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魔導船〔ファルカン号〕④(前編)

繫忙期等々ありまして、少し時間が空いてしまいましたが、

その分も長くなりましたので(苦笑)、今話は二分割とさせて頂きます。


いよいよ自衛隊側による〔ファルカン号〕救援の為の本格的な接触が開始されます。

まずは前編から……。

 とりあえず船底の状態を見てみようかと、潜ってみたわけです。

 そうしたら、そこで〝人魚たちと〟一緒に泳ぐ事になったじゃないですか?


 ああ、本当にここ(・・)は異世界なんだな……って言うのを。

 自分が本当の意味で実感させられた瞬間(とき)でしたね。


   ――〔ファルカン号〕救援部隊に参加していた、ある海上自衛官の述懐




 エリドゥ(この世界)の住人である、フィオナ候女(ひめ)一行との遭遇をきっかけに。

 先方から当座(ひとまず)の信を得て実行に移された、〔ファルカン号〕救援の為の活動は。


 そうして始まったばかりな、互いの関わり合い方もまた。

 個々のヒトとヒト同士の間でのレベルから。


 科学と魔導と言う、収斂進化(しゅうれんしんか)形こそは見せつつも、全く異質なものであるそれぞれの文明の。

 技術の精華(結晶)同士が直に向かい合う。そんな段階(ステージ)へ進展する、その嚆矢(こうし)であった……。


 迎える〔ファルカン号〕の人々に、フネと言う概念そのものを揺るがせる程の。

 絶大な衝撃(インパクト)を与えた護衛艦〔いそかぜ〕だったわけだけれども。


 そんな彼女は、あくまでも露払いであるに過ぎず。

 次いで姿を現した、救援部隊を運ぶ本命たるLPD(輸送揚陸艦)〔かもい〕の更に巨大で、かつ異形な姿に。

 あっさりと、それも上書きをされて行くのだった。


箱舟(・・)だ……!」


 真打ちとして現れた〔かもい〕の艦影を目にして。

 思わずそんな呟きを漏らした〔ファルカン号〕の乗員たちは、一人や二人では無かった。


 〔いそ(最初に現れた)かぜ〕(異形の巨大艦)と同じく、灰一色の船体である点では同様(一緒)ながら。

 より巨大な船体を有している事も無論だったが、それ以上にその形状(かたち)が。更に異様であった。


 〝箱舟〟だと言う直感的な形容も、実際に的を射てはいたかもしれない――。


 その巨大な船体は、右舷の中央部に(そび)え立つ城壁の様な船楼を別にすれば。

 まさに海面上に浮かぶ直方体、と言う表現しか出来ない形状をしていたからだ。


 帆は一切備えていない点では同じでも、〔いそかぜ〕(最初に現れた巨大艦)の方が。

 全体の形状自体で(シルエットそのもの)は舟形をしてはいるし、その中央部に帆柱(マスト)であろうと(おぼ)しきものは屹立(きつりつ)させているなど。

 見比べれば、まだしもフネらしい形状(かたち)を残してはいるだろうと、逆に思えて来さえする。


 そんな輪をかけて異形な〝箱舟〟が、既に停止して投錨作業を始めている(先導)艦の脇をゆっくりと通過して。

 こちらへより近付きながら舵を取り、横腹を見せる格好でその行き足を止めた。


「あれが……姫様(ひめさま)たちが見て来られたと言う、彼らのフネですか……」


 優れた術士らしく何事も泰然と運んで行く事で知られたエンヤ船長の声が、流石に平常では無かった。


 海港都市の住人である彼女たちにとっては。

 感覚的に言うなら最も慣れ親しんだものである、フネと言う分野においても。


 かくの如きまでの懸絶さ(・・・)ぶりを目の当たりにさせられていれば、無理からぬ反応ではあっただろう。


「ニホン国の軍船は……、ここまでの代物(モノ)なのかよ!」


 これが、魔導と〝一切無縁な存在〟であるなどとは!?

