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第45話 魔導船×出航

 

「そのうちエレメンタルの魔石は手に入りやすくなると思うけどな。まぁ期待せずに待っててくれ」

「わかりました。ユウヤさんがそう言うのであれば何かあるのでしょう。それで、ご相談と言うのは」

「ああ、それなんだが……俺が迷宮に行ってる間にこいつを改造しといて欲しいんだ」


 俺は魔導二輪に手を置きながら言った。


「改造、ですか?」

「今のままでも快適なんだが、空走モードだと魔力をかなり使うだろ?」

「あー確かに消費が激しすぎて、使い物になりませんよね……すみません勝手なことをしてしまったようで」


 何を勘違いしたのか、テオさんは申し訳なさそうに言った。


「いや、空走モードには感謝してるんだ。常にあれで乗ってるぐらいだしな」

「ん。快適だよ?」


 空走モードがお気に入りのティナも話に入ってきた。


「……え? あのモードで5分も乗れば魔力切れになりますよね?」

「いや……今のところは魔力切れにはなってないぞ?」

「テオ、こいつを常人のそれと比べるな。クラーケンを単独で討伐するようなやつだぞ?」

「確かに、それもそうですね。それで、どんな改造ですか?」


 レスターの一言にテオさんはすんなりと納得すると、改造内容を聞いてきた。

 ──簡単に納得されると、それはそれで腑に落ちないんだが……


「魔力の貯蓄システムを取り付けて欲しいんだ。これから先、運転するのは俺だけとも限らないからな」

「なるほど、確かに貯蓄できればユウヤさん以外でも運転することが出来るという訳ですか……わかりました! 魔導船でも貯蓄システムは導入できたので、魔導二輪にも導入してみせましょう!」


 テオさんは拳を強く握り、意気込んだ。


「ありがとう」

「ただ、魔石はどうされますか? 貯蓄用だとそれなりの規格の物が必要ですが……」

「それなら、迷宮で取ってくるから問題ない。攻略するつもりで行くからな。Aランクの魔石ぐらい取れるだろ」

「はは……ユウヤさんならやりかねないので怖いですね……」


 テオさんは力のない笑みを浮かべながら言った。


「コホン。話は終わったようだな。ユウヤに話があるんだが、いいか?」

「そうでした。とても大切な話なんです」


 レスターが真剣な表情で話し始めると、隣のテオさんもいつもより真剣な表情をしてこちらを見据えた。


「な、なんだ……?」


 俺は2人に圧倒されながら聞き返す。


「昨日のあれは何と言う食べ物だ?」

「口に入れた途端、米が崩れ魚がとろけました。是非、あの料理をイエンの名物にしたいのです!」

「ああ、なんだ。寿司のことか」

「すし、と言うのか! どうやって作るんだ?」


 レスターはメモを用意し、一言一句聞き漏らさないように俺に近づいてきた。


「落ち着いてくれ。聞かれると思って、作り方はここに書いてある」


 俺はインベントリからメモ書きを取りだし、レスターに手渡した。


「だが、作れるかどうかはわからないぞ?」

「ど、どう言う意味だ? 何か手に入らないような材料が必要なのか!?」


 レスターはメモに穴が空くほど凝視し、内容を確認している。


「技術が必要なんだ。詳しくはメモにも書いてあるが、米の硬さや握り方にコツがあるんだ。簡単そうで難しいからな一朝一夕では習得出来ないと思うぞ?」

「なるほど、早速料理人に作らせよう! ユウヤ、色々世話になったな。迷宮、頑張れよ!」


 レスターはそう言うと、どこかへ走って行ってしまった。


「それでは我々は、魔導船へ向かいましょうか」


 レスターを見送った俺たちは魔導船に向かうことにした。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「大きいーッ!」

「大っきい……これに乗ってノースフルに行くのね」


 ティナとリアは魔導船を見上げながら言った。

 魔導船は帆船ではなく、外観は魔導鉄で固められており、大型クルーザーのような姿形をしている。


「この船なら2日もあれば着けるはずですよ」

「そんなに早く着くのか?」

「今までの帆船とは違い、風がなくても速度を落とさずに進むことができますからね。それに、クラーケンの魔石で片道分の魔力は貯蓄できますから予定通りの運行が可能になりました」


 テオさんは自信満々に胸を張りながら言った。


「それでは、中を案内しますのでついてきてください」

「んッ!」

「中はどうなってるのかしら、楽しみね!」


 俺たちはテオさんに船内を案内してもらった。

 船内は4人部屋が20室用意されており、両壁に2段ベッドが固定されていた。

 中央の奥には小さなテーブルと嵌め込みの窓がある。


「2日泊まるだけなら十分だな」

「もっと豪華な部屋だと思っていたわ……」

「むー狭い」

「はは……改良も考えますね……」


 女子2人には不評らしく、テオさんは少し落ち込んでいた。


「そう贅沢ばかり言うな。それに今回は俺らの貸切らしいからな」

「え、そうなの?」

「はい。今回の運行再開は昨日決まったことなので、まだ他の街には案内していないんです。1度ノースフルに行ったあと、イエンに帰ってきてから本格的に再開となります」

「定期船の貸切なんて滅多にできることじゃないだろ?」

「それもそうね!」


 貸切と聞いて、文句を言っていたリアも機嫌を直したようだ。


「それでは、そろそろ出航してもよろしいですか?」

「ああ、よろしく頼む」

「わかりました。私は船長に話してきます。ユウヤさんにはまた色々と学ばせていただきました……よい船旅を!」


 俺はテオさんとしっかりと握手をして別れた。


「貸切で航海を楽しむわよ!」

「んー!」


 リアとティナは甲板で長い髪をなびかせながらはしゃいでいる。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「──あんなこと言ってたのに……ちっとも楽しめないわ……ウッ!」


 出航から数時間後、俺は魔導船の甲板でリアの背中を摩っていた。

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