第44話 家名×共同生活
「君の父。ガイアスとは親しい間柄でな。しかし、あの事件のこともある……」
「あれは──」
「分かっている。君の持つその魔剣……ナイトメアが原因なのだろう?」
「……ッ」
リアは悔しそうに下唇を噛むと俯いた。
「だがな、国民にはそんなことは関係のないことだ。10年経った今でも、エストレアの名を聞くだけで嫌悪感を抱く者も少なくない」
「……」
「名を捨てろとは言わない。だが、表には出さないようにしなさい。今の君の姿を見てリア・エストレアだと知るものは少ないだろう」
「わかったわ……ユウヤにも迷惑をかけるかもしれないもんね……」
リアは少し寂しそうに言った。
ギルドに行くまでもそうだったが、寿司を握っているときも、リアを嫌な目で見る人は1人も見かけなかった。
10年間姿を現さなかったことで、姿は忘れられ家名さえ出さなければ気付かれることはないだろう。
「ギルドプレートの家名も伏せておいた方がいいだろう。これを持っていきなさい」
レスターは懐からシルバーのギルドプレートを取り出し、リアに手渡した。
「昨日、姿を見た時に必要だろうと思い作っておいた。今持っているプレートは私が処分しておこう」
「……ありがとう」
「ユウヤ。リアのことを頼むぞ」
そう言うレスターの表情は、眉間にしわを寄せ真剣なものだった。それほど、リアの両親とは親しかったのだろう。
「ああ、任せてくれ。それはそうと、さっき作ったんだ。よかったら食べてくれ」
俺はレスターに寿司を渡して応接室を出ると、造船所へ向かった。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「あ、ユウヤさん!」
造船所に着くと、俺に気づいたテオさんが声をかけながら近づいてきた。
昨晩は寝ていないのか、目の下は薄黒く隈取られている。
「ユウヤさんのおかげで間もなく完成です。あの腕輪の仕組みを利用し、貯蓄システムを導入したことで格段に効率が上がりました! 今は最終確認中ですので、明日から定期船の運行が再開されますよ!」
寝不足でテンションがいつもより高めのテオさんが、嬉しそうに言った。
──貯蓄システムか……魔導二輪にも付けて欲しいが、今のテオさんに言えば負担になりそうだな……
「あまり無理はしないでくれよ? 体を壊したら元も子もないからな」
「お気遣いありがとうございます。ですが完成間近なので、明日の出航に間に合わせてみせますよ!」
「よかったら、造船所のみんなで食べてくれ。腐りやすいから早めにな」
俺は大皿に盛った寿司をテオさんに手渡し、造船所をあとにした。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「わわわわ、私たち同じ部屋で寝るの!?」
夕刻前、買い出しを終え宿に戻るとリアが叫び出した。
「何だ今更。昨日だって同じ部屋だったろ」
「あ、あれは不可抗力っていうか……そもそも若い男女が同じ部屋でなんて……」
「はぁ……ベッドも2つあるだろ。ティナはリアと同じベッドでいいか?」
「ん。大丈夫」
「これから先、一緒に旅するんだろ? 宿に泊まる度にそんなこと気にすんのか?」
「……わかったわ。けど、私……寝相悪いらしいから、その……」
「気にしなくて大丈夫だよ?」
「……うん。ありがと」
「よし、飯にするか」
「んッ!」
俺は小さいコンロにフライパンを置き火にかけると、インベントリから取り出したキテカの表面を軽く焼き、氷水にいれる。
冷めたら水気を拭き取り、切り分けていく。
火、水、風のエレメンタルと酒を合わせたタレを作り、全体に回しかけ生姜をあしらえれば完成だ。
昼間に炊いて余っていた米をインベントリから取り出し、皿によそってテーブルに並べる。
「今日はキテカのたたきだ」
「美味しそう! 早く食べよッ!」
「私も食べていいの?」
「当たり前だろ。早く座れ」
「……うん」
リアがテーブルに着いたところで、俺とティナは手を合わせる。
「「いただきますッ!」」
「おいひぃー」
ティナはキテカを口に入れると、満面の笑みで言った。
それを見ていたリアもキテカを口に運ぶ。
「ほんと……美味しいわ!」
「気に入ってくれたならよかった。おかわりもあるからいくらでも食べてくれ」
「んッ!」「うんッ!」
ティナとリアは元気に返事をすると、料理を食べ始めた。
「寿司の時もそうだったが……ほんと、よく食うな」
「だって、美味しいんだもん……」
リアのおかわりが止まらず、仕舞いには作り置きしていたホーンラビットの照り焼きを丸々1匹分食べてしまった。
「そんなけ食ってくれたら俺も作りがいがあるわ。これからも遠慮しなくていいからな」
「うん、ありがと。……ご飯もう一杯もらえる?」
「まだ食うのかよ!」
リアの食費だけでかなりの額になりそうだ。
俺たちは談笑を交えながら、これまでの経緯を話し夜は更けていった。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「ん……ぁ? ティナ、なんで俺のベッドにいるんだ?」
目を覚ますと、ティナが俺の布団に潜り込んでいた。
「リア、ほんとに寝相悪すぎ……」
ティナは少しむくれながら言った。
体を起こし、リアのベッドを見ると頭と足の位置が逆さまになり布団は床に蹴飛ばされていた。
「どう寝たらそんなことになるんだよ……」
その時、部屋の扉を数回ノックする音が響いた。
目を擦りながら、のそのそと扉に向かうと宿の従業員に手紙を渡された。俺は手紙を開き内容を確認する。
「定期船が完成したらしい。ティナ、リアを起こしてくれ。飯を食ったら造船所に向かうぞ!」
「ん」
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「お、ユウヤ来たか」
「ユウヤさん。おはようございます」
造船所の前にはレスターとテオさんが2人で話をしていた。
テオさんは少しは寝れたのか、昨日よりは顔色が良い。
「ちょうど良かった。実はテオさんに魔導二輪のことで相談があるんだけど」
「はて、魔導二輪?」
「ああ、そう言えば礼もしてなかったな。魔導二輪はこいつのことなんだ」
俺は魔導二輪をインベントリから取り出し、テオさんに見せた。
「あの時の乗り物ですね! なるほど、魔導二輪と言うのですね。それでご相談と言うのは?」
「と、その前に礼が先だ」
俺はインベントリから皮袋を取り出し、テオさんに手渡した。
「これは?」
「あまり手に入らないと言っていたからな。使ってくれ」
皮袋の中にはエレメンタルの魔石がぎっしりと詰まっていた。
「こんなに沢山、いいんですか!?」
「もちろんだ。テオさんのおかげでこいつにも乗れているからな。エレメンタルの魔石もそのうち手に入りやすくなると思うけどな」
「これが手に入りやすくですか?」
「まぁ期待せずに待っててくれ」
不思議そうに尋ねてくるテオさんに、俺は笑顔で答えた。
──カタクの皆が魔法を広め始めて1ヶ月だ。あの洞窟はいい狩場になってるだろな。
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