 俄かには信じ難いな……! と言う、驚愕の表情はやはり見せつつも。


 同時にやはり技術者らしく、目の前の現実をつぶさに観察しているドノヴァン副長は。

 持ち前の好奇心や探求心を否応無しに刺激されまくっている様子で、両艦の方を見つめている。


「流石にこれを見ても信じない、と言うわけにも行かないでしょうけど……。

〝魔法的な力を一切用いず〟に、帆も櫂棒(オール)も無しであんなに巨大なフネを。

どうやって動かしているのかしら?」


 そこが知りたくなりますね……と言う、当然ではあろう疑問を滲ませるエンヤ船長の。

 エリドゥ(この世界)の住人としては順当と言える、驚きを交えての問いに応ずる悠斗(はると)


「あれらも全て、動力機関と呼ばれる巨大な機械(からくり)仕掛けの力で動いています。

昨日もお話しした通り、我々の技術――ひいては文明は。こういうものに拠っているのです」


 ニホン国らの世界(文明)は。

 「科学」と総称される物事の理を探求し、それを解析して利用する事でもって成り立っているのだと言う、昨日の会談の場で。

 またその後の相互交流を兼ねての会食の席上でも、聞かされた話。


 そんな、これまで想像だにした事さえも無かった概念の話を示して寄越した結城2尉(ハルト卿)たちの言葉も。


 現に今、こうしてここに至るまでの。目の前に現れ続けた数々の〝現物(現実)〟を見ていれば。

 掛け値無しの事実を語っていただけなのだと、誰もが否応無しに認めるよりか他に無いものであった。


 そして、これ程までの数々(もの)を目の当たりにさせられてしまえば。

 彼らから差しのべられた〝支援の手〟を、素直に受け入れているフィオナ候女(ひめ)の判断にも改めて頷かざるを得ない。


(ああ、これは……! 魔導に拠らずして、これ程の代物(フネ)をも実現してみせる。

それ程の次元(高み)に居る様な存在(相手)でしたか……)


 エンヤ船長としては、半ば達観に近い様な境地でもって改めて納得の念を強くさせられる他に無かったし。

 同時にそれ程の存在(相手)であった彼らニホン国に対して。見返りとして提供できそうな何か――。


 先方にとって魅力的に映る様な、交渉材料(カード)に成り得るモノが。果たして自分たちの側にも有るでしょうか?

