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第14話 魔導具屋×少年

 

「こいつ、どうにかして使えるようになんないかな……」


 俺は宿屋の裏庭に取り出したバイクを見つめながら呟いた。

 バイクを移動に使えると便利だが、ホーンラビットに壊されたエンジンは使えそうにない。

 ガソリンタンクにまで穴が空いている始末だ。


「まだ数回しか乗ってなかったのに、スクラップとか笑えねぇ……

 はぁ、このままインベントリの肥やしにするしかないのか……」

「ん!? お兄さん!ちょっとそれを見せてもらっても?」


 俺がため息をついていると、後ろから20代後半ぐらいの無精髭を生やした男が話しかけてきた。

 俺と同じで『狐の尻尾亭』に泊まっているお客さんの様だ。


「え? ああ、いいよ。壊れてるけど」

 ──バイクはこの世界にはない乗り物だろうから、興味があるのか?


「おぉ! なるほど! ふむふむ……そうか!」

 ──なんか1人でブツブツ言ってるし……


「えっと……」

「お兄さん! これを私に修理させてくれませんか?」


 俺が話しかけようとした時、男はすごい勢いで振り返って聞いてきた。


「……直す?」

「あ、申し遅れました。私、魔導具屋をやっているテオと申します。以後お見知り置きを」


 テオと名乗る男は魔導具屋らしく、挨拶と一緒に名刺を渡された。

 ──直してくれるなら助かるが……魔導具屋がバイクを修理できるのか?


「俺は冒険者のユウヤ。修理ができるならお願いしたいけど、費用は?」


 修理してから高額な修理費を請求されても困るので、先に費用云々に関しては決めておくために聞いた。


「いえ、代金は結構です。私からお願いしておいて代金を頂くなど考えていませんので。

 ただ……その代わりと言ってはなんですが、材料となる魔石を取って来ていただきたいんですが……」

「修理に魔石が必要なのか?」

「どうも動力部分が破損しているようなので、魔石を動力として使えればと思いまして」

 ──魔石が動力になるのか……修理というより改造になりそうだな。


「なるほど、魔石ならなんでもいいのか?」

「実は……エレメンタルなんです。冒険者でも数を集めれる人は中々居ません。

 魔導具に使いやすい魔石なのですが……今は手持ちがないんです。

 この街に来たのもエレメンタルが多く出没する洞窟が近くにあるので、魔石の買い付けに来たんですがね……」


 テオは申し訳なさそうに話した。


「なんだエレメンタルでいいのか」


 俺にとっては、エレメンタル狩りは苦にはならない。居る場所が固まっていて、むしろ楽なぐらいだ。


「え……? 属性は風、水、火が各20個ほど必要なんですが……本当に大丈夫なんですか?

 お願いしているのは、あのエレメンタルですよ?」


 全く驚かない俺に対して、テオさんが何度も確認してくる。


「20個ずつか……それなら部屋にあるから取ってくるよ。ちょっと待ってて」


 インベントリに必要個数は集まっていたので、部屋にあることにして、取りに行くことにした。


「……もしかしてすごい冒険者さんでしたか?」

「いや、たまたま手に入れる機会があっただけだから、気にしないでくれ」


 俺は部屋に戻ると、インベントリから魔石を取り出し、カバンに詰め込んだ。


「お待たせ」


 そう言ってカバンから魔石を取り出し、テオさんに渡す。


「確かにエレメンタルの魔石ですね……これさえあれば明日の朝には直してみせますよ!」


 テスターで魔石を確認したテオさんは、よく分からない工具を取り出し、作業を始めた。


「それじゃ、お願いしますね」


 やることが無くなった俺は宿屋のおばちゃんにテオさんの事を説明し、明日の朝までは作業してるかもしれないことを伝えた。

 テオさんは狐の尻尾亭の常連らしく、人当たりのいい人らしいので任せておいても大丈夫だろう。


「腹減ったし街でも散策してみるかー」


 この街に来てから、宿屋とギルドを往復しているぐらいで、あまり街を見ていなかった俺は、時間潰しも兼ねて散策してみることにした。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「こうやって見ると意外と多いもんだな……これうまッ!何の肉だ?」


