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第12話 依頼報酬×防具屋

 

「こちらでお待ちください」


 応接室はテーブルとソファが置いてあり、壁には横長の鏡が飾ってあるだけの小部屋だった。

 俺はヒナに言われるがままに、ソファに腰掛ける。


「それでは私は失礼致します」


ヒナはそう言うと部屋から出て行った。

 数分後、応接室のドアが開きギルドマスターとエルさんが一緒に入ってきた。


「ユウヤ! 無事に帰ってきおったか!

 そうじゃ、紹介がまだだったのう。ワシの名はランディ。このカタクギルドでギルドマスターをしておる」


 そういいながら笑顔で向かいのソファに腰掛けた。


「少し遅くなったけど無事に帰ってこれたよ。服はボロボロだけど……ハハハ」


 状況が理解できていない俺は、愛想笑いで返すことしかできなかった。

 ──早く報酬を貰って風呂に入りたいんだけど……


「どうしてこれほどにも時間がかかった? 西の洞窟はそう遠くはないじゃろ。お主はこの5日間なにをしておった?」


 マスターが真剣な目付きで聞いてきた。

 ──時間がかかったことが呼ばれた理由らしいな。てか、俺はそんなに洞窟にいたのか……


「実は……シャドウベアーに襲われて崖から落ちたんだ」

「やはりあやつに襲われておったのか……」

「崖に落ちた時はどうなるかと思ったが、何とかシャドウベアーも倒して戻ってくることが──」

「なにッ! シャドウベアーを倒したじゃと! それは本当か!?」


 マスターが食い気味に声を荒らげた。


「え? あぁ、証明になるかはわからないけど……」


 俺はポケットから出すふりをして、インベントリからシャドウベアーの魔石を取り出してテーブルに置いた。


「エル」

「はい」


 2人が短いやり取りをすると、エルさんが取り出した魔導具を魔石に当てた。


「それは?」

「これは、魔石に含まれる魔力と魔素の割合から魔物を識別する『テスター』と呼ばれる魔導具です」

「便利なものがあるんだな」

 ──鑑定スキルが無くてもこう言う魔導具があるなら便利だな。ん?


 テーブルに置いている魔石が鑑定され、説明文が表示されたのを見て目が止まった。


 -----------


【シャドウベアーの魔石】<ハイド>

 魔物の核。魔素が結晶化した物。

 シャドウベアーの固有スキルを内包している。


 -----------


 ──シャドウベアーの固有スキルを魔石から能力付与(エンチャント)できるのか?

 ハイドが使えれば身を隠すのにはかなり使えそうだ。


「結果が出ました。こちらはシャドウベアーの魔石で間違いありません」

「そうか……本当にあのシャドウベアーを単独で倒したんじゃな?」

「まぁ無理に信じてもらわなくても大丈夫だけど」

「ふむ……まずは依頼ご苦労じゃった。エル、シャドウベアーは討伐依頼が出ておったな?」

「はい。まだ掲示板には出していませんが、依頼者は領主様です」

「そうか。ユウヤ、シャドウベアーの討伐報酬じゃがこれに関しては少し時間をくれんか?」

「え? ああ、わかった」

「すまんな、少しやることがあるからのぅ……明日の朝にでも、またギルドに顔を出してくれ」


 そう言い残し、ランディは足早に出ていった。

 ──討伐報酬が貰えるとはタナボタだな。


「急にお呼び立てして申し訳ありませんでした。今回討伐されたエレメンタルの外殻に関しましては、買取カウンターにお持ちいただければ依頼書に記載された金額で買い取らせていただきます。後ほど買取カウンターまでお持ちください」

「ありがとう」


 俺は応接室を出て買取カウンターへ向かった。


「あれ? 確かユウヤさんは魔法を使えなかったはずよね? どうやってエレメンタルを倒したのかしら……」


 エルは応接室で1人、呟いた。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「かなりの金額になったなー」


 買取カウンターでエレメンタルの外殻を買い取ってもらった。

 インベントリを秘密にしている以上、目の前で取り出せないため、外殻はギルドの外で出して20個だけ買い取ってもらった。

 これだけで銀貨100枚になった。インベントリにはまだまだストックがあるので当分は金に困らないだろう。

 ちなみに、金貨だと使い勝手が悪いので全て銀貨にしてもらった。


「風呂にも行きたいが、先に服が欲しいな。そうだ、防具屋なら服もあるかもしれないな」


 ギルドの2階に防具屋があったのを思い出した俺は、2階へ向かった。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「誰もいないのか?」