 と言う事を、真剣に考えながら観察を続けていた。


 それとは対照的に、同様の境地へとより早く至った(から)には。持ち前の好奇心や探求心が。

 代わって一気に全開となった状態であるドノヴァン副長は、更に前のめりに興味深々と言う態であった。


 ましてや、ニホン国らがそうであるの(魔法にも魔導にも無縁)だと言う事を、話半分に聞いていた〔ファルカン号〕乗員たちの多くからすれば。

 まさに青天(せいてん)霹靂(へきれき)だと言うしかない様な証拠が、しかし紛れもない現実そのものとなって。

 こうして〝圧倒される代物(モノ)〟として、目の前に出現した状態であると言う話だ。


 あまりの事に、そうして彼らがそれをただ唖然の表情で眺めやっている間にも。

 当の箱舟の側では、上陸準備なのだろう動きが展開され始めて行く。


 その真っ平ら(フラット)な上甲板を始めとした各所に、船内から船員たちが次々に姿を現すと。

 それぞれが忙しそうに立ち回り出す様子が見えた。


 やがてその上甲板へと。昨夕に目にしたばかりのあの飛空魔導騎(ゴーレム)が、翼を折りたたんだ姿で。

 そしてそれと似通った騎影(姿形)をした、やはり同種とおぼしきモノたちが次々と。


 艦内(フネの中)からせり上がって来ては、上甲板の前方側へと移動させられて――。

 そちらで列線を形成して行きつつある。


「成程な! あの〝箱舟〟の面妖な形状は……そういう事だったのか!?」


 いち早くその事に(・・・・)気付いたドノヴァン副長が、驚きを抱き合わせながらに納得の声を上げた。


 実はエリドゥ(この世界)においても、洋上で飛空生物騎を運用する為に。

 それ専用に設計された「飛空騎母船」と呼ばれる、独特の形状を持つ大型の帆走軍船が存在しており。


 眼前の箱舟の、一見では異形だと感じるしかなかったその形状も。

 その実、自分たちの知るそれと同種の運用を行う為の代物が。


 しかし帆船ではないからこそ、そうした姿形になるのだろうと言う帰結でもっての。

 逆算的な納得を、覚えさせられていたのだった。


 生きてきた世界と、その基盤となるアーキテクチャにこそ相異があろうとも。

 そうした運用思想面における収斂進化形でもあろう類似性への理解の速さ、的確さと言う辺りは。

 流石、極めて優秀な魔導技師(エンジニア)ならではの証明(それ)であったかも知れない。


 そして同時に。

 目にしただけで、そんな大まかな概要についてならば的確に(・・・)把握して見せる辺りの眼力は。

 傍らでそれを聞かされる悠斗(はると)たちにとっても、驚きを与えるものであり。


 更にはそこから。エリドゥ(この世界)においては既に、大空も戦いの舞台の一つとなっている事と。

 のみならず、それには海上での航空戦までもが含まれるのだと言う、重要な情報を得る契機ともなっていた。


 ヒトをその背に乗せて空を飛ぶ事が出来る飛空生物騎が、それも複数種存在すると言うエリドゥ(この世界)においては。

 空中戦、そして対空戦と言う概念が、当たり前(・・・・)のものとなっているのだと言うのは。

 軍事関係者として、驚かされるよりか他には無い話である。


 広義の意味での航空機が実現するまでの時代は(長い間)、ずっと平面上(二次元)での戦争をしていた地球人類に比べて。

 この世界(エリドゥ)人類種(ヒトたち)は、最初から三次元的な感覚で戦争をしていると言う事なのであれば。


 もし仮にこの時空転移が、もう二世紀ばかり早くに生起していたとしたなら。

 「魔法の力」の脅威、それ自体もさる事ながら、それだけではなしに。


 当たり前のものとして、空からの眼で監視し。また空襲(・・)をも仕掛けて来る相手に翻弄されて。

 主導権を握られ続けたままの立場となる自分たち地球世界の人類側に、おそらく勝ち目はあるまい。


 そうした意味においても、著しく発達した現代の先端科学技術を有しているからと言えども。

 エリドゥ(この世界)の事を決して侮るべきではないと、自戒すべきだと言う認識を。

 悠斗たちがまた一つ新たにさせられるには、充分な話であった。


 そうしている間にも、粛々と上陸に向けての準備が進んで行く様子の〝箱舟〟(〔かもい〕)であったが。

 その姿を注視し続けていたエンヤ船長からも、声が上がった。


「ねえ、副長。気付いているかしら? 他にも(・・・)動きが有るみたいよ?」


「ああ。(やっこ)さんの船尾(とも)が、少しずつ下がって行っているよな……」


 撃てば響くが如きの反応で、ドノヴァン副長も彼女に即答する。


「普通だったら、沈んでっている? と、疑うしかない処なんだろうが……。

ことお前さんたちを相手に、そんな常識(・・)で推し量ろうって言うのは、間違いの元だろ?」


 そう冗談めかしつつ、悠斗に向けて言って寄越す辺りも。

 彼の柔軟さ(非凡さ)ぶりを、如実に示すものであったかもしれない。


 何をしているのか? までは判らずとも、何かしら意味のある事には違いあるまいと。

 既にそう見切っているドノヴァン副長ではあったが。


 しかしそうして〝箱舟〟が、艦尾側の喫水線をゆっくりと傾けて(下げて)行ったその上で――。

 新たにし始めた事(・・・・・)には。流石の彼でも、再び唖然とさせられる事になるのだった。


 否、ドノヴァン副長だけがと言うわけでは無く。エンヤ船長以下の異世界人たち(〔ファルカン号〕側の)全員が――。

 今回はフィオナ候女(ひめ)主従も含めて、例外なく誰もが一様に絶句させられていたのだが。


 既に誰の眼にも明らかな程に、船尾側を沈み込ませて。船体を後ろ側へと傾けている〝箱舟〟(〔かもい〕)は。

 そうしたら不意に、その船尾がゆっくりと口を開け(・・・・)始めたではないか!


 どうやらその船尾は。城砦の堀に架ける跳ね橋の如き、扉構造になっていたらしいが――。


 そういう問題では無くて、水面に浮かぶフネの船体に自ら大口を開けるなど。

 自殺行為だ(自沈するつもりか)!? と思うしかない、およそ有りうべからざる行動である。


 そうして〝箱舟〟は、自ら海水を飲み込んで一気に自沈する! 

