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第3話 ボアモス×異世界人

 

 俺は、石ナイフを右手に持ち、左手にホーンラビットの角を持つと、角から硬質強化を石に移すイメージをする──

 左手に持った角が青白く光り始めると、光は石ナイフに吸い込まれるように消えた。

 角は灰になって跡形もなく無くなってしまった。

 石ナイフに角の重みが移ったかのように、重たくなった。

 試しに石ナイフを鑑定してみると──


 ----------


【石ナイフ】

 石で作られたナイフ。

 能力付与(エンチャント): <硬質強化Ⅰ>


 ----------


「できたッ!」


 石ナイフの鑑定結果に<硬質強化Ⅰ>が追加された。

 俺は適当な石を拾い上げ、<硬質強化Ⅰ>の効果を試してみることにした。


 石ナイフを手に持った石に叩きつける。

 能力付与(エンチャント)していない石は殆ど抵抗なく砕けてしまったが、石ナイフには傷ひとつ見当たらなかった。


「こんなに違うのか……そうだ、硬質強化の重ねがけをしたらどうなるんだ?」


 俺はホーンラビットの角を取り出し再度、石ナイフに能力付与(エンチャント)する。

 青白い光が石ナイフに吸い込まれ、消えた。

 石ナイフはさらに重くなった。


 ----------


【石ナイフ】

 石で作られたナイフ。

 能力付与(エンチャント): <硬質強化Ⅱ>


 ----------


「重ねがけ成功だ! もう一本したらⅢになるのか?」


 試しにもう一本取り出してみたが、青白い光は出ることは無かった。


「2回が限界値なのか? まぁ十分だろ、これ以上重たくなっても困るしな」


 2本の角を能力付与(エンチャント)した石ナイフは体感で1kg程の重さになっていた。

 能力付与に成功した俺は、残りの肉を口に放り込んで、ステータスを開いた。


 -----------


【名前/性別】クガ ユウヤ / 男


【レベル/Exp】Lv.4 / 72<Next:12>


【スキル】料理:Lv.5 / 身体強化:Lv.1<0.1>


【ユニーク(隠蔽)】転移者 / 鑑定 / 能力付与(エンチャント)


 -----------


 身体強化にはLv.1の横に<0.1>と表示されている。

 昼に食べた肉の効果がまだ残っていたらしい。

 効果時間や能力付与(エンチャント)の細かいルールはまだわからないが、身体強化は能力を重ねてもLv.2にはならずに、0.1が横に付いただけだった。


「こっちは同じ効果を能力付与(エンチャント)しても効果が薄くなるってことか? わかんねぇことばっかだな……色々試していくしかないか……」


 ステータスを確認し終えた俺は、明日に備えて寝ることにした。

 焚き火に木をくべ、遺跡の壁にもたれかかってゆっくりと目を閉じた。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「あぁあぁぁぁぁぁあ!」


 まだ薄暗い早朝。

 静かな森に響き渡る悲鳴を聞いて飛び起きた。

 咄嗟に声がする方へ目を向ける。

 すると、木々の間を見え隠れする松明のような灯りが見えた。


「人か!?」


 俺は周辺のものを適当にインベントリに収納すると、灯りに向かって一目散に走った。

 米粒ほどに見えていた灯りはみるみる近くなり、数秒で灯りの正体を肉眼で捉える距離まで近づいた。


「何だこの速さ……ってかやばいだろ、あれ」


 自分が物凄いスピードで走っていることに驚きながらも、悲鳴をあげながら巨大なイノシシから逃げる3人組が視界に入った。

 俺は咄嗟に石ナイフを取り出すと、イノシシ目掛けて投げつけた。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「あぁあぁぁぁぁあ!」

「うるせぇ! 黙って走れ!」

「あんたのせいだからね!」

「お前だって乗り気だっただろうが!」

「死んだら呪い殺してやるからッ!」

「やれるもんならやってみろ!お前が死ぬ頃にはとっくに俺も死んでらァ!」

「元はと言えば、あんたが寝てるボアモスにちょっかい出すから悪いんでしょ!」

「痴話喧嘩は無事に帰ってからにしてください! いい加減打開策を考えないと──」


『──プギィイィィ……』


「「「え?」」」


 3人は真後ろから聞こえたボアモスの断末魔と鈍い衝撃音を聞いて振り返った。


「えっと……大丈夫っスか?」


 そこには目をえぐられ絶命した、イノシシの魔物『ボアモス』と見慣れない服を着た黒髪の少年が立っていた。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「お、あったあった」


