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第47話 祭壇×ノースフル古代迷宮


「ここがノースフルのギルドか」


 街の中央に来ると、見慣れた看板が目に入った。

 ギルドは古びた遺跡に増設した様な外観をしている。

 ──この遺跡、能力付与(エンチャント)の本があった遺跡に似てるな……


「寒いから早く入りましょ」


 俺が遺跡を見ていると、リアは急かすようにギルドの扉を開けた。

 ギルドの内装は今までのギルドと大きく違っていた。

 依頼書が張り出されるボードは見当たらず、各所に様々な武器や防具、道具や食料品を販売する露店が並んでいる。

 なにより、1番目立つのは奥に見える巨大な祭壇だ。

 祭壇の中央には魔石が嵌め込まれ、魔素が流れ込んでいる。

 ──あそこが迷宮の入口か。


「ここにいる冒険者ってシルバー以上の人達なんだよね?」

「武術大会で勝ち上がった猛者たちだろうな」

「結構いるんだね」


 ギルド内では品定めをする冒険者たちで溢れていた。


「先に依頼の報告からだな」

「うん」


 俺たちは依頼完了の報告をするために、受付へ向かった。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「王宮騎士団が帰ってきたぞ!」


 俺たちが依頼報告をしていると、誰かの叫び声が響いた。

 声の方に目をやると、祭壇の魔法陣が光を放ち周囲の冒険者たちが騒いでいるのが見えた。

 魔法陣の輝きが消えると、そこには20人ほどの統一されたアーマーを身にまとった集団が現れた。

 王宮騎士団のアーマーは至る所が破損し満身創痍のようだ。

 商人や冒険者たちは王宮騎士団を囲むように群がっている。


「我ら王宮騎士団、全員無事に帰還した! が、またもや70階層のフロアボス『ミノタウロス』は……倒すことが出来なかった……」


 皆がざわめく中、リーダーらしい男が前に出ると全員に聞こえる声で悔しそうに言った。

 騎士団に群がっていた人達は、結果を聞くと各々に散り始めた。


「最高到達階層は70階層か……」


 依頼の報告を終えた俺は、遠くから騎士団を見ながら呟いた。

 騎士団は傷だらけの体を引きずるように、ギルドから出て行った。


「お二人は見ない顔ッスね。古代迷宮は初めてッスか?」


 俺が騎士団を目で追っていると、体格に合わない大きなリュックを背負った小柄な少年が話しかけてきた。


「ノースフルには今日来たところだ。君は?」

「自分は商人のライリーッス。迷宮攻略される冒険者さんの荷物持ちをしながら、迷宮の地図を販売してるッス。よかったら見ていくッスか?」


 癖毛の酷い栗色の髪の少年、ライリーはリュックを下ろすと、頭を突っ込んで地図を次々と取り出し始めた。


「あんたらそいつの地図は辞めといた方がいいぜ?」

「金の無駄だからな」


 ライリーから受け取った地図を見ていると、男2人組が絡んできた。


「適当な事を言うのはやめて欲しいッス。自分の地図は現地でこの目で確認して作った正確な物ッス!」


 ライリーは地図を広げて訴えるように言った。

 地図は細部まで書き込まれ、罠の場所や種類まで記載されている。


「それいつの地図だよ。迷宮の構造がいつ変わったと思う? 今朝だ!」

「つまり、そいつはただの紙切れ同然ってことだな」


 男たちはヘラヘラ笑いながらどこかへ行ってしまった。

 ──そう言えばサンクが迷宮は入る度に姿を変えるとか言ってたが、そういう事だったのか。


「失礼しましたッス。こんなもの、買わないッスよね……」


 ライリーは半べそをかきながら、取り出した地図をリュックに直し始めた。


「そう落ち込むな。いい物を売ろうとする意志は大切だと思うぞ?」

「そう言ってもらえると嬉しい限りッス」

「まぁ、俺も受け売りだけどな。またいい地図書いたら売ってくれよ」


 俺は持っていた地図を返すと、笑いながら言った。


「はいッス! それで、これから迷宮に入られるなら荷物持ちはいらないッスか?」


 俺たちが立ち去ろうとすると、ライリーに止められた。


「ちゃっかりしてるな。けど、荷物持ちは必要ないんだよな……」

「そ、それじゃ、迷宮を案内するッス! これでも何百回と迷宮に出入りしてるッス! それに地図作りに協力してもらえるんなら料金もいらないッス!」

「よし、わかった。迷宮の道案内をしてくれ」

「ありがとうッス!」


 ライリーは嬉しそうにガッツポーズをすると、荷物をまとめ始めた。


「連れていくの?」

「迷宮がどんな所かわからないからな、今の俺たちには情報が必要だろ?」

「それもそうね」

「準備できたッス」

「よし、それじゃ初迷宮に行ってみるか!」


 俺たちは迷宮の入口である、祭壇へと向かった。


「迷宮に挑まれますか?」


 祭壇の前まで行くと、ギルド職員に止められた。


「ああ、そのつもりだ。なにか手続きが必要なのか?」

「迷宮に挑まれている冒険者をギルドで把握するために、こちらの魔導具でギルドプレートを読み込ませていただいております」

「なるほどな。迷宮内で死なれたら把握出来ないもんな」


 俺とリアはギルドプレートを取り出し、職員の持つ魔導具に乗せた。

 ライリーは身分証のカードを提示していた。


「ありがとうございます。迷宮から出られたら再度ギルドプレートの提示をお願いします」

「ああ、わかった」


 俺たちが魔法陣の上に進むと、魔法陣が輝き始め目が眩むほどの光に包まれた。

 徐々に視界が鮮明になっていく──目の前には一面に広がる白銀の世界があった。

 辺りを見渡すが、遠くには雪が降り積もった山が見え、雪景色が広がっている。


「ここが迷宮か……」

「さっきまでギルドの中にいたのに……ここは外なの?」

「あの魔法陣は転移魔法だったらしいな」


 俺が上を見上げると迷宮には空と太陽があり、雲の切れ目から覗く太陽は白銀の高原を輝かせていた。


「うそッ! ユウヤ出口が無いわ!」


 俺が周囲を見渡していると、リアが騒ぎ始めた。

 雪が降り積もっている足元には魔法陣はなく、近くにそれらしいものも見当たらない。


「迷宮から出るには魔法陣を探すしか方法はないッス」

「魔法陣ってギルドにあったやつか?」

「そうッス。魔法陣は各階層に複数存在する遺跡にあるッス」

「次の階層に進むにはどうすればいいんだ?」

「遺跡の一つに祭壇がある遺跡があるッス。その祭壇から次の階層に進めるッス」

「進むにも帰るにも遺跡を探す必要があるってことか」

「そういう事ッス。そんなことより、こんな所で突っ立ってたら凍え死ぬッスよ?」

「そうね、早く進みましょ」


 リアは寒そうにコートのフードを被った。

 俺たちは雪を踏みつけながら、迷宮探索を始めた。

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