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27 世界の終わり

「世界の終わりって、それはどういう……?」


彼女――パシアンに私は問う。この世界は私の知る世界と、新たに知った異世界とも違う点がある。

空の赤さだ。

どす黒い赤に染まった空は、私の心の根底からおどろおどろしい何かを呼び起こす。見ていて不安になるものだ。


「言葉通りの意味だよ。この世界はもうすぐ終焉へ向かう。パシアンの未来視なんかなくても、誰の目にも明らかにわかる当然のことなんだけどね」


余計にわからない。確かにこの胸にこみあげてくる不安感がそこにある。けれど、この不安感が何に起因しているのかがいまいち掴めない。


「やっぱりこの空の色に原因があるの?」

「空の色? 君の知っている空は青色じゃないのか?」


パシアンは筆を走らせる。私の話す言葉、一言一言を聞き漏らすことなく、その紙面に落としていく。彼女の瞳は未知の情報にキラキラと輝かせていた。

それとは対照的に、私たちの会話は絶望的なものであった。


空の色はやはり青色なのか? 私が見る限りは真っ赤に染まっている。パシアンにはアレが青く見えているのだろうか。

ここで私はパッと思いついた可能性を頭の中で列挙することにした。


一、私だけが空の色を赤色と認識している。

二、目の前の少女、パシアンだけが空の色を青色と認識している。

三、この世界の青色は、私の知る赤色である。

四、そもそも私の見間違いである。


まず一つ一つ精査していこうか。すぐにわかるのは四だろう。

私はもう一度空の様子を見に行こうと外に出る。


「ちょ、ちょっと君、一体どこへ行こうというのかね」

「少し確認をね」


私の様子に慌てた様子のパシアンがついてくる。外に出た私はやはり、と心の中でつぶやき先ほど列挙した四の可能性を塗りつぶした。

空は、赤色であった。


「一体何を確認しているんだい。今はパシアンとの話の最中だろう? 君の表情はぼんやりとしていてよく見えないから、急に動かれると怖いんだよ。もしかして何か気に障ったことでも言ってしまったのかい?」

「ううん、そんなことないよ。私なりにこの異常事態の原因を模索しているんだ。少しだけ考えさせて。そしたらあなたの質問にも応えてあげるから」

「ううむ……。わかったよ」


さて、残りの可能性は三つ。次に確認するのは三だ。正直、本来なら見分けようもない可能性ではあるが、生憎と今は確かめる方法がある。

部屋に戻るついでに私は部屋の隅に置かれたツボを指さす。青色のツボだ。


「ねえ、このツボって何色に見える?」

「今度は一体なんなんだよう。パシアンには青色・・に見えるけど、それがどうかしたの?」


なるほど……。私の知る青色とこの世界の青色は同一だ。つまり、可能性の三はないことになる。

残る可能性は二つ。だけどもう決まっているようなものかな、これは。


「質問いいかな。私以外で空の色がおかしいとか言ってる人はいなかった?」

「結局空の色が気になってるのかい? 君以外で空を気にしている人は聞いたことがないよ。空が赤くなるなんて、日が昇るときと日が沈むときくらいしかないよ」


やっぱりそうなるのね。つまり、空の色が赤く見えるのは私だけということになる。これは私が幽霊であることと何か関係があるのだろうか。そも、私が死んだ可能性があるかどうかすらまだわからないのだけどね。


「これでいいだろう? 今度はパシアンの質問だ。それでいいかい?」

「うん、ありがとう。結局私だけおかしな状況に立たされていることが分かっただけだったけど」

「そうか、それは残念だったね。よし、ワクワクの質問タイムだ。まずはすごく初歩的なところからの質問だ。君の名前と出身地、それと誕生日だ!」


すごく初歩的な内容だった。というかそれ私個人の情報じゃん。まあ前々世ではともかく、この世界では情報リテラシーなんて存在しないし、喋っても問題ない。


「私の名前はフラム。アヴニール王国アヴリル領ラーストのサキュバス街出身だよ。生まれた年は剣歴110年の六月一日……」

「ちょっとまったぁー!」


私が言い終える前にパシアンが口を挟んできた。一体どうしたというのか。


「ねえ今なんて言った? もう一回言って!」

「え……? えーっと、私の名前は……」

「そこじゃないっ! 生まれた年だよ!」


生まれた年になにか彼女の関心を引くようなことがあったのだろうか。正直、私が生まれた年に何か起きたということはお母さんから聞いていない。あぁ、こんなことを思っているとお母さんが恋しくなるなあ。生まれて初めてお母さんを視界に入れたときはその姿に驚いたものだけど、今思えば愛着あるものだよなあ。


おっと危ない。思考が脱線してしまっていた。今はパシアンの相手をしてあげないと。


「生まれた年はさっき言った通り、剣歴110年の……」

「そこっ!」

「……?」


急に叫ばないでよ、びっくりするなあ。私はその大声にむっとするけど、彼女は私の表情が見えていないから意味がない。


「その剣歴・・って何なのさ!」

「…………え?」

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