 直後に起きるであろう当然の惨劇(・・・・・)を誰もが想像(確信)して、顔を強張らせていた――。


 だが、遂には船尾扉を完全に水面下まで開け広げたにも関わらず、その船尾の沈み込みはぴたりと止まっていて。

 そして以後は、そこから増大する様子も全く窺えなくなっていた。


「どういう事なんだ!?」


 そんな訝しみの声が異口同音に、一斉に上がったのも当然ではあるだろう。

 およそ目の前で起こっている事があまりにも現実離れしていると、思考が止まって立ちすくんでしまうよりか他にはなくなってしまう。


 流石のドノヴァン副長とエンヤ船長も。

 そして他の皆より先んじて彼ら(ニホン国)の事を知っている立場な、フィオナ主従でさえも――。


 およそ理解の範疇を超えたものである眼前の光景に、唖然と見入ってしまっていた。


結城2尉(ハルト卿)、あれも……やはり?」


 それでも、他ならぬ彼ら(ニホン国)がする事なればと。


 周囲の同胞たちとは見聞度合いに相異もあった事で、いち早く我に返ったフィオナ候女(ひめ)が。

 これも〝次なる動き〟へ向けての布石(流れ)でしょうか? と言いたげに問うて来る。


 悠斗は首肯して、そこで簡単な説明を返す。


「はい。あの(フネ)――〔かもい〕は、簡単に言えばその艦体の内部にドックを備えていまして。

ああして艦内から、上陸用の小型艇などを出入りさせるのです」


 その言葉を実証する様に、〝箱舟〟(〔かもい〕)の船尾から。

 さながら幼獣が産み落とされる様を思わせる格好で、やはり灰色をした小船(・・)が後ろ向きに海面上へと滑り出て来る!


「本当にゃ! 船尾(にゃか)から小さなフネが出て来た!?」


 思わずそう声を上げるターニャだったが、そうして巨艦の中から現れた上陸用の小型艇だと言う〝それ〟も。

 やはり帆柱や舷側の櫂棒も一切持たずに、そのまま海面上を軽快に自走し始めてこちらへ向かって来る。


 そこでようやく、時間差で気付かされる事になった事実――。

 小さなフネと見えたそれも、実際にはガレー船に匹敵する程の大きさがあるらしいと言う事。


 それが小さいのではなく(・・・・)、母船たる箱舟が巨大過ぎるせいで。

 感覚が狂ってしまっていたのだと言う事にようやく気が付いて、更に慄然とする〔ファルカン号〕の人々。


 そうしている間にも、みるみる近付いて来る上陸用のフネはそのまま。

 結城小隊の誘導によって断崖下の小さな浜辺へ船首を接岸させ、船首(そこ)の渡し板を倒した。


 そこから波打ち際の砂を蹴立てて整然と上陸して来る、結城小隊と同じく濃淡の青色で斑模様を成す軍装と。

 斑模様である点では同様ながら、対照的に草と土にまみれた様な色合いの軍装をしている者たちの混成になっている常人(ヒューム)の一団。


 その後方の海面上には、更に同型のフネたちが。

 続いてこちらに向かって来ようとしつつあるのも見える。


 〔ファルカン号〕の乗員(クルー)たちが、ニホン国なる未知の国家の軍の。

 その途方もない展開(上陸)能力の一端を否応なしに実感させられるのには、十二分な光景であった……。




 一度外させて頂きますと、断わりを述べて。

 上陸して来る友軍の出迎えに向かった結城2尉(ハルト卿)が再び戻って来た時には。


 濃淡の草色に土色と黒を交えて斑模様を形作る軍装姿の、怜悧な容貌の女性幹部(士官)を伴っていた。


 エンヤ船長とドノヴァン副長に、フィオナ候女(ひめ)主従(たち)