 俺の投げた石ナイフはイノシシの目をえぐり、貫通して木にめり込んでいた。

 3人組は微動だにせず、目の前で横たわるイノシシを前に固まっているので、先に石ナイフを回収させてもらう事にした。

 石ナイフはポケットに入れるふりをしてインベントリに収納した。


 3人組は背中に大剣を背負った男と弓矢を抱えたメガネの男、ブラトップの様な薄着にグローブをはめた女で、多分同い年ぐらいだ。

 見た目は外人のような目鼻立ちをしている。

 大剣の男だけはじっとこっちを睨んで、目だけで俺を追いかけてきている。


「あーえっと……こんちわ」


 俺がもう一度、話しかけると3人は体を強ばらせた。


「てめぇ何者だ……」


 大剣の男が剣に手をかけて凄んだ。

 初めて聞く知らない言葉だったが理解出来る。不思議な感覚だ。


「ちょ、ちょっと止めなさいよカトル! わざわざ敵対する必要ないでしょ!」

「そうですね。先程聞きなれない言葉を話してましたから、他国の方かもしれませんよ?」


 ──あれ? 言葉が違ったのか?

 スキルでは異世界言語を取得しているが、日本語が勝手に変換される訳では無いらしい。

 どう使えばいいか分からないが、彼らの言葉を意識しながら話してみることにした。


「えっと……こんにちわ?」

「ほらみろ! 喋れんじゃねぇか!」

「あ、ホントだ」

「そのようですね。少しイントネーションがおかしいようでしたが……」


 意識するだけで、知らない言葉がスラスラと出てくる。

 どうやら、言葉はなんとか通じたようだ。


「言葉がわかるなら初めからそう言いやがれ! それで?

 てめぇは何者で、どこから来た?」


 カトルと呼ばれた大剣の男は、背中の剣に手をかけながら、1歩前に出ると空気が一瞬にして張り詰めた。

 カトルから押されるような威圧感を感じる。

 空気が張り詰める中、俺はゆっくりと口を開いた。


「俺の名前はユウヤ。自分がどこから来たのかは、分からない……この2日間、森をさ迷ってたらあんたらの叫び声が聞こえたから走ってきたんだ」


 俺は両手を上げて、敵意がないことを示しながら話した。


「自分がどこから来たかわからねぇだ? んなもん信じられるわけねぇだろ!」

「待ちなさいよ! この人はボアモスから私たちを助けてくれたのよ?」

「そうですね。少なくとも敵では無いと思います。それにボアモスをあっさり倒すような人に、僕達が勝てると思いますか?」

「無理ね」

「ぐっ……」


 女性が即答すると、カトルは剣から手を離した。


「あーもう、わーたよ。お前たちで話をつけてくれ」


 カトルは近くの木にもたれかかって目を閉じた。

 さっきまでの張り詰めていた空気と威圧感が嘘のように消えた。


「えーと、まずは自己紹介からね。

 私の名前はセット。あっちで拗ねてるのは、リーダーのカトルよ」

「僕はサンクと言います。先程は助けていただきありがとうございます。見たところ武器は持ってなさそうですが……ユウヤさんも冒険者ですよね?所属はどちらですか?」

「えっと冒険者?所属……?」


 返答に困った俺は聞き返した。


「……先程自分がどこから来たか分からないとおっしゃっていましたが、もしかすると記憶喪失でしょうか?」

「えッ!? 記憶喪失?

 それじゃ、こんなプレートは? 持ってないの?」


 セットは首に提げたドッグタグのような小さなプレートを胸元から取りだして見せてきた。


「持ってない……実は数日前からの記憶が曖昧で……」

「そうですか……ボアモスを倒すような人ですから、どこかのギルドに所属している冒険者だとは思いますが、プレートがあればそれも分かったんですけどね」

「その、冒険者って言うのは?」


 俺は記憶喪失という事にして、この世界のことを聞くことにした。


「そうですね。ここで立ち話も危険なので、一度森を出て街に向かいましょう。説明は道中でさせていただきます」

「ちょっとちょっと、街に戻るのはいいけど、このボアモスはどうすんのよ」

「倒したのはユウヤさんですからね。所有権はユウヤさんにありますが、どうされますか?」


 目の前で横たわるイノシシの魔物、ボアモスは全長5m程とかなりでかい。

 ──インベントリに入れれそうだが、人前では見せない方が良いか。

 かと言って持ち運ぶにもデカすぎるよな……


「んなもん、解体して必要な分だけ持って帰えりゃいいだろ。解体料は素材で貰うがお前もそれでいいだろ?」


 俺が考えていると、木にもたれかかっていたカトルが話しかけてきた。


「あんたねぇ、助けてもらったんだから無償でやればいいでしょ?」

「ふん。俺はまだコイツを信用したわけじゃねぇからな」

「いや、解体料が素材でいいなら俺も助かる」

「よし。そんじゃ、さっさと解体して街に戻ろうぜ」


 そう言うと、カトルたちは慣れた手つきで解体を始めた。

 ──この速さなら1時間もかかりそうにないな。やっと野宿生活から解放されそうだ……

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