「同盟」体制への途(中編)
当初の予定から全面的に構成を変更する事に致しました関係で、今頃になりましたが(汗)
ようやくの事で本年最初の投稿です。
遅ればせながら、本年も『「真秀ろばの国」導く、異世界新秩序』を宜しくお願い致します。
(承前)
同時刻。日本国東京都港区麻布台、在日本国ソビエト連邦(新)大使館内――
「やってくれやがったな日本猿ども! 畜生、いつか殺してやる!」
分厚い防弾仕様の窓ガラスを震わせる程の大声で、下品な罵声が吐き出されていた。
公安調査情報庁をはじめとする、「日本国」の諜報や外事公安関係者の間においては〝狸穴〟の隠語で通っているソビエト大使館の、大使執務室。
そんな場所にはおよそ似つかわしくない様に思える、三下じみた咆哮を上げていたのは――。
誰あろう、当代のその主を務めるソビエト連邦(新)駐日特命全権大使、同志フョードル・ゴロジェツキー閣下その人であった。
ラッパ飲みで断続的に呷っている、馬鹿高い度数を示すウォッカの大瓶を片手にぶら下げ。大虎で一人、発狂しまくっている同志大使閣下であるが。
とは言っても、そんな状態がこの日いきなり始まったと言う事では無くて。
ここの処しばらくはもうそれが、もはや毎日の事となっていたのだけど。
すっかりと出来上がって、その足取りも覚束なくなりながらも。くだを巻き続ける同志大使閣下の狂騒は止まらない。
「畜生め! 俺のモノになる〝筈だった〟全てが。まんまと盗られて、目の前から消えて無くなったんだぞ! クソッ、こんな魔女の婆さんの呪いがあっていいのか? えェ!?」
もはや壊れたオーディオプレーヤーと化したかの如くに、同じ内容をループさせては荒れ狂い続ける同志大使閣下は。
他を下がらせ、一人律儀に同席し続けている同大使館附駐在武官のステパン・マレンチョフ大佐に向かって、こちらも既に何度目か? と言う戯言を投げつける。
「同志マレンチョフ! 何とかならんのか!? まだ我々にも、手札は残っとる筈だろう?」
「もはや無理だと申し上げました。同志大使閣下」
対するマレンチョフ大佐は、感情を押し殺した内心を覗わせない能面の様な表情で。
こちらもやはり、もう何度目ですか? と言う話である事実を。取り付く島もない態度で返すのみだった。
しかしそんな現実に、視野狭窄の度合いを更に先鋭化させるだけな状態の同志大使閣下にしてみれば。
それは自らの意志を否定する、不遜な態度に他ならなかったが故に。
怒りの対象を、今度はマレンチョフ大佐にも向けて。ゴロジェツキー大使は更なる罵声を吐き出す。
「同志マレンチョフ! 貴様ぁ、それでも栄光ある赤軍軍人か!? 我らが意志を示す為の相応の軍事力を手元に置きながら、その敗北主義者の如き態度は何だッ!」
(我らが? 〝自分〟の――の、間違いだろうに……)
表情筋の一切を不活化させる、体制の中で生きて行く為に物心付いた頃から身に付けて来た習性を存分に発揮して。
沈黙したまま、同志大使閣下からの罵声をただ受け流し続ける体ではあるものの。流石にマレンチョフ大佐としても、胸の内ではそう反論を返していた。
いかにこちら側へと分かたれた同志たちの間における、序列最上位者であるとは言えだ。
黙って聴いていれば、これが一昔前――かつてのソビエト連邦(旧)の頃なら。「反革命的な言動」の咎で即座の銃殺に処されても不思議はない程の。
露骨に私物化そのものな放言が、止まる処を知らない。
「五月蠅い! いい加減素面に戻れ、こんボケッ!」
と、そう修正してやりたくなってくる衝動と、懸命に抗いながら。
(異世界への転移と言う天災に巻き込まれてしまった状況下で、暫定指導者がこれだと言うのでは。同志ミハイルたちの〝選択〟も、無理はあるまいよ……)
全くもって、むべなるかなと言うものだろうさと。
ある種の諦観混じりに、マレンチョフ大佐としてはそう現実を反芻するだけであった。
(もしも今、駐日大使の座に在るのが。目の前にふんぞり返っているこの俗物でなければ、あるいはもう少し違う展開にもなっていただろうか?)