 防具屋まで来たが、店内に人影がみえない。

 ──店は開いてるみたいだな。


 店のドアには営業中と書かれた札が出ていたので、扉を開けて中に入った。


「すみませーん!」


 防具屋に入ったが、出迎えもなく誰もいない。

 カウンターの奥に部屋があるようなので、奥に向かって声をかけた。


「はーい、お客さんかな? ありゃーすごいボロボロだねー。新しい防具でも買いに来た?」


 見た目12、3歳ぐらいの可愛らしい女の子が奥から出てくると、さながら店員のように喋りかけてきた。


「店番かな? 服か防具がほしいんだけど……お父さんかお母さんは奥にいる?」


 俺はやさしく女の子に接したが──


「あ"!? 私が店主ですけど!?

 誰が、見た目がお子ちゃまのツルペタ幼女だ! コノヤロウ!」

「誰もそこまで言ってないし! って君が店主!?」


 俺は、慌てて鑑定してみると……


 ----------


【名前/性別】シェリー / 女


【レベル/Exp】Lv.12 / 854<Next:226>


【スキル】精錬:Lv.7 / 裁縫:Lv.6 / 生活魔法:Lv.-


 ----------


「もぅ! これでも21歳なんだから!

 私のことを知らないってことは、ウチは初めてね。服か防具が欲しいってことでよかったのかしら?」


 機嫌が少し収まってきた幼じ……シェリーが膨れながら聞いてきた。


「はい、すみませんでした……」

「はぁ、もういいよ。ウチは防具屋だから、服はインナー程度しか作れないよ?

 防具の値段もピンキリだし、武器によって防具も変わるんだけど、主要武器はその短剣でいい?」

「あ、うん。主要武器は短剣で、予算はある程度手持ちがあるから色々見せてもらえると助かる」

「ふーん」


 ボロボロな身なりでは説得力が無いのは仕方ないが、かなり疑われているようだ。


「ま、いいや。短剣なら動きやすさ重視だから革系の防具になるかなぁ。鉄だと防御力はあっても動きが鈍くなっちゃうからね」

「なるほど……ちなみに安いものだとどんな物がある?」

「革防具は魔物の皮を使うのが主流なんだけど、ここらの素材で1番安いのはホーンラビットの皮から作った防具かな。これが銀貨17枚だよ」


 そう言って取り出した防具は白く和らい毛皮が付いたコートのような防具だった。

 今の時期に着るとかなり暑そうだ……


「魔物の皮から作れるなら、素材の持ち込みとかで安くなったりとかは?」

「加工する素材にもよるけど基本的には銀貨10枚から作ってあげるわよ」


 持ち込みだとかなり安くなるようだ。


「じゃあ、それで頼もうかな。素材取ってくるからちょっと待ってて」

「はーい」


 俺はギルドの外に出ると、インベントリから魔物の皮を何種類か取り出して、店に戻った。


「すみませーん」


 すぐに店に戻ったが、シェリーさんの姿が見えなかったので、奥に声をかけた。


「あぁ、本当に来たんだ。で、皮はどの魔物?」


 奥から返事をしながら、シェリーさんが出てきた。

 どうやら、俺が冷やかしで来ただけだと思っていたようだ。


「この中からお願いしたいんだけど」


 そう言って、シャドウベアー、ファングウルフ、ベノムリザード、ブラッドウルフの皮をカウンターに置いた。


「へぇ、また色々持ってきたね……あ、これはいいね! この皮は伸縮性が良くて強度もあるからいいのが作れるのよ!」


 シェリーさんはベノムリザードの皮を手にしながら言った。


「それじゃ、その皮で」

「それじゃ先に採寸するね」


 そう言ってメジャーのような紐で俺の背丈を測り、メモを取りはじめた。


「これで、よし! 明日の朝には出来てるから、お金は前金で銀貨14枚でいいわ」

「あ、ちなみに何か簡単な服とかってないかな?」


 明日の朝までこのままボロボロの服で過ごすのはさすがに嫌だ。


「それじゃ、サービスでファングウルフの毛皮でインナーも作ってあげるわ。インナーなら夕暮れまでには作れるし」

「ありがとう。助かるよ」


 俺はファングウルフの毛皮と銀貨14枚を手渡した。


「インナーが仕上がるまで少しかかるけど、どこかに行ってる?」

「大浴場に行ってくるよ……さすがに臭うし」

「そだね。その方がいいかも……」


 俺はシェリーさんの苦笑いに見送られながら、防具屋を後にした。

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