第52話 洞窟×白いエレメンタル
「ここに嵌めればいいのね」
リアがフェンリルの魔石を祭壇に嵌める。
「ユウヤさん。自分は1度ギルドに帰還しようと思うッス」
振り返ると、ライリーが魔法陣の上に立っていた。
「待ってる間に考えてたッス。この先は自分に案内できることは何も無いッス。お2人の足でまといになるだけッスから……今は40階層の情報をギルドに報告に行くッス」
ライリーは困ったように笑いながら言った。
「そうか。ここまでありがとな」
「こちらこそッス。ギルドで帰ってくるの待ってるッス」
魔法陣が光り輝くと、ライリーは光に包まれ転移した。
「俺達も行くか」
「うん」
リアが祭壇に魔力を込めると、視界が白くなり徐々に鮮明になっていく。
「洞窟……ね」
「だな。あの青いのはなんだ?」
俺は天井に青く光るものを指さして聞いた。
「あれは魔鉱石よ。空気中の魔素を取り込んで青く輝くの。武器や防具にも使われる貴重な物よ。ユウヤにも知らないことがあるのね」
「あたりまえだ。知らないことの方が多いぐらいだ。それじゃ進むか」
「進むって、今まで見たいに上から遺跡の場所を確認することはできないのにどうするの?」
「それなら心配ない。魔素の流れに沿っていけば祭壇の魔石にたどり着く筈だ」
「なんだかユウヤって犬みたいね」
「ちょっと凹むぞ、それ……」
俺たちは魔鉱石に薄暗く照らされた洞窟を進んだ。
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「重大発表ッス。聞いて欲しいッス!」
ギルドに戻ったライリーは受付カウンターによじ登りながら声を上げた。
「どうかされましたか?」
「40階層のボス部屋とフロアボスの情報が手に入ったッス!」
「そ、それは本当ですか!?」
ライリーの声に周囲の冒険者たちも目を向けた。
「これを見てほしいッス」
ライリーはカウンターに40階層の地図を広げて見せた。
「この湖に横穴があるッス。この奥がボス部屋ッス」
「フロアボスはどんな魔物でしたか?」
「フェンリルッス。大きな狼の魔物ッス!」
「ちょっと待ってください……」
受付嬢は分厚い本を取り出すと、ページを捲り始めた。
「ありました! 氷を操る古代の魔物ですね……」
聞き耳を立てていた冒険者たちがざわつき始めた。
「おい。それをどうやって知った」
後ろから声をかけられたライリーが振り返ると、金色のアーマーを身にまとった王宮騎士団がいた。
「実際にこの目で見たッス。騎士団が公表しなくてもルートを見つけたッスよ!」
ライリーは勝ち誇ったように、騎士団の隊長に言った。
「フン。我々が公表しなかったのには理由がある。無事に戻ってこれたところを見ると、その先の41階層には踏み入ってはいないようだな」
「……41階層に何があるんスか?」
緊張からか、ライリーは喉を鳴らして唾を飲み込んだ。
「帰還して正解だ。41階層は我々ですら苦戦を強いられた。一般冒険者が攻略できるとは思えん」
「おいおい。俺たちが弱ぇってことかぁ!?」
「バカにしてんのかァ!」
騎士団隊長の一言に周りの冒険者が野次を飛ばす。
「フン。弱い犬ほどよく吠える……悔しければ41階層に挑戦すればいいだろう! 迷宮が更新されるまでまだ数日ある。この者が知るルートを使えば到達できるはずだ。まぁ、40階層のフェンリルを倒せればの話だがな」
「ぐっ……」
団長の言葉に冒険者たちはたじろぎ、静かになった。
ノースフルにいる冒険者たちは決して弱くはないが、魔法が使える騎士団とは天地ほどの差がある。
騎士団はマントを翻すと、迷宮の入口へと歩いて行った。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「なんだか、寒くない……?」
「確かにかなり冷えてきたな……」
奥へと進むに連れ、洞窟内の温度は低下していた。
「何かしらあれ」
遠くにぼんやりとした光を見つけたリアが聞いてきた。その光に俺は見覚えがあった。
「エレメンタルだ」
洞窟に浮かぶ光の正体はエレメンタルだ。しかし、色は白色で見慣れたエレメンタルとは違った。
「エレメンタル? 魔物の強さが急に落ちたわね……エレメンタルならナイトメアで十分よ」
「いや、待て」
俺は、ナイトメアを鞘から抜こうとするリアの手を抑えて制止した。
「あのエレメンタルの周りを見てみろ」
エレメンタルの周囲の壁や地面は白く凍りついている。
「この寒さの原因はあれなのね。けど、氷のエレメンタルなんて聞いたことないわ」
「そうだな。だが、エレメンタルなら魔法で倒せるはずだ」
俺は岩陰から手の平を突き出した。
「──ファイアボール」
唱えるとファイアボールがまっすぐエレメンタルへと飛んで行った。──しかし、ファイアボールはエレメンタルに届くことなく消えてしまった。
「どういうこと!? 魔力が吸われたの?」
「いや、あいつの周囲が寒すぎて消えたみたいだ」
「どれだけ寒いのよ!」
エレメンタルは俺たちに気づいたらしく、周囲に魔法陣を4つ展開させると氷柱を出現させた。
「来るぞッ!」
氷柱が勢いよく放たれると、俺たちが隠れていた岩を粉砕した。
魔法陣からは次々と氷柱が生成され、逃げる俺たちを追うように放たれる。
「いつまで続くのよ、これ!」
「逃げてばかりじゃ埒が明かないな。リア、ナイトメアで氷柱を吸収できないか? 魔法ならナイトメアで対処できるだろ」
「そうね。やってみるわ!」
リアはナイトメアを抜くと、中央に赤い筋が走った。
逃げるのをやめたリアに氷柱が迫る。ナイトメアを横一線に振るうと氷柱が青い光になり、ナイトメアに吸収された。
「そのまま引き付けててくれ」
俺は血刃を構え、エレメンタルへと距離を詰める。
「──血刃<炎刀>!」
赤い炎を纏う血刃がエレメンタルを両断した。
2つに割れたエレメンタルは地面に落ち、鋼のような硬い澄んだ音を洞窟に響かせた。
「やったわ!」
「ああ……」
俺は返事をすると、血刃を構えながら左手にグランロストを取り出し、洞窟の奥を睨みつけた。
「うそでしょ……」
「この数は笑えねぇわ……」
戦闘音を聞きつけたのか、洞窟の奥からエレメンタルの群れがぞろぞろと現れると、俺たちに氷柱を突きつけた。
「やるしかないわね」
覚悟を決めたリアが俺の隣に立つと、ナイトメアを正眼に構えた。俺はリアの目を見て頷く。
「行くぞッ!」
「うんッ !」
俺たちはエレメンタルの群れへと突っ込んだ。
エレメンタルから放たれた無数の氷柱が俺たちに迫り来る。
「──血刃<炎刀炎流>!」
血刃に覆う炎が炎の柱となり、氷柱を溶かし蒸発させる。炎流は周囲のエレメンタルを巻き込み、消えた。……が、エレメンタルは半数も減っていない。
「私も負けてられないわ! 一段階解放!」
ナイトメアの赤い筋が太く色濃く浮かび上がる。
身体能力を向上させたリアは、迫り来る氷柱を次々に打ち消し、エレメンタルを両断していく。
「このまま突破するぞ!」
「ええ!」
俺たちはエレメンタルの群れを討伐しながら、洞窟の奥へと進んだ。
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