第50話 性分×秘匿
イエティをファイアボールで討ち取った俺に皆の視線が突き刺さる。
「何したんだ?」
「今のは何!?」
皆は説明を求めるような目でこちらを見てきた。
近くで見ていた冒険者は口を開いて固まっている。
「俺は火魔法が使えるんだ。まさか一撃だとはな……」
俺は手のひらにファイアボールを出しながら言った。
「火魔法が使えるなら早く言ってくれよ! イエティの体毛は燃えやすいんだ。まぁ、燃やすと素材は悪くなっちまうがな……」
髭面の男は火が消え、焼け焦げたイエティを見ながら言った。
「すまない。火魔法が有効だとは知らなかったんだ」
「俺も情報を開示すればよかった。まさか魔法を使える奴がいるなんてな……だが、あんたのお陰で負傷者はゼロだ。感謝する」
男が出した手を取り握手を交した。
「言い忘れていたが、イエティの魔石は次の階層に進むために必要なんだ。もちろん他の素材は討伐者のものだ」
「わかった、使ってくれ」
「ありがとう」
男はそう言うと、イエティの胸元に剣を突き刺し、魔石を取りだした。
「さぁ、みんな。レイドは終わりだ。数分すればまたイエティが出現するぞ! 帰還する者も進む者も早く移動することを勧める!」
男は皆に聞こえるように叫ぶと、祭壇の方へ向かった。
祭壇にイエティの魔石が嵌められ、冒険者たちが転移を始める。
「ユウヤ、ありがと……」
「ああ、怪我がなくてよかった。最後まで気を抜くなよ」
「うん……気をつける」
リアは顔を赤くしながら俯いて答えた。
「よし、俺達も行くか」
皆が居なくなったボス部屋で、イエティをインベントリに収納した俺は2人に声をかけた。
「21階層からは敵も強くなるッス!」
祭壇に魔力を込めると眩い光に包まれた。徐々に視界が鮮明になると──そこは雪がチラつく森の中だった。
「またぁ!?」
リアが見慣れた雪景色に慨嘆した。
「同じじゃないッス。21階層からは木が生えた森ッス」
「同じよッ! 寒い事には変わりないわ……」
「だが、森は方向感覚がズレやすい。それに魔物と戦う時に障害物になるからな」
「そうだけど……」
俺が付け加えると、リアがむくれながら何か言いたげにこっちを見た。
「わかったわかった。ライリー、この森は何階層まで続くんだ?」
「自分も行ったことはないッスけど、40階層までッス」
「40か。そんじゃ、さっさと進むか」
俺は遺跡を探すために、空高く飛び上がった。
空から見下ろす森は木々に積もった雪で、白い絨毯の様な景色だった。その中に魔素が流れ込んでいる遺跡を見つけた。
「あっちだな」
地面に降り立った俺は2人に方向を伝えた。
「さすがユウヤッ! ありがと!」
「ユウヤさん、それは反則ッスよー」
「最短ルートの地図を作れば売れるんじゃないか?」
「そうッスけどー。何かズルいッス」
俺たちは不貞腐れるライリーを連れて、祭壇へと向かった。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
『グルルルルゥゥゥゥ……』
しばらく進んだ俺たちは、アイスウルフの群れに囲まれていた。
アイスウルフは2mほどの体格で氷を身に纏い、肩から氷の刃が突き出た狼の魔物だ。
「この数はヤバいッス」
「問題ない。そっちは任せるぞ、リア」
「ええ、任せてッ!」
俺は血刃とグランロストを両手に持つと、リアと共にアイスウルフの群れに突っ込んだ。
地面を強く蹴り、アイスウルフとの距離を詰めた俺は、縮地でアイスウルフの攻撃を回避し双剣の刃で斬りつける。
その瞬間を狙っていたと言わんばかりに、5匹のアイスウルフが一斉に襲ってきた──が、牙と氷の刃は俺に届くことはなく、風壁により吹き飛ばされた。
グレイの風壁は使い勝手がかなり良く、風に変換した魔力を纏う技なので、コストパフォーマンスもいい技だった。
「これで終わりっと」
吹き飛ばされ怯むアイスウルフたちにとどめを刺し、リアの方を見ると丁度3体目を討伐したところだった。
「やっぱり魔法って凄いわね……ティナちゃんに教わっとけば良かったわ……」
「リアはそれどころじゃなかったろ」
