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第48話 白兎×攻略法


「また来たぞ」

「ホワイトラビットね、私に任せて!」


 雪道を歩いていると、全身白い体毛に覆われたウサギが出てきた。大きさは50cm程とかなり大きい。

 発達した後ろ足による脚力は大したもので移動速度が速く、その脚力から繰り出される一撃は岩を砕く程だ。

 全身が白いこともあり、雪に隠れられると見分けづらくなる。

 リアはナイトメアを抜刀すると、正中線に構えた。

 ホワイトラビットは赤い瞳でリアを捉えると、一蹴りで距離を詰めリアの顔面に蹴りを入れる。


「速くても、反応出来ないほどじゃないわ!」


 ホワイトラビットの一撃をナイトメアで受け流し、衝撃の方向を変えた。ホワイトラビットは体勢を崩し地面に着地したところを切り捨てられた。

 俺は地面に転がっているホワイトラビットの亡骸をインベントリに収納する。


「結構歩いてきたわね」

「今更だが、闇雲に進んで祭壇は見つかるものなのか?」


 迷宮に入ってから真っ直ぐに進んでいた俺は、ふと疑問に思いライリーに尋ねた。


「見つからないッス」

「それじゃ、私たちは何のために歩いてたのよ!」


 ライリーの端的な回答にリアが叫んぶように言った。


「地図作りのためッスよ? このまま一番端まで行ってもらえると助かるッス」

「迷宮には端があるのか?」

「あるッス。これを見てほしいッス」


 ライリーは手元の地図を俺たちに広げて見せた。

 地図は正方形に四角く縁取りされ、細かいマス目に仕切られている。


「迷宮は各階層が10キロ四方の四角形になってるッス」

「それじゃ、あの遠くに見える山はなんなのよ」


 リアが10キロ以上先にあるであろう、薄らと見える山を指さして言った。


「あれは見えてるだけで行けないッス。端まで行くと見えない壁があって先には進めなくなるッス。因みにスタート地点は毎回中央からッス」

「どうやって地図を作っているのか不思議だったが、そういう事か」


 ライリーは自分の歩数で大体の距離を把握し、マス目に沿って地図を埋めていた。


「それに、この感じだと端まで行く必要はないと思うッスよ? あ、ほら見えてきたッス」


 ライリーの指さす方を見ると遺跡が視界に入った。

 雪の降り積もった遺跡は外壁が朽ち、辺りに瓦礫が散乱している。


「あの中に祭壇があればいいのね?」

「そうッス。ハズレの遺跡でも財宝や魔装(レガリア)があるッス。迷宮が今朝更新されたッスから、まだ取られていないかもしれないッス」

魔装(レガリア)には興味無いな」

「興味ないんスか? あの魔装(レガリア)ッスよ?」


 魔剣を持つ俺達には魔装は特に必要の無いものだ。それを知らないライリーは不思議そうにこちらを見ている。


「ああ。もしあればライリーにやるよ」

「本当ッスか!? 口約束だからって反故は無しッスよ?」


 ライリーの目がいやらしく輝いた。


「それより、どうしてこっちで合ってるってわかったんだ?」

「ずっと地図作りをしてるとわかる時があるんス。そう言う時は昔作った地図と同じだったりするッスよ」

「同じことがあるのか?」

「最近は多いッスね。20階層ぐらいまでなら地図が無くても大体わかるッス」

 ──ランダム生成だと思っていたが、パターンがあるってことか? だとしたらライリーの地図は……


「今まで作った地図はどうしてるんだ?」

「地図ッスか? 家に保管してるッス」

「今までの努力が無駄にならないかもしれないな」

「どういうことッスか?」

「まだ分からないが、迷宮から出たら地図を見せてくれ」

「はいッス!」

「ねぇ! 早く行きましょー!」

「今行くッス!」


 ライリーは遺跡の前で呼んでいるリアの元へ走っていった。俺も後を追い、遺跡へ向かった。


「やっぱりこの遺跡で正解だったッス」


 遺跡を奥へ進むと、祭壇の部屋があった。

 祭壇には魔石が嵌め込まれており、手前の地面には魔法陣が描かれていた。


「帰還するには魔法陣に乗って魔力を込めるッス。次の階層に進むには祭壇の魔石に魔力を込めればいいッス」


 俺たちは階段を上り祭壇へと近づいた。


「それじゃ、次の階層に行くわよ!」


 リアは祭壇に手を触れながら言うと、眩い光が3人を包んだ。視界が白く染まり、徐々に明確になっていく。


