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第41話 祭り×泥酔

 

 その晩、ユウヤ主催のクラーケン料理の祭りが行われた。

 ギルドの声掛けもあり、祭り開催の噂はすぐに街全体へと広がった。

 ギルド周辺は人で溢れ、様々なクラーケン料理に舌鼓を打ち、便乗した人が屋台を出したりと街はお祭り騒ぎだった。


「な、何なのこの騒ぎは……」

「嬢ちゃんいい時にきたなぁ! 今日は祭りだ!」

「この時期に祭り?」

「ユウヤとか言う冒険者がクラーケンを討伐したんだ。なんでも1人で乗り込んだんだとよ。しかも、クラーケンの魔素を抜き取って料理までするってんだ」

「ユウヤ……クラーケンを単独討伐なんて……」

「何しみったれた顔してんだ。今日はどこでも食べ放題だ。ほら好きなもん食べな!」

「え、いいの!? 何コレ! おいしそぉ」


 キラキラ光る宝石のような果物を見つけたリアは目を輝かせた。


「これはイエン名物『果物のテキーラ漬け』だ。食うかい?」

「いただくわッ! 独特の風味だけど、甘くておいしぃ!」


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「ふぅ……やっと捌ききったな。みんなもお疲れ様。助かったよ」


 俺は解体所に手伝いに来てくれていたイエンの料理人達に声をかけた。


「俺たちが礼を言いたいぐらいだ」

「あんたのおかげでイカ料理の幅が広がったよ」


 料理人たちは口々に礼を言った。

 それぞれの料理人に別々のレシピを渡したので、この世界に合ったアレンジをしていってほしいところだ。


「ユーヤ疲れた?」

「ああ、ちょっとな」

「あっちでギルドマスターが呼んでるよ?」

「ちょっとはゆっくりさせてほしいもんだな……」


 俺はレスターが食事をしているテーブルに向かった。

 テーブルにはテオさんや他のギルド職員たちもいた。


「お、ユウヤ来たか。どれも最高に美味かった」

「口に合ったならよかったよ」

「立ち話もなんだ。席に座りなさい」


 俺は促されるままに席に着いた。


「そう言えばクラーケンのお礼がまだだったな。ララ、報酬を」

「はい。こちらがクラーケン討伐の報酬になります」

「ああ、ありがとう」


 俺はララから金貨が詰まった皮袋を受け取った。

 ──さすがAランクの魔物だな。1体でこんなに報酬があるのか。


「本来は30人規模で討伐する魔物だ。1人で倒した奴は初めてみたぞ。それでな、ユウヤに聞きたいことがあるんだが」


 レスターは真剣な表情でこちらを見た。


「なんだ?」

「料理は全て確認したが、魔素が一切検知されなかった。どうやって魔素を抜いたんだ?」

「そんなことか。それは、これを使ったんだ。こいつは魔素と魔力を喰らうからな」


 俺は魔剣グランロストを取り出して言った。


「魔剣、そういう事か……魔剣が無いと無理ということか」

「いや、効率はわからないがやり方はあるんじゃないか?」

「本当か!?」


 レスターはテーブルに手をつき、前のめりになって聞いてきた。


「テオさん。魔石を使えば魔素を抜くことができるよな?」

「ええ、確かに魔素を抜く魔導具はありますが、クラーケンの様な大物となると難しいですよ?」


 俺の質問の意図を掴めず、テオさんは不思議そうに言った。


「ティナ、それを貸してもらえるか?」

「ん」


 俺はティナから雷霆の腕輪を受け取り、テオさんに手渡した。


「こ、これは……雷竜の魔石ですか!? すばらしい! なるほどッ!……この仕組みを魔導船に組み込めば……ユウヤさんありがとうございます!」


 テスターで魔石を確認し、ブツブツと呟いていたテオさんは、一通り腕輪を見終えると俺に腕輪を返した。


「この魔導具の仕組みを使えば、短時間で魔素を抜き取ることも可能です」

「それはすぐにでも作れるのか?」

「はい。魔石さえあれば可能かと」

「そうか! 定期船の調整が終われば制作を頼む」

「はい。わかりました」


 テオさんとレスターが興奮気味に話を進めている。


「どうしてあんなにうれしそうなんだ?」


 俺は隣で静かに食事をしていたララに聞いた。


「それはですね。クラーケンのような海獣と呼ばれる魔物は、魔素を大量に持っているため討伐しても素材を使うだけで食用には出来ません。倒しても素材しか使い道はなく、冒険者にもギルドにも旨みはほとんどありません。しかし、魔素を抜き取る方法があれば食用にも出来ますし、ここでしか食べられない海獣料理となれば観光客の増加も見込まれますので」

「なるほどな。そういう事ならさっき手伝ってくれた料理人にレシピを教えといてよかった」

「そうか! ユウヤ恩に着るぞ! 本当に今日はいい日だ……ん!?」


 レスターは嬉しそうに酒を飲んでいたが、俺の後ろを見て声を荒らげた。


「ユウヤーみつけたぁ」


 聞き覚えのある声で後ろから声をかけられた。

 振り返ると、ほのかに顔を赤らめるリアの姿があった。風に乗って酒の匂いがする。


「お前……酔ってるのか?」

「酔ってなーい! ほらユウヤ、私と勝負しなさぃ!」


 足元がおぼつかないほどに酔っているのか、焦点が合わないとろっとした目つきで凄んできた。


「ユウヤさんのお知り合いですか?」

「ああ、闘技大会で知り合ったんだが……はぁ、ここまで着いてくるとはな」


 俺は手を額について、重くため息を吐いた。


「逃がすわけ、ないでしょー……わたしと、勝負……」


 意気込んでいたリアはその場に座り込んだ。


「大丈夫か?」


 インベントリから皮袋を取り出した俺は、近づき声をかけ背中をさすってやる。


「気持ち、悪い……うッ!」


 リアは盛大に吐くと、楽になったのか俺に体を預けると、そのまま眠ってしまった。

 全てを受け止めた皮袋をインベントリに入れ、リアを背負う。


「宿はどこだ? できれば風呂付きのところがいいんだが」

「そ、それならその道を真っ直ぐ行ったところにあります」

「そうか、ありがとう。ティナいくぞ」

「んー」


 ティナはイカ料理に後ろ髪を引かれながらも、椅子から降りた。

 俺は聞いた宿の方に歩き始める。


「ユウヤ! 今回のことで礼をしたい。明日にでもギルドに来てくれないか?」

「ああ、わかった」


 立ち去る俺に声をかけてきたレスターに返事をして、宿に向かった。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


 目を覚ますと、知らない部屋だった。

 ──頭痛い……。


 リアは体を起こし部屋を見渡す。

 窓の外はまだ夜なのか、部屋は薄暗く全容は把握できない。

 自分が寝るベッドの隣に、もう1つベッドがあるのが視界に入った。

 ベッドには誰かが寝ているのか布団が膨らみ、上下に動いている。

 リアは近づくと、そっと布団をめくった。


「ん? ああ……起きたのか」

「き、きゃぁあああああ!」


 リアの叫び声が宿中に響き渡った。

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