「そうだけど。う……思い出しただけで気持ち悪くなってきたわ」
船酔いを思い出したリアは顔を青くして木に手を着いた。
「ユウヤさんは凄いッスけど、リアさんも相当ッスよ! 素早くて群れで襲ってくるアイスウルフはシルバー上位階級の冒険者でも苦戦する魔物ッス」
「そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、私より早く倍の数を倒した人が目の前にいると、それも霞むわ……」
リアは苦笑い混じりに俺の方を見て言った。
「ここの攻略が済んだらティナに教わりに行きゃいいだろ……」
「え、いいの!?」
「ああ」
俺の発言に目を輝かせて喜ぶリアに短く返事をした。
「魔法を教わるってどういう意味ッスか? 魔法は適性が無いと身に付けれないスキルッスよね?」
俺たちの会話を聞いていたライリーが疑問を投げかけてきた。
「魔法は誰でも使えるんだ。現に俺も元々、魔法スキルは持っていなかったからな」
「えッ! そうなんッスか!? どうすれば使えるようになるんスか?」
「悪いが、俺は使う専門でな……どう教えればいいかわからないんだ」
「そうなんッスね……」
俺の返答にライリーが残念そうに言った。
「ライリーは商人なんだから、魔法は必要ないだろ?」
「そうッスけど……自分、手に入る物は全て手に入れたい性分なんス」
「商人らしい性格してんな。けど、今は地図が商品だろ? ほら、遺跡だ」
「……はいッス! 今は地図作りに集中するッス」
ライリーは地図に遺跡の位置を書き始めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「やっと次で40階層ね……」
俺たちは39階層の遺跡まで来ていた。
遺跡の奥には祭壇が見える。
「ここまで祭壇のある遺跡を全て当てて来たッス……何か見分け方があるッスか!?」
「いや、たまたまだ」
「そんなわけないッスー! 教えてほしいッスー!」
適当に流そうとする俺に、ライリーが懇願してきた。
「わかったから、足にしがみつかないでくれ。歩きずらい」
「本当ッスか!?」
ライリーは嬉しそうな顔で聞いてきた。
「ただ、これを知ったからと言って誰でもできる訳じゃないからな」
「どういうことッスか?」
「内容を聞けばわかる。まず、祭壇には魔石があるよな?」
「……はいッス」
俺は魔素の流れが見えることを、体内の魔石のことを省いてライリーに説明した。
「そんな……商売のタネだと思ったッスけど、残念ッス……」
話を聞いたあと、ライリーは凄い落ち込みようだった。
「とにかく次の階層いくぞ」
「はーい」
「……はいッス」
祭壇に魔力を込めると、俺たちは光に包まれた。
「40階層も雪山ね。ここを越えれば雪は終わりかしら?」
「自分も41階層はわからないッス」
「ん? 70階層まで攻略は進んでいるんだよな?」
王宮騎士団が70階層を攻略していることを聞いていた俺は、ライリーに確認するように問いかけた。
「70階層まで攻略してるのは騎士団だけッス。冒険者達はこの40階層までしか攻略できてないッス」
「どういうことだ?」
「情報の秘匿ッス」
ライリーは不満そうに言った。
「俺ならその謎が解けるかもな。ちょっと見てくるわ」
空高く飛び上がった俺は、階層全体を見渡した。
「あぁ、なるほどな。見つからないわけだ……」
俺は白く染まる雪景色を見ながら、呟くように言った。
「どう? 見つかった?」
着地すると、リアが聞いてきた。
「ああ。だが、あれは自然にああなったのか?」
「どういう事ッスか?」
「行けばわかる。とにかく向かおうか」
俺たちは魔素の流れを追うように先へ進んだ。
お読みいただき、ありがとうございます!
【ブックマーク】と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!
評価はモチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!
【いいね】もポチッとしてもらえると嬉しいです!