「え……また雪原なの?」

「20階層までは1階層と同じ感じッスよ」

「それじゃ21階層からはどうなるの?」

「それは行ってからのお楽しみッス。さ、2階層のマッピングもするッスよ!」

「こんなに寒いのがまだ19階層も続くってこと!?」


 ライリーが元気なのに対してリアは肩を落としている。


「同じならさっさと攻略してしまうか」

「何か攻略法があるの!?」


 俺の声掛けにリアが目を輝かせて振り返った。


「まぁ、見てろって」


 俺は魔力を足に集中し、風に変換する。ジャンプと同時に出力を高めると、俺は空高く飛び上がった。

 空から見渡すと、遠く離れた場所に遺跡が4つ確認できた。


「よっと、向こうに遺跡があったぞ」

「そんなの反則ッスー。そんなことされたら本末転倒ッスよ」

「まぁまぁ、こんなことできる人ユウヤ以外にそうそういないから大丈夫だよ」


 着地した俺が、2人に言うとライリーは地図を片手に肩を落とし、リアは嬉しそうにライリーを慰めていた。


「早く進むぞ。迷宮が外と同じってことは日も暮れるんだろ?」

「勿論ッス。雪原の夜は冷えるッスよ」

「こんな寒い所で野宿なんて嫌よ!? 早く行きましょ!」


 俺たちは太陽の位置を気にしながら20階層を目指した。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「やっぱり夜は冷えるな」

「はぁー寒いわね……」


 リアは手に息を吐きかけると、呟くように言った。

 俺たちは攻略を進め、日暮れ前に20階層に到達していた。ここは20階層にある遺跡だ。

 この階層の遺跡は広い造りになっており、奥には巨大な扉があった。他の冒険者たちもパーティごとに集まって暖を取っている。

 他の冒険者の話では、扉の奥にはフロアボスと呼ばれる魔物がいるらしく、朝を待ってからレイドを組んで討伐するそうだ。


「まさかここまでの遺跡を百発百中で当てるとは思わなかったッス」

「運が良かっただけだ」


 複数存在する遺跡の中で、次の階層に進む祭壇があるのは一つだけだが、祭壇に嵌め込まれた魔石のおかげで、魔素が見える俺には正解の遺跡を見分けることは容易かった。


「魔物を倒して先に進んじゃダメなの?」

「それは止めといた方がいいッス。フロアボスはかなり手強いッスから、2人だけじゃ倒せないッス。もちろん、自分は戦力外ッス。それに21階層に進んでも寒空の下ッスよ?」

「ボスはともかく、次の階層に進むのは明日にした方がいい。ここの方がまだマシだろ」

「そうだけど……寒すぎるわよ、ここ」


 屋根はあるが、壁が所々崩れ隙間風が俺たちを襲う。

 外は吹雪になり、陽の光が無くなったことで寒さが増している。


「防寒具を持ってこないからッス。これを使うといいッス」

「ありがとう、使わせてもらうわ……」


 ライリーはリュックから毛布を取り出し、リアに手渡した。


「2人とも飲むか? 温まるぞ」


 俺はインベントリから湯気がゆらめくスープを取り出し、リアとライリーに手渡した。

 船旅の時に作っていたコンソメスープだ。


「ありがとう、温まるわー」

「いつの間にこんなモノ用意したんスか!?」

「内緒だ」


 俺は笑いながら言うと、石を組み焚き火の用意を始めた。生活魔法で枯れ木に火をつけ、その上にフライパンを乗せ、今日倒したホワイトラビットを取り出した。


「何してるッスか?」

「こいつを料理しようと思ってな」

「それは辞めといたほうがいいッス。迷宮の魔物は魔素が多すぎて直ぐには食べることができないんスよ」

「こいつもそうなのか」


 どうやら、迷宮の魔物もクラーケンのように魔素を抜かないと食べることが出来ないらしい。


「迷宮の攻略が進まない1番の原因は食料ッス。現地で食料が手に入らないッスけど、持ち込める荷物には限りがあるッス」

「それでみんなあんなの食ってるのか」


 遺跡で休む冒険者たちは、味のしない棒状の固形食や硬そうな干し肉を食べていた。


「あんなのじゃ食った気にならないだろ?」

「荷物を減らすには仕方ないッス。ユウヤさん達は食料持ってきてないッスか?」

「大丈夫だ。今美味いもん食わせてやるから」


 俺は魔剣グランロストをホワイトラビットに突き刺し、笑みを浮かべた。

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