 露店で買った串焼きを頬張りながら、街並みを見て歩いてみると、日本を思わせるような瓦屋根や建築物が街に溶け込んでいた。


「誰か助けてください! 父が、父が連れていかれたんです」


 北門近くを通りかかった時、少年が騒いでいる声が耳に入った。声の方を振り向くと人だかりができている。


「どうして誰も助けに行ってくれないんですか!」

「行かないとは言っておりません。ギルドに報告し、妥当なランクの冒険者を集める必要があるのです。ですから、今日中に動くのは無理かと……」

「それだと間に合わない……」


 少年が泣き崩れる。

 俺は状況を確認するために野次馬に近寄った。


「どうしたんだ?」

「ん? 冒険者か。また北の街道で盗賊が出たんだとよ。あの子は命からがら逃げてきたらしいが、親が攫われたそうだ」

「なるほどな……」


 少年の服はズタボロになり、所々痛々しい傷が見える。

 俺は少年の方に歩いていき、門番に声をかけた。


「すぐに行けないのか?」

「無理だ。最近北の街道付近を根城にしてるのは『ゴント盗賊団』らしいからな……規模が大きすぎる」

「そうか。君、名前は?」

「……シンです」

「俺はユウヤだ。シン、1度ギルドに行ってみよう。何か情報があるかもしれない」

「はい……」

「食うか?」

「いえ、結構です……」

「そか」


 俺は串焼きの残りを口に放り込むと、シンを連れてギルドへ向かった。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「エルさん。北の街道付近の盗賊の情報ってない?」


 ギルドに着いた俺は、窓口で書類整理をしているエルさんに声をかけた。


「ユウヤさんおはようございます。盗賊の依頼を受ける気になられたんですね!

 でも、昇格試験の依頼は『西の森を根城にする盗賊団の討伐』だったはずですが……?」


 俺を見たエルさんが笑顔で応えた。


「この子の親が襲われたらしいんだ。門番が言うにはゴント盗賊団って奴ららしいんだけど」

「そうでしたか……確かに北の街道付近だとゴント盗賊団が根城にしているようですが、まさかユウヤさんが向かうなんて言いませんよね?」

「誰も行かないなら俺が行こうと思ってる」

「ダメです! 盗賊の討伐依頼は複数人でのパーティーを組むことを推奨しています。

 それに、ゴント盗賊団となると規模が大きすぎます。最低でもシルバー上位クラスが居ないと許可できません!」

「それじゃシルバー上位の冒険者を連れていけばいいのか?」

「そうですが、今は皆さん依頼で出払っていますので、戻られるのは明日の朝になるかと」

「そんな……それじゃ父は……」


 話を聞いていたシンがその場に座り込んでしまった。


「それじゃ、俺が先にアジトを探りに行って情報を集めるから、後から来た討伐隊に情報を渡すよ。これならいいだろ?」

「……確かにそれは効率がいいとは思います。ですが、ユウヤさんが危険すぎます」

「俺のことは心配しなくていいよ。危なくなったら逃げてくるからさ」

「しかし……」

「エル、どうしたんじゃ?」

「マスター! 実はユウヤさんが──」


 騒ぎを聞いていた他の職員がマスターを呼んだらしい。エルさんはマスターに今回のことを伝えた。


「なるほどな……ふむ、わかった。ワシが許可してやろう」

「マスター!」

「じゃが、アジトの場所を突き止める所までじゃ。わかったな?」

「ああ、わかった」

 ──襲われたら抵抗ぐらいはするけど。


「エル、ユウヤに情報を教えてやってくれ」

「わかりました……」


 エルさんはマスターを睨みつけていたが、諦めて俺にゴント盗賊団についての詳細を教えてくれた。

 ゴント盗賊団の構成員は分かっているだけで、32名いるらしい。

 アジトの正確な場所はわかっていないが、襲撃は北門を出て荷馬車で半日進んだ付近で多発しているらしく、その辺にあるそうだ。

 シンに聞くと今回襲撃を受けた場所もその付近だった。シンは丸1日歩いて街までたどり着いたらしい。


「それじゃ、行ってくるよ」

「ユウヤさん、無理だけはしないで下さいね」

「お兄さん! ありがとうございます!」

「おう! 大人しく待っとけよ」


 シンに手を振り返した俺は、ギルドを出て北門へ向かった。


「よかったんですか?  1人で行かせて」

「うむ。これで討伐が完了すれば、討伐に関与したことでユウヤの昇格試験も合格にできるじゃろうからな」

「なるほど、そういう事でしたか……」

「それに今回の討伐は急がねばならんからのぅ……シンはワシの部屋に来なさい」

「あれ? マスター、この子をご存知なんですか?」

「エルは知らんかったか。バカ領主の息子じゃよ」

「──ッ!?」


 エルが声にならない悲鳴をあげた。


「これから忙しくなるぞ。エル、明日の早朝までにシルバークラス以上の冒険者を10名ほど手配しておいてくれんか」

「か、かしこまりました。早急に手配致します」

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