「いえ、何でもないわ……ユウヤは何でもありね」
リアは呆れた表情で俺のあとをついてきた。
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「ここだな」
氷壁をくり抜きながら進んだことで、飛竜との無駄な戦闘もなく、かなり温存して100階層の扉まで到達することができた。
俺たちの視線が自然と扉に掘られた絵へと集まる。
「ドラゴンよね……?」
「この階層の魔物が飛竜だったから、予想はしていたが……」
「ドラゴンなんて災害級よ!? どうやって倒せって言うのよ!」
取り乱したリアが扉に向かって叫んだ。
「落ち着け。今日は一旦ここで休んで、ドラゴンとどう戦うか作戦を練ろう」
「そ、そうね……」
「そうと決まれば、まずは飯だな」
俺は扉の近くで焚き火を起こし、飛竜の肉塊を取り出した。分厚くカットし、筋に包丁で切れ目を入れていき、エレメンタルの調味料で下味を付けていく。
焚き火にフライパンを置き、フライパンを十分に温めたる。
フライパンに飛竜の脂を溶かし敷き、カットした飛竜の肉を置く。肉の豪快に焼ける音が食欲をそそる。
中までしっかりと火を入れ、肉を皿に取り出す。
「できたの?」
「このままでも美味いが、これに合わせたソースをつくるから、もう少し待っててくれ」
「そう……まだなのね」
リアは食べたそうにステーキを見つめながら言った。
脂と旨みが残ったフライパンに細かく刻んだニンニクと火のエレメンタルを入れ、ニンニク醤油ベースのソースを作る。盛り付けたステーキにソースを掛ける。
「飛竜の豪快ステーキの完成だ!」
「美味しそう! 早く食べましょ!」
俺はヨダレを垂らしそうなリアの前に料理を運んだ。
俺とリアはナイフで1口サイズにカットすると、口に放り込んだ。
「おいひぃー! 噛む度に肉汁が溢れ出るわ。それにこのソースが食欲をそそるわ!」
「ああ、旨いな……これは米に合うな」
美味しそうに次々、肉を口に運んでいくリアを他所に、俺はインベントリから米を取り出し、肉を乗せた。
「あ、ずるい! 私にもお米ちょうだい!」
「はいはい。よそってやるから待ってろ。病み上がりのくせによく食うな」
よそった米を手渡すと、リアは嬉しそうに食べ始めた。俺たちは腹が満たされるまで肉を食べ続けた。
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