未練がましく、どうしてもそんな風に考えてしまう処が。自身の内にも、やはり無いではないのだけれども。
(いや、どのみち無理だったろうな。日本人には、まんまと出し抜かれた……)
すぐに打ち消す様に、そう自身でも納得し直すしかないくらいに。
客観的な事実として事態の展開は、彼らの予測を遙かに超える勢いで一気呵成に進んでおり。
そして気付いた時にはもう、外堀は完全に埋められていた……。
地球ではない惑星への時空転移と言う、前代未聞な天災によって。
母国とは完全なる孤立を強いられる状況に陥った諸国民たちの中で、例外的に。
宿敵同士である合衆国と、彼らソビエト連邦(新)だけが。
転移したその範囲内に、ほんの僅かながらも自国の領土を伴っている格好となっていたのは、客観的な事実であった。
手元に残されているグアムやサイパンを基軸にした、臨時の代政府による施政下に在るもう一つの自国と言う体裁で以て迅速に動いて。
そのまま連続性を有する、後継国家としての存在の暫定承認も日台両国から即座に取り付けていた、こちらの「合衆国」(分離体)。
そんな宿敵に倣って、自分たちもまた同様に。
こちら側へ分断されてしまった同志たちの中での序列最上位者となる、駐日大使閣下を暫定のトップに据えて。
北サハリンと言う、手元に残されているソビエトの領土を以ての。
ソビエト連邦(新)の分離体として、正当な連続性を有する後継国家たる「サハリン・ソビエト共和国」(仮)を。異世界に建国する想定でいた。
その筈だった事態は。しかし予想外も予想外に過ぎる展開でもって、根底から完全に覆る事となってしまったのであった……。
当の北サハリン住人たちによる、〝叛乱的〟状況――
異世界への時空転移と言う異常事態を受けての、同特区州の人民たちによる緊急住民投票による決定として。
北サハリン全体の、「日本国」への帰属と保護を請願する決議が。圧倒的大差による賛成で可決され。
そして即座に、その旨が日本国政府へと公式に伝達されるのと共に。複数のメディアを介しての公式発表として速報までもされていると言う、周到さだった。
そして日本政府の側からも、それに対しての歓迎表明が。
よくある「前向きに検討している」などと言った類の政治的・外交的な修辞での様子見なども一切無しで、迅速に返って来ると言う辺りで。
つまりは、阿吽の呼吸だと言う事なのだろう……。
「おのれ江波めぇ! 資本主義堕ちした反動どもと結んで、転がり込んで来る筈だった全てを! 根こそぎまんまとかっさらって行きやがって!」
などと言う具合に同志俗物――もとい、ゴロジェツキー大使閣下を発狂させまくっていたのも。
かくの如くに、してやられた格好だと言う他にない「現実」があったからなのだった。
彼らロシア人の感覚からすれば、まさに猫の額程度の規模であるに過ぎないとは言えどもだ。
領土と住民に、一通りの行政機構が整えられ済みで。しかも自前の地下資源が産出する場所でもある上に。
発言力の源そのものである、それなりの規模の軍事力まで手元に備えていると言う現在の北サハリンとは。
棚ぼた的に手にするモノとして考えるのならば、これ以上はあるまいと言える程の好条件に恵まれた場所であったわけだから。
こちら側における「分離体」同士としての比較で見れば、宿命のライバルたる合衆国よりも、トータルで見た場合には優位に立てそうな条件が揃っており。
日台の両国に対してこそは(あちらはほぼ丸ごと転移して来ている格好なので)、端から比較にすらならないまでに〝立場の逆転〟が生じてしまっている事を、癪ではあれど認めざるを得なくなっているわけだが。
しかし、それ以外の転移組の諸勢力たちとの比較上においてであれば。間違いなくその序列中における筆頭格となれるだけの、別格な条件を備えた勢力として。
連邦でこそはなくなっても、「ソビエト」としてのその名と存在を。
異世界においても。むしろ再格上げをされる様な格好にて、小なりと発揮出来る立場で始められると言うのは。
「かつてのソビエト連邦(旧)が、退嬰化からの崩壊を迎える事となって以来、今日まで続いて来た屈辱の歳月への鬱屈を。遂に晴らす日を迎えたと言う意味では、大いに喜ばしい事ではないか!」
と言う様な思いさえも自然と浮かんで来る、そんな構図であったわけだから。
彼らとしてはもうすっかりと、そうした前のめりな気分になっていたのであった。
そして尊大なる同志大使閣下にしてみれば。
(新国家における大統領として。小皇帝が如き特権を、享受出来る立場に!)