 居並ぶ〔ファルカン号〕首脳部の前に立ち、敬礼と共にその女性士官が申告する。


「日本国国防軍(・・・)陸上自衛隊、『両用戦機動団』所属、風見(かざみ)雪乃(ゆきの)3等陸佐です。

貴船〔ファルカン号〕救援の為の上陸部隊指揮官を拝命し、ただいま到着致しました」


 初便(最初)汎用揚陸艇(LCU)が運んで来た上陸第一陣の中に自身も加わって、真っ先に乗り込んで来た彼女が。


 前線(現場)で〔ファルカン号〕側と、実際に顔を突き合わせての救援活動を実施する指揮官としての立場を。

 先遣隊の長であった悠斗から、引き継いだと言う事も示しつつの挨拶(表敬)であった。


 エンヤ船長が〔ファルカン号〕側を代表して、右拳を左肩下に当てる様式の答礼と共に応ずる。


「本船の船長、エンヤです。この度は貴国の御厚情に預かり、深謝します」


 そんなやり取りを交わす両者の印象は、周囲の面々には一様に。

 どこか似通ったものを窺わせる様にも思えたのだったが。


 実際、当の両女史たちも。互いに一目でそれは感じ取っていた。


 前日の、フィオナ候女(ひめ)一行からの事情聴取(情報収集)の中で。

 〔ファルカン号〕の船長(トップ)が女性であると言う事は、本郷2将たちも事前に認識していた為に。


 直接上陸して先方との協議の上での救援活動を統括する指揮官には。

 女性幹部を選抜する事にしていたのだったけれども。


 どうやらそんな配慮も、ひとまずの掴みとしては奏効している模様であった。


 先遣隊として接触させた結城小隊と、双方の間を取り持ってくれる説明役を期待(依頼)したフィオナ候女(ひめ)主従に託して提示し。


 〔ファルカン号〕側の応諾を得た上での救援活動の実施に移行すると言う、そうした想定方針でもって。

 三か国(合同調査部隊)側としては状況を開始していたわけだが。


 とは言えそこは、やはり相手がある事なので。

 最終的には、現場で直に相手側と接して細かな意思疎通のすり合わせも随時行いながら。


 その上で進めて行くものとなると言う、物事の基本はここでもおそらく変わるまい。


 いや、これが異世界人の集団間同士としての形では〝最初の接触〟であると言う事実を踏まえれば。


 むしろ異質なもの同士の初遭遇なればこそ、互いに悪意などは全く無しにで。

 しかしながら相手にとっての地雷を、知らぬままに踏んでしまうと言う様な事態も。

 結果としては生じかねないリスクは、当然ながら秘めている事になるわけなので。


 風見3佐はそこで、本状況中においては自身の指揮下へ組み入れられる結城小隊に対し下命する。


「結城2尉。貴官の小隊は予定の方針通り、各自分担して〔ファルカン号〕の各部と、我々の間の連絡調整役に当たれ」


「了解しました。ただちに掛かります」


 悠斗は敬礼と共に応じて麾下の小隊員たちへ、小隊内用の無線通信機越しに風見3佐からの命令を伝達。


 待機していた小隊各員は、それを受けて事前に各自が分担を打ち合わせておいた〔ファルカン号〕側の各部へと。

 到着した本隊の自衛官たちを案内すべく、一斉に動き始めた。


 彼らが先遣隊として乗り込んで、〔ファルカン号〕の船員たちと積極的に親睦を深めるのと共に。


 先方からハードウェアとしての同船(フネ)のあれこれや、実際の運用に関しての案内を受けて。

 未知の技術(相手)であるなりの、その概要の把握に努めていたのにも。


 一つには、こうして本隊が到着して実際に救援活動を開始する段となった際に。

 言うなれば、概念(常識感覚)的な面での〝通訳〟の任に当たる――双方の間に入って。

 スムーズに行く様に調整したり、助言を行う役割を果たす事を期してのものでもあったのだった。


 もちろん小隊長である悠斗自身も。

 小隊指揮官としての立場はそのままに、双方のトップ連を相手にしてのその役割を担う立場でもあるのだけど。


 既に、眼前で彼が無線通信機で自らの部下たちへと一斉に命令を送るのを見たドノヴァン副長とエンヤ船長からは。

 また新たな驚きに接したと言う反応が向けられていた。


(彼らが使っている、〝ムセンツウシンキ〟なる「擬魔導双話具」とは――。

むしろ、「擬魔導送話(・・)具」とでも言うべき代物でもあるのか……!)


 単純に技術(様式)そのものの相似形であると、これまでは解釈(理解)していたのだったが。

 その実、「魔導双話」では不可能な〝一対多数の同時送話〟が、普通に可能な代物であったとは!? と言う点でも。


 目を(みは)らされるべき衝撃が、また一つな気分だ! と言うしかない構図である。


 またまた喰い気味に尋ねられて、無線通信の概要を説明し始める悠斗(結城2尉)の姿を目にすれば。


 風見3佐としても、本郷2将(総司令官)による配慮の正しさを。

 そうした形でも早速に実感させられて、苦笑交じりに内心で頷くしかなかったのだった……。




(後編に続く)

冒頭の回想モノローグのシーンは、(後編)になります。

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― 新着の感想 ―
[一言] お疲れです、更新待ってました。待っていた分面白く感じております。 輸送揚陸艦かもいを「箱舟」と、船型はたしかにそうですけどこっちの世界にもノアの箱舟的なお話があったりするのかな。ちょい気に…
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