と言う、そんな甘い夢想に浸っていたものが。
しかしながら実際には、具現化を見るその遥か手前で――さながら泡沫の夢と如く。
全てが夢想のままに、あっさりと消えて無くなる格好となってしまっていたからなのだった。
(もちろん同志ミハイルの手管もまた、実に見事だったと。業腹でも認めざるを得ない処なわけだがな……)
まんまとしてやられた! との認識でこそ、目の前で発狂している俗物と一致してはいても。
マレンチョフ大佐としては同時に。彼らが思い描いていた筈の〝未来予想図〟を容赦なく幻に帰してくれたその主犯となる、同志ミハイルこと北サハリン民政局長ミハイル・アスラノフの。
今回見せ付けられたその手管に対しては――無論それは複雑な気分にさせられる、決して愉快でない現実ではあるのは確かだったのだけれども。
それでも、ある種の讃嘆の念とでも言うべき類の思いを。一方では覚えさせられもしてしまうのは、やはり禁じえなかった。
(獅子の子の姓の通りに。ここぞと言う処で、一撃に決める爪牙を隠している男であった事を見抜けなかったと。流石に認めざるを得ないな……)
そんな具合に。見事にしてやられたと言う事実を、ありのままに受け止められるだけの能力が有る分も。
それ故に板挟みな立場での苦労を一人背負い込まされる格好となってしまっている、ある意味で気の毒なマレンチョフ大佐であった……。
前世紀末に、急速な退嬰化をどうにも留めようが無くなっていたソビエト連邦(旧)が。今世紀を待たずしてあっけなく分裂を迎える事となってから。
旧連邦の本丸とも言うべきロシア――「ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国」が、自ら単独でもって。
自他共にその後継国家として位置付けられる、ソビエト連邦(新)としてのリスタートを果たしていたわけだったが。
結果、旧連邦の崩壊をもたらした様々な負債もその多くが新連邦へとそのまま引き継がれ。
容赦なくのしかかるそれによって、元より既に疲弊しきっている国力が青息吐息な状態を強いられ続けている状況も。やはり同様となっていた。
しかしそんな中においても唯一、例外的に極東の〝とある北半分だけの島〟――サハリン州のみが。
右肩上がりを続ける経済成長で外貨を稼げる、「金の卵を産む鶏」の如き存在となっていたのだ。
無論それには、樺太島の南側半分を分け合う新たな相手となった「日本国」の存在が大きく介在をしていた。
ソビエト連邦(旧)の時代には極東方面における重要な衛星国であった、「赤い日本」こと「日本民主主義人民共和国」が。
こちらは戦争によって打倒され、西側諸国である「日本国」に吸収されて消滅を迎えた事で。
西側の親分である合衆国にとってさえ、ある種の脅威だとも見なされる面を持つまでに国力を増大させていた「日本国」からの資本が。
豊富な地下天然資源を有する土地にして、地続きな状態に在る北サハリンへと直接的に。大挙して投下が可能になると言うパラダイムシフトが生じていたからであった。
現在の日本は。そのエネルギー確保の基幹を、軌道上に浮かべる複数機の太陽発電衛星によって賄う体制へと移しており。
更にはそちらの内の一部を北サハリンと台湾に対しても供給する、資源国の立場にさえなっているのだったが(エネルギーミックス等の観点上から、従来型の発電方式も組み合わせている事に伴っての供給力余剰となる分を。輸出へと回す格好である)。
とは言え、現代社会において必要不可欠な戦略物資でもある石油や天然ガスを。
連合王国らの北海油田よろしく、新たに自国の近傍で。そして自国がその権益を主導的に握る事が可能な格好でもって安定的に獲得する事が出来そうだと言う、願ってもない好機を。
悲願の統一を果たしたその結果として、派生的に得る事も出来ていた「日本国」は無論の事、逃したりはしなかった。
それこそ、比喩で無しに「札束で横っ面を張り飛ばす」如き姿勢でもって邁進され出した国際的プロジェクトは。
現場に向けられる直接的な意味合いでのカネ、ヒト、モノの拠出はもちろん。関係するソビエト(新)政府高官たちへの広範な実弾攻勢の方も、手抜かりなく……と言う絡め手も駆使されて。
異例とも目される怒濤の勢いで、具現化を見る事となって行ったのだった。
当時のソビエト連邦(新)の側としても、窮乏する現状下で手っ取り早く稼げる様になりそうで、かつ自分たちにも還元の大きい有望株であり。
おまけに、あらかたの必要なモノについても。これからは南側の日本人たちが、引き続き自腹で整えてくれると言うのだから、自らの懐は痛まない。
その道義的・倫理的な是非については、また別な話ではあるのだろうが。
そうして国益と私益とが。〝どこまで〟と〝どこから〟が区分し難い、シームレスな形で絡み合っている案件だと言う意味合いにおいては。
吸収した「赤い日本」からもたらされた対露助の知見を活かしての、当時の「日本国」側のそれも。
ある意味では適切な対処であったと言えたのかもしれない。
かくして「サハリンプロジェクト」と総称されている、北サハリン東岸の大陸棚の海底下に眠る石油と天然ガスを採掘する開発計画は。
日本が中心となってそこへ投下する資本によって急速に確立して行く事となり、そして現在に至っていた。
「今にして思えば。既にその時点から、種は撒かれていたと言う事なのかもしれんな……」
同志大使閣下には聞き咎められない程度に、小声でマレンチョフ大佐はそうひとりごちる。
連邦構成体としては他にない「特区自治州」と言う、北サハリンのみが持つ名称が示す通りに。現在の同地は所謂「開発特区」として。
かつてに比べれば多少マイルドになっているとは言え、その形態としては未だに全体主義体制の枠内に在るソビエト連邦(新)の中においての。
唯一の例外となる、内政面においては西側的な制度までも試験的に導入しての高度な自治権が付与され。
そしてその実施もお題目ではないレベルで続けられて、今や定着するまでに至っているまさに特異点と呼べる特別地域であったからだ。
日本を旗振り役とした西側諸国からは、大規模な開発投資に当たっての懸念と言う形でもって。
全体主義体制ならではのソビエト側の様々な弊害に対しての方策を求める大義名分を手にしての、踏み込んだ「民主化」を進展させよとの要求が提示されたのだったが。
ソビエト連邦(新)側としても、自らの体面と基本的な体制の固守は譲れない処ではありながらも。
しかし一方では、西側資本を引き込まねば! と言う、死活問題でもある「現実」との間での着地点を模索した、その結果として。
当時の隣国が。近付きつつあった香港の返還を睨んで盛んに喧伝していた、所謂〝一国二制度〟と言うやつを。
「わがソビエト連邦(新)も。極東において『開発特区』と指定するサハリン州に限定して、試験的に導入を実施するものである!」
と宣言する格好でもって。
あくまでも辺境の、それも大陸とは海で隔てられている〝島〟の北半分のみに限っての特例として。認めるものとする――。
そのような妥協でもって始まった、現在へと至る北サハリンの歩みは。
目論見通りの経済的な急発展による利潤を、新ソビエトへと大いにもたらすものとなったその一方で。
事実上は連接される格好となった日本国側より流入し続ける、豊かで自由な〝社会〟との直結による洗礼と、その利得と言う圧倒的な「現実」が。
それに比例して当地の人々を。ソビエト本土の人民たちとは〝全くの別人種〟――言うなれば、〝サハリン人〟とでも言うべきだろうか? へと変容させて行くのには、充分な歳月でもあったのだから。
端的に言えば、上前をはねる事の他に何もしていない本国と、隣人としてあれこれと面倒を見てくれている他国と。
どちらに魅かれるか? など、自明以前の理と言うものであろう。
無論、多少(?)の歪さはあれども、現状がそれでうまく回っているのであれば。わざわざそれを崩そうなどとは普通、誰しも望まないわけだが。
しかしそれも、そうした安定が保たれている事が大前提の話でもある以上は。
唐突に未知なる異世界へ放り出されてしまったと言う、およそ有り得ない状況下において。
寄らば――と頼りにする大樹が、どちらになるか? と言う辺りで、ごく当然な帰結であるに過ぎないと言う事なのだった。
そんなわけで。同志をやめたいミハイルから送られて来た、北サハリンの全市民たちの総意に基づく通告の短い三行半は。
それを目にした同志大使閣下を「青天の霹靂」な衝撃で、更に大噴火させるものであった。
「裏切者ミハイル! あの野郎ッ、『この先は俺達抜きでやってくれ』だと!?」
マレンチョフ大佐が手渡して寄越した、北サハリン現地からの伝文用紙を引き裂きながら、顔を真っ赤にして激怒の咆哮を上げる同志大使閣下は。
そこへ更に差し出される、この件に関する猛抗議への日本国外務省よりの回答書――つまりは日本政府からのメッセージを受け取って。
既に茹で上がったその赤みで、まさに怒髪天を衝くと言う言葉を体現した姿になる。
その回答にいわく――。
『本係争事案については、我が国としても全くの想定外な事態ではあるが。
しかしながら、現地の住民たちが民主的な手続きによって、自らの自由な意思に基づき決議した判断に対しては。同じく民主主義を奉ずる国家として、尊重せざるを得ない。
同時に貴国側との係争ともなる点については、甚だ遺憾な事ながら、決して我が国の本意ではなく、賢明なる理解を求めるものである……』
要約すれば、丁重に上から目線であっさり一蹴されていると言う事であったし。
そしてそれらが同時に届く辺りも、奴ら示し合わせていやがるな! と言う具合に。
実際には単なる偶然に過ぎなかった事までもが。同志大使閣下の中では、真実として見事に符号してしまうものとなっていたのだった。
そして、既にそんな騒音源の存在は完全に意識から切り離して。
(我々も、今後の自分たちの身の振り方と言うやつを。本気で考えねばなるまいな……)
自身を含めたこちら側の全人民たちの為に、代わって自力で次善の代替策と成り得る途を模索する肚を固めて。
密かに本気で動き始めているマレンチョフ大佐からも、既に見切りを付けられた事にも気付かずに。
「どいつもこいつも、皆で俺をコケにしやがって! くそォ、いつか必ず殺してやる!」
この世の全てに対する呪詛の叫びを上げ続ける、同志大使閣下の声を顧みる者などもはや誰一人としておらず。
今日も今日とて狸穴に、負け犬の遠吠えが虚しく谺していたのだった。
(後編へ続く)
そういう「設定」にしていますから、当たり前と言えば当たり前ではあるのですが、
この21世紀の令和の御代に、「同志○○~」って言うのが続くのは、
〝違う意味でのファンタジー〟だよなァ……とは、書きながら自分でもずっと思っておりました(苦笑)。





